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沈黙
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沈黙の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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「哀惜」(2023/3月)に続く<マシュー・ヴェン警部シリーズ>第二作。舞台は、英国、ノース・デヴォン。探偵は、バーンスタブル署の警部、マシュー。ジェン・ラファティ部長刑事が友人の判事、シンシア・プライアのホーム・パーティで保健分野で働くナイジェル・ヨウに話しかけられます。彼は警察関係者からアドヴァイスが欲しいと言いつつジェンがかなり酔いが回っているのを察してその場を離れてしまいました。そしてその翌朝、ナイジェルは死体となって発見されます。ナイジェルは<ノース・デヴォン患者協会>で働いていましたが、死の直前、<国民保険サービス>を相手取った苦情について調査を進めていました。背景に或る自殺した青年の家族の申し立てが存在していました。そして、バーンスタブル署が懸命に捜査を進める中、もう一人の関係者の殺人事件が発生します。果たしてそれは連続殺人事件なのか?誰が?何故?パズラーですから、詳細は省かせていただきます。 美点は数々あります。 限定的であれ、ノース・デヴォンの美しい土地とその風景描写。 英国の医療事情と"Gentrification"についての考察がなされていること。 マシュー、ジェン、ロス等刑事たちのリアリティ溢れる生活の中で繰り広げられる捜査、その狭間に漂う生きることの綾。 いくつかの家族が織りなす罪悪感と苦悩に満ちた人生の機微。 依存対象を超えて依存症者の真実を言い当てているように思えること。 就中、マシューとマシューの同性の夫、ジョナサンとの繊細な関係が丁寧に描写されています。 特筆すべきはジョナサンが精神的トラウマを理解するジェンをこう描写しています。 「被害者には、気が済むまで時間を使い、独自の癒しの過程をたどることが許されてしかるべきだ、人はみなそれぞれに違うのだから」(p.178)。 古い話で恐縮ですが我が国の映画作家、木下恵介による”しとやかな”映画群を想起させ、アン・クリーヴスは信頼できる視点を持った成熟した作家であることを証明しているように私には思えました。 逆に気になったことを2点、書こうと思います。 「沈黙」という邦題は、解せません。原題の叙情に遠く及ばない。 ITのスペシャリスト、スティーヴがDark_Webを渉猟し或る人物の名前を探り当てますが、(これについては何もアン・クリーヴスの著作に限らず)そのアプローチについて少しでも具体的に描写すべき時代になったと思えたりもしました。どうやってそれを見出したのかを書くべきでしょう。 パズラーとしては、細かいロジックを積み上げながら、堅固で美しい土地のようなアーキテクチャを創成しています。申し分ありません。 ◻︎「沈黙 マシュー・ヴェン警部 "The Heron's Cry"」(アン・クリーヴス 早川書房) 2025/4/24。 | ||||
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