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太陽の簒奪者
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太陽の簒奪者の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全33件 21~33 2/2ページ
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冒頭女子高生が登場しますが,ライトノベルではありません。 同じ作者の「ロケットガール」シリーズのような,ライトなノリはありません。 異星生物とのファーストコンタクトを真正面から描いています。 人間ドラマもありますが,起こり得る未来を科学的視点で描くことに力が入れられています。 どのようなファーストコンタクトが起こり得るのか,高度に進化した生命の形態・生体 はどんなものなのか,選挙演説など知的生命の活動と蝉の鳴き声などの自然現象の境界 がどこにあるのか,といった問いかけもあります。 ファーストコンタクトというありふれたテーマを扱い,地味な問いかけをしている 本のように思われるかもしれませんが,興奮しながら読める内容です。 科学知識に裏打ちされた圧倒的事実の積み重ねでストーリーが展開されてゆきます。 次から次へと起こる予想を超える事態に圧倒され,興奮させられます。 | ||||
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人工知能研究華やかな時代に情報工学を学んだ世代として、「知性とは何か」を問うSFは今でも私にとってもっともエキサイティングなジャンル。 スペースオペラは別にして、現代SFでは「異種知性体」というのは、まず意思の疎通が出来なくて当たりまえ、として描かれることが多く、逆に会話が通じるとすれば何か余程のわけがあるというものだ。 現実の科学的トピックスとしては系外惑星の発見が相次ぎ「地球外生命が存在する可能性は高まっているが、電波望遠鏡を使った地球外文明探索(SETI)は、なんの成果も無いまますっかり下火になる一方。異星の隣人は無口らしい」 という認識はすっかり定着しているのではないか。 野尻氏のSFは「沈黙のフライバイ」も本作も、無口な異星人(文明)といきなりフィジカルなコンタクトしてしまうのは、そんな現代の科学的状況が土壌になっていると思う。つまり、現代科学界のムードそのものだ。 ネタバレしては詰まらないので結論には一切触れないけれど、タイトルの「太陽の簒奪者」というのは、ある日「水星」に出現したマスドライバーから発射された物質が、見る見るうちに太陽の黄道面を取り巻く帯状の構造に成長し、やがて幅を広げて成長したそれが地球にとって永遠の夜をもたらすことが判明する。…というオープニングの状況を指している。 物語はそのリングの正体を研究するところからスタートするのだが、この描写の緻密さが素晴らしい。 リングといえばL.ニーヴンのリングワールドを筆頭として既知のアイディアではあるし、その素材が「ナノマシン」であるというのも、珍しくは無い。 だが野尻氏の緻密な書き込みは、SFというより、科学雑誌で最新トピックスを読むような実体感がある。 ナノマシンなど、たいていのSFでは単なる「魔法の粉」の代用品として使われて、どちらかと言うとファンタジー属性だと思うのだが、この作品の中では「植物の細胞」のようなものが「遺伝的プログラム」で制御されて「マクロな構造」を組織しているという設定で、今の科学の延長で実現できる見込みは薄いにしても、高度に発達した科学の世界で想像できる仕組みが緻密に描写されている。 一方「リング」そのものも既に有名なアイテムだけれど、これが「薄膜が光の圧力で位置を保っている」仕組みはなんだか先端的で面白い。 リングが太陽に対して公転していないことが、後でちゃんと意味を持ってくるのも「腑に落ちるSF」を構成する要素だ。 リングの正体があきらかになった後は、人類と全く異なる知性がいきなり太陽系に向かってやってくる話。 こいつが、「現在接近中」という傍証はありながら、どんな呼びかけにも応えずただ黙々と宇宙を飛んでくる不気味さが良い。 高度に発達した恒星間文明は、果たして敵か味方か。定番のテーマにがっつり取り組む科学者の試行錯誤を見守るのは、推理小説的な感興がある。 結局のところ異星人の正体も、存在形態も、奇想天外というよりは、最新の科学トピックスやSF的にオーソドックスな手法の組み合わせで理解できるように書いてあるが、「一つのオリジナル」に命を吹き込むためには、これだけの「リアリティの地層」が必要なのだ、ということが理解できる。 まさに鉄板系ハードSFだ。 | ||||
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ハードSFが苦手、と思っている方も、第一部「太陽の簒奪者」だけでも読んでみ てください。そこで合わないと思う方は止めてもいいと思います。 余分なところをそぎ落とした、淡々とした記述で4億人が餓死する人類の危機と 「リング」に対する苦闘を描いており、圧巻です。 そして、それも物語の1/3程度にすぎないという…… 元来、自分はいわゆる「ハードSF」は好きではありません。ハードSFは、世界を描 くことに注力しすぎて、世界の中で人がどう思い、行動するのかにあまり興味がな いから。自分のハヤカワの海外系SFに対するちょっとした拒否感というのも(昔は 翻訳がまずいのが多かったということもあるけど)そこらへんに起因するような気 がする。 この作品でも、もっと人物をちゃんと描いてほしいなーと感じたところはありまし たが(たとえば主人公・白石亜紀とマークの関係とか、亜紀の苦悩とか、ラウルと の関係とか、もっと丁寧に描けば更によかったと思う)、そうするとこの疾走感は 出なかったのかなーとも思うし。 アニメ化とかしてほしいなー。プラネテスみたいな感じで。 なお、巻末にある「ハードSFの正念場」と題した稲葉助教授の小論も非常に興味深 く読みました。これで640円(税抜)はお買い得だと思います(最近の文庫は高いん だけど)。 | ||||
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誰かも書いていたがホーガンの“星を継ぐもの”の匂いがあるが、ストーリー展開、場面描写ともにハードSFとして世界的に見ても一級の作品だと思う。連作になりそうもない点がやや残念。同じ著者の他の作品を読むことにするか。 | ||||
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コンパクトなボリュームで、太陽の光をさえぎるリングの出現と破壊ミッション。そしてリングの建設者への探索と抵抗といった内容が盛り込まれています。 政治的な背景説明や、混乱した社会情勢、登場人物たちの心理描写や思弁に関する書き込みが不足しているという見方も出来るかもしれませんが、コンパクトにセンス・オブ・ワンダーな世界を見せてくれる本書は広く薦めることの出来る傑作でしょう。 SFというジャンルにくくられることで、理学、工学よりの専門用語の氾濫を気にされる方もいると思います。確かにその手の言葉は多く出てきます。しかし、よほど字句の意味をいちいち気にする人で無い限り、読み飛ばしてもストーリーの理解に支障は無いと思います。むしろこの作品の最大のワンダーは、認知科学寄りのことなので、そちらに関心のある人のほうがしっくり来るのではないでしょうか。 | ||||
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ホーガンなど単純なハードSFは、ウーン、と思いながらも結局は楽しんでしまう。 この作品も同じで、優れた人物描写やストリーテリングを期待したら駄目かもしれない。 文学的価値とSF的価値とは別物、という気持を持てないと厳しい。 主人公がいとも簡単に問題を解決してしまうところと、結末があっけないところは気にくわなかったが、SF的アイデアは満載で、またテンポも良く、SFファンならとても楽しめる佳作だと思う。 | ||||
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~よみやすさは、クレギオンシリーズへと続く野尻氏の良い特徴だろう。 しかしながら、読み応えというかなんというか、どこか物足りない。 2006年から2041年まで描ききるにはとても十分な文章量には思えず、もっと様々なドラマが描けたように感じてしまう。 アイデアというか、そちらの方が抜きん出ている作品ではないか?~ | ||||
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~宇宙関係のSFが好きで、色々な作品を読んでますが、ふらりと購入したこの作品は、 水星で始まった事件からラストまで、なるほど・・と思われる展開で読者を引っ張り、 良く書けた作品だと思いました。 ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」と同一な匂いがしますが、 この事件に関わった女性の視点から物語は書かれており、 現代の科学が行き着くで~~あろう、ナノテクノロジー・人工知能などの技術を使用しての 話の展開の為、物語に(SFですが)リアリティーがあります。 宇宙を舞台としたSF好きな方には、お勧め致します。 是非、読んでみて下さい。~ | ||||
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一気に読ませるテンポの良さと、物語自体の面白さが際立って いる快作です。 もっともっと書き込んで大作にも出来たと思いますが、ストー リーだけをテンポ良く追わせる映画的な展開で、物語の面白さ が最大限に引き出されていると思います。 逆にストーリーにかなり依存しているとも言えますが、そのス トリーが抜群なので、もはや言う事はありません。 著者があえてこの形を選択したのですから、これがベストなの だと捉えています。 内容はコアなSFファンでなくとも分かりやすく、誰にでも自 信を持ってお薦めできる一作です。是非読んでみて下さい。 | ||||
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前半は、突如水星から現れた太陽をとりまくリングの謎と、日照不足により破滅寸前の人類を救うため、リング破壊を目指す人たちの話。後半は、リングを作った異星人との遭遇を描きます。 前半、後半とも主人公の女性科学者の成長とからめて、物語が進行していきます。 緊張感で一気に読みました。前半は、自己増殖、自己修復するリングの謎、近づく物体を迎撃するリング、それを人類は破壊できるのか?主人公の乗る宇宙船の運命は・・。 後半は、人類からの連絡を無視して近づく異星人、近づくもの無言で迎撃する異星人、彼らの正体は?彼らの目的は?人類の運命は?とスリリングな内容です。 静かに、そして緊張感の中で進む物語の中に、主人公の宇宙や異星人に憧れ、仲間の死など叙情がある本です。! ストーリーもGOODですが、知性とは何か?思考とは何か?生命とは?と多くのことを語りかけてくれる本でした。 科学技術のテクニカルな部分も、素人にもわかりやすく、読みやすい本でした。 | ||||
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某ランキング雑誌で1位を獲得していたので、即座に飛び付いて読んでみましたが、私の評価としては可もなく不可もなし、及第点というところでした。 ベースとなる着想や、全体的なストーリー構成は素晴らしいポテンシャルを秘めていると思うのですが、それぞれの展開や登場人物がじゅうぶんに語られず、十数ページごとに「‾ヶ月後」「‾年後」にポンポン飛びながらクライマックスを迎えてしまったので、世界の厚みや深みが感じらませんでした。 感想としては、良くいえば「傑作SFのダイジェスト版」、悪く言えば「印象に残らない佳作」というところです。それぞれの展開をもっと深く語ってくれたら、相当面白い内容になったと思うだけに、残念です。逆に、焦らしや溜めがイライラして苦手だという方は、すらすらと読み進められて楽しめるかもしれません。 | ||||
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「乗りたそうだね、白石君」 「乗りたいです」 「放射線漬けになるよ」 「いいんです」 冒頭近く、主人公と指導教官の会話であるが、一度でも宇宙を夢見た者であれば、これだけで感情移入のトリガーに不足はないだろう。本書は、このように「ぐっ」とくるセリフにこと欠かないのである。本格SFはこうでなくてはいかん。 SFマガジン掲載時からは本当にずいぶん加筆されていて、よい方向にで大変身している。読みごたえ抜群。でも長すぎないのでちょうどいい。 | ||||
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SF作家・野尻抱介、渾身の傑作。 野尻の世代はSFを呼吸して育った。生まれる前からSFマガジンが存在した。幼い頃にウルトラマンが生まれた。思春期にスターウォーズが襲来し、空前のSFブームが巻き起こる中、ハヤカワや創元、角川の文庫をむさぼり読んだ。学生時代にはRPGの洗礼を受けた。パソコンばかりかファミコンまでが生活の一部となった。 いまやSFは我々の血肉であり、ことさらに意識することさえなくなった感もある。 そんな中で、野尻は、彼が「本物のSF」と信ずるヴィジョンを提示し続けた。どのような舞台で、どのような衣装をまとっていても、中身はすべて硬質かつ高貴な純粋無垢のSFであった。 そんな野尻が、玄人のために、全身全霊を込めて書いたSFが本作である。 本作の基となった同名の短編は、雑誌「SFマガジン」増刊号に掲載された。なんとスペースオペラ特集号であった。 スペースオペラとは、ヒーローがレーザーガン片手に美女を守り、宇宙怪物と戦う……みたいなストーリーが基本である。痛快で楽しいが、いささか古めかしいのも事実だ。が、その骨董品を、正確な科学知識と簡潔無比なハードボイルド文体が特徴の野尻に書かせたら、どうなるか。 大傑作となった。 この驚天動地、ドラマチックな闘争と挑戦の物語を、野尻は激することなく淡々と描く。筋金入りのポーカーフェイス。しかし、選び抜かれた言葉はいずれも的確に働いて、常識の鎧を砕き、心を揺さぶる。 日本が誇る最高水準の作品だ。英訳される日が待ち遠しい。 | ||||
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