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少女には向かない職業
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少女には向かない職業の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.02pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全38件 21~38 2/2ページ
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2005年に出た単行本の文庫化。 このひとはゆっくりと進化している。もともとは文章に独自の叙情性があるだけの作家だったと思う。ストーリーとしての新しさや魅力といった点には、明らかに問題があった。しかし、その部分も徐々に改善されていく。本書などは、その過渡期を如実に示している一冊だろう。ミステリ読みなら、途中で何となく見たことのある展開だなあと思い始めるわけだが、最後はきちんとひねってある。なかなか鮮やか。 この人の文章の魅力は「悲しさ」にあると思う。それに調和したストーリーをもってこられるようになった点にも成功の理由があるだろう。印象深い一冊であった。 | ||||
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わずか270Pの薄い文庫本だ。 読みやすい文章というのもあってあっという間に読み終えることができる。 しかし、薄い小説なのに大きな大きな奥行きがある。 夢中になって読み進め、読み終わった後、自分の身の回りに広がった 小説世界の大きさに圧倒された。 物語の世界からまったく抜け出せなかった。 小説を読むとき、私はたいてい主人公に感情移入して読んでしまう。 しかし、今回はいつも以上に物語にどっぷりと浸りきってしまった。 それぐらい迫力のある世界だった。 どうしようもない展開で道を一歩踏み外してしまう主人公の恐れ、おののき。 自分にはどうしようもできない「負」の境遇で 辛い気持ちを一生懸命、抱えている主人公。 しかし、彼女は誰にもSOSを発信できない。 彼女は自分の辛さを誰にも打ち明けない。押し隠す。 しかし、取り繕っていた「日常」はあっけなく破綻する。 破綻した後でさえ、誰にも気付かれないように、必死に「普通の世界」に 戻ってこようとする主人公のあがき。 そういったヒリヒリした感情を、まるで自分が体験しているかのように、 身近に感じることができた。迫ってくるような感覚だった。 そして、主人公に対して、必死に「普通ではないオンナノコ」を 演じてみせるもうひとりのヒロイン。「普通ではない」ところを 見せて主人公の気を惹き、自分の状況に気付いてもらおうとする。 そんなまどろっこしい方法でしかSOSを発信できないもうひとりのヒロイン。 この小説はまさに彼女たちふたりの「壮絶」な闘いの記録。 小説の奥行きと迫力にページ数は関係ない、と思い知った。 | ||||
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直木賞受賞で完全にブレイクした桜庭さんの本です。 この方の本は、これが初読みでしたが、素直に面白かったので他のも少しずつ読んでいこうかと思います。 「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人を殺しました」 そんな衝撃的な独白で幕を開ける物語は、この葵という少女と、クラスメートの宮乃下静香という少女の二人の物語です。彼女達は夏休みがくるまでにお互いをそれと意識したこともないくらい、まったく親しくもなかったのですが、ある事がきっかけで急速に仲良くなり、そして二人で殺人を犯してしまいます。果たしてどんな経緯で、どんな目的で、どうやって少女が殺人を犯すのか。それは読んでいただくしかないですが、この作品、どうぞ最後まで読んで下さい。 というのも、途中まではいかにもな少女ものなので、人によっては投げたくなるかも知れませんので。たぶん、好みの問題ではあるのですけれど、こういう少女特有の心の動きとかが苦手だという人の話もよく聞くのであえて書いておきますが、もしそうでも最後まで読んで下さい。 途中まではこの小説、わりあいとオーソドックスなジュヴィナル小説というかライトノベル的な雰囲気で、少女期毒との屈託や親への反抗(彼女の場合は、「大人は誰もわかってくれない」という言葉の裏にそれだけの重い生活があるのだけれど)を描いていくのですが、それが後半からまた一段違うミステリ物語へと変貌していくからです。一粒で二度美味しいというか、前段後段で二つの小説を味わっているかのようなそんな感覚が味わえます。連続しているんだけれど、二つの味わいがここには同居しています。 中学生には中学生だからこそ感じる、そして逃げようのない苛立ちやそれをはねのけるだけの力がもてないことへの苛立ちが確かにあります。自分たちがかつてそうだった地点というのをくっきりと思い出させてくれる描写を著者は丹念にしていきます。シリアスな物語の中でも、それでも学校での友達づきあいがだらだらと続いたり、仲間うちでのつきあい方に一喜一憂したりといった今どきの現実をきちんと描いてくれます。だからこそ、そんな中でこの女の子たち二人がやらざるを得なかった、自分というものを肉体的にも精神的にも守る為にやったことを、ストレートに自分が中学生のときだったらという気持ちで読む事ができますし、たぶんある部分ではなんだかわからないけど感動したり応援したくなったりすると思います。 内容に触れてしまうのでこれ以上書けませんが、表面的な謎解きや日常と非日常のアンバランスを楽しむというよりは、少女特有の世界、彼女達から見た世界でしかありませんが、そういうものを感じて自分の気持ちがあっちこっちへさまようのを楽しむような物語です。 。。。今回のレビューは自分的にもうまく伝わらないだろうなぁ、、、というのがよくわかっていますが、本当にまぁ「とにかく読んでみて。そしたらわかるから」というお話です。でも、ひょっとすると女性が感じるものと男性が感じるものは全然違うかも、と思わせる小説でもありました。 | ||||
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〈不幸をウリにするなんて下品だってこと。(中略)不幸は、 口に出したら自分の魂を汚してしまう気がするんだ。〉 近年の小説の登場人物は、隙あらば、自分のトラウマを 振りかざし、「不幸自慢」をしているような印象があります。 本作の主人公・大西葵は、本能的にそういった 傾向の卑しさや虚しさを知っているといえます。 無職でアル中の義父からはDVに遭い、親であるより、 女であることを優先する母には重荷に思われている葵。 しかし、そんな状況を葵はありのままに受け入れ、特に親に対して、 怨嗟の念を募らせることもなく、なんとか日々をやり過ごしていきます。 自分だけが特別不幸なのではないし、他人に相談したところで 現実が変わるものではないと悟っていたからでしょう。 また、本作におけるゲームの扱われ方も、じつに暗示的。 葵にとってゲームは、鬱屈する感情を発散させる安全弁であると 同時に、淡い想いを寄せる幼なじみとの絆でもありました。 その象徴ともいえるメモリーカードを、 義父はあっさりと握りつぶしてしまいます。 それはそこに宿ったデータという名の「命」や、 幼なじみとの思い出まで破壊されたことを意味します。 俗耳に馴染む「ゲームをしていると命に対する想像力を失う」 という紋切り型の批判に対する皮肉と挑発といえるでしょう。 本作は、深刻なテーマが扱われていながら、重さを感じさせず、決して ハッピーエンドとはいえないラストでありながら、読後感も爽やかです。 それはひとえに葵のどこかとぼけたお茶目さと、 その精神の健全さに負うところが大きいと思います。 そんな葵が、「時代」にサクリファイスとして選ばれて しまうのは、ある意味、必然だったのかもしれません。 | ||||
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〈不幸をウリにするなんて下品だってこと。(中略)不幸は、 口に出したら自分の魂を汚してしまう気がするんだ。〉 近年の小説の登場人物は、隙あらば、自分のトラウマを 振りかざし、「不幸自慢」をしているような印象があります。 本作の主人公・大西葵は、本能的にそういった 傾向の卑しさや虚しさを知っているといえます。 無職でアル中の義父からはDVに遭い、親であるより、 女であることを優先する母には重荷に思われている葵。 しかし、そんな状況を葵はありのままに受け入れ、特に親に対して、 怨嗟の念を募らせることもなく、なんとか日々をやり過ごしていきます。 自分だけが特別不幸なのではないし、他人に相談したところで 現実が変わるものではないと悟っていたからでしょう。 また、本作におけるゲームの扱われ方も、じつに暗示的。 葵にとってゲームは、鬱屈する感情を発散させる安全弁であると 同時に、淡い想いを寄せる幼なじみとの絆でもありました。 その象徴ともいえるメモリーカードを、 義父はあっさりと握りつぶしてしまいます。 それはそこに宿ったデータという名の「命」や、 幼なじみとの思い出まで破壊されたことを意味します。 俗耳に馴染む「ゲームをしていると命に対する想像力を失う」 という紋切り型の批判に対する皮肉と挑発といえるでしょう。 本作は、深刻なテーマが扱われていながら、重さを感じさせず、決して ハッピーエンドとはいえないラストでありながら、読後感も爽やかです。 それはひとえに葵のどこかとぼけたお茶目さと、 その精神の健全さに負うところが大きいと思います。 そんな葵が、「時代」にサクリファイスとして選ばれて しまうのは、ある意味、必然だったのかもしれません。 | ||||
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中学二年生の二人の少女、葵と静香。 たった13歳で、独立できるほどの能力はまだない。自立できるほどの権利も与えられていない。周りが思っているほど子どもではなく、しかし、本人が思うほど大人にもなれていない。 しかし、現実や大人は、時に容赦がなく、太刀打ちができなくなりそうな絶望感の中で、子どもは子どもなりに戦っているのだ。死に物狂いで。 この小説の秀逸さは、凶刃を振り下ろすまでの過程にあるのではない。追い詰められて殺人者になった、その後の心を描いているところが素晴らしい。 からだが勝手に死んでしまいそうなほどの恐怖や後悔が、少女に凶器をもたせて喜ぶ悪趣味から、物語を救っている。しかも、説教臭くなく。 少女には向かない職業があるのだ。だから、凶刃を振り下ろしてくれるなと読み手に向かって戒める祈りを感じた。 | ||||
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「少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに」(冒頭より) 踏み越えてはいけない線を思いがけず越えてしまった、少女の物語。 冒頭の告白にうまくひきこまれてしまって、つい手にとった小説。 この物語のいいところは、少女がぶれて崩壊まっしぐらになるのではなく、あくまで自分のしたことに驚き、恐怖し続けているところ。 キレて殺人に開き直ってしまったら、きっとそっちの方が楽なのかもしれない。 けれど、主人公の少女は振り切れてしまいそうになりながらも、踏みとどまる。 越えたらもう戻れない線の上を、行ったりきたりしている少女の魂を追って読むのがおもしろい。 心の中に秘めた暴力性を、弱い者にぶつけてしまう揺れ動きなんかは上手だなあと思った。 ただ、中学生女子は「夜のしじま」なんて表現は使わないと思う。 とはいえ、おもしろかったと思うので、軽く読むのにおすすめ。 | ||||
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「中学二年生の一年間で、あたし、大西茜十三歳は、人をふたり殺した。」と言う、衝撃的な書き出しで、どんな本を手にとってしまったのだろうと、ちょっと躊躇を覚えます。 でも、最後まで読んで見ると、確かにこの感覚なんですね。この一文で、この小説のすべてが言い表されているように思います。 親切な刑事が言います。 「きっと、ぼくらの時代の貧しさや焦燥感とはちがうなにかに、じっと耐えている世代なんだろうねぇ、君たち若者は。無理をせずに早めにSOSを出してもらえれば、大人としても助かるんだけどなぁ」 読んでいると、確かにこの感覚なんです。 主人公の茜は、母親とアル中で心臓病の義父と一緒に暮らしています。場所は、下関の沖合いの島です。 閉塞感のある環境で、アル中で小遣いまで盗んで飲んでしまう義父との暮らし、母親は子供への愛情を持たず利己的です。こんな環境で育ったら、捻くれた性格になってもおかしくないでしょう。でも、学校では外見的には冗談を連発し道化を演じています。 そんな彼女が、静香に後押しされるように「父親殺し」をしてしまいます。 でも、そこに至る悲壮感のようなものを感じられません。ただただ考え方の視野の狭さは感じますが、そこに絶望感や悲壮感のようなものはなく、彼女の好きなゲームのように衝動的にスイッチが切り替わって、人を殺してしまいます。 読んでいて、刑事と同じ心境になってしまいます。 現代の少女たちの感覚はこんなものなのでしょうか。私たちには、理解できない世代です。 | ||||
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「あたし、大西茜13歳は、 中学2年生の1年間で、 人をふたり殺した。」 この帯のコピーを見た時には、また最近流行の陰惨な話か、あるいは十代の自己陶酔話かと思ったんですけど、本編の書き出し最初の3行に 「中学2年生の1年間で、あたし、大西茜13歳は、人をふたり殺した。 夏休みに一人、それと、冬休みにもう一人 武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつのときはバトルアックスだった」 とあって思わず吹いた。 戦斧て。 まぁ事実関係だけ追えばこの書き出しの通りの内容なんですけど、不思議と印象に残るのは登場する少女たちの健全さで、その、肩透かしな感触が心地よかった。 そして健全であるが故になんだか肝心な所でカッコがつかない。 友達とたむろしててもしょせん狭い街の中のマックかゲーセンだし。 ゴスロリファッションでキメても世間の些事を達観しきれるわけでもないし。 男子はマンガみたいに良いタイミングで優しい言葉をかけてくれたりしないし。 人を殺しちゃったら死ぬほどブルっちゃうし−−−。 そのカッコがつかない情けなさというのが実に中学生らしいというか、万人の中学時代に共通する普遍的な感覚であって(高校生とかだとしっかりしてるキャラクターならそれなりにカッコついてしまう) 、それが殺人という特殊な題材を扱っていても読者が身近な感覚を維持しながらすんなり読んでいける理由なんだと思いました。 正直コピーにあるような「少女の凄絶な“闘い”の記録」だとか「切ない純粋な殺意」なんてものを期待すると、肩透かしをくらうと思います。「ちょっと変わった題材の青春ノベル」ぐらいを想定して気軽に読んだ方がいいですよ。 | ||||
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少女七竈で好きになった桜庭一樹先生の初の単行本ということで購入した小説です。 この小説がミステリかどうかというのはありますが、広い意味でのミステリ小説にあたると私は思います。私が読んだことのあるミステリ小説では、ジェームス・ケインの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の構成に近いものです(郵便配達がミステリかというところもありますが)。犯人は中学生なのでトリックは偶然によるものだったり欠陥だらけだったりしますが、なかなか面白い方法でした。 少女には向かない職業のもう一つの骨子として少女の描写があります。中学生の時期は自分ではしっかりしていると考えていてもどことなく不安定で、人間関係や環境に強い影響を受けてしまいます。そういった弱さや流されやすさを主人公の少女を通して書かれていて、殺人という結果へと流れていくにもかかわらず、うなずいていしまう箇所がいくつもありました。 ミステリとしては一風変わった小説ですが、少年少女時代の一つの側面を書いた青春小説としても楽しめるものかと思います。 | ||||
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山口県下関市の沖合の孤島に住む中学2年生の葵。学校ではおもしろキャラに専属するみんなの人気者的存在。そんな彼女の家庭環境とは。病気でアル中の義理の父。そんな彼の存在に心苦しめられていた。葵は図書委員の静香の存在を気にしはじめる。そして二人は独特の世界に入り込みある計画を催し始めるのであった。こういった普通の女の子にある裏と表。本当の表の自分とはいったいどっちなのだろう?と思うことがある。客観的にみることはできるがもし自分がその環境で絶交のタイミングであったらどうだろう?それはその時になってみないとわからないが、考えさせられるものがある。葵と静香の危ない友情 切っても切り離せない関係というのはこのことであろう。絶対に裏切れないのである。そのことを犯してしまってからの微かな心境の変化。そして友情関係。ページ数は決して多いとは言えないが、より濃い内容になっている。現代日本の「罪と罰」甘く切ない、悲しい彼女達の半年間の日記である。 | ||||
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誰かから無条件で信じられている、愛されている人間は、それをよりどころにできる限り、何があっても道を誤らない。そういう気がする。葵だって、母親が彼女を見続けていてくれれば、サチが信じてくれれば、それを社会との接点にして、何があっても揺らがない視点を持ち続けられた気がする。 悪魔の誘惑はどこにでもある。何がきっかけでそれが表出するかは分からない。その時に、揺らがないでいられるかは、よりどころがあるかどうかにかかっている気がするのだ。 | ||||
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きっと、葵と同じことをしていたんじゃないだろうか。 静香――孤独な友達の期待に精一杯応えようとしたんじゃないだろうか。 誰かのために、と理由をつけて強くなれるのは、性別で言えば女の傾向だと思う。 友達のために、親のために、夫のために、子供のために…… 誰かのために強くなって、自分でも思いがけないくらい強くなって、 その結果、孤独な自分では考えられないようなことも簡単にしてしまう。 女は最強。 誰かが自分を信じてくれる、期待してくれる。だから頑張れる。 逆に言えば、孤独な女は強くなれない。孤独な少女は強くなれない。 人を支えることで強くなれる。少女とはそんな生き物。 | ||||
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まさに桜庭先生らしい作品だと思います。ミステリに分類されるジャンルのようですが、ミステリといって即座に思い浮かべるようなお話ではありません。いかにして犯人は殺人に至ったか。それを犯人の視点で描いた作品です。個人的には好きですが、好き嫌いは分かれるのではないでしょうか? 一度桜庭先生の他の作品を読んでみてから、購入を検討した方がよいと思われます。 | ||||
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私はこの本で、初めてこの著者の本を読みました。 だからこの本だけで見た、感想になりますが、悪くないと思います。 山口県の島という場所で暮らす、ちょっとだけ目立ってる、けれども家では意外と問題を抱えている中学2年の女の子の話。 そこにほのかな恋愛とか、女の子特有のあのドロドロなのかさっぱりなのかわからない友達関係とか、最近ではそう珍しくない家族問題が入り混じり、事件として『友人』からけしかけられた『殺人』が絡んでくる……。 簡単に言えばそんな感じに見受けられました。 ただ、その友人がゴシックロリータである必然性がちょっとよくわからなかったです。奇抜という意味でそうしたかったのかな……。 主人公には意外と感情移入できました。肝心なときにはどもり癖がでてしまうとか、そういうところはわかるなぁと。 でもクライマックス。今まで動揺なんて見せなかった友人の意外な一面がでてきたし、主人公の毒が溢れて、まあそれはそれで良かったです。 結局それで終わるかー……とは、正直本当に思ったんですが。 とりあえず、すぐに読める類の本です。 この年末にちょっと読みたいと思った時に、お勧めかな。 | ||||
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作者の桜庭 一樹は「推定少女」以来、多感な思春期の少女が自分を取りまく世界に対して闘いを挑む物語を発表し続けていて、本作「少女には向かない職業」もそうした一連の作品の一つです。好きな作家の小説を追いかけていると、時として堰を切ったように「書きたいもの」が溢れ出してくる時があるのだなと感じるときがありますが、今の桜庭 一樹もそんな感じなのかもしれません。 本作はいわゆるライトノベルのレーベルではなく、東京創元社のミステリ・フロンティアの一冊として発表されました。ミステリ的な分類で見れば「巻き込まれ型犯罪小説」というか、ごく普通の登場人物が罪に手を染めてしまう物語です。国内外の同系列のミステリに比べると本作は淡泊でコンパクトな感じです。もっと殺人を犯してしまった罪悪感、焦燥感、恐怖感をみっちり書き込んで、「殺人者」に変容してしまう過程を見せていくやり方もあったでしょうし、実際そうした点について「薄い」「浅い」という批判もあるようです。ですが僕は本作のある種の淡泊さは、あくまで「普通の少女」の物語であるために意識して選ばれたものだと思いますし、あえて「向こう側」に落ちこんでしまうサイコ系な展開を避けている点こそが作品の魅力であり、作者の資質であると感じます。本作では「少女」を描くために「殺人」という触媒があり、その結果ミステリとしての枠組みがあるのでしょう。 作者は上述した「推定少女」をはじめとして「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」「ブルースカイ」「荒野の恋」など小説としての趣向は変化しながらも、一貫して「少女」を描き続けていますし、私も作者が見せてくれるものに期待しています。 | ||||
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である。全体的に見れば良質な作品だと思う。 そりがあわない義父。友達にけしかけられて、その義父を殺してしまう主人公。主人公は今度は友達から、殺しを手伝えと言われる。 という、話で、そこまではOKであり、後半のミステリチック名部分もOK。ただ、最後が尻すぼみ。消化不良かな。キーマンであったはずの幼馴染の男との関連のずいぶん中途半端。こういう話を書くと、どうしても「青の炎」に勝てないのが辛いところか……。 いや、それにしても今までのきずいてきた少女たちの関係が、最後の最後で逆転する瞬間は鮮やかで、手放しで褒めたい。主人公のキャラも立っていていいのではないか。 しかし、主人公はものすごいヒーロー願望を持っている。誰かを殺すことで友達の役に立ちたいと思っているはずであり、その部分をもっと掘り下げて書けばもっと良い作品に仕上がっていたのではないか。 | ||||
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「これは、ふたりの少女の凄絶な《闘い》の記録。」内容を紹介するなら、このキャッチだけでいいと思います。それ以上は無駄になってしまい、それ以下ではあまりに淡白すぎる。まさしく《闘い》でした。田舎(島)に住む女子中学生が道を一歩一歩踏み外してしまう様を精緻に描写した前半が素晴らしいです。「ああ、そうだなぁ」と思える自然な描写に、彼女たちに見る危うさ、胸に突き刺さるような痛さ。とても言葉では表現しきれないほどの雰囲気をもった、超一流の描写力です。後半、一本道になってしまったところはあまり好きじゃないけれど、見事に少女の葛藤が描かれた傑作です。あまりに恐ろしくあまりに痛々しいラストを味わった私は、大袈裟ではなく、しばらく唇が震え、恐怖と痛みで眠ることができませんでした。それでいてなお、何かをしなければならないという衝動にからせる、そういう物語でした。宮乃下静香の告白や物語のそれから、プロローグの位置付けなど、疑問に思ったことを突き詰めていきたいという気持ちもあります。そういうものが、この物語に奥行きを持たせているのだと思います。 | ||||
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