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夜の黒豹
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夜の黒豹の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.87pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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星島由紀という少女が殺されて、いとこの岡戸圭吉が犯人ではないかと疑われる。物語の中では、殺人の動機は由紀の財産である、ということになっているのだが、当時(1960年)の相続法では、いとこに相続権はない。当時の相続法は現在のそれとほぼ同じで、死亡した人(被相続人)の配偶者、子ども、親、または兄弟にしか相続権はない。相続法の内容はちょっと調べれば分かることだから、登場人物が勘違いしているという設定なのかと思ったが、物語のおしまいになっても、やはり由紀の財産がいとこの岡戸圭吉に行くものとされている。由貴には配偶者も親も子どもも兄弟もいないので、本来、彼女の財産は国庫に納まるはずである。 作者が相続法を知らなかったのだとしても、編集者が教えるべきだろうと思うのだが、編集者も知らなかったのか、あるいは知っていても、岡戸圭吉に相続権がないと物語が成立しないので、黙っていたのだろうか。 犬神家の一族でも、物語内で相続法に反する奇怪な遺言が提示されていて、その遺言のせいで殺人事件が起こることになっている。横溝正史は相続法を無視することに決めていたのだろうか。 【追記】 犯人の行動は合理性を欠いていて、犯人の目的の達成を難しくしている。 この物語のおおもとのプロットがよくないのだ。少し手直ししたら、もっとよい物語になったと思うのだが。 | ||||
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<ネタバレ注意> マジックの走り描きだろうが、多少の絵心がないとそもそも蜥蜴だと認識してもらえる画なんて描けないから、それだけである程度容疑者が絞られるうえに、特定の人物を指し示そうとするならば、画の雰囲気というかタッチをそこそこ似せる必要がある。一方でそれが個性的であるならば、そんなもの犯人がなんで残すねん問題が出てくるので、よほどの愉快犯でもなければとてもリスクに見合う行動とは思えない。【注1】 しかし本作では、そのあたりを考察することは一切ないw さらに納得できなかったのは、マジックで描かれた蜥蜴の画が左向きなことに対して、金田一耕助は「やっぱり右へお向けになるでしょう。特殊な場合をのぞいてはたいていの人間がそうかくと思うんです」(P.282)と宣っていること。最初の“被害者”葉山チカ子は、鏡に映して自分で書いたから左向きに描いてしまい、以後はそれに合わせるために左向きに描かざるを得なかったという理屈である。それを聞いた等々力警部も、「金田一先生、これはあなたのおっしゃるとおりです。いや、恐れ入りました」(P.283)と応じている……。 待て待てちょっと待て。わたしはこのところお絵描きにはトンと御無沙汰ではあるが、左向きに描く方が自然にできるぞ。 わしはたいていの人間には含まれないんかい。 少数派になるのかもしれないが、少なくとも恐れ入るような論理展開でないのは確かである。 そのあたりが甚だナンセンスに感じたが、それは置いておいて、雑誌初出時の「青蜥蜴」は題名に冠するにはキャッチーなガジェットではあると思う。 ところが、翌年の単行本化に中って題名は「夜の黒豹」に改められた。 なるほど目撃された犯人らしき人物は、漆黒のコートを纏ってしなやかに歩いていたというが、イメージとしては弱くて、なんとも中途半端である。もちろん表紙のような黒豹の仮面を被っているわけではないw なぜ改名する必要があった? 「青蜥蜴」は乱歩すぎるとでも判断されたかw 後期の金田一耕助ものによくあるように、本書も警察小説の色合いが濃いのだが、上述したナンセンスを除けば悪くはない。300頁を超えるので著者作品の中では長尺の部類だが、飽きることなく読めた。 目撃者の轢逃げを除いて、事件は三件の安ホテルで発生する。 後のいわゆるラブホテルだが、昭和30年代後半にはまだその名称はなく、設備やシステムもラブホに至るまでの過渡期にあるようで興味深い。 ま、当時の風俗等々いろいろと興味深いのだが、日本を代表する名探偵の登場する本格探偵小説の一作として読んでしまうと、大いに混乱すると思うので、映画やドラマで金田一耕助を知った若い読者は、本書ではなく迷わず有名作品を手に取るべきだろう。 しかしほぼ電子化されている金田一耕助シリーズは、その時期によって採算計算やその他の条件が随分違うのか、価格に大きなブレがあって、本書が800円オーバーというのは、やや低評価にしている理由のひとつだ。 ……そういった入門者が検索して、本書を最初に選ぶことはまぁないかw 【注1】「ア、オ、ト、カ、ケ」の件もあるので、犯人は大真面目だというのがなんとも……。 | ||||
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