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仮面舞踏会
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【この小説が収録されている参考書籍】
仮面舞踏会の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.22pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 1~20 1/2ページ
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読み始めはなかなか読み進まず、これはハズレかなと思うも否やいつの間にか作品の中に引き摺り込まれた。相変わらず人間関係はクドイが、それも横溝ならでは。何より軽井沢の描写が美しく、それまで行ったこともない軽井沢を散歩するにまでに至った。後はこの描写そのままで、NHKが吉岡金田一で映像化してくれたら...と思うところ。 | ||||
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『宝石』で連載された『悪魔の手毬唄』が終了してから三年半、同雑誌に新作長篇の連載が漸く始まったが、残念ながら著者の体調上の問題で、八か月しか続けることができずに中断された。 それから13年後、よもやの書下ろし完成版として単行本で上梓されたのが本作である。 どうやら、角川文庫で著者が“再発見”されて人気となったことが、本作完成への力強い後押しになったらしい。 どの章までが連載で、どこから書下ろしなのだろうか。 本作の「解説」(版によっては割愛されているので注意が必要)でもWikipediaで本作の項をみてもわからなかった。切りよく8章までが連載だったか、プロローグを個別に数えて7章までか、あるいは二章分ずつ掲載されたとして15章までか、また連載期間は毎月掲載されていたのか……。 調べてみたが、うーむ、それほど安定していないw 過去に『宝石』に掲載された横溝作品からなにかわかるかと調べてみたが、……これもばらばらじゃねーか。だれか識者の方、教えてww 角川文庫での著者作品の再評価が、一旦連載中断されていた本作の執筆再開の原動力になったとは云いながら、本作の特徴は、初期の傑作とは趣がまるで異なる。 70年代後半の映画化やドラマ化で金田一耕助人気が加速してからは、著者は『病院坂の首縊りの家』や『悪霊島』のような、初期作品の雰囲気を出そうとしていたが、本作は後期長篇作でよくみられたように、警察による捜査の進展で、徐々に登場人物が隠している事実が明るみになるという、警察小説に近い形式を取っている。金田一は刑事たちのアドバイザーとして舵取りする役割だ。 もうひとつ、かなり驚いたのだが、キーパーソンの鳳千代子が五度目の結婚を迎えようという胡散臭さに加えて、かなりの数の人物が登場するが、千代子を含めて、実は悪い人間がそれほど出てこない。 もちろん、犯人やその裏にいた鼻持ちならない奴はいたし、最終章で犯人は悪魔的な表情をのぞかせる。とはいうものの、状況を考えれば情状酌量の余地はある。 人間はみな仮面舞踏会を演じてるなんて台詞も登場するが、あらためて言わずとも、推理/探偵小説なら大体そうだろう。なぜこんな題名にしたのだろう? 本作には、むしろ推理小説でよく指摘、揶揄されるような、役割だけ与えられた薄っぺらい造形の人物が見当たらない。 毎年8月は軽井沢で過ごすような人達が登場人物の大半を占めるから、厭らしい性根の人物はいくらでも作れそうだが、そうなっていない。ということは、これは著者の意識したセッティングの筈だ。 人はそれぞれ隠し事をしていて、事件関係者が嘘を吐いたり渋ったりするのは世の常だが、彼ら彼女らが必ずしも犯罪に関わっているわけではない。思慮の足りなさはあれども、多くは悪意よりも善意、徒に他人を迷惑をかけたくないという忖度も多い。そういった細かくて、ごくつまらない隠し事も含めての仮面舞踏会である。 その意味では、数多くの登場人物がそれぞれちょっとした仮面を被っている。 だから、煩雑な登場人物たちの数の多さそのものにも意味があるし、この陳腐な題名も生きてくると思うのだが、ドラマでは整理の都合で割愛された人物も多い。やむを得ないところではあるが、それが著者が長い中断の末に完成させた本作の価値を下げている気がする。 | ||||
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600ページ近くある大作で、いくぶん冗長気味と感じられなくもないが、作品全体のバランスを崩してしまうほどではなく、むしろ作品に重量感を与えている。軽井沢を舞台に、女優や元華族といった、いわくありげな人物たちの複雑な人間関係と殺人事件を、端正に描き込んでゆく円熟の筆致には、じっくりと落ち着いた調べがあって好ましい。それが後半になると、ミステリらしいスリリングな展開へとスピード感を持ちはじめる。 派手なトリックなどはないものの、因襲、戦火、血族といった横溝ワールド独特の物語の陰影が立ちあがり、“仮面舞踏会”を生きた者たちの悲哀と罪業が入り乱れた人生模様が暴かれる解決編は、鳥肌ものの迫力があり圧巻である。エピローグとプロローグに描かれる、シャーロック・ホームズが石畳を踏んだ霧の都と時空を共有するかに思える、ミステリアスな白い霧の風景は、所詮この地上で繰り広げられる全ての人間模様は、その実相の定かでない霧のなかの“仮面舞踏会”であると語っているようだ…。巨匠晩年の傑作である。 | ||||
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「仮面舞踏会」は昭和37年7月「宝石」で連載がスタートしたものの、翌年2月に横溝正史の体調不良で中断。その後十数年が経過し、昭和49年11月にようやく完成した作品である。 今から1年前の昭和34年8月16日。軽井沢に近い浅間山の山麓で、田代信吉と小宮ユキの二人が心中自殺を試みていた。たまたま通りがかった金田一耕助の機転で男の方は一命をとりとめたが、女の方はすでに事切れていたという。この心中事件があの連続殺人に関わってくるなど、この時は誰も予想しなかったのである。 かつて銀幕の大スターとして名を馳せた鳳千代子は、恋多き女として知られていた。最初に結婚したのは戦前の映画スター笛小路泰久、2番目の夫は新劇俳優の阿久津謙三、3番目の夫は洋画家の槙恭吾、4番目の夫は作曲家の津村真二である。そして目下の交際相手は、元公爵の御曹子で戦後財界の大立者・飛鳥忠熈だった。 そんな千代子を愛し、彼女との結婚を考えていた忠熈には、どうしても気になることがあった。というのも、笛小路泰弘は昨年軽井沢のプールで不審な死を遂げており、阿久津謙三も年の暮れに不慮の交通事故で死亡していたのだ。さらに、今度は軽井沢の別荘で槙恭吾が死体で発見されるに及び、忠熈は金田一耕助に調査を依頼したのである。 槙恭吾は鍵のかかったアトリエの中で青酸加里を飲み死んでいた。一見自殺と思えるような状況だったが、毒を飲んだグラスが見つからないなど不審な点も多い。また、金田一耕助は彼の遺体が死後移動されたことを見抜き、赤と緑のマッチ棒が意味ありげに並べられているのを発見するのだった。これはダイイングメッセージなのだろうか、それとも何かの暗号なのだろうか……。 戦後、「本陣殺人事件」をはじめとする数々の傑作推理小説を発表し、絶大な人気を誇った横溝正史。1960年代に入り社会派ミステリの台頭とともに執筆量が減っていたが、1968年に週刊少年マガジン誌上で「八つ墓村」が漫画化され、角川春樹の陣頭指揮により映画化されたことなどで急速に注目が集まり、横溝ブームが再燃した。 横溝正史作品のほとんどを文庫化した角川はこのブームに満足せず、さらなる発展を目指した。その結果、70代となり隠居同然であった横溝が再び表舞台に登場し、過去の作品のリバイバルや改訂だけでなく、新たな作品を世に送り出すこととなる。その第1弾として世に出たのが本作「仮面舞踏会」である。復活後最初に完成させたのが、連載が中断し十数年が経過していたこの作品というあたり、律儀な横溝の性格がうかがえる。 本作の時代は昭和35年に設定されており、名探偵・金田一耕助が活躍する長編としては比較的新しい部類と言えるだろう。同時期に書かれた他の作品と比べておどろおどろしさが抑えられた作品だが、「犬神家の一族」や「獄門島」などと同様、第二次世界大戦や血縁というものが重要な要素となっている。 軽井沢の別荘地を舞台に、旧華族や作曲家、画家、学者、資産家など数多くの人物が登場する本作。人間関係が把握できるまではやや理解しづらいところもあるが、随所にたくみな伏線が張られており、物語が進むにつれてどんどん引き込まれてく。晩年の作だが、終盤のスピード感はさすがといったところか。 警察側では金田一の相棒・等々力警部が重要な役どころで登場するほか、長野県警の日比野警部補が捜査主任として奮闘するのだが、いかにも屈折した若手エリートという感じで好感が持てた。 事件の背後に潜む謎を探りながら、金田一耕助は殺人現場で意味深なものを発見する。それがこの事件に文字通り色を添える赤と緑のマッチ棒である。このマッチ棒が意味するメッセージが解けたとき、犯人の正体が明らかとなる訳だが、私にはまったく予想できなかった。金田一シリーズでは割とよく登場する佝僂病も、まさかあの場面で出てくるとは……。 最後に真犯人と金田一が対峙するシーンは名場面であり、意外な犯人像には本当に驚かされた。物悲しくも美しいエピローグを読むと、本作がなぜ「仮面舞踏会」というタイトルなのか理解できるだろう。多くの有名な作品の陰に隠れてしまっているが、まぎれもない傑作だと思う。 <登場人物> 鳳千代子 … 過去に四回の結婚歴を持つ映画界の大スター。 笛小路泰久 … 千代子の最初の夫。一年前にプールで死亡した。 笛小路美沙 … 千代子と泰久の娘。小児喘息で小学校に通えず。 笛小路篤子 … 泰久の継母。美沙を幼いころから育てている。 阿久津謙三 … 千代子の2番目の夫。新劇俳優。一昨年事故死。 槙恭吾 … 千代子の3番目の夫。洋画家。何者かに殺害される。 津村真二 … 千代子の4番目の夫。作曲家。行方不明。 飛鳥忠熈 … 元公爵の御曹子。財界の大立者。千代子と交際中。 桜井鉄雄 … 飛鳥忠熈の女婿。神門産業のエリート。 桜井熈子 … 忠熈の娘。鉄雄の妻。 的場英明 … 考古学者。忠熈から発掘旅行の費用捻出を狙う。 村上一彦 … 忠熈が眼をかけている孤児。的場英明の弟子。 秋山卓造 … 忠熈の忠実な部下。水火も辞さない覚悟を持つ。 立花茂樹 … 音楽学生。津村真二の弟子で、村上一彦の友人。 田代信吉 … 心中未遂した破滅型の音楽学生、立花茂樹の友人。 小宮ユキ … 肺病を持つストリッパー。田代信吉と心中し死亡。 藤村夏江 … 阿久津謙三に捨てられた女。 樋口操 … 藤村夏江の先輩にして友人。軽井沢に住んでいる。 日比野警部補 … 軽井沢署の捜査主任。若く功名心にはやる。 近藤刑事 … 軽井沢署きっての古狸。 古川刑事 … 軽井沢署の若手刑事。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … みなさんお馴染み、もじゃもじゃ頭の探偵さん。 | ||||
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597ページもある大作です。登場人物が多く人間関係も複雑で、軽井沢の別荘やコテージが複数出てきてそれらの位置関係をグーグルマップで確認しながら読みました。ストーリーとキャラクターが素晴らしく、凄惨な場面はありませんが真犯人が正体を現した時はゾッとしました。読了後にもう一度最初から読み直していますが色々張り巡らされた伏線が分かって、映画化するなら誰をどの俳優が演じるのが良いかなどと空想しながら楽しんでいます。 | ||||
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横溝正史氏の「金田一耕助ファイル」シリーズの第17弾。シリーズ1弾目から読み始め、残すところも少なくなってきた。マンネリ化しても仕方ないところであるが・・・。本作品は推理小説であるにも拘らず、再読したいと思わせる面白さがあった。つまりは犯人が判明しているにも拘らず、最初から読み直したいと思わせるだけの魅力があった。 推理小説におけるネタバレほど愚行はないから、内容については敢えて触れない。今回も金田一耕助が見事な「推理」(個人的には「実証」では無いところが本作品の肝要と感じる)で犯人が判明することだけ触れておく。 作品自体の評価とは無関係であるが、そろそろ本シリーズには「註釈」が必要だと感じた。原著を忠実に再現しようとすればするほど、書かれた時代から読まれる現在との時差が広がる。評者は昭和の中頃の生まれであるが、平成生まれの人たちに、たとえば本書で用いられている「ジョニー・ウオーカーの黒」「デンのアームチェア」「ジレッタント」「ヒスの発作」「数え年」「ヒルマン」「藤十郎の恋とお梶」「三和土(たたき)」といった言葉が、どれほど実感できるかだろうか。ここには意図的に挙げなかったが、現在では差別用語とされるものについても同様である。原作の魅力を損なわないためにも、言葉の置き換えではなく註釈を付けた方が、読者の理解を深めると感じた。 横溝正史氏には、自身が生きた時代の人間模様として、一貫として書きたかったものがあるのだろう。遅きに失した感はあるが、第17弾を読み終えるにあたり、今更ながらそのことを知らしめられた気がする。 | ||||
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金田一耕助シリーズは全て読んでいます。個人的には本作品はトップ3に入るほど好きな作品です。八つ墓村等に比べて知名度はありませんが、傑作だと思います。他の金田一シリーズに比べて、残虐な描写はかなり控えめで、他作品とはちょっと系統が違うような感じです。 最後まで犯人がわからず、ハラハラしながら読んでました。本作では登場人物全て疑わしく思えて、本当に最後までわかりませんでした。が、伏線がしっかりしてるので、最後には十分に納得出来る構成になってると思います。また、現在では失われた昔の軽井沢の雰囲気が堪能出来るのも本作品の魅力だと思います。 | ||||
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「霧の山荘」、「香水心中」といった軽井沢物のなかでも群を抜く大長編です。 金田一物は磯川警部との岡山物、等々力警部との東京物に大別されますが、それ以外は避暑地物が多い。 そのなかでも中短編いろいろあるのが軽井沢物。 古くからの因習のある村、血の系譜といった岡山物とは違った軽やかさがあります。 本編は割と血の問題には関わってますが、氏の晩年の作品群においては「迷路荘の惨劇」と並んで傑作です。 復活期の作ですので、「迷路荘の惨劇」同様に練りに練った趣向が凝らされ一品。 芸能界を舞台にしたどろどろは短編でよく書かれましたが、本作はその中でも真打ちといってよいと思います。 | ||||
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good | ||||
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それが、やはりこの時代の作家の特筆すべき所だろう。今更、金田一耕助のひょうひょうとした活躍がどーのこーのとのたまう気はない。 この作品の醍醐味は(他のシリーズ作もそうだけどさ)金田一の名推理ではなく、正にそれを取り巻く人間たち・・・作者が、キレイな空から一切の躊躇なく地上へとべしゃーっと叩き落す、いや落とされる登場人物たちの、一切の道徳を受け付けない生臭い血のうねりだ。 一見したところ常識的な、良識的な人間たちをさらさらーっと配置しておきながら、徐々にその麗しい顔をつつき、少しづつヒビを入れ最後には・・・作者の興奮した息が聞こえてくるような筆致とともに、世間に向けた仮面をベリベリベリーーーーーーッと剥いでいく、誰も見ていないところでむき出しになる人間の裸身、それに容赦なく強い光を当てる・・・無論作中の犯人はそんなことに気づかない、作者によってもろに盗撮されている覗き見されていることに・・・であればこそ、読者もその描写に俗物根性丸出しで引きずり込まれるのだ。 この作品は、そういう横溝小説の真骨頂と言えるだろう。小説最後の真犯人同士の生の会話に(しかも洞窟内)ブルブルゾクゾクしたのは俺だけではあるまい。金田一を卓越した名探偵として前面に出さないのも、人の素の精神状態に良かれ悪しかれ逆らえない作者の堅い態度からかなと思ったりする。 こういう小説を読むと、東野圭吾のような、生の人間性を描いているようなふりをして、結局キレイな物語に帰結させる(最初からその方向性で執筆する)それによって安易に読者の支持を得ようとする作家の軽さが浮き彫りになるね。特に白夜行なんぞその象徴だと思う。その点、横溝作品は長く語り継がれるに値するだけの力を持っているだろう。東野作品にそれはないと思うし、事実、俺がこうしてレビューを書いていることがその証明だ。 | ||||
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本格探偵小説ではある。 だが、私は犯人を知った時の驚きよりも、 その背後にある秘密を知った時の衝撃の方が大きかった。 異色作であり、横溝ファンにとっては、勿論、必読の作品である。 | ||||
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軽井沢というかつて上流階級の別荘地での事件。 金田一もの、たくさんありますが、その中でも名作と言って構わない面白さだと思います。途中で背景はなんとなく読めましたが、犯人はわからずでした。 伏線がしっかりしていて、読み応えも有り、場面は色々と変わっていくなかで、徐々に背景が明らかになっていきます。 読みながら、これドラマや映画でしかるべき人が作れば面白いだろうなと考えながら読んでいました。読了後、調べたところではドラマ化されていたのですね。これはそちらも見てみたい。 金田一が要所要所でしか登場しない作品もありますが、これはけっこうしっかり登場してきます。随所に出てくる金田一のお茶目な姿も愛らしい。 | ||||
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この”仮面舞踏会”現在も新刊書店で買えます。そちらの方が字も大きく、読みやすいですが、機会があれば解説の付いた旧版を、おすすめします。当時”宝石”編集長だった大坪直行氏が明かす、”宝石”への連載開始のいきさつ、一週間かかる原稿取りの 様子、連載の中断、数百枚の新稿を加えての十数年ぶりの完成等、編集者から見た 作品紹介が興味深いです。作品自体は横溝さん自身毎年避暑に行っていた、軽井沢 が舞台。横溝さんらしい、おどろおどろしい面はおさえられていて、そういうのが苦手な 人にもおすすめです。私自身はクリステイーの雰囲気があるなと思ったのですが、どう でしょうか。 | ||||
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基本的に横溝作品は、推理・論理展開という点からいえば、☆2つ3つが妥当であろう。しかし、それを補うストーリー・文学的要素が秀逸である。 構想に十余年、600ページというかなりの長編になっており、それだけ考えさせられる重みがある。「戦争前後」という時代背景、日本特有(?)の「家系」、普遍的な「人間の(名誉)欲」といったものが互いに絡み合い、真犯人へ相当の悲劇性を与えている。読後、戦争の悲惨さ、家系や名誉への欲の愚かしさを感じずにはいられない。 「犬神家の一族」や「八ツ墓村」がかなりの有名どころのため、埋もれてしまった感は否めないが、それらをしのぐ後年の傑作である。 | ||||
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大好きな演出家・星護さんが携わっておられた稲垣五郎主演のテレビドラマ版で『金田一耕助』に目覚め、今回ようやく原作本に触れたという申し訳ない程の横溝ビギナーです(市川昆監督の撮られた『犬神家』は観ましたが)。本書は何の事前情報もない状態で、店頭に並んでいるシリーズ本の中から一番面白そうなタイトルのものを選んだという運任せぶり。しかし、アマゾンのレヴューによればファンの方たちから評価の高い一冊を引いたようで、そこは幸運でした。 戦後の昭和期を舞台にした大分古い作品ですし、文章的に読みにくいのではと危惧していましたが、いくつか時代がかった表現や単語が見つかるくらいで、予想以上に読みやすいのに驚きました。まあ『金田一』なので、ホームズやポワロより全体の雰囲気がドロッドロしてはいますが、地文には作者一流のユーモアが散りばめられており、適度に心をほぐしてくれました。 トリック・伏線については、流石と唸らされる巧みで周到なものもあれば、「あれ、何かすごく重大な証拠が運と憶測に左右されてない?・・これで大丈夫なの・・?」という気がする腑に落ちきらないものもありましたが、全体としては腕の立つ作家にいいものを見せていただいたなと、至極満足でした。 やはり推理ものは観察力が鍛えられるし、あれこれ考えるのが楽しいですね(いくら観察してても決定的な証拠が見つからないという展開もままありますが)。ホームズやポワロもそうですが、名作推理小説は人間ドラマとして読んでも重厚にできているので、文学的な満足が味わえるのも嬉しいです。人間の心を事件と上手く絡み合わせて魅せる、名作家の手腕にグッときます。 次は皆さん絶賛の、『地獄島』に挑戦してみるつもりです。 | ||||
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金田一ものの一冊。 軽井沢を舞台にした連続殺人。旧華族、美貌の女優、彼女の元夫たち、オリエント学者、主人に忠実な元軍人などが入り乱れ、複雑な事件となっている。 登場人物、ストーリー、真相ともに正統派ミステリであり、期待を裏切られない一冊といえよう。 とても素晴らしいトリックも1つ、使われており、それだけでも読む価値があったと思う。 | ||||
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「仮面舞踏会」とは、どんな作品でしょう?クリスティでいえば「鏡は横にひび割れて」カーでいえば「緑のカブセルの謎」クイーンでいえば「十日間の不思議」・・・うまい例えとは言えないし、挙げている作品も適当でないかもしれませんが、ようするに超有名作ではないが、埋もれさせるのはもったいない・・・いや損失が大きい作品と云うところでしょうか?才能豊かで情熱あふれる作家は多くの傑作を残した為に、作品自体は傑作なのに取り上げられる機会が少ない作品があります。砂場に置かれたダイヤは、目立ちますが、宝石店のケースに収められると一個一個のダイヤの印象が薄くなってします・・・何たる悲劇。 多くの男と結婚した経歴を持つ女優を巡る事件・・・スケールが大きく大作(文庫を片手で持つと重い)であり読みごたえ充分。大きなトリックはないが細かいトリックが鏤められていて、人間関係自体が謎を作るあたりは晩年のクリスティを彷彿させます。後年、横溝はクリスティについて数多く語っていますが、ミステリを書き続けるにあたりクリスティ的な行き方に共鳴したでしょうか?もっとも、しっかり「横溝ワールド」を作り挙げている当たりは、さすがと言うべき。現代の中堅本格ミステリ作家「法月倫太郎」氏の作品は好きでよく読むのですが、クイーンやロス・マクの影響が分かりすぎる・・・どうもこの辺がいつも引っかかる。難しい。もっとも法月氏がダメというより、横溝正史が偉大と言うべきでしょう。 「獄門島」など比べると、無駄だな部分、説明不足がある気がして、その辺が不満なので星4にしましたが、星5の評価の人がいても一向に不思議でないで出来です。物語も最後に至り、真犯人と金田一が対峙する。このシーンは名場面です。この犯人像を創造しただけでも一読の価値あり、一連の金田一シリーズとは一味違う犯人です。戦後すぐに書かれて一連の作品と戦後二十年以上後にかかれた作品である本作。横溝の心境が変わったのか?時代がかわったのか?興味がつきません。 | ||||
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著者の膨大な作品群の中では、すっかり忘れ去られてしまった感があるが、紛れもなく晩年の横溝正史が生み出した名作の一つに数えられるべき作品。雑誌での連載と中断、その後十数年の時を経て、新たに800枚の書下ろしを加えて文庫570頁の大作となったが、大作の名に恥じない。 著者の小説の柱の一つである没落華族の世界が舞台の中心なので、当然、もう一つの柱である、古くからの因習が色濃く残る農村は描かれていない。しかし、それ以外の横溝正史の小説を構成するすべての要素がこの作品に詰まっていると言っても過言ではない。 それも非常に濃厚だ。ドロドロでグチャグチャ。作品全体がネットリとした異様な雰囲気に覆われている。憎めない脇役や著者独特のユーモア、そして飄々とした金田一耕助の魅力をもってしても、それを取り除くことはできず、その雰囲気に飲み込まれてしまっている。しかし、詰め込みすぎは感じない。圧倒的な感じだ。 探偵(推理)小説としても、数え切れないほどの細かな伏線が張り巡らされており、非常に読み応えがある。何度読んでも飽きることがない。ある人物の唐突な告白により事件が急展開してしまうのが難点といえば難点かもしれないし、それはチョッと無理があるのでは?という点がないではないが、まぁそれもしょうがないかと思えてしまうほど、この作品は素晴らしい。ラストシーン間近の「真」犯人と金田一耕助の静かな対決も出色の出来である。 多くの有名な作品の陰に隠れてしまっているが、それらの作品で著者のファンになった人に是非とも読んで欲しい一冊。 | ||||
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「仮面舞踏会」というから、軽井沢の別荘で元華族などが仮面をつけてパーティーでもしてその中で殺人が起るのかなあ、と思っていたら全然違う話でしたw。もちろん、最後まで読めばちゃんと意味がわかりますが。 ストーリーはしっかり出来ています。何気なく読んでいたいくつかの設定が実は非常に重要な意味を持っていたことが最後にわかったりします。ただ、最後にはっきりと解明されないまま残る部分があるのが残念でした。 | ||||
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