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(短編集)
クライム・マシン
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クライム・マシンの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.70pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全23件 21~23 2/2ページ
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作者のジャック・リッチーは、ほぼ短編のみを350編も書き続けた、短編ミステリ職人だそうで。なんだか『ヒッチコック劇場』を観ているような気になる作品が多いがそれも道理、ヒッチコックマガジンやEQMMなどが主な活躍の場だったらしい。 とにかく文章を削る事に腐心した作風で、結果としてアイデアを綴る最小限の言葉しか使わない事が、時代を感じさせる単語をも排する事になり、普遍性をもたらしているのである。 印象に残ったものを挙げておく。 -)「歳はいくつだ」 余命くばくもない男が、最後にやりたかった事は。。。。重さや暗さを感じさせない痛快編であるが、ラストの悪魔的余韻が曲者。 -)「エミリーがいない」 人間心理の裏を読む対決モノなのだが、仕組まれたどんでん返しが痛快。81年のアメリカ探偵作家協会最優秀短編賞受賞作。 -)「罪のない町」 僅かなとりとめの無い会話から、悪の萌芽を漂わせる、まさに職人芸の逸品。 -)「カーデュラの逆襲」/「カーデュラと鍵の掛かった部屋」 本書に4作収録されている、カーデュラ探偵社シリーズから二作。世界的に有名なあの貴族を捩った、タフネスどころか不死身のオプ、カーデュラの奮闘編。仇敵である民俗学者の末裔に立ち向かうカーデュラのウィットに富んだ作戦が秀逸な「逆襲」。「鍵の掛かった部屋」は、知性とセンスが光る、密室モノ。 | ||||
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日本ではあまり知られていない作家です。 「このミステリーがすごい!」2006年海外編第1位ということなので、期待して手に取りました。 驚きました。衝撃でした! どの小説も、犯罪のにおいのする出来事が淡々と進行していき、おきまりの最終場面に行き着くかと思ったところで、信じられないようなドンデン返しが待っています。 とえば、アメリカでMWA賞というのを受賞した『エミリーがいない』では、“妻殺し”と思われる物語が進行します。 エミリーが不在になったことを不審に思う従姉が、少しずつエミリーの夫を追い詰めました。とうとう夫は夜中にスコップを持って、屋敷内のある場所を掘り始めたとき、懐中電灯の多数の灯りが周りを取り囲み……。 ありふれた物語でしたら、ここで死体が発見され、夫から殺人に至った事情が語られることでしょう。 しかし、ジャック・リッチーは違います。 実際に何が起こったかは本書を読んでいただくとして、あまりの意外な結末に「やられた!」と心の中で叫んでしまうことは間違いないでしょう。 他の短編も、最後の最後まで目が離せません。終わりのたった2行で、物語が正反対にひっくり返ってしまったものもありましたよ。 あの映画『スティング』のドンデン返しばかりを集めた本、と言っても、けっして嘘にはなりません。 どんな頭の構造をしていたら、こんな発想ができるのかなぁ。……と感心したのは、星新一のショートショートを読んで以来です。 「このミス」の過去のリストを見ると、映画でも大ヒット中のあの『ダ・ヴィンチ・コード』が、2005年度の4位にランキングされています。 たとえ大ヒットしても「4位」と位置づけるところに、「このミス」の真骨頂を見ました。 ふだんミステリーを読まない方も、この機会にお試しください。 | ||||
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既に物故者の著者が主に70〜80年代にかけて発表した17の短編を集めたアンソロジーです。それぞれの作品は犯罪ミステリーというよりはユーモア犯罪小説という毛色のものです。ですからまじめに考えるとそんなわけあるまいという都合の良い結末がほとんどですが、それでもヒネリのきいた奇妙な可笑しさをクスクス笑いながら味わえる小品集です。 表題作「クライム・マシン」では、ある殺し屋のもとへ「タイムマシンに乗ってあなたの殺人を逐一見ていたよ」と言う男が訪ねてきます。誰を何時にどうやって殺したかを詳細に語ってみせる男の言葉に、そのタイムマシンを手に入れたくなった殺し屋。本当にタイムマシンは存在するのか…。 その結末に私は実に小気味良く騙されました。 続く「ルーレット必勝法」もコン・ゲームとしてはなかなか良くできています。カジノで毎夜のようにルーレットにかけ、最後は大量のチップを現金化して帰る男がいる。彼はカジノの経営者に「私の必勝法を使えばあんたの店は商売あがったり。だから週に千ドル払ってくれることを条件に二度とこの店には来ないと約束する」と迫ります。そのルーレット必勝法とはいったいどんなものなのか…。 カジノ経営者の主人公の訝しげな気持ちに歩調を合わせながら見事に騙してくれる作品です。 しかし私が最も気に入った作品「歳はいくつだ」だけは、笑えませんでした。それはこの作品にユーモアが足りないという意味ではありません。私の心のどこかに、この物語の中で殺人を繰り返す主人公に強い賛意をおくりたいという気持ちが沸き起こったからです。殺人を肯定するような気持ちは許されるはずもないのですが、私のみならずおそらく多くの読者がこの殺人鬼に共感を覚えるのではないでしょうか。そんな我々の心の脆さを見透かされてしまったようで、なんとも落ち着かない気分にさせられます。そんな見事な構成を持つ作品です。 | ||||
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