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塩の湿地に消えゆく前に



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【この小説が収録されている参考書籍】
塩の湿地に消えゆく前に (ハヤカワ・ミステリ 1975)

塩の湿地に消えゆく前にの評価: 4.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(5pt)

六人の被害者女性の悲しい旅路の果てを描く被害者ミステリーの傑作。

原題はPLEASE SEE US。原著は2020年3月の刊行で、2021年のエドガー賞(MVA賞)最優秀新人賞受賞作。原題通りだと「お願い! 私たちを見て!」となるが、このように叫んでいるのは、男に絞め殺されて、アトランティックシティ郊外の湿地に、殺された時のままの装い(客を引き付け、欲情を演出し、装いを剥ぎ取られるための装い)で横たえられているジェーンドウ(身元不明女性)たちなのだから、訳題はPLEASE SEE USの訳としては、良い訳と思う。
著者はコルゲート大学で創作の文学史号、ニューヨーク州立大学でストーニーブルック校で創作の芸術学修士号を取得し、本書がデビュー作であるという。たしかに文章はところどころ格調が高い。
私は、本書の巧みなサスペンス設定と死者・被害者視点を織り込んだユニークな構成に引きずり込まれて、全406頁中の346頁までは一気に読んでしまった。
しかし、347頁の六人目のジェーンドウまでくると、これはまともなミステリーとしては終わらないのではないかという不吉な予感がしてきた。
予感は的中し、まともなミステリーとしては、終わらなかった。こういう結末までは予想していなかった。やや呆然とした。
読み落とししたのではないと気になって、最初からもう一度ゆっくり読んでみた。面白い。ミステリーの定型を完全に外しているが、良くできたミステリーと思った。本書が好きになった。
どこが定型を外しているかというと、ミステリーで最重要とされる✕✕が軽視されていることである。そのために次に重要な✕✕の□□もよくわからない。
重視されているのは、被害者の死に至るまでの人生である。一人目と二人目のジェーンドウは物語の開始の時点で死んでいるので、死者の声として描かれ、三人目から六人目までのジェーンドウは登場人物として、過去と現在と死(殺害)が描かれる。
六人のジェーンドウの共通点はカジノに遊びにくる客を誘って、個人営業で金をもらって寝ていることである。専業売春婦に近いものもいれば、金に困ったとき、気が向いたときだけという女性もいる。それぞれが悲しい家族絡みの悲しい過去を抱えている。
こうした六人の被害者の人生と死が本書の大きなテーマであろう。
もう一つ、探偵側の人生も本書の重要なテーマだろう。
探偵役は、スパに勤めるリリーと、スパに勝手に侵入して、手相見の客探しや窃盗をしている少女クララ。クララがジェーンドウの父やジェーンドウ本人から占いを頼まれ、彼女たちの恐ろしい未来を見てしまったことから、リリーに相談し、二人はこの連続殺人事件に巻き込まれていく。
そして、クララはおばの指示で、カジノの客相手のデートアルバイトを始める。最初は食事ドライブキスぐらいで済んでいたが、サド客の苦痛に耐えることを経て、ついに、客に抱かれて多額の報酬をもらうに至る。この過程がクララの成長小説、教養小説のように描かれる。
そして、主人公リリーの人生は・・・この先はネタバレになるので、この辺でおわりたい。
塩の湿地に消えゆく前に (ハヤカワ・ミステリ 1975)Amazon書評・レビュー:塩の湿地に消えゆく前に (ハヤカワ・ミステリ 1975)より
4150019754

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