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刑事失格



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【この小説が収録されている参考書籍】
刑事失格 (ハヤカワ・ミステリ文庫 マ 18-1)

刑事失格の評価: 3.00/5点 レビュー 3件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

南部の不思議な力

「刑事失格 "The Good Detective"」(ジョン・マクマホン ハヤカワ・ミステリ文庫)を読み終えました。
 舞台は、米国・南部、ジョージア州、メイソン・フォールズ。主人公は、妻子を失った酒浸りの刑事・P.T.マーシュ。彼はストリッパーのコリンから頼まれ、私的に彼女のボーイ・フレンドを痛めつけますが、翌朝ある事件が起きたことを知り、現場を訪れたところ、そこは昨夜自分が訪れた場所だったことに気付きます。そして、絞殺された男は、昨夜自分が痛めつけたヴァージルであり、死亡推定時刻は自分が滞在したであろう時間帯と重なっていました。アルコールに冒され、記憶が曖昧なまま、彼は過剰な暴力行為に及んだかもしれない自分を疑い始めます。そして、引き続き放火事件が起き、アフリカ系の少年・ケンドリックが焼死体で見つかります。
 かつては優秀な刑事だったはずのマーシュは、自分もまた逮捕されるかもしれないことに怯えながらも、その少年の事件を追うことになります。マーシュが触ったライターを隠匿しようとするあたりのデリケートな描写がこのスリラーに輝きを与えながら、物語は次第にその深みを帯び、米国南部の闇、ヘイト・クライム、ネオナチをひと撫でしながら歴史を遡り、「南部の不思議な力」を垣間見せるような暗い闇の中へと読者を引き摺りこんでいきます。トランプ以降の分断された米国のリアリティを見るにつけ、それは南北戦争時代に遡らされるような差別と憎悪に満ちた歴史のリアリティに裏打ちされていることを感じることが多くなりました。また、そうであるが故に混沌の中から「良きもの」を見つけ出そうとする作業が必要になってくるのかもしれませんが、しかし、そのことは言うほど簡単なことではありません。
 とは言え、この物語は「ブルーバード、ブルーバード」(アッティカ・ロック)ほどの香気が感じられるわけではなく、「黒と白のはざまで」(ロバート・ベイリー)ほどの読書への熱狂を生み出すこともなかったと思います。何故でしょう?それは、思いつきで行動しているように思えるマーシュに心の底から共感することができなかったこととマテリアルが昇華されずにこじんまりとまとまってしまった結末に起因しているように思えます。
刑事失格 (ハヤカワ・ミステリ文庫 マ 18-1)Amazon書評・レビュー:刑事失格 (ハヤカワ・ミステリ文庫 マ 18-1)より
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