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虚空遍歴



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虚空遍歴の評価: 4.16/5点 レビュー 38件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.16pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全38件 21~38 2/2ページ
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No.18:
(5pt)

周五郎 最高傑作(と思う)

色々な小説の売り文句で、最後の2行が!とか、最後のページで!
そんな煽り文句を見るけれど、虚空遍歴ほどその言葉が当てはまる本はない。

これほど、一人の人生を余すことなく、すべて書ききった作品を他にない。
だから、最後の数ページ、800ページを通じて生きた主人公の人生が終わる時、
命が終わることの絶望感を、これでもかと味わうはめになる。

ひたすらに不格好に、自分が信じる芸術を追い求めた、
主人公と周五郎が、重なっていく作品。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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No.17:
(4pt)

作者の中で異質な作品

最後まで厳しい内容でした。
文庫本あとがきにもありましたが、これは短編(端唄)の名手でありながら、
その地位に甘んぜず敢えて長編(浄瑠璃)に挑む作者の姿勢なのかもしれません。
時に狂気的とも言えるあまりに厳しい自身への姿勢は、本物の何かを追及する
真摯なものですが、それ故に周囲の理解者達をも傷つけ、また同様の苦悩に取りつかれた
ものを引き寄せたりします。
結果的にはそこまで思い詰めず、ほどほどに要領よくやった物が家元を継いだりして
いますが、そんなことは主人公にとってまったく問題ではないのでしょう。
理想を追求する魂が彷徨う空間が、主人公にとっての虚空なのだと勝手に解釈しました。
独りよがりなほどの芸術性の追求と外形的には破滅とも言える終わり方は、なんとなく
モームの「月と六ペンス」を思い出させました。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.16:
(3pt)

読後の後味が悪い

山本周五郎の作品らしく所々には胸に響くような良い事を云っているんだけど
物語の結末が暗すぎる。主人公は芸の完成のために文字通り血を吐くような
努力をしているんだけど、自分の納得がいく芸の極地に到達できないことから
精神的に病んで廃人同様になり、それがもとの病で死ぬ。
この作品を読んで得ることは諦観の境地だ。末期がん患者や大学受験に失敗した人
なんかが読んだら心が慰められるかも知れない。しかし今現在を夢や目標に向かって
邁進しているような人は読まない方が良いだろう。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.15:
(3pt)

なぜかタイトルが気になって

どの作でも書き方がマンネリで鼻につくので、もういいだろうと思っていたはずなのに、またしてこの人の長編を手にいたのは題名がちょっと気になったからでした。

 すると思いがけず主人公が端唄の作家で、その軽薄さがいやになったので浄瑠璃作家を目指しているという設定だったので、おおうい奴めというわけでクイクイと読み進んだわけでありんす。

しかも団十郎の空疎な荒芸の限界を知って実事を主眼としてきた大坂に学び直そうとする志を持つ人物だと知ってますます興味を懐いたのですが、途中から彼を恋ふるいろんな女たちが次々に登場して、いわば女難の趣が強まってくるのが私にとってははなはだ迷惑。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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No.14:
(3pt)

フォスターに触発されて

下巻では、おのれの端歌に満足できず、理想の浄瑠璃を夢見る主人公の浄瑠璃語り、中藤沖也は、江戸を捨て、妻の京を捨て、すべての名声を捨てて大坂から今庄、山中温泉、金沢へと放浪と模索の旅に出ます。

 あらゆる辛苦に耐えて苦難の中に芸術的精華をつかもうと苦闘する主人公を身を犠牲にして最後まで支えるのが芸妓のけい。しかしその命がけの芸術人世修業はついに美しい花を咲かせることなく北国の雪の中に消え去ってゆくのであったあ。

 絶対的窮乏にあえぐ貧民と、どうしても男なしには生きていけない脆い肉体と生理を抱え込んだ女性に対する著者の優しい視線が印象に残る。

 解説によると著者は、酒におぼれ絶望と困窮のうちに死んでいったアメリカの民謡の父フォスターと、その最晩年を支えた女性の伝記に触発されてこの異色の大長編小説を構想したそうだが、主人公中藤沖也とフォスター、そして山本周五郎の痛苦に満ち満ちた足取りが完全に重なってみえてくるのが不思議である。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.13:
(5pt)

感動のクライマックス

感動のクライマックスです。禅にいう「虚空」に至るように思います。
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No.12:
(3pt)

楽しく読みました

作品が古いせいか、少し期待はずれでした、しかし周五郎ファンには良いのでしょうね。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.11:
(4pt)

読まされはしたけれど

面白く読みましたが、主人公の人生が下降線を辿っていくような感じで、寂しくなりました。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.10:
(5pt)

切なく、悲しく、身につまされる

山本周五郎は初めて読んだ。古い人情もので、現代人にとっては好みの分かれるところだろう。特に後半部分は救いようがない程に切なく、悲しく、身につまされ、読むのがつらいほどであるが、その一方でどんどん引き込まれていく。読んでいて泣きそうだった。

以下、あらすじです。
主役の冲也は武士の大きな家に次男として生まれ端唄などの芸に秀でて、評判が高い。資産のある料亭「岡本」のお京と結婚し、恵まれた環境で芸を磨く。端唄から浄瑠璃に転向して、堕落した芝居を改革して「冲也ぶし」を確立しようとする。浄瑠璃を極めるためには人生経験が足りないと考え、武士の身を捨てるとともに、妻子をも江戸に残して旅に出る。旅ではおけいとの運命的な出会いがあり、二人は前世からの縁であると信じるが肉体関係は結ばない。
大阪、京、金沢などを転々とするが浄瑠璃はなかなか成功せず、冲也は次第に酒量が多くなり、転落していくとともに体調をくずす。おけいは全てを冲也のために投げ出して献身的につくすが、冲也は浄瑠璃を極めようと模索しながら深く苦悩するようになる。旅の途中で知り合った絵師の濤石は一見すると豪放磊落な正確だが、冲也と同じような悩みを持っていたことが後になって分かる。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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No.9:
(5pt)

生き方に悩んだ時の一冊

初めて読んだのは、背伸びに疲れて、劣等感にさいなまれてと人生に悩んでいた18歳の時でした。読み終わってしばらくはあまりに素晴らしい読後感に声が出ませんでした。「自分に忠実に生きる」ということと「自己満足」とは違うんだと気づかせてくれました。自分の人生に意味を見出すことは,即ち、自分が授かった使命を正しく理解し、突き進んでいくことなのだと感じました。当時の私にはすごい本でした。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.8:
(5pt)

山本周五郎とは

芸術にしろ文学にしろ、「我とはなんぞや」との求道を経験した方はこの主人公沖也が
きっと他人とは思えないでしょう。

あれこれ、独りよがりと言えば独りよがりですが、「沖也ぶしの浄瑠璃」をあくまで
完成させるべく、傷つき、ぶつかり、あるいは個性豊かな登場人物との間で、
触発を受けながらひたすらに求道を続け、彷徨います。

ラストが、こうとは思わずに読み進んできて驚いたのですが、これはスチーブン・フォスター
の自伝が下敷きにあった事を知り納得をしたしだいで、読後感もこのラストにかかわらず、
爽やかに感じるのはなぜかなと思いました。

浄瑠璃や端唄など当時の娯楽背景がふんだんに登場しますが、それは筋の中で
「こういうものである」とこちらにわからせるようにされていますので、時代物になかなか手が
伸びない方へもオススメです。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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No.7:
(5pt)

おけいさんが幸せでありますように

お話の内容も重く、ページが中々進みませんでした。人生に意味があるか、ないかと言うことよりは冲也の「こうしてはいられない」「おれはこんなことをしてはいられない」と言う焦燥感を感じることはあります。確かに自問自答、自らと語っているのでしょう。主人公の生き方を振り返ると浄瑠璃、冲也ぶしに取り付かれたような死様です。その姿は純真で、寄り添うおけいの姿もあり、救われます。ただ、どうしても酒に溺れる姿、それも癖の一つか、計り知れない因果があるのでしょう。世の規範に則して自らを律して生きることも、内なるものに突き動かされひたすら求めつづけることも、ほどほども、私が幸せでありますように。
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No.6:
(5pt)

守勢は創業より難し

浄瑠璃ですとか、常磐津ですとかまったく趣味のない私で始まりには多少の戸惑いを感じましたが、どんどん物語りに引き込まれてしまいました。『実際に苦労をしてみろ。生きた生活を体験しろ。』身にしみます。勇気付けられます。冲也はいかに。下巻につづく。
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No.5:
(5pt)

普遍的テーマ

この小説は浄瑠璃という特殊な世界の話であるが、

テーマは非常に普遍的であり、

おそらくオペラの作曲家の話に置き換えても、

同様な小説が書けるであろう。

世界的評価を得ている黒澤明監督が山本周五郎の作品を好んで映画化しているのも頷ける。(山本周五郎の作品があまり海外で翻訳されていないのは残念ですが・・)
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No.4:
(5pt)

同情はするが共感はできない主人公

昨年、齢30を目前にして山本周五郎氏の作品に初めて触れました。

 長編をいくつか読みましたが、ほぼ全ての主人公に共通する“信念を貫かんとする生き様”には、毎回イライラさせられています。

そして、私の中でそのイライラの頂点に君臨している主人公が、本作の中藤冲也です。

 

 自らが望まぬ名声を捨て己の道を極めんと悪戦苦闘する冲也には、成功者特有の贅沢な悩みと己の才能への自惚れを感じました。

正直に言って、そんな冲也に対して同情はするものの共感はできませんでした。

 が、そんな冲也がこの物語の中でどのような体験を経て、何に気づき、どこに到達するのか?

という感じで、気がつけば他の著作同様、本作にもどっぷり引き込まれてしまいました。

 なお下巻の冲也には上巻以上にイライラさせられましたが、物語としては納得のラストだったと思います。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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No.3:
(5pt)

周五郎文学の極北

虚空遍歴は、山本周五郎の長編では「樅ノ木は残った」「ながい坂」と並ぶ3大長編に数えられています。これら3つの中では文芸として最も厳しい作品だと思いました。主人公の中藤冲也は、端唄の作者として市井において評価を得ていたにもかかわらず、浄瑠璃の創作に足を踏み入れていきます。例えるなら、大衆歌謡の作曲家がオペラのような音楽舞台劇に取り組むようなものでしょうか。しかし、冲也にとっては、つらいいばらの路を歩くことになります。この下巻に至っては、上方から北陸への道行きは苦闘の連続で、読んでいても辛くなってきます。小説は、この冲也の生き方を三人称でたどる一方、おけいという随伴者の独白という一人称の部分を挿入して進められます。このおけいという女性の語りから読み手は主人公の心情に手を伸ばすことができ、おけいと同じ感情を主人公に合わせることもできるわけです。この構成が読み手から作品をつなぎ止めていきます。おけいの存在は主人公以上に重要な位置を占めているように思います。周五郎文学畢生の作品と思いました。

芸術にかぎらず、結果がすべての昨今。結果を残せなかった冲也は、いまなら「負け組」と言われるのでしょうか。おけい以外の誰からも理解されず、作品の完成も見なかったその生き方は、今の読者の心にどのような読後感を残すのでしょうか。
虚空遍歴(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(下) (新潮文庫)より
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No.2:
(5pt)

おけいがいればこそ....冲也の壮絶さは、成り立つというか...

虚空遍歴は自分の芸術=一生をかけた仕事をやり抜くためにとことん身を削っていく男の悲劇というか、生き様のお話である、簡単に言えば。ただそれだけだったら、意固地で独りよがりで気むずかしいだけの変人の七転八倒紀であり、とてもやりきれない。我々が救われるのは時に独白を交えてストーリーに広がりと一般性の着地させてくれる「おけい」の存在があるからだ。おけいは男と女の状を全く抜きに冲也に尽くしまくる。それは冲也ぶしの完成という芸術に奉仕する心からなのだが、現実にはこんな人物は存在しないだろう。解説の奥野健男氏はこの二人を周五郎本人の芸術へ切り刻んでいく綿(冲也)と世間と折り合いをつけていこうとする面(おけい)の投影と位置づけているが、その通りだと思う。「酒みずく」というエッセイを読むと、まさしくあらゆる自作の精査につきあたり自信も粉々になりあえぎながら創作に向かう冲也的周五郎がかいま見えるのだが.....我々が好ましく、読み重ねていくのはやはり「おけい」的周五郎が照れ笑いして、まぁ読んでみ、とつぶやいているからに他ならない....虚空遍歴はある意味で創作者山本周五郎の心臓をさらけ出したような迫力ある一編である。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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No.1:
(5pt)

たかがでもあり、されどでもあり。

人間は、それぞれの精神世界の虚空を彷徨って生きていくしかないのだと、以前から思っていたことを他人の言葉で聞かされたようで、ガツンと来ました。現実的に何を成し遂げるかということももちろん大事なのですが、独自の虚空(=精神)を、いかに深く豊かにしていけるかということ、また、人生に何を求めるかということの重要さを、改めて考えさせられました。
山本周五郎さんの他の作品とは、作中に流れている空気間が全く違います。読み終った後、タイトルの意味深さにも驚きました。
虚空遍歴(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:虚空遍歴(上) (新潮文庫)より
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