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(短編集)
謎の香りはパン屋から
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謎の香りはパン屋からの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.07pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全21件 21~21 2/2ページ
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結論!さすが、大賞だけがあって面白い! 私の想像を遥かに超えた作品でとても満足。 【第一章】焦げたクロワッサン 【第二章】夢見るフランスパン 【第三章】恋するシナモンロール 【第四章】さよならチョココロネ 【第五章】思い出のカレーパン 【エピローグ】 第23回「このミステリーがすごい!』大賞選考結果 第24回「このミステリーがすごい!』大賞募集要項 本作は、パンの香ばしい匂いと、人々の賑やかな声が絶えない店内を舞台にしたミステリー小説である。 舞台となるパン屋「ノスティモ」は、オープンキッチンのために視覚的な魅力だけでなく、音の描写が際立っている点が特徴的だ。 例えば、トングがカチカチと鳴る金属的な響きは、どこか温かみのあるパン屋の空気を一瞬で生き生きと感じさせてくれる。 読者はその音を聞くだけで、ふわりと香る焼き立てパンの湯気まで想像できそうだ。 主人公の市倉小春は大学生でありながら漫画家志望という設定で、彼女の視点から描かれる物語は、ときにコミカルなほど観察眼が鋭く、事件が起こってもどこか冷静だ。 パンの生地をこねる「ごうんごうん」という分割機の低いリズムや、オーブンのタイマー音のわずかな狂いにも気づくほど繊細な耳を持つ。 こうした「音を手がかりにする」姿勢は、パン屋という空間が存分に活かされた本作のミステリー性を、さらに際立たせていると言える。 一方で、登場人物たちの個性も魅力的だ。店長の寡黙で職人気質な態度や、先輩である福尾さんのお茶目で関西弁混じりの明るさ、クールな雰囲気をまといながらも舞台俳優の話になると止まらない親友の由貴子――いずれも、店内に響く声や足音、そして何気なく交わされる会話からキャラクター像が浮かび上がってくる。 ミステリーでありながら、ほのぼのとした日常の空気感が心地よく、事件の謎と温かな人間模様が見事に同居しているのだ。 物語のポイントとなるのは、なぜ店長がパンを焦がすという初歩的なミスをしてしまったのか、その裏にある事情と、倉庫に隠された塩の謎だ。 パン屋特有の「香り」と「音」が、ただの背景描写にとどまらず、手がかりとして効果的に使われているので、読者は五感を研ぎ澄ませるような感覚で推理に没頭できる。 さらに、各章ごとに登場するパン――クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン――それぞれに込められたエピソードが物語のバラエティを豊かにし、飽きさせない。 終盤で明かされる店長の過去と、海外での経験をめぐる暗号は意外性に富み、軽快なパン屋の日常から一転してサスペンス感が生まれる。 これによって、ささやかなヒントを見逃さない主人公の観察力が最後まで輝きを放ち、事件が解決したときには爽やかな余韻を残す。 総じて、本作はパンの香りに満ちた温かな世界を存分に味わいつつ、巧妙に仕掛けられた謎を解き明かす醍醐味を堪能できる秀作ミステリーである。 パン好きにはもちろん、コージーミステリーのファンにも大いにおすすめしたい一冊だ。 | ||||
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