■スポンサードリンク


仮面舞踏会



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

仮面舞踏会の評価: 4.22/5点 レビュー 27件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.22pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

読み通すのは辛い

主要な登場人物の一人は鳳千代子で、彼女は次々に四人の男と結婚し、離婚しているのだが、その元夫たちが次々と死んでいくのである。彼女の二番目の夫 槇恭吾が青酸カリで殺されたところから、物語が始まる。

 この小説は、根本の着想は悪くないが、出来が悪い。傑作である『犬神家の一族』、『八つ墓村』、『獄門島』などと異なり、この小説は会話主体で書かれているのだが、その会話内容にミステリーの筋(誰がどういう理由で、どうやって被害者を殺したか)に関係しない部分が多すぎるのだ。筋に関係する会話でも、無関係な内容がかなり差し挟まれていて鬱陶しい。

 「第9章 A+Q≠B+P」で、刑事二人と金田一耕助がバーで学生二人から殺された槇恭吾について話を聞いたときの、学生たちは互いが相手をおっちょこちょいなどと批判しあうところは読んでいて苛々する。

「第15章 操夫人の推理」では、被害者の一人津村真二が住んでいる貸別荘の大家 樋口操と、その友人で、鳳千代子の二番目の夫 阿久津謙三から離縁された妻 藤村夏江の会話はひどく長いが、ほとんど全部筋と関係がなく、読んでいるのが辛い。うんざりする。二人の会話の内容はバカバカしく、滑稽で、読者を笑わせるために書かれているらしいので、横溝はミステリー仕立てのコメディを書くつもりだったのだろうかといぶかしむくらいである。無論、この小説はコメディにはなっていない。(上記の学生二人の会話も読者を笑わせるためだったのかも知れないが、笑えるほど面白くはない。)

 主要な登場人物に、鳳千代子の現在の恋人である飛鳥忠熈という実業家がいる。彼の関係者が数人いて、その関係者がどういう人たちか、お互いをどう思っているのかについての説明にかなりの紙幅を費やしているのだが、それらは事件と関係がないのである。関係ないに違いないということは、(犯人が誰であるか分かるずっと前に)その記述を読んでいる時点で分かる。読むのがバカバカしくなる。

「第12章 考古学問答」では、飛鳥の知り合いである考古学者の的場英明が主要登場人物の鳳千代子にインダス文明の遺跡について説明するのに8ページも費やしているが、これも事件と関係がないのだ。

 おそらく、むだな記述を省けば、長さは半分くらいになったはずだ。筋と関係がない記述や会話が多すぎるので、犯人につながるであろう重要な情報を忘れてしまいそうになる。

 この小説には、筋の上でもおかしな点もある。

 ミステリーでは登場人物は合理的な行動をしなければならない。合理的でない行動をする場合、その理由が提示されなければならない。たとえば、その人物が死体を見て気が動転したとか、その人物は頭が悪いとかである。ところが、刑事が合理的な行動をしないのである。

「第13章 目撃者」で、槇恭吾がそこで殺されたと思われる津村真二の貸別荘に刑事たちと金田一耕助が入って内部を捜索した。別荘には、お手伝いさんの部屋の天井板をずらしてはいる、隠し部屋があり、そこに津村の死体が置かれていたのだ。ところが彼らは隠し部屋の存在に気づかないのである。

 「第24章 操夫人の冒険」で、貸別荘の大家 樋口操と藤村夏江が津村の借りている貸別荘に入り込み、屋根裏部屋に上がって、津村の死体を発見する。刑事たちは、樋口を見張っていたため、ようやく隠し部屋の存在に気づき、津村の死体を発見するのである。

 隠し部屋であるとは言え、津村が失踪して、いつも使っているパイプが別荘に残されているのを発見しているのだから、津村が殺されている可能性を考えてよいはずだ。そうであれば、多数の警察官を動員して、別荘をもっと入念に調べてよかったはずである。

 この小説では、赤緑色覚異常が重要な役割を果たす。第26章「悪夢」に載っている、槇恭吾が作ったマッチ棒を使った図(521頁)は、伴性劣性遺伝である赤緑色覚異常を有する男性から生まれる、子の代と孫の代の色覚異常者と非色覚異常者を表しているということになっているが、この図は正しくない。

 赤緑色覚異常は伴性劣勢遺伝であり、男性の場合はX染色体に赤緑色覚異常の因子を持っていれば色覚異常が発現し、女性の場合、2つのX染色体の両方に因子がある場合にのみ色覚異常が発現する。片方のX染色体だけに因子がある場合は発現しない。

 槇恭吾のマッチの図のように、男性だけを親の代に持ってくるのでは、赤緑色覚異常の遺伝をうまく説明できないはずだ。保因者の男性と非保因者の女性の組み合わせ、保因者の男性と保因者で赤緑色覚異常の女性の組み合わせ、ならびに保因者の男性と、保因者であるが赤緑色覚異常でない女性の組み合わせを図にした方がずっと分かりやすい。

 赤緑色覚異常の原因となる遺伝子はX染色体上に存在する。赤緑色覚異常因子を持つX染色体をx(スモールエックス)、因子を持たないX染色体をX(ラージュエックス)で表すことにする。

 非保因者の女性[XX]と保因者の男性[xY]から生まれる子どもの組み合わせは、女性[xX]、女性[xX]、男性[XY]、男性[XY]となる。色覚異常が現れるケースはない。

 保因者であるものの、色覚異常が現れていない女性[xX]と保因者の男性[xY]から生まれる子どもは、女性[xx]、女性[xX]、男性[xY]、男性[XY]となる。女性[xx]と男性[xY]に色覚異常が現れる。

 保因者であり、かつ色覚異常が現れている女性[xx]と保因者の男性[xY]から生まれる子どもは、
女性[xx]、女性[xx]、男性[xY]、男性[xY]となる。4ケースとも色覚異常が現れる。

 マッチの図では、子の代には、女性の色覚異常者が2人、女性の非色覚異常者はなし、男性の色覚異常が1人、男性の非色覚異常者は3人となっている。これは、上記の性染色体を使った説明のどれにも当てはまらないし、上記3つの場合分けを足した場合にも当てはまらない。横溝正史は、赤緑色覚異常の遺伝が正しく理解されていなかった時代に書かれた本を参照したのかも知れない。
仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)Amazon書評・レビュー:仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)より
4041304385
No.2:
(3pt)

ホラーな印象が強いです

金田一ものには犯人の正体が露見した際にその容貌が豹変するものがいくつかありますがこれもその一つですね、でもちょっと現実離れした描写なのでホラーっぽいです。
ストーリー的には最後の方で重要な証言をまとめて披露する人が出たり、登場人物の一人が伴性劣性遺伝の保因者ではないことを証明出来ていない(実際DNAを調べでもしないと困難)辺りがやや残念な感じです。
心中の片割れの行動の動機もももうひとつ納得し難かったです。
精神の均衡を崩しちゃう人のきっかけも自業自得とは言えそれだけで?って感じでした、心臓麻痺でも起こしたのであれば分かりますが。
軽井沢の別荘地の描写は好きなんですけどね。
仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)Amazon書評・レビュー:仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)より
4041304385
No.1:
(3pt)

読後感があまり・・・

読んでいる間は「誰が真犯人なの?!」とワクワクしましたが
最後まで読んだ個人的な感想は犯人が気の毒でとても空しかったです。
推理小説ですので殺人事件がないと物語が始まらないのは判りますが
そうなるまでの生い立ちが可哀そうでなりません。。。
もっと違う憎々しい人が犯人だったらよかったです。
「犬神家・・」や「八つ墓村」は何度となく読み返しますが
この作品は1度で十分です。
個人的にはスピード感あふれるはちゃめちゃな「三つ首塔」がおすすめです。
仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)Amazon書評・レビュー:仮面舞踏会 (角川文庫―金田一耕助ファイル)より
4041304385

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!