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飢餓海峡



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飢餓海峡の評価: 4.41/5点 レビュー 69件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.41pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全60件 21~40 2/3ページ
No.40:
(5pt)

とても面白い!

樽見京一郎は京都の僻村に生まれた。父と早く死に別れて母と二人、貧困のどん底であえぎながら必死で這い上がってきた男だ。その彼が、食品会社の社長となり、教育委員まで務める社会的名士に成り上がるためには、いくつかの残虐な殺人を犯さねばならなかった……。そして、巧なり名を遂げたとき、殺人犯犬飼多吉の時代に馴染んだ酌婦、杉戸八重との運命的な出会いが待っていた……。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.39:
(5pt)

純文学と大衆文学を隔てるこの国の文学観。

「麻雀放浪記」の浅田哲也は改名して、純文学を目指し、陸奥盛岡で果てた。
「麻雀放浪記」をピカレスクなんて称して、満足する評論家風情。
「飢餓海峡」はまさしく「悪漢小説」、そして傑作なのだ。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.38:
(4pt)

週刊朝日連載の同書。

1年の週刊朝日連載の終了は、「海峡は凪いでいた」で結ばれてた。勉さんはこれに加筆して、出版の宛てのない原稿を半年かけて纏めた。それが下巻に入っています。連載の優れた緊張感を、溶いて甘い感傷を綴ってしまった。内田叶夢監督の傑作「飢餓海峡」ではこの部分はカットされています。
「海峡は荒れていた」で始まった長編は、完成していたのです。
飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)より
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No.37:
(5pt)

社会派、否、人間派ミステリーの名著

時代を超えて惻々と伝わる、極貧を生き抜く痛々しさと逞しさ。その出自、生い立ちゆえに、それをばねにして犯罪をも辞さない一種のルサンチマン。この作品は1961年末から1963年中盤にかけて執筆された。『霧と影』『海の牙』『火の笛』『野の墓標』と続く水上氏の初期の作家生活を彩る社会派ミステリーの最終作であるとともに頂点を極める大作である。ミステリーで俗に「人間が描けているか否か」とよくいわれるが、単なるトリックやの新奇さや謎解きの妙味ばかりが「知的な遊び」ともてはやされた時代に棹さして書かれたこのような作品をこそ、たとえ半世紀の時代を経ていようとも心してじっくりと玩味すべきではないか。ちなみに、水上氏は1976年刊行の全集のあとがきでこう書いておられる。二読三読されたい。

私はこの作品を書いた頃から推理小説への熱情を失っていた。つまり、約束事に縛られる小説の空しさについてであった。推理小説は、周知のように犯人当てが楽しみであり、事件の解明や殺人動機について奇抜な工夫が要求される。奇抜が奇抜であるほどに成果が高い。私はそういう小説の娯楽性を拒否するものではない。おもしろく読んできたし、また自分でも試作してきている。けれども、それがいくらよくきまって、よく仕上がっても、どこかから吹いてくる空しさ、それががまんならなかった。たとえ人によろこばれなくても、おもしろがられなくても、作者がこれだけは書いておきたかった、というような小説があってもいい。読者不在の小説とまではいわないが、多数の大向こうを相手にした作品ではなくて、しずかに、人生を語るような小説もあっていい。そんなふうな思いが深まった。こつこつ書いて得たもののひとつがそれだった。それで、私は、推理小説の原稿依頼には応えずに、勝手な物語を書くようになった。そうして、自然と、原稿依頼をしてくれる雑誌を自分から失っていった。致し方のないことながら淋しさに耐えた。作家の業というようなものがあれば、書くのも業だが、書かぬということも業のはずである。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.36:
(4pt)

悲しい物語

当時実際に起こった事件と戦後の貧苦が絡み合ってとても面白く読んだ。はじめは八重にかなり感情移入したが、京一郎にもそうしなければならない理由があって考えさせられた。
真実を明らかにすることと事実を明らかにすることは違うと言うようなことを最後刑事が言う場面がこの作品全体を表しているように思う。
飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)より
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No.35:
(4pt)

good!

函館観光にいき摩周丸をみて、この本をすぐに購入。非常に面白く下巻を購入したい!
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.34:
(5pt)

水上勉の渾身の力作

捜査の積み上がっていく様子に刑事と一緒に掴んだ事実にしびれていました。またひとつひとつの事象に対する疑問解消が丁寧に描かれていてまさに大作でした。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.33:
(5pt)
※削除申請(1件)

「推理小説+警察小説+犯罪小説+社会小説=人間小説」の最高傑作

『飢餓海峡』(水上勉著、新潮文庫、上・下巻)を読み始めた途端にぐいぐいと引きずり込まれ、文庫版の上・下巻合わせて850ページを貪るごとく一気に読み切ってしまった。

水上勉が渾身の力を振り絞って紡ぎ出した長篇だけに、日本文学の最高峰と言っても過言ではない作品に仕上がっている。推理小説であり、警察小説であり、犯罪小説であり、社会小説でもあるという多面性を有しているだけでなく、それらが見事に融合して、骨太、重厚な人間ドラマが展開する人間小説たり得ている。

昭和22年9月20日、青函連絡船層雲丸が台風によって沈没し、乗客、乗員532人が死亡するという海難史上空前の大惨事が起こる。事件処理に当たった函館警察署捜査一課の弓坂吉太郎警部補、51歳は、いつまで経っても引き取り手の現れない、乗船名簿に載っていない2死体に違和感を覚える。この上巻の出だしは、推理小説の発端として秀逸である。

この沈没事故とほぼ時を同じくして、北海道の札幌から120kmほどしか離れていない岩幌で質屋一家4人が惨殺された上、証拠湮滅の目的で放火された火が町の3分の2を焼き尽くし、大勢が死亡するという大事件が起こる。

この大事故と大事件の間には関連があるのではと疑った弓坂の粘り強い捜査が始まる。

「昭和22年10月16日のことである。津軽海峡に面したこの深い山の中腹で、樫鳥の啼く声が聞こえた。キキーッと生地を切り裂くようなその啼声は、無念の思いに胸を熱くしている一人の警部補の胸をえぐり、海峡にまでつきぬけた」。

「警部補の咽喉仏が大きく鳴った。飯ものどを通らない。自家に帰ってもこの男は捜査の鬼であった。外へ出ると暗闇の坂を走りだした」。

「弓坂は今や、追及の鬼であった。函館駅のよごれた建物に入りこむと、彼は勝手知った駅長室へ走りこんでいった」。

こつこつと捜査を続ける弓坂は、彼が犯人と睨んだ男が逃亡中に一人の女と接触したに違いないという確信に達する。

その女、杉戸八重は、青森・下北半島の大湊の淫売宿、もう少し上品に表現すると妓楼「花家」の娼妓で、偶然、客として訪れた犯人の男と一時を共にしたのであるが、これが八重にとって運命的な出会いとなるのだ。

「弓坂は甲板に立って、うしろに広がってゆく海峡をみていた。真犯人を掴むまではこの海峡を二どと渡らないぞ、と自分に言いきかせた」。

「弓坂はいま、杉戸八重の行方を探す一匹の鬼であった」。

弓坂の地道な捜査と並行して、八重の過去が綴られていく。彼女は青森の極貧の家に生まれ、高等小学校を卒業すると同時に家を出て、ほとんど稼ぎのない故郷の祖父、父、弟二人を養うために16歳で娼婦になる道を選ばざるを得なかったのである。色白で愛くるしい顔立ち、男好きがする体つきの持ち主で、健康な上に、明るい性格で素直で愛嬌があり、情があるので、どこの娼家に移っても馴染み客の多い売れっ妓であった。「可愛らしい、ぽちゃっとした顔をしていましてね、男好きのする女でしたよ。なかなか利口そうな眼もとをしていて、しっかりしているところがあって・・・人とはなす時には愛嬌がありましたよ・・・」。

この八重の存在なくしては、『飢餓海峡』の成功はあり得なかっただろうと思われるほど、彼女は重要人物であるが、著者は、厳しい境遇の中にあっても明るく健気に生きる女に温かい眼差しを送っている。娼婦という生き方がいいか悪いかを論じる前に、そうせざるを得ない貧しさというものに対する著者の怒りが沸々と滾っているのだ。

大事故、大事件後の10年間も八重の娼婦生活は続く。下巻の舞台は昭和32年6月を迎え、物語は思いがけない展開を見せる。

突如発生した事態に犯罪の臭いを嗅ぎつけ、緻密な捜査に乗り出したのは、日本海に面した京都北部の舞鶴東署捜査係長の味村時雄警部補、38歳である。現在は退職して警察の剣道指南をしている弓坂の協力を得て捜査を積み重ねていく。

「かわいそうなこの女のためにも、何としても、樽見京一郎の鉄壁の不在照明をくずしてやらねばならぬと、味村時雄は下唇を噛みしめるのだ」。

味村と弓坂の執拗な捜査によって、八重のその後と、京の山中の孤村で屈辱的な極貧の中に生まれ育ち、尋常小学校の6年を終えると家を出て、大阪や北海道で苦労を重ね、その後、強かに成り上がっていく犯人の実像が明らかにされていく。

「10年目に、弓坂吉太郎は、捜査の難関であった杉戸八重の東京での生活の大半の足取りを知ることが出来た上に、いま、貴重な物的証拠の待っている畑部落へ急ぐのである。弓坂の胸は、はりさけるような喜びにふるえていた。彼は、汽車が上野を出ると、列車の座席にすわるなりいったものだ。『やっぱり、味村さん、物事は途中で捨てるもんじゃない。誰が何といおうと、最後まで喰いさがった奴が最後の成功者ですな。そんなわかりきったことを、いままた、わたしは身にしみて感じますよ』。味村時雄は、長旅の疲れか肉のそげ落ちたような頬を心もち紅潮させている弓坂をみると、自分も嬉しさはかくせなかった。だが、二人には、一抹の不安はないとはいいがたかった」。

「『署長、わたしは、とにかく、その堀株へこれから行ってみます』。味村時雄は若者のように眼を光らせていった。いま、この警部補は獲物をみつけた一匹の犬であった」。

「堀株の開拓村と、泊町の駐在をたずねたことで、捜査の鬼とも言える一人の警部補の足は、やがて、樽見京一郎の過去を洗いざらい調べあげることに成功したのであった。・・・この時は、海に向って叫びたいような喜びに全身をふるわせた」。

「弓坂吉太郎は眼を炯らせて聞いていたが、この関西の小都市からきた若い警部補の足の成果にびっくりすると共に、その執念に敬服するばかりであった」。

「味村さん。これですべてがそろったようなものだ。あなたはわたしが在職時代の捜査をうけついで、よくぞ、この闘いに勝って下さった」。

これまでこの著者の作品はいくつか読んだことがあるが、今回、『飢餓海峡』を読み終わって、水上勉は私にとって大好きな作家の一人となった。生涯を終える前に、この作品に出会えた幸運に感謝している。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.32:
(5pt)

人間はどこまで極貧に耐えられるか

『飢餓海峡』(水上勉著、新潮文庫、上・下巻)の下巻を読んで感じたことは、人間はどこまで極貧に耐えられるかということだ。

舞鶴東署の味村警部補と函館警察署の弓坂元警部補の粘り強い捜査によって、犯人が京の山中の孤村で極貧の中に生まれ育ったこと、尋常小学校6年の学歴しかないため、その後も、苦労の連続だったことが明らかにされていく。

極貧の親のもとに生まれた子供は、成人後も極貧の生活を送らざるを得ないケースが多い。そして、この極貧は次の世代に受け継がれていく。まるで、極貧が遺伝するかのようだ。

本書の物語は敗戦前後が舞台となっているが、残念ながら、極貧問題は現代でも根強く存在している。改めて、極貧問題を考えさせられる作品である。
飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (下巻) (新潮文庫)より
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No.31:
(4pt)

この作品の通奏低音は「貧困」である。

この作品の通奏低音は「貧困」である。 小説は貧困がきちんと書き込まれているが、 ストーリーの重さと比重が同じため ちょっと違和感がある。 週刊誌の連載小説だったからか 映画ではその貧困の描き方の分量が少ない。 資料を当たると、内田叶夢監督の最初の編集は 192分という長さであり、 東映側からカットを命じられた監督は編集を拒否 助監督が167分に編集した。 結局東映側に監督が妥協する形で 183分のものができあがった。 本DVDは183分版。 カットした9分に貧困が描かれていたのかも知れない。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.30:
(4pt)

この作品の通奏低音は「貧困」である。

この作品の通奏低音は「貧困」である。 小説は貧困がきちんと書き込まれているが、 ストーリーの重さと比重が同じため ちょっと違和感がある。 週刊誌の連載小説だったからか 映画ではその貧困の描き方の分量が少ない。 資料を当たると、内田叶夢監督の最初の編集は 192分という長さであり、 東映側からカットを命じられた監督は編集を拒否 助監督が167分に編集した。 結局東映側に監督が妥協する形で 183分のものができあがった。 本DVDは183分版。
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No.29:
(5pt)

傑作ミステリーの上巻

日本の戦後、昭和二十年代を舞台にした傑作ミステリーの上巻。青森の下北半島で酌婦を生業としていた杉戸八重は客の犬飼多吉と出会い、犬飼から大金を渡される。大金を手にした八重は借金を完済し、上京するのだが…

上巻では杉戸八重を中心に物語が展開し、犬飼多吉を始めとする男たちがミステリーを紡ぎ出していく。昭和二十年代の世相が非常にリアルであり、下北半島と東京という地方と東京を舞台にした八重の波瀾に満ちた人生と、そこに影を落とす犬飼の謎に包まれた人物像にページをめくる手が止まらない。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.28:
(5pt)

重厚感のある昭和の傑作ミステリー

昭和の傑作ミステリーが完結。 昭和二十年代。 当時としては珍しく、日本列島の北から南を舞台にし、二人の刑事が執念で、一人の男の犯罪を暴く。 犬飼多吉こと樽見京一郎の犯罪がついに暴かれるが、背景にあったのは哀しい京一郎の半生だった。 当時を思えば、これだけのスケールのミステリーを描いた努力は並々ならぬものだったに違いない。 また、ミステリーの面白さと共に描かれる人間の宿命が物語に重厚感を与えている。
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No.27:
(5pt)

地位も名誉も得た名士樽見京一郎の過去の姿が執念の捜査で暴かれてゆく!きっかけとなったのは美しく純粋な心をもつ酌婦との再会だった!スケールの大きい大作であり名作です!

青森県大湊の歓楽街、喜楽町にある、あいまい宿「花家」で千鶴と言う名で出ている杉戸八重のところへ六尺近い大男が表れた。男は復員服を着て顔は陽に焼け赤銅色で濃い無精髭を生やし、呆然と花家のたたきに突っ立っていた。男は漁師だと言ったが、手には石か棒で力強く殴られた様な大きな傷が有り、血の噴き出した跡をまざまざと示し紫色に肉を腫れ上がらせていた。男は犬飼多吉と関西訛りで名乗った。犬飼は長い時間をかけて風呂に入り、出てくると髭を剃って見違える様な若々しい男に変わっていた。八重は傷の事が気になって消毒薬と傷薬を使い、丁寧に包帯を縛った。営みは淡かったが犬飼は八重の心遣いが嬉しかったのか帰り際、雑のうを引き寄せると皺くちゃの新聞紙に一掴みの札束を包んで八重の前に置いた。八重が後で勘定してみると6万8千円有った。犬飼は「闇商売で儲けた金だ」と言ったが八重にはそう思えなかった。

これより少し前の昭和22年9月22日津軽海峡は台風の接近で大荒れだった。青函連絡船層雲丸は一度沖へ向かったものの港湾待機に移ろうとしたところ突然の大波をかぶり乗員854名を乗せたまま転覆した。海難史上空前の大惨事となった。この時、引き取り人のいない2つの不思議な遺体が有った。奇しくも同日、函館から120キロ程しか離れていない岩幌町で、ボヤで済んだはずの小さな出火が層雲丸転覆の大事故を起こした台風の影響を受け瞬く間に火の手が広がり、全町の、三分の二の3450戸を全焼する悲惨な大火事を起こしていた。火元を調査したところ佐々田質店から撲殺されたと思われる家族4人の惨殺死体が発見された。この惨殺死体と層雲丸事故での不明遺体とは何か関係が有るのだろうか?

飼から与えられた大金で「花家」にあった借金を返し自由の身になった八重は、知人を頼りに東京に移る。八重は、犬飼を恩人だと感謝し改めてお礼をしなければと考え、捜し出し、なんとか一度会いたいと思っていた。この時、別の意味で八重や犬飼の行方を追っている男達がいたのだった。

7年ほど経った頃八重は新聞の一覧に目が釘付けになった。舞鶴市の篤志家が刑余者更生事業資金に3000万円を寄贈したという記事で顔写真まで載り、樽見京一郎氏とあった。<ここから下巻>八重は、その食品工業会社の社長、樽見氏の写真を見て犬飼多吉と瓜二つではないかと瞬間に思った。関西訛りの犬飼と京都府北部にある舞鶴市がそれを連想させた。三日後、八重は舞鶴に向かった。八重と樽見の再会がこの後新たな事件を起こし話は新展開してゆく。追い詰められた樽見はどの様な行動に出るのか。この後は読み応え満載でした!

本書は水上氏の代表作の一つであるのは言うまでもない。津軽で起きた連絡船転覆の大惨事と岩幌町で起きた大火と実際に起こった災難に端を発し小説化された事は周知の事だと思うが、改めて読み直してみて貧困と言うテーマが底辺に流れている事を感じる。

水上氏は本書で刑期を終えた受刑者たちが、金も無く行く当ても無く、社会もそれを受け入れる体制が整っていない事を批判し、それが新たな犯罪を起こしていると指摘している。現在は保護司などの活動によって当時より幾分改善されていると思うが、再犯率の高さなどを考えると現在でも十分な社会の仕組みが出来上がっていないとも言える。

上巻の温泉湯治の場面など八重が父長左衛門に対する思いやりや気遣い、また八重の異性に対する純粋な様などは「五番町夕霧楼」の夕子と父三左衛門関係と似通ったところが有るのを感じた。水上氏の父娘関係への共通な思いなのかもしれない。映像などでも幾度も取り上げられているのは言うまでもないけれど壮大なスケールの素晴らしい名作でした!
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No.26:
(5pt)

長期にわたる執念の捜査により極悪犯罪を暴く

北海道から関西まで全国規模で犯人を追いかける

刑事も各署から集まり2代に及ぶことも

地域の設定も素晴らしい、まるで観光しているようだ

まれに読む事の出来ない良作でありました
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
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No.25:
(4pt)

飢餓海峡(下巻)(新潮文庫)水上勉

下巻・・・・・警察の調べで、‘上巻‘で読んだ部分が繰り返されていて
       途中少しあきたが。
       結末はテレビで見ていたのでそんなに感動しなかった。
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4101141258
No.24:
(5pt)

飢餓海峡(上巻)  新潮社

テレビで(三国連太郎)見て、まだ読んでいなっかったので。

やはり原作は素晴らしかった。
青森の地図を見、情景を思い浮かべながら一気に読みました。
水上勉作品は暗いけれど、文章がきれいで好きな作者の一人です。
これから下巻に移ります。
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No.23:
(5pt)

感動の一気読み

過去の ”名作散歩” には、お奨め !「飢餓海峡 (上)」「飢餓海峡 (下)」。 次は どの方面へ ・・・ ?
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No.22:
(5pt)

飢餓の時代

昭和29年の台風時に起きた青函連絡船洞爺丸沈没事故と岩内大火にヒントを得て
事故を終戦直後に置き換えた作品です。
犬飼多吉こと樽見京一郎は,レ・ミゼラブルのジャン・バルジャンを彷彿とさせます。

「飢餓」は,敗戦直後の日本国民が皆抱えていたもので,
樽見も,そのとき選んだ人生選択でなければ,他にどうやって浮かび上がるすべがあったのか,
奈落の底を這い回るような人生だった可能性も高いのでしょう。

杉戸八重は,さらに純真な女として描かれていますが,彼女だって
ふいに転がり込んだお金を手放す気持ちにはなれなかったし,手放したら一瞬の夢さえなかったわけです。

下巻は飢餓の時代を生きた樽見の人生を警察がたどっていくのですが,
そんな地味とも思える地取り捜査の模様が興味深く,一気に読み進んでしまいました。

現代も不景気だとか色々言いますが,
今の比ではない当時の日本の貧しさと,そこから這い上がり,立ち上がっていった先代,先々代の時代を改めて振り返るために
若い方が,この本を読んでみるのもよいと思います。

少しだけ突っ込みを入れれば,現代の推理小説や警察小説と比べると
「6尺あまりの大男云々」だけで写真もないのに犯人を追えたり,
推測9割で捜査を進める安直さが,上記とは違う意味で時代を感じさせるのと,
東京で八重を追っていた男の一人が結局何だったのかよく分からず,
また,小川登場の辺りがやや脱線しているように思えたところでしょうか。
飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)より
410114124X
No.21:
(5pt)

紙より読みやすい

Kindle for IPADで読みましたが、フォントやレイアウトが大変美しく、この名作を快適に読むことができました。
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410114124X

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