少女には向かない職業



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初公開日(参考)2005年09月
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長編小説

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少女には向かない職業 (創元推理文庫)

2007年11月30日 少女には向かない職業 (創元推理文庫)

あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した…あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから―。これは、ふたりの少女の凄絶な“闘い”の記録。『赤朽葉家の伝説』の俊英が、過酷な運命に翻弄される少女の姿を鮮烈に描いて話題を呼んだ傑作。 (「BOOK」データベースより)




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少女には向かない職業の総合評価:8.02/10点レビュー 48件。Bランク


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(7pt)

思春期の万能感と無敵感を武器に少女たちは悪へと立ち向かう

東京創元社が新しいミステリレーベル、ミステリ・フロンティアを創設し、それまで聞いたことのない作家たちの作品が累々と出され、あっという間に『このミス』や『本格ミステリ・ベスト10』が週刊文春のミステリベスト10などの各種ランキングを騒がせるようになり、一躍ミステリ読者注目の叢書となった。
伊坂幸太郎氏、米澤穂信氏、道尾秀介氏など今のミステリ界にその名を連ねる新しい才能が次々とこのレーベルからは出ていったが、それまでライトノベルの分野で作品を発表していた桜庭一樹氏が初めてミステリ界でその作品を発表したのが本書である。そして本書をきっかけにミステリ界にその名が知られるようになり、それ以降の活躍はご存知の通りである。

物語の舞台は山口は下関市の沖合にある離島で下関とは橋で繋がっており、島の人々は漁業で生計を立てる者がほとんどで、中学までは島の学校に通い、高校からは下関市の学校に通うのが一般的になっている。そして橋が出来たことで島民たちは中学生たちも含め下関市にショッピングや娯楽を愉しみに出かけるのが通例で、また島民の流出が始まっており、さびれかけている。最近できたマクドナルドが老若男女問わず島民たちの憩いの場となっている。

そんな地方のどこにでもある町に住む女子中学生2人、大西葵と宮乃下静香の、中学2年に体験した、青くほろ苦い殺人の物語。この2人はそれぞれの家庭に問題を抱えている。

美人でかつて東京で働いていた母親を持つ大西葵は学校ではいつも周囲を笑わせるムードメーカー的存在だが、父親を5歳の時に病気で亡くし、再婚した漁師の義父は1年前に足を悪くして以来、漁に出なくなり、毎日酒浸りの日々。もはや酒を飲むか、酒を買いに行くか、寝るかしかしない大男で狭心症を患っている。従って生計は母親の、漁港での干物づくりパートで賄っている。葵はこの義父がとても嫌いで死ねばいいのにと思っている。

宮乃下静香はその島の網元の老人の孫で従兄の浩一郎の3人暮らし。中学生になった頃から島に住み始め、それまでは祖父に勘当された母親の許で暮らしていたが、祖父がその行方を捜していたところを見つけられて引き取られることになった。彼女の母はその時既に亡くなっていたため、彼女のみ島に帰ることになった。そして浩一郎は祖父から嫌われており、なんとかなだめてその莫大な遺産を相続しようと画策している。そして遺言状が書き替えられ、遺産を相続することになった時こそ、自分が浩一郎に殺される番だと恐れている。

バイトで稼いだ小遣いをゲームに費やす大西葵、読書家でいつも鞄がパンパンに膨れ上がるほどの本を持ち歩いている、図書委員の宮乃下静香は作者本人の分身のように思える。
桜庭氏がかなりの読書家であることが知られており、また別名義でゲームシナリオも書いていることから恐らくゲーム好きであろうことが窺える。

この2人のうち、語り手の大西葵を中心に物語は進むわけだが、これが何とも実に中学生らしい青さと清さを備え、あの頃の自分を思い出すかのようだった。

私は男だが、彼女たちの女子中学生の世界観はそれでも理解できる。子供だった小学生から、肉体的・精神的にも大人へと変わっていくこの年頃の複雑な心境、そして理解されたい一方で、大人を嫌う、愛憎入り混じった感情、そしてもう日常を生きるのに精一杯で我が子を表層的にしか捉えていない大人の無理解に対する憤りなどが織り交ぜられている。

少女たちの日常は虚構に満ちている。
それは辛い現実から少しでも忘れたいからだ。
そして少女たちは今日もセカイへ旅に出る。

中学生になった彼女たちはバイトして自由に使えるお金も増え、そして身体も大きく成長し、自転車でそれまで行けなかった距離も延々とこぎ続ける体力を持ち、それまで親の付き添い無しでは乗れなかった公共交通機関も、恐れることなく、乗れるようになる知識を備えている。
それまでできなかったことがどんどん出来てくる彼女たちは世界がどんどん広がるのを実感し、万能感と無敵感を覚えていく。

一方で小学生までは一緒にゲームで遊んでいた男子もからだの発育と共に大人びていき、異性を意識し出して、これまでのように話しかけることが出来なくなる。特に女性の方が精神面の成長は早く、男性は遅いので、男子はいつものように話しかけるのに対し、女子はいつの間にかできた心のハードルを飛び越えて、決意を持って話さなければならないようだ。

この辺は私もなんだか思い出すなぁ。
小学生の頃によく話していた女子に中学になって一緒のクラスになったので以前のように話しかけようとすると素っ気なく、無口になってしまっているのに、何スカしてんだろうと気分を悪くしたが、あれはもしかしたら大西葵が抱いていたような異性を意識する心のハードルが合ったのかもしれない。

また学校では明るく振る舞う大西葵が家では母親と上手く話せず、無口であるのも思わず同意してしまう。
既に中学生は社会性を備えてTPOに合わせて仮面使い分けているのだ。友達用の自分と家用の自分。それはどちらも自分でありながら、作った自分でもある。そんな自分を大人たちは知らない、昔は自分も中学生だったのに。

そしてそんな仮面がふと外れて巣の自分が現れる時、ずっと同じように続いていくと思っていた友人との関係に罅が入る。他のことに気を取られて生返事したり、メールした後にその内容と違うところをたまたま見られたり。そんな他愛もないすれ違いで彼女たちの友情は壊れたりする。そんな脆さを含んだ世代だ。

こうでなければならないと小学生の頃に叩き込まれたルールを愚直なまでに守り、一方でそれを逸脱することに面白みを感じる、矛盾を内包した彼らは自分の行為で生じる矛盾を許せはするが、他人の矛盾行為は許せない。なぜなら万能感を手に入れた彼ら彼女らは自分こそが正義だと思うからだ。相手に合わせることを知りながらも、一方で自分の規範から外れた者を排除することを厭わない純粋であるがゆえに不器用な心の在り方が、全編に亘って語られる。

夏休みの終わりはまた日常の始まり。非日常の毎日だった夏休みに掛けられていた魔法は不思議なほどに解ける。
ゴシック趣味の服装をした宮乃下静香は再びクラスの目立たない女子となり、殺人幇助をした彼女を恐れていた大西葵は次第に自分を取り戻していく。

学校という基盤が少女たちをまた中学生に引き戻す。日常と非日常を繰り返す。それは非日常のダークサイドを日常の学校生活で浄化しているかのようだ。

学校生活という現実から逃れるためにゲームや読書と虚構世界の中を生きる彼女たちにとって殺人自体もまた虚構の出来事として捉えることで消化する。だからこそ宮乃下静香は古今東西の物語をヒントにした殺人シナリオを作り、大西葵は殺人をテレビで観たマジックとゲームに出てくる武器バトルアックスで実行する。それはどこか彼女たちにとって白昼夢の出来事。
しかし違いは身体性、肉体性があること。

そして彼女たちの生身の身体が傷つき、血を流すとき、ゲームは終わりを告げる。世界に絶望した自分たちが血を流すことで生を意識したのだ。
ゲームの世界ではHPという数値でしか見えなかった敵を斃すということ、傷を負うということが実際に血を流すことでリアルに繋がったのだ。

つまりそれは彼女たちが生きていたセカイからの脱却。
本書は自分たちの障壁となる人物を排除することでリアルを体験し、そしてセカイから世界へ向き合うことを示した物語なのだ。

義務教育という庇護下に置かれた状態で自分を獲得していくのが中学生活とすれば、そこに何を見出すかはそれぞれによる。

大西葵はゲームの世界に逃げ込み、ネットワークで東京や大阪といった中心都市に住む人たちとバトルを挑むことで自分の居場所を実感する。
しかしそれも虚構に過ぎなかった。彼女が得ていた万能感は限られたセカイの中での物でしかない。

宮乃下静香は本の世界、物語の世界に没入することで知識を得、それを実行に移すことにする。大西葵という自分と価値観を共有できると確信した同志を引き込むために彼女は今まで蓄積してきた虚構の物語を自分流にアレンジし、そして本で得た知識と方式を自己薬籠中の物にして、葵を引き込んで未来を拓こうとする。
しかしそれも現実に照らし合わせれば、ただの物語好きな子供のゲームに過ぎなかったことを思い知らされる。

彼女たちが成し得た事、大西葵が成し得たことは偶然の産物に過ぎない。しかしそれを成し得たことで彼女たちにはもう一度同じことが出来ると錯覚した。

彼女たちは失敗を経験することでまた一歩大人の階段を登ったのだ。
これは彼女たちにとっては非常に良かったことだと思う。もしこの失敗がなければ彼女たちの虚構の万能感はエスカレートしていっただろうから。

現実の厳しさに耐えるため、敢えて虚構に身を置き、それに淫することで自らの居場所と万能感を得た彼女たち。それは思春期を迎える我々全てが経験する通過儀礼のようなものだろう。

そこから脱け出して現実を知る者、未だに抜け出せず、虚構の主人公となろうと振る舞う者。
今の世の大人は大きく分ければこの2種類に分かれているように思える。

彼女たちが認識した世界は実に苦いものだった。これはそんな少女たちの通過儀礼のお話。
リアルを知った彼女たちは今後、一体どこへ向かうのだろうか。
もし彼女たちが虚構に生きることを望んでいたのなら、確かにこの殺人計画は「少女には向かない職業」だ。


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Tetchy
WHOKS60S
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No.47:
(4pt)

「青春(ミステリ)小説」

中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。

 このショッキングな書き出しから始まる物語は、ミステリでありながら青春小説でもある。そしてジャンルは、ガール・ミーツ・ガールだ。
 主人公であり、小説の語り手でもある「大西葵」は学校では友だちにひょうきんにふるまっているが、家庭では義父の暴力と実母の無関心に心を痛めている。そんな葵は、中学二年生の夏休み、学校では眼鏡をかけたおとなしいクラスメイトの「宮乃下静香」が学校以外ではゴシックロリータに身を包んだミステリ好きの少女だと知る。

 舞台は山口県下関市の沖合の島。少女二人を包んでいる閉塞感。とても残念なことに、ストーリーは書き出しのまま進む。読んでいてとても苦しい気持ちになる。ただ、二人の少女はどこか明るく、そしてどこか愚かだ。それが魅力的にまぶしく感じられるがゆえに、不幸になってほしくない、と念じつつもやはり悲劇に陥ってくる。

 この本も中学生や高校生のときに読んでいたら、ある人によっては人生の宝物のような一冊になっていたと思う。「リアリティがない」と断じるのは簡単だけど、「中学生のリアリティってこんなもんじゃない」という問いかけでもあるだろう。
 こういう「少女の語り口」で描かれる小説は「ちょっとすべってるなあ」と感じてしまうことがあるけど、桜庭一樹の「少女口調」にはすばらしいものがあった。
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)より
4488017193
No.46:
(5pt)

普段は読書をしない、そんな人間にも

たぶん考え方が変わるよね ファンとしても大好きな桜庭一樹らしさがたっぷりだし なぜ桜庭一樹は「少女」を描くのがこんなにうますぎるのだろうか
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)より
4488017193
No.45:
(5pt)

文章の攻撃力が高い

最後の主人公の言葉の後にどうなってしまうのか、わからないもどかしさを抱えたまま終わりました。
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)より
4488017193
No.44:
(4pt)

少女の心の闇

家庭にトラブルを抱える主人公は,ミステリアスなクラスメートに付き合うようになり,
トラブルの元である義父を手にかけてしまう.
その協力の見返りにもう1つの殺人を共用されるが・・・.

主人公の義父への憎悪と,それを友人たちに知られたくないという
その年代特有の心理にリアリティがある.
死んでほしいという願望と,未必の故意で殺してしまうプロセスは読み応えがある.

一方,後半部分はやや真相が透けて見えてしまい驚きは少ない.
ミステリーらしいどんでん返しを狙うより,
主人公の贖罪意識や共犯者から追い詰められる心理を描いたほうが
よかったような気がする.
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)より
4488017193
No.43:
(3pt)

kindle版に関して

内容に関しては別のレビューを参考にしてください。

kindle版では解説がついていないので残念でした。
買う前にわかるようにしてもらえると有難いです。
解説込みで読みたい方は文庫版をお勧めします。
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)より
4488017193



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