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ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編



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ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編の評価: 4.24/5点 レビュー 58件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.24pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全58件 21~40 2/3ページ
No.38:
(5pt)

非常に良い、どうりの商品!

コメント、非常に良い。
となっており購入しました。想像以上にキレイな商品で大変満足しています。
とても信頼のおけるお店です。
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)より
4101001421
No.37:
(5pt)

何か大事なことを決めようと思ったときはね、1994年4月12日

叔父は微笑んだ。

「うまくやるためのコツみたいなものはちゃんとあるんだ。そのコツを知らないから、世の中の大抵の人間は間違った決断をすることになる。そして失敗したあとであれこれ愚痴を言ったり、あるいは他人のせいにしたりする。俺はそんな例を嫌というくらい見てきたし、正直に言ってそういうのを見るのはあまり好きじゃない。だからあえてこういう偉そうな話をするわけだけど、コツというのはね、まずあまり重要じゃないところから片づけていくことなんだよ。つまりAからZまで順番をつけようと思ったら、Aから始めるんじゃなくて、XYZのあたりから始めていくんだよ。お前はものごとがあまりにも複雑に絡み合っていて手がつけられないと言う。でもそれはね、いちばん上からものごとを解決していこうとしているからじゃないかな。何か大事なことを決めようと思ったときはね、まず最初はどうでもいいようなところから始めた方がいい。誰が見てもわかる、誰が考えてもわかる本当に馬鹿みたいなところから始めるんだ。そしてその馬鹿みたいなところにたっぷりと時間をかけるんだ。」

~単行本p307

・・・・・・・・・・・・1992年のドクター・ドレさんのクラシック・アルバム「the chronic」を聴いたついでに、ひさしぶりにパラっとめくったら、ここが目に入った。漢字とひらがなの配合ぐあいが相変わらず絶妙だなあ、って話もあるんだが、この「訳知り叔父さん」のキャラって、

・国境の南、太陽の西(講談社 1992年10月12日)では妻の親父さん

・1Q84 BOOK 1 (新潮社 2009年5月30日)では主人公の担当の編集者さん

・色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(文藝春秋 2013年4月12日)では灰田の親父さんの出会ったピアニスト

ってな感じで繰り返し出てくるなあ、と思った。

サマセット・モームの「人間の絆」でいえば主人公の知り合いのなぞかけ詩人みたいなもんだな。

「人間の絆」で言う理由が良くわからないけど。

・・・・・さあ、これだけネタを振ればじゅうぶんだろう。

お風呂の掃除しよっと。

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風の歌を聴け 講談社 1979年7月25日 「#翻訳」を参照 『群像』1979年6月号掲載。
1973年のピンボール 講談社 1980年6月20日 「#翻訳」を参照 『群像』1980年3月号掲載。
羊をめぐる冒険 講談社 1982年10月15日 「#翻訳」を参照 『群像』1982年8月号掲載。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 新潮社 1985年6月15日 「#翻訳」を参照
ノルウェイの森 講談社 1987年9月10日 「#翻訳」を参照 上下二分冊で刊行された。
ダンス・ダンス・ダンス 講談社 1988年10月24日 「#翻訳」を参照 上下二分冊で刊行された。
国境の南、太陽の西 講談社 1992年10月12日 「#翻訳」を参照
ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編 新潮社 1994年4月12日 「#翻訳」を参照 『新潮』1992年10月号~1993年8月号掲載。
第2部 予言する鳥編 新潮社 1994年4月12日
第3部 鳥刺し男編 新潮社 1995年8月25日
スプートニクの恋人 講談社 1999年4月20日 「#翻訳」を参照
海辺のカフカ 新潮社 2002年9月10日 「#翻訳」を参照 上下二分冊で刊行された。
アフターダーク 講談社 2004年9月7日 「#翻訳」を参照
1Q84 BOOK 1 新潮社 2009年5月30日 「#翻訳」を参照
BOOK 2 新潮社 2009年5月30日
BOOK 3 新潮社 2010年4月16日
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)より
4101001421
No.36:
(5pt)

良かったです!

まったく問題ありません!期待通りの商品でした。感謝しています!
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4101001421
No.35:
(3pt)

これをみて3部を・・・。

3部を見るのか、迷ったな。
でも、最後はどうなるんだろーと、
3部まで見るんだろーな。
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)より
4101001421
No.34:
(1pt)

第3部を読むのはやめましょう

一部同様「ふーん、それで?」という話が続きます。時々とって付けたような新たな展開を期待させるような話が登場しますが、それで終わります。今まで読んだ中でクソ小説の一つの最上位にノミネートできます。うちの職場では村上春樹ファンは私の知る限り一人ですが、さもあらんという感じの人ですので、何となく日本の村上ファン層が分かるような気がします。自宅では赤旗読んでるのに帝国ホテルではワシントンポスト読みながら朝食を取るような感じの人なんですけどね。
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4101001421
No.33:
(5pt)

妻をめぐる冒険

村上春樹の作品を読むと、主人公の妻の失踪をしばしば目にする。たとえば、『羊をめぐる冒険』では、冒頭に近いパートで「あなたのことは今でも好きよ」という言葉を残して妻が出ていく。本作でもやはり妻は主人公の前から去っていくのだが、他の作品と違ってその喪失は本作の主軸に置かれており、そして主人公はその問題と真剣に向き合い、原因の究明と妻の捜索を試みる。いわば、「妻をめぐる冒険」とも呼べる、そうした主人公の愛する女性への真摯な姿勢と情熱こそが、他の作品にはない最大の魅力を生み出していて、本作をたいへんスリリング且つエキサイティングなものにさせている。
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4101001421
No.32:
(5pt)

裏道ってところがこれまた湿っぽくて

裏道ってところがこれまた湿っぽくて
得体の知れない雑草とさびた自転車なんかが
朽ち果てていそう
設定がなにかかゆくなりそうではあるが忘れない感じ。

(一気に3部読んだのでずれがあるかも)
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4101001421
No.31:
(1pt)

ありがとう

この本のおかげで他の本がめちゃくちゃおもしろくなった。

文才は認めるが、物語の内容はおもしろくない。

第一章での間宮中尉の話がおもしろくて、二章と三章を同時購入した。

二章を読み終えた時、まだ三章が残っていると思うと、暗澹たる気分になった。

三章はよほど、手隙にならない限り、手を付ける事はないだろう。
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4101001421
No.30:
(5pt)

満足。

遅れてきた、村上春樹ファン。文庫本でそろえて読んでいきたいと思います。
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4101001421
No.29:
(5pt)

いいですね。

やはり、村上春樹先生はすばらしいですね。
いつも不思議な空間に連れて行ってもらえます。
時間も忘れ読みふけってしまいます。
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4101001421
No.28:
(4pt)

少なくとも僕には待つべきものがあり,探し求めるべきものがある

本書を単行本で最初に買った平成6年(1994年)4月,本書はこれまでの村上春樹の作品とは大きく雰囲気や文体の変化があり,かつ,この二部までしか出版されておらず,かつ三部が出るとの情報もなかったため,かなり戸惑った記憶があります。
 初期の村上春樹のファンや世間の評価としては,批判も少なくなかったのですが,三部出そろって後,時間が立つにつれて本書の評価はじわじわと高まり,現在では海外でも高い評価を受けているところです。
 今回,ほぼ10年ぶりの3度目の再読ですが,村上春樹ほど再読するたびに,その作品の味わいが変わっていく作家も多くないのではないでしょうか。
 再読するたびに新たな発見があり,まるで初めて本書にふれるときのような読書の喜びがあります。
 
 第二部では,ついにクミコが失踪し,僕が井戸にこもります。
 代わりにユニークな登場人物「加納マルタ」「加納クレタ」「笠原メイ」が活躍します。
 特にクレタの存在感が目を引きます。
 「誰かが無抵抗な人間から着衣をはぎ取るみたいに,暴力的と言ってもいいくらい激しい眠気」
に襲われた僕の眠りのなかに登場する加納クレタが,妻クミコのワンピースを着てこう言う。
 「何もかも忘れてしまいなさい。
  あたたかい泥の中で寝ころんでいるように。
  私たちはみんな温かい泥の中からやってきたんだし,温かい泥の中に戻っていくのよ」

 そして忍耐強い主人公僕もクミコの兄綿谷ノボルに対してだけは攻撃的な態度をとる。
「僕はつまらない人間かもしれないが,少なくともサンドバッグじゃない。生きた人間です。叩かれれば叩き返します。そのことはちゃんと覚えておいた方がいいですよ」
 クミコを探し求める道を選択した主人公僕。
 そして第三部へ。

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4101001421
No.27:
(4pt)

なかなか良いのでは?

村上春樹さんのファンになりそうです。一度に沢山購入しましたので、以後記入不可です。
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4101001421
No.26:
(5pt)

入れ替わってゆく世界(日常)。

淡々と流れる日常。
そこに虚構が忍びよってきます。
やがて日常と虚構は結びつきそれまでとは違う世界に入れ替わってゆきます。
いつ入れ替わってしまったのか。私達の日常もよく似ているのではないかと思わせられます。
日常の中には、小さな怒りの種が花粉にようにただよっています。
一度花粉を吸い込むと何かのきっかけで強い憎悪が呼び起こされます。
顔のまわりを漂う紫煙のように振り払っても振り払ってもそれを取り払うことはできません。

真っ暗な井戸の中。光がなければ自分の肉体すら眼で捉えることはできません。
恐怖は怒りに変わりやすく、怒りは暴力を伴います。
現代は多くの人の怒りが充満した社会でもあるように思えてきました。
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)より
4101001421
No.25:
(4pt)

今読んでいる本はこの作者の小説ばかりです。3冊並行読み

自分の行動には、このような考えがあったのだと認識させられました。そしてその考えの裏には、その考えのもとがあったのかと、そうも認識するようになったのも、この作者の本を読んだのがきっかけです(これまでそんなこと深く考えもしませんでした)。それ故、2度も読み直しているほど(これからも読み直すでしょう)、とても気に入っています。
もちろん個人的なことですが、男と女がそんなに信じあえるものかとてもとても疑問です(なくはないでしょうが)。それにセックスが、そんなに簡単に?すぐ?する?ものなのですか??、セックスの文章が必ずあり多い(意識過剰ですか)ようで、これははっきり言って好きじゃありません(読者が好むから?本が売れるから?意図的に挿入している、と考えてしまいます)。そして、この作者はあまり漢字を使っていないように思います。意図的にですか?比喩手的にやさしい言葉を並べて表現していますが、それは奥深さを感じますが、なかなか理解できないことがあります。
 これらのことは、作者や著書を批評しているものではありません、自分個人が感じたこと、内実の事々で・・・・これらのことをも刺激してくれたのも、この作者の本でした。
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4101001421
No.24:
(3pt)

猫はどこへ行った!

※ご注意 文庫は二種類あります。表紙は「ねじまき鳥クロニクル 第2部予言する鳥編」の間に鳥マークのある赤っぽい表紙、そして鳥マークのない紫っぽい表紙のものです。前者は429頁で字が大きく、後者は361頁で字が小さいです。後者が古い版です。
「一九八四年七月から十月」と冒頭に記載されている。…259ページの「カセット・テープ」は、1970年代から1980年代にかけ隆盛を極めた、後。1992年にソニーが発売したMDに代替され、更なる後、2001年にアップルコンピュータ社からデジタルオーディオプレーヤーのiPod(アイポッド)が発売され、取って変った。
>>妻の失踪、行方不明の猫と第2部は失踪がテーマでしょうか?
「間宮中尉をバスの停留所まで見送ったその日の夜、クミコは家に帰ってこなかった。」13 「〜オーデコロンを彼女に贈ったかもしれない男のことを想像してみた。僕(岡田亨)はクミコがどこかの男とベッドの中で抱き合って寝ているところを想い浮かべた。」16 「十時になると、〜クミコの会社に電話をかけてみた。〜十一時になってもクミコがまだ出社いていないというのは、普通のことではなかった。」16 「電話のベルが鳴った。〜『私は加納マルタと申します。実は猫のことでお電話をさしあげているのですが』〜『猫はよほどのことがない限り二度と見つからないのではないかと思うのです。〜』」20 「『〜、猫のことの他に、何か私にお手伝いできるようなことはございますでしょうか』〜。そして僕はクミコが昨日の夜帰ってこなかったことと、今朝もまだ出社していないことを加納マルタに説明した。〜『〜、いろんな物事が明らかになっていくでしょう。今は待つしかありません。〜』」21 「『おそらく、名前の初めにオのつく人からもうすぐ電話がかかってくるはずです』」23 「電話のベルが鳴った〜。〜。『こちらは大村酒店と申します。〜。これから集金に伺いたいと思うのですが、〜』」27 「僕が代金を払うと〜。『ねえ岡田さん、今朝駅前で事故があったのご存じですか?〜』〜『〜。駅前のクリーニング屋さんご存じですか?ちょうどあの前ですよ。〜』」28 「〜、駅前のクリーニング店に洗濯ものが預けっぱなしになっていたことを思い出した。クミコのブラウスとスカートだ。」29 「『昨日の朝に取りに来てるよ。私が奥さんに直接渡したからよく覚えてる。会社に行くついでに寄ったみたいだったね。〜』」30 「〜路地を隔てた向かいの<空き家>の塀にもたれて、鳥の石像のあるその庭を眺めていた。」35 「〜笠原メイが姿を見せた。」36 「『ねえ、お願いがひとつあるんだけど』と僕は言った。」37 「『ここに電話をかけて、岡田クミコという人が会社に出てきているかどうか、〜、昨日は出社したかどうか、それだけを訊いてほしいいんだ』」38 「『昨日も出社してないんだって』と笠原メイは言った。」40 「眠りの中で〜。〜。その部屋の中には僕と加納クレタしかいなかった。〜。加納クレタが着ているのはクミコの夏物のワンピースだった。」44 「そして、左の腕に二本一組のブレスレットをつけていた。」45 「彼女は僕の体の上にまたがるように乗り、硬くなったままの僕のペニ酢を手に取るとするりと彼女の中に導いた。」47 「今僕と交わっているのはあの謎の女の声だった。彼女はやはりクミコのワンピースを着ていた。僕の知らないあいだにどこかで加納クレタとその女とが入れ代わってしまったのだ。」48 「短い期間に二度も夢精をして、そのどちらの時も相手は加納クレタなのだ。」49 「突然電話が鳴った。〜。加納クレタの声だった。〜『それでは明日のお昼ごろに岡田様とお目にかかることができればと思うのですが』」56 「コーヒールームに着いたとき、〜綿谷ノボルと加納マルタは既に席について僕を待っていた。」58 「『自分は他の男と関係を持っているとクミコは言った。そしていろんなことをきっちりと清算したいと言った。私(綿谷ノボル)は離婚すればいいと忠告した。それについて考えてみると(妹の)クミコは言った』、綿谷ノボルはそう言った。」70 「家に帰って郵便受けの中を覗いてみると、分厚い封書がひとつ入っていた。間宮中尉からの手紙だった。」79 「私は何はともあれ、岡田様にお目にかかってこの話をすることができたことを嬉しく思っています。〜。〜話してしまうことによって、ある種の救いを得ることができたような気がするのです。〜。僕はその手紙を最初からもう一度ゆっくり読み直し、封筒に戻した。」87 「家の中は、〜。そしてそこに加納クレタがいた。〜。『鍵がかかっていなかったんです』と加納クレタはやっと口を開いた。『それでそのまま上がらせていただいたんです』」90 「『私は岡田様と〜交わりました』〜。『私は最初のときには口だけを使い、それから二度目には交わりました』」92 「『二度目のとき、私は奥様のワンピースを身に着けておりました。〜。そして左の手首にこれと同じブレスレットをつけておりました。〜』〜。〜彼女は僕の夢の中に出てきた情景を全部性格に言い当てていた。」93 「僕はクミコが帰ってきて書き置きを目にするところを想像した。〜。『大事な用事があって、しばらく外出します。そのうちに戻ってきます。待っていてください。T』〜。〜僕はナップザックを背負って、裏庭の塀を乗り越え、路地に下りようとしていた。」105 「井戸の前に来ると、蓋の上の石を取り除き、ふたつに分かれた半円形の板の蓋のひとつを外した。〜中に小石を放り込んでみた。小石は〜乾いた音を立てた。水はない。」108 「柔らかい縄梯子をつたって井戸を下りるのは、想像していた以上に骨の折れる作業だった。」110 「そして二十三段目にやっと井戸の底に達した。僕の足は井戸の底の土に触れた。」111 「クミコと出会ったのは、神田にある大学病院の入院患者家族用待合室だった。」115 「何度かそこで顔を合わせているうちに、僕とクミコは軽い世間話のようなものをするようになった。」119 「病院の界隈で何かの合間に細切れな話ばかりしているのではなく、もっと別のところで二人でゆっくりとまとまった話ができればいいのにと僕はいつも考えていた。僕はある日、思い切ってクミコをデートに誘ってみた。」120 「その日僕らは上野動物園の水族館で午後を一緒に過ごした。」121 「僕とクミコは何度かデートをした。〜。もう病院に通う必要のなくなったあとも、僕らは週に一度は会って、映画に行ったり、音楽を聴きに行ったり、ただ散歩をしたりした。」125 「『これからあなたのアパートに行っていい?』『もちろんいいよ』、僕はちょっとびっくりして言った。127 「〜クミコの体に手をまわしたとき、最初から抱かれるつもりでいたのだということが僕にはわかった。」128 「彼女が大学を卒業するのを待って、僕らは結婚した。」129 「結婚して三年目にクミコは妊娠した。」138 「でも何はともあれ、僕らには子供を産んで育てるほどの経済的余裕はなかった。クミコは出版社の仕事にやっと慣れてきたところだったし、できたら長く続けたいと思っていた。〜、僕はクミコに堕胎手術を受けてほしくはなかった。」139 「クミコが堕胎手術を受けたとき僕は北海道にいた。〜。クミコは一人で病院に行って、堕胎手術を受けてきた。そして夜の十一時過ぎに僕のホテルに電話をかけてきて、『今日の午後に手術を済ませたの』と言った。」148 「夜明け前に井戸の底で夢を見た。」156 「『今はまちがった時間です。あなたは今ここにいてはいけないのです』〜。『そこから先に進むと、もうあとに戻ることはできません。それでもいいのですか?』」169 「僕はあてもなくその廊下を行ったり来たりしていたが、やがてルームサービスのトレイを持った客室係のボーイとすれちがった。〜。ときどき彼は口笛を吹いた。『泥棒かささぎ』の序曲だった。」160 「僕はそっとノブを回してみた。〜。そしてそれは間違いなく、僕が以前加納クレタと交わった部屋だ。」162 「『明かりはつけないでおいて』と女の声が僕に告げた。〜。僕に何度かあの奇妙な電話をかけてきた謎の女の声だった。」163 「『〜。もし奥さんをみつけたいのなら、なんとか私の名前をみつけてちょうだい。〜』」167 「〜僕はふと思い出して、暗闇の中に手を伸ばして井戸の壁にかかっているはずの梯子を探した。でも梯子には触れなかった。〜。〜、ナップザックから懐中電灯を取り出して点けた。梯子の姿はなかった。」174 「頭上を見上げると、そこに笠原メイの顔が小さく見えた。『ねえ、ねじまき鳥さん、そこにいるんでしょう?〜』『いるよ』と僕は言った。〜。『考えごとをしているんだよ』と僕は言った。」180 「『ねえ、ねじまき鳥さん、梯子がなくなったことに気がついたかしら?』〜『それで、梯子を引き上げたのが私だってわかった?』」181 「『〜。あなたは私の気持ちひとつでそのまま死んじゃうかもしれないのよ。〜。私がこのままどっかに行っちゃったら、あなたはそこで死んじゃうことになるのよ。〜』」184 「『〜、あなたがもっとその考えごとに集中できるようにしてあげましょうか』〜。そして半分だけ開いてあった井戸の蓋をぴったりと閉めた。」186 「笠原メイが二度めにやってきたのは三時過ぎだった。〜。彼女が井戸の蓋を半分開けると、頭上にさっと光が浮かんだ」189 「『あなたはまだ生きているのかしら、〜生きていたら返事をしてくれる』『生きてるよ』と僕は言った。」190 「『〜、あなたは今そこで、文字通り死と向かい合っているのよ。〜。あなたが死ぬも生きるも私の胸ひとつなんだって』」194 「『ねえ、君に話したいことがあるんだ』と僕は言った。〜『僕の奥さんには他に恋人がいたんだ』と僕は言った。」196 「『そしてねじまき鳥さんはがっかりして井戸の底に入っちゃったのね?』『〜、一人になって静かに集中してものを考えることのできる場所が必要だったんだ。僕とクミコの関係がいったいどこで損なわれてしまったのか、どのようにして間違った道筋に入ってしまったのか、それがわからないんだ。〜』」197 「『ねえ、ねじまき鳥さん』と彼女は静かな声で言った。『考えなさい。考えなさい』。そして再び井戸の口は蓋でぴったりと塞がれた。」200 「ずいぶん体が弱っているような気がするな、と僕は思った。〜。空腹感は相変わらずやってきては、去っていった。」208 「笠原メイはいったいどうしたんだろう。何故ここにやってこないのだろう。」212 「加納クレタの声は、どこかずっと上の方から聞こえてきた。〜。顔を上げると、井戸の蓋が半分だけ開いていて、その上には綺麗な星空だけ見えた。〜。『ここにいるよ』と叫んだ。」〜。『ここにある縄梯子は岡田様のものなんですか?』216 「『〜。〜それをここに垂らしてくれないかな。そうすれば上にあがれるんだけれどね』」217 「〜大きく深呼吸をしてから梯子を登り始めた。〜。僕は井戸の縁に手をかけ、最後の力を振り絞ってそれを乗り越え、転げ落ちるようにして柔らかい地面に下りた。」218 「〜やがて僕は身を起して、ゆっくりとまわりを見回してみた。誰もいなかった。〜。加納クレタはいったいどこに消えてしまったのだろう。」219 「自分の家の塀をなんとか乗り越え、庭に下りた。〜。台所のテーブルの上には僕の書いた短いメモが残っていた。」230 「郵便受けの中には封書が一通だけ入っていた。〜、その宛て先を書いた筆跡がクミコのものであることは一目でわかった。」222 「私には付き合っている男の人がいました。私はこの三ヵ月近く、その男の人と性的な関係を持っていました。相手は仕事の関係で知り合った人で、〜。」224 「彼は私よりずっと年上だったし、もう奥さんも子供もいたし、男性としてとくに魅力的というわけでもなかった〜。」225 「何かの拍子にふとからだが触れ合ったときに、私は突然心の底からその人に抱かれたくなったのです。触れ合ったときに、私は彼が私の肉体を求めていることを直感的に感じました。そして彼もまた私が彼の肉体を求めていることを知ったようでした。〜。私たちはどちらから誘うともなく近くのホテルに入り、そこで貪るようにセック酢をしました。」226 「私は結婚前も、結婚してからも、〜、あなた(岡田亨)との間に本物の性的な快感を持つことができませんでした。」232 「たぶん近いうちに離婚の手続きを取ることになると思います。」233 「僕はその手紙を時間をかけてもう一度ゆっくりと読みなおして〜。〜クミコは自分でも手紙に書いているように、僕と寝ることをずっと拒否していた。膀胱炎の軽い徴候があって、しばらくはセック酢を控えたほうがいいと医者に言われたのだとクミコは説明した。」234 「僕はクミコのほっそりした背中や、首筋や脚や乳房の感触を、今ここにあるもののようにありありと思い出すことができた。僕は制行為の途中で僕がクミコにしたことや、クミコが僕にしてくれたことをひとつひとつ思い出した。」235 「FMラジオのクラシック番組を小さくつけた。〜。〜、シューマンのものらしい小曲がかかった。〜。〜女性アナウンサーがそれを『森の情景』の第七曲『予言する鳥』だと言った。」236 「『〜。実を申しますと、しばらく前からクレタとの連絡が取れなくなってしまったのです。〜』243 「『〜。〜どうしたことかクレタの気配もうまく感じられないのです』」244 「『もしクレタさんに会ったら、あなた(加納マルタ)に連絡するようにちゃんと伝えます』〜。『ありがとうございます』と加納マルタは言った。そして夜遅くに電話をかけた侘びを言って、電話を切った。」245 「〜、また塀を乗り越えた。そして路地を通って空き家の前まで行った。〜。僕は空き家の庭に入って、まっすぐ井戸のところに行った。〜。僕はなんとなく気になったので井戸の底を覗き込んで『ねえ、加納クレタさん』と囁くように呼びかけてみた。〜。『大丈夫ですよ、ここにいます』と加納クレタが言った。〜。『考えごとをしているんですよ。ここはものを考えるにはとてもいい場所ですね』」246 「『〜。でももう少しここにいたいんです。私のことなら心配しないでください』」247 「僕は加納クレタをそこに残していったん家に引き上げることにした。」248 「目覚めたのは、翌朝の九時半だった。〜、路地を抜けて空き家まで行ってみた。〜。井戸にはもう縄梯子はかかっていなかった。〜。井戸の蓋も二枚きちんとかぶせられていた。〜。僕はその蓋の一枚をとって井戸の中をのぞきこみ、加納クレタの名を呼んでみた。しかし返事はなかった。」249 「路地を歩いて家に戻り、浴室で歯を磨きそれから髭をを剃ろうと思った。〜。そして顔を傷つけないようにゆっくりと注意深く髭を剃っていった。〜。右の頬に何か青黒いしみのようなものがついていた〜。」250 「それはあざだった。」251 「目覚まし時計の針は午前二時過ぎを指していた。〜。〜ベッドの上で体を起したとき、隣にいる誰かの肌に触れた。」261 「僕は思い切って枕元のスタンドの明かりをつけてみた。それは加納クレタだった。」262 「〜加納クレタは言った。『私が覚えているのは、目が覚めたら岡田様の家にベッドで裸で寝ていたというだけです。その前のことは思い出せません』」270 「『今から六年前の話になります。〜。私は暴力団の売春組織に組み込まれていました。〜』」276 「『私がその日に指示されて言ったのは、都心のあるホテルの十六階でした。部屋は綿谷という名前で取ってありました。〜』」276 「〜娼婦になってからは、〜。私は相手を喜ばせるためにため息をついたり、興奮しているふりをしました。」279 「『その男(綿谷昇)に愛撫され、抱かれ、生まれて初めて理不尽なほどの性的な快感を得ることによって、私の肉体に何らかの大きな変化が生じたのです。〜』」288 「『それから私は体を売るのをやめにしました。〜』」289 「そうこうしているうちに、(姉の)加納マルタから手紙が届きました。彼女は三年間にわたるマルタ島での修行のようなものをようやく終了したので、一週間のうちに日本に帰ってくるというのです。」293 「そして姉は私に加納クレタという新しい名前をつけてくれました。〜。そして加納マルタは私を霊媒として用いるようになりました。」295 「食事のあとで加納クレタは突然僕に訊いた。」301 「『私と二人でクレタ島に行くおつもりはありませんか?』」302 「その夜に、僕はベッドに入って彼女を抱いた。僕は加納クレタの着たクミコの服を脱がせ、彼女と交わった。」309 「僕は電車に乗って、〜。」328 「週刊誌の中吊り広告を順番に見ているうちに、〜。〜「綿谷昇氏の政界出馬が投げかける波紋」と書いてあった。」329 「〜クレタ島に行くのに必要な衣類や雑誌をとりあえずスーツケースの中に詰めてみた。」334 「『ねえ、ねじまき鳥さん』とその女は言った。〜『笠原メイですけれど』」338 「『ねえ、ねじまき鳥さん、よかったら今からうちに来ない?』」339 「笠原メイの庭に入った。」341 「『〜ねえ、ねじまき鳥さん、信じてくれないかもしれないけれど、私は本当の最後にはあなたをちゃんと井戸の底から助け出すつもりでいたのよ。〜』」346 「『ねえ、本気だと思った。私があなたをあそこで殺しちゃうって言ったことを?』」347 「『ねじまき鳥さん、これからどうするつもり?』〜。『〜たぶんここを出て行くことになると思う。あるいは日本を出ていくことになるかもしれない』」350 「『〜、私もあの井戸の中に入ってみたの。〜』」352 「『〜、どうして君(笠原メイ)はそんないいつもいつも死について考えているんだろう?』355 「『〜。〜私はときどきひどく苛々するし、それでむちゃくちゃなことをしちゃうの』〜『たとえば、あなたを井戸の底に閉じ込めちゃうとか、それからバイクに乗っているときに運転している子を両手でうしろから目かくしするとか』」356 「『その男の子はどうしたの?』と僕は訊いた。〜。『死んだわよ』、〜、笠原メイは表情のない声でそう言った。」357 「次の日の朝、僕はパスポート用の写真を撮りにいった。〜。叔父に電話をかけて、〜。〜、実はクミコが突然出ていってしまったのだと僕は打ち明けた。」363 「〜僕は叔父を慰めるように明るい声で言った。『ただ少しのあいだ、ここを離れたいと思うんです。〜』『どこか行くあてはあるのか?』『たぶんギリシャに行くことになると思うんです。〜』」365 「二日後に彼(叔父)はやって来た。」366 「『〜。何も慌てて決める必要はないさ。〜。じっと留まって時間をかけなくちゃならないこともある』『それは、もうしばらくここにいろということですか?』」374 「一週間、〜。〜電車で新宿に出て、広場のベンチに座り、〜、じっと人の顔を見ていた。」377 「〜、僕に話しかけてきた人間がいた。身なりのいい痩せた中年の女性だった。」378 「『あなた、お金はあるの?』と彼女は訊いた。〜『とくに今のところは困っていませんね』と僕は言った。」379 「あの男を前にどこかで見たことがある。〜。すぐにベンチを立って、急いでそのあとを追った。」*** 「男は〜、アパートらしき木造の建物の前で立ち止まった。そして入口のドアを開け、中に入り、ドアを閉めた。」*** 「〜、僕はアパートらしき建物の玄関に行ってドアを開けてみた。」*** 「そのお男は下駄箱の陰からまるで猿のように素早く飛び出してきて、野球のバットで思い切り僕の肩を叩いたのだ。」*** 「僕は男の手からバットをもぎ取った。」*** 「それからバットで太股を叩きつけた。」*** 「結局僕はそのバットを家まで持って帰った。」*** 「最後までずいぶん考えたのだが、結局僕はクレタ島にはいかなかった。」396 「僕は間宮中尉に手紙を書いた。そして僕の身に起こったことをざっと説明した。」409 「一週間後に彼は返事を寄越してくれた。〜。本田さんは私とあなたと会うことが、私のためにもあなたのためにも良いことだと思っていたのではないだろうか。〜。あなたへの形見が空っぽの箱であったことはそれで説明がつくと思う。」410 「〜もし岡田様の中に、奥様のお帰りをもうしばらく待ってもいいというお気持ちが少しでもおありになるのでしたら、そこで今のようにじっと待っておられるのが、おそらくは正しいことであろうかと思います。」412 「『ねえ、ねじまき鳥さん、知ってる?あの空き家が昨日から取り壊されているのよ。例の宮脇さんの家が』」412 「僕と笠原メイと一緒に路地を通って空き家の裏まで行った。たしかに家の解体作業はもう始まっていた。」413  「『ねえ、ねじまき鳥さん』、彼女(笠原メイ)は少し迷ってから付け加えるように言った。『私はたぶんこれから学校に戻ることになると思うの』」414 「空き家はそれから十日ほどで完全に壊されてしまった。」418 「区営プールでひとりで泳いでいるときに、僕は幻影のようなものを見た。〜。ふと気がつくと僕は巨大な井戸の中にいた。僕が泳いでいるのは区営プールではなく、その井戸の底だった。」419 「僕は息をひそめてそっと水の上に浮かび続けている。水は僕の体重を支え続けている。」424 「あの女はクミコだったのだ。どうしてこれまでにそれに気がつかなかったのだろう。僕は水の中で激しく頭を振った。」425 「でも僕は踏みとどまらなくてはならない。そしてその世界に向けて手を伸ばすための手立てをみつけなくてはならない。それが僕のやるべきことなのだ。待つべきときには待たねばならん。それが本田さんの言ったことだった。鈍い水音が聞こえ、誰かが魚のようにするすると水の中をやってきた。そして頑丈な腕で僕の体を抱いた。プールの監視員だった。〜。『あなた大丈夫ですか』と彼は僕に尋ねた。」428
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4101001421
No.23:
(5pt)

クレタ、モラッタ、そして・・・・

「第2部 予言する鳥」ではキムタクの出生の秘密が明かされる、というのは冗談で、第2部は第3部及びこれからのハルキ・ムラカミの作品につながるための重要な作品である。

 僕は井戸の底に封印される、ボールを打つという本来の目的以外に使うための野球バットが出てくる、泥棒カササギの序曲を口笛でいかに上手に吹くかが明らかにされる、208という数字がまたまた出てくる、シューマンの「森の情景」が奏でられる・・・・・
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4101001421
No.22:
(4pt)

村上ワールド全開だと感じました

主人公がひょうひょうとしながらも不思議な世界を歩いていく。
村上春樹さんの独特の世界を堪能させてもらいました。

特に、井戸の中でのエピソードが印象的でした。
この不思議な状態に、なぜ、あんなにも平気でいられるんだろう。
それを描ける村上春樹氏は何者だ!と感じました。
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4101001421
No.21:
(5pt)

一番洗練されたかたちの復讐

自分が自分でいられるということはどういうことか。ヒトはホントに自分の人生を選び取って生きているのか。
ヒトはある時、「別の」人間になろうとする。だがホントにそれを本人が選び取ってるのだろうか。社会やシステムがキミをキミ以外の何かに変えようしてるのでないか。その葛藤の中でふと寂しい気分になるときはないか。
結局ヒトは自分以外の何者かにはなれない。
キミがキミ自身である唯一の方法が実は「孤独」であると村上は語る。孤独に「なる」のであって、孤独に「させられるのではない」、と。
そのメタファーとして主人公は井戸の中に自ら籠り、述懐し掘り下げ、果ては歴史まで紐解いて壮大なるストーリーを展開する。
果たしてこの行為が無為なことだろうか。「孤独」という行為。
それを経たからこそ、第3部の結末があった。
もし、この行為を経ていなかったら、
「たとえばあなたが捨てちゃおうとした世界
からたとえばあなたが捨てちゃおうと思ったあなた自身から」いつか仕返し
をされてしまう、そう笠原メイは語る。
「孤独」という行為。
それは「ある意味一番洗練されたかたちでの復讐なんだ」
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4101001421
No.20:
(5pt)

さあ、ねじを巻こう。

つまり、
自分がいつかは死んでしまうんだとわかっているからこそ、
人は自分がここにこうして生きていることの意味について
真剣に考えないわけにはいかないんじゃないのかな。
そうでしょう?
何が起こるかは誰にもわかんないのよ。
だから私たちが進化するためには、
死というものがどうしても必要なのよ。
私はそう思うな。
死というものの存在が鮮やかで巨大であればあるほど、
私たちは死に物狂いでものを考えるわけ。
自分ではうまくやれた、別の自分になれたと思っていても、
そのうわべの下には、もとのあなたがちゃんといるし、
何かあればそれが、「こんにちは」って顔を出すのよ。
あなたにはそれがわかっていないんじゃない?
だから、きっとあなたは今、その事で仕返しされているのよ。
いろんなものから。
たとえば、あなたが捨てちゃおうとした世界から。
たとえば、あなたが捨てちゃおうと思ったあなた自身から。
私の言っていることわかる?
俺はね、どっちかっていうと現実的な人間なんだ。
この自分の二つの目で納得するまで見たことしか信用しない。
理屈や能書きや計算は、
あるいは、何とか主義やら何とか理論なんてもんは、
大体において自分の目でものを見ることができない人間のためのものだよ。
そして、大抵の世の中の人間は、自分の目でものを見ることができない。
それがどうしてなのかは俺には分からない。
やろうと思えば誰にだってできるはずなんだけどな。
ご存知のように、ここは、
血なまぐさく、暴力的な世界です。
強くなくては生き残ってはいけません。
でもそれと同時に、どんな小さな音も聞き逃さないように
静かに耳を澄ませていることもとても大事なのです。
おわかりになりますか?
良いニュースというのは、多くの場合小さな声で語られるのです。
どうかその事を覚えておいてください。
何もかもが僕の手からこぼれおちて行ったわけではない。
何もかもが闇の中に追いやられてしまったわけではないのだ。
そこにはまだ何か温かく美しく貴重なものが残されている。
あるいは僕は負けるかもしれない。
僕は失われてしまうかもしれない。
どこにも辿りつけないかもしれない。
どれだけ死力を尽くしたところで、
既にすべては取り返しがつかないまでに、
損なわれてしまったのかもしれない。
僕はただ廃墟の灰を虚しくすくっているだけで、
それに気が付いていないのは、僕一人かもしれない。
僕の側に賭ける人間はこのあたりでは誰もいないかもしれない。
「かまわない」
僕は小さな、きっぱりとした声でそこにいる誰かに向って言った。
「少なくともこれだけは言える。僕には待つべきものがあり、探し求めるべきものがある。」
それから、僕は息を殺し、じっと耳を澄ませる。
そしてそこにあるはずの小さな声を聞き取ろうとする。
そこでは、誰かが誰かを呼んでいる。
誰かが誰かを求めている。
声にならない声で。
言葉にならない言葉で。
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4101001421
No.19:
(4pt)

井戸というメタファー

頽廃した生活の中で、主人公は井戸に潜み、思索を行う。 隔絶された世界である闇の中に佇む姿は、現実的なものであるにも関わらず、リアリティを伴う事なく描かれています。
「つまり―私は思うんだけれど、自分がいつかは死んでしまうんだとわかっているからこそ、人は自分がここにこうして生きていることの意味について真剣に考えないわけにはいけないんじゃないのかな。だってそうじゃない。いつまでもいつまでも同じようにずるずると生きていけるのなら、誰が生きることについて真剣に考えたりするかしら。そんな必要がどこにあるかしら。もしたとえ仮に真剣に考える必要がそこにあったとしてもよ、『時間はまだまだたっぷりあるんだ。またいつかそのうちに考えればいいや』ってことになるんじゃないかな。でも実際にはそうじゃない。私たちは今、ここでこの瞬間に考えなくちゃいけないのよ。明日の午後私はトラックにはねられて死ぬかもしれない。三日後の朝にねじまき鳥さんは井戸の底で飢え死にしているかもしれない。そうでしょう?何が起こるかは誰にもわかんないのよ。だから私たちが進化するためには、死というものがどうしても必要なのよ。私はそう思うな。死というものの存在が鮮やかで巨大であればあるほど、私たちは死にもの狂いでものを考えるわけ」
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4101001421

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