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(短編集)

恐怖



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恐怖の評価: 3.83/5点 レビュー 12件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.83pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全12件 1~12 1/1ページ
No.12:
(3pt)

怪奇小説家としてのマッケンをリスペクトした傑作集

ヴィクトリア朝時代の英国ウェールズに産まれた稀代の作家アーサー・マッケン。牧師の子であったがアーサー王伝説の色濃いウェールズで育った故か、神学と同時に隠秘学(オカルト)にも傾倒し、前期はケルト神話やギリシア神話をモチーフとした幻想的な怪奇小説を連続して発表したが、いずれも当時の価値観に合わず「不道徳な■■文学」として批判された。第一次世界大戦を経験した後、後期には主にエッセイや犯罪実録を執筆するようになる。
 本書はその怪奇小説家としてのマッケンをリスペクトした傑作集である。以下、なるべくネタバレ無しの各話感想。
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『パンの大神』
 医者が真実を求めて行ったある実験。裕福な農家に養子としてもらわれた少女の周囲で起きた奇妙な出来事。ロンドンで続発する変死事件。これらをつなぐミッシングリンクとは。「パンの大神」とはいったい――?
(当時の宗教的道徳観により描写自体は曖昧な仄めかしに徹しているが、それでもと言うべきかそれゆえにと言うべきか、インモラルなエロスを感じる作品。余談だが、パンの大神というイメージはやがてシュブ=ニグラスの化身という体でクトゥルフ神話に取り込まれていく。)

『内奥の光』
 ロンドンの郊外にある田舎に住む医者の妻が変死する。解剖の結果、彼女の脳髄は人間とも動物とも異なる、悪魔のように異質なものだったという。話を聞いて興味を持ったダイスンは独自に調査を始める。はたして医者の妻に何が起きたのか――。
(マッド・サイエンティストもの。当時の「家庭の天使」という価値観を鑑みれば、道徳を説きながらもそれを承知することになる妻に対して、ただただ憐憫の情しかない。)

『輝く金字塔』
 ダイスンの元を旧知のヴォーンが訪ねてくる。ここ最近、家の前にある道に、時々石のかけらで奇妙なシンボルが作られているという。そのかけらが大昔の石のやじりであることに気付いたダイスンは、好奇心からこの奇妙な事件を調査してみることに――。
(作家探偵ダイスンものの一編。クライマックスの描写には独特の猥雑さがあり、そういうものが好きな人には一読の価値はあるだろう。本作を含めてマッケンの作品に時々登場するこのような小さい人々は、やがてヴーア族としてクトゥルフ神話に取り込まれていく。)

『赤い手』
 ダイスンと友人のフィリップスは夜の散歩中に他殺体に出くわす。地面には凶器と思しき石斧が、壁には赤いチョークで書かれたハンドサインのようなものが描かれていた。調査を始めたダイスンは犯人を見つけることができるのか――。
(作家探偵ダイスンものの一編。序盤から終盤まで推理小説の体で話が進むので、なぜこれが収録されているのかと思いきや、その結末に、なるほど収録されるわけだ、と首肯。)

『白魔』
 緑色の手帳に残された少女の手記。幼少の頃より人ならざる存在を認識していた彼女はある日、迷い込んだ森のなかで「白い人」に魅せられたことを機に、この世ならざる世界に足を踏み入れるようになる――。
(東雅夫曰く「マッケン流妖術小説の極北」。怪奇小説ではあるが、どちらかというと少々恐怖演出のあるファンタジーの体でなんとも幻想的な作品。本作で散見されるアクロ文字などの独特な単語は、やがて形を変えてクトゥルフ神話に取り込まれることになる。)

『生活の欠片』
 平凡な銀行員であるダーネル。ある日、妻の叔母から百ポンドの小切手が送られ、妻と使い道について意見を重ねていく。また、空き室を誰に貸すかという問題や女中の交際相手に対する問題、更に叔父の浮気疑惑まで飛び出し、ダーネルの周囲は俄に騒がしくなっていく――。
(最初は平凡な銀行員の周囲で巻き起こる騒ぎを描いているだけと思いきや、所々に非日常的なナニカを飛び出させて、これがそういうものではないことをアピールしてくる。しかし不気味ではあるものの恐怖感は薄く、幻想的な不穏さを漂わせるに留まっている。そこまでの展開や結末を含め、ラヴクラフトを経験している人であれば受け入れやすい内容だろう。)

『恐怖』
 第一次世界大戦の最中、ウェールズの西のはずれにある片田舎で変死事件が続発する。はたしてそれは怪物によるものか、殺人鬼によるものか、それとも秘密裏に侵入してきたドイツ兵の新兵器によるものか。その地に満ちる「恐怖」とはいったい――。
(片田舎で続発する変死事件の顛末を描いた群像劇。未知の恐怖に翻弄されながらも手元にある情報を元に推理を繰り広げる地元民たちは、現代で言うなら、新種の流行病という「未知の恐怖」に翻弄される我々でもある。その「恐怖」は時代も場所も情報の過少も関係なく人の心を蝕む。最後の独白は戦争を経験したマッケンならではであろう。)
恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)Amazon書評・レビュー:恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)より
4488510035
No.11:
(4pt)

これは本当に「名訳」か?

とりあえず、オックスフォードのマッケンの短編集のペーパーバックと読み比べてみた。う~ん、確かに少し古い感じは否めないが、知的で凝った日本語は達意の訳と言えそうだし、プロの翻訳家の凄みを感じさせられる。が、文章の「論理」に限って言えば、何でそうなる?ってところが、あちこちにありますね。それがこの訳者特有の読みにくさに繋がっていると思う。一番感心したのは、ラテン語の部分の訳かな。残念ながらラテン語は読めないので、自動翻訳でいろいろ試したが、今一つしっくり来なかったのが、なるほど対比文だったのかと納得させられた。古典的恐怖に関心のある向きは、もちろん買いの一冊です。
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No.10:
(1pt)

オラは悲しい…

懐かしい作品集。読みたい。でも、字が小さくて読めない。いつまでこんな文字サイズで文庫本を出し続けるつもりなのか? 傑作を台無しにしている。悲しい。
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No.9:
(5pt)

読みごたえ充分。

マッケンの作品はほとんど絶版で入手困難なので、この作品でたときは喜びました。
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No.8:
(3pt)

訳に癖があり過ぎてのめり込めない

階級の違いによる言葉違いの差異を表現しようと、格調高い表現からべらんめえな表現まで入り混じるのは分かる。
でも、皆劇役者よろしく言い回しが大仰し過ぎてとてもわざとらしい。
「ブドー酒」とか、クリスチャンに「お陀仏」と言わせたりとか、その他諸々、訳者の癖が全面に出過ぎではなかろうか。

ストーリー的に面白みを感じるのに、訳が原因と思わしき違和感が頻出して、物語世界から頻繁に引き戻される。勘弁してほしい。
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No.7:
(2pt)

『夢の丘』を何で入れてくれないの?

夢の丘は品切れが長いので再販しないなら入れてくれれば良いのに。
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No.6:
(5pt)

珠玉のセレクション

既に平井呈一訳アーサー・マッケン作品集成全6巻(沖積社)を持っている立場でのレビューです
沖積社版は活字が古くてやや読みにくい部分も多く、何より大判6巻なので読破するのにかなり根気が必要でした
今回は全6巻から代表作を選りすぐり、活字は読みやすいものに改められ、素敵な表紙までついてます
作品の内容の良さについては既に折り紙付きですので、これは買いだと思います
恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)Amazon書評・レビュー:恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)より
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No.5:
(4pt)

「パンの大神」は一番よく知られている作品だと思うので、他の作品と差し替えてもよかったのかなと思います!?

アーサー・マッケンは、A・ブラックウッド、M・R・ジェイムスと並ぶ、
 近代英国怪奇文学の3巨匠と称されています。
 アーサー・マッケンの怪奇小説系の主要作は、
 平井呈一氏がかなり前にアーサー・マッケン作品集成全6巻(牧神社)として翻訳、紹介しています。
 マッケンは人気があるのかないのか分かりませんが、時折文庫として新訳が出たりしています。
 今回は、平井呈一個人訳の牧神社版が、底本として使われていて、
 パンの大神、内奥の光、赤い手など7作品が収録されています。
 平井氏の訳が古いとの指摘もあるようですが、例えば「パンの大神」などは19世紀末に書かれているので、
 それを現代風に訳してもその当時の雰囲気が出ないでしょう。
 その点平井氏の訳は、その当時の雰囲気がよく出ていてこなれた訳だと思いますよ!
 しかし、「パンの大神」は一番よく知られている作品だと思うので、
 他の作品と差し替えてもよかったのかなと思います。
 平井氏の怪奇小説では、「こわい話 気味のわるい話」(全3巻 牧神社)が出ていて、
 好評なら、次はこれの文庫化もあるのかな??!
恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)Amazon書評・レビュー:恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)より
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No.4:
(4pt)

平井呈一ファンのための作品集第2弾

一昨年の『幽霊島』に続いて、1976年に亡くなった翻訳家、平井呈一の翻訳を集めたもので、今度は彼が愛好していて作品集成も出したアーサー・マッケンの作品が7編となっています。
収録作は『パンの大神』『内奥の光』『輝く金字塔』『赤い手』『白魔』『生活の欠片』『恐怖』それとアーサー・マッケン作品集成の解説となっています。
平井呈一の翻訳に思い入れがある人は一定数いるようで、そういった人を対象にしている部分もあるのでしょう。
だからそうではない私にとって、ちょっと不満に感じる部分は『幽霊島』の時と一緒で、一部の翻訳に古さを感じる部分があること(これはしょうがない)と、新品でまだ手に入る作品を入れないで欲しいということです。
表題作と『生活のかけら』という中編2本に短い3編がプラスされた、光文社古典新訳文庫の『白魔』がまだ現役なので、ほぼ文庫本一冊の内容が被っているのです。
どちらかを先に読んだ場合、「翻訳を読み比べてみたい」ではなく「もっとマッケンの別作品が読んでみたい」と思う人の方が多いはずで、これは読者に不親切なことだと思います。
恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)Amazon書評・レビュー:恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)より
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No.3:
(5pt)

愛国精神溢れる作品群。

第一次大戰下の話を集めた作品集で、いずれも戰爭の影響が色
恐怖―アーサー・マッケン作品集成〈3〉Amazon書評・レビュー:恐怖―アーサー・マッケン作品集成〈3〉より
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No.2:
(5pt)

特に問題ありませんでした。

成集で欠けていたものをお願いしましたが、手持ちのものと比べても十分に綺麗なものでした。
恐怖―アーサー・マッケン作品集成〈3〉Amazon書評・レビュー:恐怖―アーサー・マッケン作品集成〈3〉より
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No.1:
(5pt)

ウェールズ人の底力(佐藤弓生)

記者として働いていたマッケンが第一次大戦中に書いた3作品を収める。『恐怖』は、厳しい情報管制下に置かれたイギリス各地で、原因不明の死が相次いで起こる様を描いている。その背後には、恰も自然の秩序そのものが人間に対する悪意を持って反逆して来たかの様な、或る驚くべき事実があるのだが、戦争下の内地の人間の不安がよく現れた作品である。『弓兵伝説』の方は主に兵士達を巡る幾つかのエピソードから成っているが、その裡の「モンスの天使」を巡る物語(『弓兵』)は、新聞に発表された当時、戦時下に於ける奇怪な現代の伝説のひとつとして、実際にあった出来事であったかの如くにヨーロッパを覆う噂となった。「この作品は失敗だ」とマッケンは言ったと云う。『大いなる来復』は一種の奇跡譚で、或る海岸町で何故か原因不明の善意が広まると云う事態を描いたもの。こちらは創元推理文庫の『怪奇クラブ』でも読むことが出来る。
 平井呈一による訳は所々統一感を欠き、今では誤訳とも読める言い回しが結構あるが、魔都ロンドンから発せられた怪異の数々の持つ独特の雰囲気は、彼の世紀末の帝都風味(江戸趣味?)を通すことによって、活き活きと日本語に再現されている。巻末の解説も訳者によるものである。尚このレビューのタイトルは各巻ボックスの背表紙から。
恐怖―アーサー・マッケン作品集成〈3〉Amazon書評・レビュー:恐怖―アーサー・マッケン作品集成〈3〉より
4806066796

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