(短編集)

ぼっけえ、きょうてえ

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評判

ぼっけえ、きょうてえの評価:

3.99/5点 レビュー 176件。 C ランク

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全36件 21〜36 2/2ページ
No.16
(3pt)

優れたリアリティが容易に怪異まで受け入れさせる忌憚話集。

岡山県北の津山や瀬戸内など、備前・美作地方の近現代の寒村を舞台とした、著者の代表的短編集。

 四編何れもが明治後期の、まだ文明開化の恩恵が行き渡らない寒村の風景を克明に描写し、主人公達は皆、赤貧と圧搾、精神錯乱、汚穢と禁忌、近親相姦、そして罪の意識と死者の怨念に苛まれて、正気と狂気の狭間で様々な怪異に襲われる。ただし、評者にはこれら諸編は幻想文学でも怪奇小説でもない様に思える。

 これら諸編は、著者のリアリティに秀でた情景描写に最大の価値を見出だす。明治維新から30年、山陽では都市化・近代化が進みつつあったが、中国山地に分け入った農村や、殖産の恩恵を受けない漁村では、藩政時代三百年その儘の風景が、あらゆる旧弊や禁忌と共に存在していたであろう。人は神仏とも妖魔とも今よりずっと近く、夜の闇もまたより漆黒の度合い濃く、跳梁跋扈する魑魅魍魎の存在などは死と同程度に身近な恐怖であった筈である。

 本書では社寺神仏より遥かに、死後も汚濁に塗れた死霊が親しく登場する。それが暗黒の中世その儘の農村漁村の詳細な描写に違和感無く融合していると思える。故に禁忌や汚穢の中で這いずり回る主人公達が遭遇する怪異は、彼等には勿論、我々にとっても現実の事としてすんなりと受け入れさせる為のリアリティを随所に書き込んでいると感じる。これらに類似する事実は何処かで現実にあったろうし、事実此の津山地方は昭和13年に『津山三十人殺し』を行った都井睦雄を育んだ地でもあるのである。

 表題作「ぼっけえ、きょうてえ」の極彩色の世界観は良い。岡山の或る遊郭の美しくもない遊女の過去は、血と同じ褪せた紅の色である。母がその兄と交わって出来た子である主人公は、禁忌と汚穢の凝縮された様な少女期を過ごす。その分限の者らしく河原に棲み、母の職業である堕胎産婆で引き摺り出した胎児を、弔いも顧みもせずに置き棄てている荒涼感が良い。此方にまで腐臭が臭い立つ様である。しかし終わりがいけない。「人面瘡」という、物理的な存在の死んだ姉が登場する事によって、陰惨な追憶の世界が壊され嘘臭くなり、例えるなら此処からゾンビ映画を見せられた様な気になる。結末は違った方が良かったのではないか。

「密告函」は津山近郊の寒村で流行したコレラ対策に携わった善良な村役場の小役人が主人公。人々の嫉妬・羨望・悪意、不治の病と村八分に為る事への恐怖と職責との板挟みに苦しみ、その心の襞に噛み込んで来た狐憑きの夫婦と、その淫靡な娘の肉体に惑溺し堕落していく。人間誰しもが持つ野獣性と狡猾さ、保身と裏切り、物欲と劣情、支配と抑圧を活写したリアリティの極致である。

「あまぞわい」は評者には四編中最良と思われる。どう仕様もない境遇下に身を落とした酌婦は、萎足の青年と姦通したが為に夫に青年を殺され、その死の影に怯える。岡山育ちの女が全く何も出来ない瀬戸内の漁村に投げ込まれ、夫には虐待され周囲からも蔑まれ、逃げ場も無く絶望に追い込まれて行く心の葛藤が素晴らしく表現されている。

「依って件の如し」は母と兄との子である主人公が、赤貧どん底の辛酸を味あわされ、狂死した母とおぼしき獣人の影に怯える話である。凌虐とサディズムの極致であり、著者の趣味が十二分に味わえるが、獣人の存在と一家惨殺の一件が展開上の重要さを感じさせず構成上の未熟さを感じる若い作品である。その獣人とは「件(くだん)」である。古くは人頭牛身で人語を解し、凶兆を告げ対処法まで教えたと言うが、明治以降は一転して牛頭人身で人語を解せず、凶事に出現する。何故か神戸甲山周辺で目撃例が集中し、神戸大空襲、阪神大震災の際には複数者の前に現れている。此の短編は後者の「件」である。何れにしても大変興味深い存在である。

 それにしても、装丁に使われている甲斐庄楠音の美人画『横櫛』は見れば見る程に素晴らしい。怪しく艶やかで、此の様な敵娼ならば惑溺し堕落するのも良いかなと思えてしまう。
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.15
(3pt)

優れたリアリティが容易に怪異まで受け入れさせる忌憚話集。

岡山県北の津山や瀬戸内など、備前・美作地方の近現代の寒村を舞台とした、著者の代表的短編集。

 四編何れもが明治後期の、まだ文明開化の恩恵が行き渡らない寒村の風景を克明に描写し、主人公達は皆、赤貧と圧搾、精神錯乱、汚穢と禁忌、近親相姦、そして罪の意識と死者の怨念に苛まれて、正気と狂気の狭間で様々な怪異に襲われる。ただし、評者にはこれら諸編は幻想文学でも怪奇小説でもない様に思える。

 これら諸編は、著者のリアリティに秀でた情景描写に最大の価値を見出だす。明治維新から30年、山陽では都市化・近代化が進みつつあったが、中国山地に分け入った農村や、殖産の恩恵を受けない漁村では、藩政時代三百年その儘の風景が、あらゆる旧弊や禁忌と共に存在していたであろう。人は神仏とも妖魔とも今よりずっと近く、夜の闇もまたより漆黒の度合い濃く、跳梁跋扈する魑魅魍魎の存在などは死と同程度に身近な恐怖であった筈である。

 本書では社寺神仏より遥かに、死後も汚濁に塗れた死霊が親しく登場する。それが暗黒の中世その儘の農村漁村の詳細な描写に違和感無く融合していると思える。故に禁忌や汚穢の中で這いずり回る主人公達が遭遇する怪異は、彼等には勿論、我々にとっても現実の事としてすんなりと受け入れさせる為のリアリティを随所に書き込んでいると感じる。これらに類似する事実は何処かで現実にあったろうし、事実此の津山地方は昭和13年に『津山三十人殺し』を行った都井睦雄を育んだ地でもあるのである。

 表題作「ぼっけえ、きょうてえ」の極彩色の世界観は良い。岡山の或る遊郭の美しくもない遊女の過去は、血と同じ褪せた紅の色である。母がその兄と交わって出来た子である主人公は、禁忌と汚穢の凝縮された様な少女期を過ごす。その分限の者らしく河原に棲み、母の職業である堕胎産婆で引き摺り出した胎児を、弔いも顧みもせずに置き棄てている荒涼感が良い。此方にまで腐臭が臭い立つ様である。しかし終わりがいけない。「人面瘡」という、物理的な存在の死んだ姉が登場する事によって、陰惨な追憶の世界が壊され嘘臭くなり、例えるなら此処からゾンビ映画を見せられた様な気になる。結末は違った方が良かったのではないか。

「密告函」は津山近郊の寒村で流行したコレラ対策に携わった善良な村役場の小役人が主人公。人々の嫉妬・羨望・悪意、不治の病と村八分に為る事への恐怖と職責との板挟みに苦しみ、その心の襞に噛み込んで来た狐憑きの夫婦と、その淫靡な娘の肉体に惑溺し堕落していく。人間誰しもが持つ野獣性と狡猾さ、保身と裏切り、物欲と劣情、支配と抑圧を活写したリアリティの極致である。

「あまぞわい」は評者には四編中最良と思われる。どう仕様もない境遇下に身を落とした酌婦は、萎足の青年と姦通したが為に夫に青年を殺され、その死の影に怯える。岡山育ちの女が全く何も出来ない瀬戸内の漁村に投げ込まれ、夫には虐待され周囲からも蔑まれ、逃げ場も無く絶望に追い込まれて行く心の葛藤が素晴らしく表現されている。

「依って件の如し」は母と兄との子である主人公が、赤貧どん底の辛酸を味あわされ、狂死した母とおぼしき獣人の影に怯える話である。凌虐とサディズムの極致であり、著者の趣味が十二分に味わえるが、獣人の存在と一家惨殺の一件が展開上の重要さを感じさせず構成上の未熟さを感じる若い作品である。その獣人とは「件(くだん)」である。古くは人頭牛身で人語を解し、凶兆を告げ対処法まで教えたと言うが、明治以降は一転して牛頭人身で人語を解せず、凶事に出現する。何故か神戸甲山周辺で目撃例が集中し、神戸大空襲、阪神大震災の際には複数者の前に現れている。此の短編は後者の「件」である。何れにしても大変興味深い存在である。

 それにしても、装丁に使われている甲斐庄楠音の美人画『横櫛』は見れば見る程に素晴らしい。怪しく艶やかで、此の様な敵娼ならば惑溺し堕落するのも良いかなと思えてしまう。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.14
(3pt)

きょうてえくない

遊郭で、ある一人女郎が客に身の上話を語り始める。

終始岡山弁で話は語られる。それが奇妙な世界観を作りあげていることは事実だが、読みにくくなっていることもまた然り。話は面白いが、ホラーは感じない。などなど、新人賞の作品らしくセンスは感じられるが、粗が目立つ作品。


ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.13
(3pt)

きょうてえくない

遊郭で、ある一人女郎が客に身の上話を語り始める。

終始岡山弁で話は語られる。それが奇妙な世界観を作りあげていることは事実だが、読みにくくなっていることもまた然り。話は面白いが、ホラーは感じない。などなど、新人賞の作品らしくセンスは感じられるが、粗が目立つ作品。


ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.12
(3pt)

不快

すみません。多くの方々の高評価はよくわかるし、私もこの作者の力量は絶賛するのですが、、、、ストーリーが不快でした。
「怖い」でも「悲しい」でもなく、「不快」。
表題作は、とくに前半は秀逸。汚いものを描写してむしろ美しいと感じさせる筆致は異空間で、上質な絵画みたい。ラスト数ページを除くなら、私にとってもお気に入りの作品でした。
でも2本目は何?? 人間の醜い面をこれでもかと暴き立てるだけ。それでも読後に「哀しさ」みたいなのを感じられればいいんだけど、あとに残るのは不快感だけ。中途半端に出てくる生霊らしきものも意味がわからないし、いったい作者は何を言いたくてこの小編を書いたんだろう??
文学作品としては文句なしにハイレベルで、プロの書き手達が絶賛する理由もよく理解できます。でもエンターテイメントとしてはどうなの?
2本目で辟易して3本目以降を読む気になれなかったので、評価が偏っていたらすみません。
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.11
(3pt)

不快

すみません。多くの方々の高評価はよくわかるし、私もこの作者の力量は絶賛するのですが、、、、ストーリーが不快でした。
「怖い」でも「悲しい」でもなく、「不快」。
表題作は、とくに前半は秀逸。汚いものを描写してむしろ美しいと感じさせる筆致は異空間で、上質な絵画みたい。ラスト数ページを除くなら、私にとってもお気に入りの作品でした。
でも2本目は何?? 人間の醜い面をこれでもかと暴き立てるだけ。それでも読後に「哀しさ」みたいなのを感じられればいいんだけど、あとに残るのは不快感だけ。中途半端に出てくる生霊らしきものも意味がわからないし、いったい作者は何を言いたくてこの小編を書いたんだろう??
文学作品としては文句なしにハイレベルで、プロの書き手達が絶賛する理由もよく理解できます。でもエンターテイメントとしてはどうなの?
2本目で辟易して3本目以降を読む気になれなかったので、評価が偏っていたらすみません。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.10
(3pt)

なぜ大賞・・・?

驚いた。どうしてこのレベルの作品が大賞なのだろう、と。
描写は粗く雰囲気だけでもっている作品である。それも過去の名作怪談の焼き直しにすぎない。
ただ方言を駆使した語り口の上手さは確かに上手い、と思う。ホラー大賞受賞作としては恐怖感は皆無であるが、昔ながらの怖い話を読みたい方には良いだろう。
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.9
(3pt)

なぜ大賞・・・?

驚いた。どうしてこのレベルの作品が大賞なのだろう、と。
描写は粗く雰囲気だけでもっている作品である。それも過去の名作怪談の焼き直しにすぎない。
ただ方言を駆使した語り口の上手さは確かに上手い、と思う。ホラー大賞受賞作としては恐怖感は皆無であるが、昔ながらの怖い話を読みたい方には良いだろう。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.8
(3pt)

思ったほど

表紙にひかれて買いましたが
一番恐かったのは表紙だったんじゃないかと。。
表題作の遊女の話は日本昔話に出てきた妖怪と変わりないし
ポイントは方言で書いてあるところでしょうか
内容自体はホラーと言えるものでもないけれど方言で怖さを出している感じ
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.7
(3pt)

思ったほど

表紙にひかれて買いましたが
一番恐かったのは表紙だったんじゃないかと。。
表題作の遊女の話は日本昔話に出てきた妖怪と変わりないし
ポイントは方言で書いてあるところでしょうか
内容自体はホラーと言えるものでもないけれど方言で怖さを出している感じ
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.6
(3pt)

何だかやたら褒められてるけど

 どうなんだろう。確かに、表題作は面白いと思う。話も上手いけど、語り口がそれ以上にめちゃくちゃ上手い。 だけど、それ以外の作品はちょっとどうかと思った。ひたすら重苦しくだるくなるだけ、のような気がした。
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.5
(3pt)

何だかやたら褒められてるけど

 どうなんだろう。確かに、表題作は面白いと思う。話も上手いけど、語り口がそれ以上にめちゃくちゃ上手い。 だけど、それ以外の作品はちょっとどうかと思った。ひたすら重苦しくだるくなるだけ、のような気がした。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.4
(3pt)

きっと日常のすぐ脇に,非日常という真っ暗な穴があるのだろう。いまより少し前,日本はもっと薄暗くて,その穴は今よりも濃密に毒を吐いていたのだと思う。筆者は,今は見えにくくなったその穴を指し示しているのではないか。綺麗な文章でかかれた,醜い人の業をこれでもかと見せられた。
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.3
(3pt)

きっと日常のすぐ脇に,非日常という真っ暗な穴があるのだろう。いまより少し前,日本はもっと薄暗くて,その穴は今よりも濃密に毒を吐いていたのだと思う。筆者は,今は見えにくくなったその穴を指し示しているのではないか。綺麗な文章でかかれた,醜い人の業をこれでもかと見せられた。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014
No.2
(3pt)

ねっとりした恐怖。

行灯のあかり。ほつれた後れ毛。ほうずきの茎で胎児を殺す、とこの本で読んでから、神社の境内で売られるほうずきさえ血の影が見えるよう。「親の因果が子に報い」という口上を聞いたことがあるが、きょうだいで夫婦になったせいか、シャム双生児として妹の頭に張り付く姉のわらい顔。ねとねとした血の匂いのするような語り口。読み進むも怖いし、読まずに後を想像にまかせるのも怖い。
ぼっけえ、きょうてえ Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえより
4048731947
No.1
(3pt)

ねっとりした恐怖。

行灯のあかり。ほつれた後れ毛。ほうずきの茎で胎児を殺す、とこの本で読んでから、神社の境内で売られるほうずきさえ血の影が見えるよう。「親の因果が子に報い」という口上を聞いたことがあるが、きょうだいで夫婦になったせいか、シャム双生児として妹の頭に張り付く姉のわらい顔。ねとねとした血の匂いのするような語り口。読み進むも怖いし、読まずに後を想像にまかせるのも怖い。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫) Amazon書評・レビュー: ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)より
4043596014