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アポロ18号の殺人
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アポロ18号の殺人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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冷戦下の1973年の世界を舞台に、米ソの宇宙での覇権争いをテーマとした、国際謀略ものっぽい歴史改変的SF小説。 現実には17号までで終了しているアポロ計画の18号のミッションと、それが引き起こす危機が描かれる。 著者が元宇宙飛行士というだけのことはあり、宇宙計画関連の細部の描写は100点。 対してストーリーの方は、エンタメとして見た場合30点。 以下その主な理由。 現代や近未来でも十分成立するストーリーなので、わざわざ時代を1973年に設定する必然性がない。 一部をのぞいて、劇中の世界の歴史が現実の歴史から全く変わらないので、歴史改変ものの醍醐味がない。 一応、序盤に主人公らしき人物は登場するのだけど、中盤以降はその他大勢のひとりになってしまう。当然たいした活躍もしない。 アメリカ側の男性キャラが全員「気のいいナイスガイ」という設定で、描き分けができていない。 タイトルにある殺人は確かに(地上で)行われるのだが、それがアポロ18号のミッションの成否には全く関わってこない。 事件の犯人が中盤であっさり確定してしまうので犯人捜しの要素がなく、その後の犯人追跡のサスペンスもない。 断片的に語られる犯人の犯行の動機が、殺人という大罪を犯すには説得力がなくあまりに子供っぽいので、さすがに本当の目的が他にあるのだろうと思っていたら、そのまま話が終わってしまった。 リアリティに徹するのはもちろん結構。しかし、それにこだわり過ぎているため、宇宙空間で起こる出来事がいちいち地味。 衛星軌道上でのアクシデントはスリリングで、これからどうなってしまうのかと期待したが、そこがピークだった。 今回のアポロ18号のミッションは、冷戦を背景にした軍事的側面が大きいのだが、ソ連の財産を破壊したり、ソ連が先に見つけたものを横取りしようとしたりと、はっきり言ってアメリカの方が悪い。 つまり、どちらかというとアメリカ側の謀略の話なのに、こちらが正義であるかのように描かれている。 文章力にも難がある。 著者には登場人物の視点の固定という意識が全くないらしく、数行ごとに視点がコロコロ変わるので非常に読みづらい。 宇宙にいる宇宙船クルー数人と地球の管制センターの数人が、同じ空間にいるかのように書かれている所などは特に閉口した。 さらに、これのせいで一人一人の心情描写がこま切れになるので、特定の人物への感情移入がしづらくなってしまっている。 アポロ計画全体の緻密な描写、特に感動的に描かれるロケット打ち上げの場面からは、著者の並々ならぬ宇宙事業への思い入れが感じられる。 おそらく本作執筆の出発点はそこで、国際謀略もの的な要素は後付けなのだろう。 トム・クランシーの愛読者であることをうかがわせるストーリーではあるけれど、作品の完成度としては、彼の足元にかろうじて引っ掛かっている程度。 満足度は低めだった。 | ||||
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