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プリンシパル
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プリンシパルの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.48pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全21件 21~21 2/2ページ
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長浦京を読むのは、「アンダー・ドックス」(2020/8月)以来になります。 「プリンシパル」(長浦京 新潮社)を読み終えました。いつまでたっても成熟した国家として独り立ちすることができない「悪の凡庸さ」のその集合体でもあるこの国を見つめる作者の"Severity"がこの物語にも継承されています。 戦争が終結した昭和二十年~昭和三十年までの10年を描くこの国のパラレル・ワールド。或いは、この国の背景に蠢く現実そのもの。正真正銘のヤクザ組織「水嶽本家」を仕切ることになる<綾女>の生涯が、戦後の数々の社会的事件、占領下の日本(進駐軍、GHQ、ワシントンハイツ・・・)、そして或る宰相の裏面史?を辿りながら、ガドリング砲のように描き込まれています。彼女は「菩薩」なのか?それとも「水嶽本家」というヤクザ組織を守るために産み落とされたガーディアン・エンジェルなのか?その巨大な途方もない自我を描くべく、作者はストーリーを組み立て、所々にいくつかの布石を置きながら、効果的にその布石を回収していきます。 その面白いエンタメを書こうとする作者の圧倒的な筆力と気概を感じながら、それでも尚この物語の「プリンシパル」、<綾女>を私は最後まで好きになることはなかったと言っておきたいと思います。勿論、そんな私の思いなどナイフのひと振りで粉砕され、雲散霧消し、何事もなかったかのように世界は回っていきますので、何も言ったことにはならないのでしょう。 不満があるとすれば、度重なるヤクザ間の抗争について、ドン・ウィンズロウが描ききったシナロア・カルテルに到底及ぶこともなく、矮小化されて描かれていること。そのことは、「アンダードッグス」の持つ<リアリティ>にすら及ばなかったと思えます。 しかしながら、生き抜くために積み重ねられた時代の熱気と戦争に負けてしまったことの<意義>、未だ米国の占領下にあると言わざるを得ないこの国の『産み落とされてしまった本物の悪』を描こうとする作者の大いなる憂いを受け取ることになりました。 | ||||
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