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煉獄の時



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【この小説が収録されている参考書籍】
煉獄の時

煉獄の時の評価: 4.17/5点 レビュー 6件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.17pt


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

時代に取り残されて道に迷う?

矢吹駆シリーズのミステリとしては『バイバイ、エンジェル』、『サマー・アポカリプス』、『薔薇の女』、『哲学者の密室』、『オイディプス症候群』、『吸血鬼と精神分析』に次いで第7弾。続く『夜と霧の誘拐』、『魔の山の殺人』も雑誌連載は終了、第10弾で完結編となる(?)『屍たちの昏い宴』が現在雑誌連載中という具合で、作品自体は切れ目なく執筆されているのだが、連載終了から単行本化までが長いのなんの。笠井潔は単行本化に際してあれこれ改稿するのが常らしいのだが、それに10年以上も掛けるのは如何なものか。本作『煉獄の時』の雑誌連載は2008~2010年なのである。作者は1948年生まれで、じきに後期高齢者なのだし、元気なうちにきちんと全作刊行されるのか、些か心配になる今日この頃だ。
さて、本作の時代設定は1970年代末。処女作の『バイバイ、エンジェル』からほとんど変わっていない。ファンにはご存じの通り、矢吹駆シリーズは殺人事件の単純な謎解きでなく、物語の展開に高名な哲学者たちとの思想的対決をも織り交ぜているところに特色があるのだが、『バイバイ、エンジェル』が発表された1979年ならいざ知らず、既に半世紀近くを過ぎた現在ならどうだろう。この『煉獄の時』にはジャン=ポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワールに擬えた人物が登場している。彼らの名を覚えていて、懐かしく思うのは還暦過ぎの面々ばかりではないか? つまり、今日の時流からは完全に外れているのだ。彼らに限らず、哲学者や思想家といった存在自体、最早知識人として敬意を持って迎えられる時代ではなかろう。となると、矢吹駆シリーズもまた、時流から外れていると言えまいか?
小さな活字で2段組、800頁に及ぶ大部な作品で、長さだけでも『哲学者の密室』以上だ。で、戦時中と現代とで時を越えて似たような事件が重なる辺りの設定も『哲学者の密室』に近い。正直なところ、本作を読み進めるのにはかなり苦労した。そもそもボーヴォワールともあろう者が紛失した手紙の探索を、凄腕 “探偵” の評判を得ているにしろ、その時点で一面識もない学生風情(矢吹駆とナディア・モガール)に依頼するところからして現実離れしている。駄作とまで言わないまでも、なかなか他人に薦めにくい代物ではあるだろう
煉獄の時Amazon書評・レビュー:煉獄の時より
4163915990

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