■スポンサードリンク
空白の起点
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
空白の起点の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
僕は本作の日文文庫版を古書フェアで見つけ、買って読んでみた。日文文庫ってどこ? と思ったら、奥付に日本文芸社と書いてあった。今は日文文庫なんてないから、レアな文庫だ。 そんなことはさておき、本書はもともと1961年に光文社から出ているから、ずいぶん古いミステリである。しかし、今読んでも古臭さをあまり感じさせない。保険金殺人、列車からの殺人目撃など、道具立ては地味だが今でも通用する内容だと思う。 難を言えば、女性や男女関係の描写に前時代的なものがあって(笹沢作品には往々にしてこれがある)、今の視点で読めば差別のそしりを免れないけれど、それは書かれた時代を考慮して目をつぶるとしよう。 主人公は保険調査員の新田純一(そんな名前のアイドルがいたけど、これはまあ偶然ですね)。彼にも暗い過去があって、それは何かということでも引っ張るのだが、これは案外あっけなかった。それにしても笹沢左保30歳ごろの作品、文章がとても達者である。本作は直木賞候補にも挙がったようだ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「ひどミス」を読んだ人が勧めていたので。 1961年、『宝石』に連載され、すぐ単行本化されたもの。 新幹線開通前で、大阪から帰る特急の窓から、若い女が真鶴あたりで海へ落ちる男を見た。 それが実は実の父で、というところから、その父がいくつもの生命保険に入っていたということで、生保会社の男が探偵役になって調べて行く。 特に意外な展開ではないが、雰囲気がいい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
カッパノベルズでの初版は1961(昭和36)年。 まだ新幹線が開通しておらず、サラリーマンたちが東京〜大阪間の出張の往復に、東海道線を走る急行列車を利用していた時代の作品である。 そうした時代だからこそ、列車がカーブでスピードを落とす瞬間、窓の外に見える岬の上から、人が転落するのを目撃する、というシチュエーションが成り立つ。 と書けば、お分かりの方も多いと思われるが、これはミステリでは極めて定番的な題材の作品である。 同じようなシチュエーションを、たとえば草野唯雄は『山口線“貴婦人号" 』で描いている。 あちらは、大胆な物理的トリックを駆使した、いかにも草野唯雄らしい強引な展開が微笑ましい怪作であった。 こちらは、作者本人も「謎とロマンの融合」を目指していた時代の代表作として自負していた作品であり、スタンダードな傑作。 犯人が仕掛けるトリックは、実はきわめて単純で、一般人でも実行可能なものである。 しかし、全篇にわたって、さりげなく、かつ緻密に張られた伏線が回収されなければ、事件の全体像は明らかにされない。 その展開が見事である。 本作は、単にストーリーの表面だけ追うなら、今となっては「良くあるシチュエーション」であり「犯人が初めからバレバレ」であり「二時間ドラマで何度も見たストーリー」でしかない。 だが、古典とはそういうものであり、たとえばクリスティの『アクロイド殺人事件』にしても、今となっては「良くあるネタ」にすぎないのだ。 本作は、綾辻行人や有栖川有栖の世代の「新本格」に影響を及ぼした、1960年代版「新本格」の代表作であり、日本の戦後のミステリでは古典に属する名作である。 そろそろ、どこかの文庫から、復刊されてほしい。 (というか、光文社文庫は、かつてカッパノベルズで出ていた本作や『炎の虚像』や『沖縄海賊』等々を文庫で復刊するべきだ) | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!