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(アンソロジー)
淑やかな悪夢
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淑やかな悪夢の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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練達の翻訳者三人が選んだ12篇で構成した怪談集。英作家が多い。 時代的には19世紀末から20世紀前半のクラシックな作品が大半で、戦後のものはたぶん1篇しかない。(発表年は個人的に調べたもの) 傑作と思ったのはギルマン「黄色い壁紙」とシンクレア「証拠の性質」の2篇。ほかは、食い足りない作品が多かった。 面白かった順に紹介すると・・・ メイ・シンクレア「証拠の性質」1923。 若く美しく、幼いとさえ見える妻を亡くした男が、対照的に妖艶な美貌の女性と再婚すると、新婚初夜から前妻の幽霊が現れ執拗に邪魔をする。ここまでは普通に考えられるプロットだが、話はその先があって・・・ テーマは女性の隠された性への妄執。 話し手の男性が友人である夫から聞いたという構成が巧妙で、女流でなければ書けない強烈な性的感覚が微妙に見え隠れし、男性読者としては恐ろしいという感想しか出てこない。 シャーロット・パーキンズ・ギルマン「黄色い壁紙」1899。 手記を書く若い母親の、狂気に侵されていく過程がその手記を通してじっとりと描かれる。19世紀末の作品とは思えないくらいにモダンな感覚は純文学ともいえそう。 借りている屋敷の部屋の「黄色い壁紙」、その模様の向こう側に女の姿を認めていく自己分析がひどく客観的で、精神病者の心の内を直接覗く気がして、怖くもあり悲しくもある。ついには壁紙の中の女と一体化し、このままさらに狂っていくことが暗示される。解説によると著者の実体験に基づく作品で、そう知るとさらに怖い。 キャサリン・マンスフィールド「郊外の妖精物語」1919。 ロンドン郊外、中流家庭の朝食の団欒。幼い息子が中庭に雀の一団を見つけ、餌をやろうとすると雀は子供に変身する。驚いて両親に教えるが、無視される。両親は息子がいないのに気づき、中庭で子供たちと遊んでいるのを見つけるが、見ている前で子供たちは雀に変身し、飛び立ってしまう。日常を突然変質させる不条理が江戸の百物語に通じる味だ。 シンシア・アスキス「追われる女」1935。 医師がマスクをかぶって登場するところで容易にオチの想像がつくから失敗作だが、別の見方をすれば、主人公の女性が怪人につきまとわれる理由がなく、怪人は知るはずのない主人公の居場所に現れるから、当然、主人公の正気が疑われるわけで、「ねじの回転」に通じる心理主義小説と見ることもできそうだ。 | ||||
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