ぼっけえ、きょうてえ
評判
ぼっけえ、きょうてえの評価:
3.99/5点 レビュー 176件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全272件 141〜160 8/14ページ
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3.99/5点 レビュー 176件。 C ランク
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著者の岩井志麻子本人が岡山県の出身のせいか、全編セリフは岡山弁で語られているのだが、ローカル色が濃く、よりいっそうおどろおどろしい。
松本清張の書いた『闇に駆ける猟銃』にもあるように、地域差はあるが、昔の岡山県には陰惨な習俗や貧困による退廃的な環境を余儀なくされていた状況があった。そんな中、民話とも怪談ともつかぬ伝説が、人々の口から口へと伝わっていったのかもしれない。あるいは著者が、過去に起きた摩訶不思議な事件をもとに、このような背筋の凍りつく怪談を創作したのかもしれない。
いずれにしても、フィクションとノンフィクションの狭間を漂う絶妙な筆力に、読者は思わず引き摺り込まれてしまうのだから怖い。
さて、表題作の『ぼっけぇ、きょうてぇ』だが、この作品は女郎宿の女が、客と事に及んだ後、寝物語として自分の身の上話を訊かせるという語り手の手法を取っている。
岡山県は津山の出身だという女郎は、貧乏人の子として生まれ、幼いころは飢えとの闘いだったと話す。母親は産婆を営んでいたが、それも間引き専業で、飢饉の年に孕んでしまった妊婦の腹から引きずり出す役目を生業としていたと。赤子を引きずり出す前に、まず妊婦には糞を出させる。その糞をひったタライの中に、引きずり出した子も投げ入れる。この女郎は幼いころ、そんな産婆である母の手伝いとして、妊婦が暴れないよう手足を押さえつける役目を果たしていたのだと話す。
これほど残酷な行為に及ぶ前に、まず子を作らないように努めるべきだと現代人なら考えるだろう。だが、飢えて痩せこけた体でも、人は男女の情交を止められないのだ。これが人の業というものなのだ。
当時、岡山県の北部は生産的にも不毛に近い山岳地帯で、その土地柄ゆえ非常に貧しかったようだ。そういう背景も踏まえて、この怪談を読むと、よりいっそう恐怖が増す。
この作品のテーマは、ズバリ、人の業であろう。怪奇現象とか幽霊とか、あるいは悪魔などそれはもちろん怖いだろう。だが何よりも怖いのは、人間なのだと訴える。それこそが真理だからだ。
『ぼっけぇ、きょうてぇ』は、日本ホラー小説大賞を受賞した正真正銘のホラー小説だが、その一方で、山本周五郎賞も受賞している。怪談とはいえ、現代の怪奇文学にまで到達した優れものなのだ。