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神
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神の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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単行本で168頁の小冊子であるが、安楽死をめぐる重い倫理的議論が展開されている。 ドイツでは2015年に連邦議会が自死の介助を医師が行うことを処罰する法律を制定したが、2020年に連邦憲法裁判所がこれを違憲無効としており、本書はまさにホットなテーマを扱ったものといえる。 医師の臨死介助のうち、①消極的臨死介助(延命医療の中止)、②間接的臨死介助(緩和ケアの投薬で死期を早める)は日本でも容認されているが、③自死を希望する者に安楽死用の薬剤を投与する自死介助まで容認できるのかどうか? 実は、欧米諸国の多くは③の自死介助まで容認している。その根拠は啓蒙合理主義に由来する「自己決定権」であるとされる。 本書では、まず著者シーラッハが戯曲で問題を提示する。自死を希望するのは健康体でありながら妻に先立たれて生きる意欲を失った高齢者であり、これに対し倫理委員会が参考人として法学、医学、神学の代表者を聴取して議論を交わすという展開だが、結論は示されない。付録として、倫理学と法学の立場から3本の論考が掲載されているが、いずれも自死介助を肯定するものである。 本書の表題が「神 GOTT」とされていることを見れば、自死介助の否定論は生命は神のものという宗教倫理が最も大きいと著者は考えているようだが、戯曲の神学者と弁護士の論争は全くかみあっていない。 むしろ、医学者との議論に示される、実際に介助する医師の立場のほうが大きな問題であろう。自死について本人に自己決定権があると考えるとしても、それは他者である医師に介助を求める権利まで含むものなのか。ヒポクラテスの誓いの下で患者の生命を守ることを職業的使命とし、癌や終末医療でも患者の良き生を配慮する医師の医療実践と自死介助は大きな矛盾がある。 現実問題としては、戯曲で提示される健康体の人の自死(精神病ではないとされるが、うつ状態の希死念慮と診断されてもおかしくなかろう)や、致死的でない不治の病を患う若者の自死まで医師が介助すべきなのか(ベルギーでは未成年者でも自死介助が認められるという)、さらにはナチス時代に行われた「生きるに値しない生命」の排除(障害者30万人が殺害された)まで行き着かないのかという疑問は当然あるだろう。重度の障害者や認知症患者に「安楽死」を求めるという考えは優生思想そのものだからである。 高齢化社会の下で、医療負担軽減や家族の介護負担の圧迫で「自己決定」が事実上強制される懸念も当然ある。いわば、現代版「姥捨て山」である。 ちなみに、本書でも引用されている「清算自殺」を提唱した医師ホッヘと法学者ビンディングの安楽死に関する議論については、『新版「生きるに値しない命」とは誰のことか ナチス安楽死思想の原典からの考察』(森下直貴ほか編 レビュー済み)に詳しく紹介されている。 | ||||
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