■スポンサードリンク


残夢の骸 満州国演義 九



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)

残夢の骸 満州国演義 九の評価: 4.31/5点 レビュー 26件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.31pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全19件 1~19 1/1ページ
No.19:
(5pt)

良好

良好でした
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.18:
(5pt)

読書は拡がっていく。

途中、紆余曲折を経て漸く読み終えました。
近代史に興味を持ち、様々な本に出会う内に当作品に出会いました。
しかしながら読み進めて行くうちに、何か重苦しい雰囲気が漂いはじめ、他の娯楽小説と平行しながら読んだり、また作中の他の事件に興味をもったりして、脱線したりしてるうちに10年近く月日がかかりました。

四兄弟初登場の前半はミステリアスな作風ではありましたが、段々と伝言風の歴史話になってしまった感は否めませんでした。
しかしそれでも膨大な量の資料からこの作品の様に満州を纏めた作品は他には無いと思います。主人公達の活躍がなくても、この時代の出来事がいかに密集していたかと驚嘆します。
惜しむらくは、この時代の一つ一つの出来事がどれくらいの人々に伝わっているのかを考えると嘆かわしいです。一人でも多くがこの時代の本書に限らず、様々な本を手にとって欲しいと思った次第です。
作者の御冥福をお祈りします。
*個人的には敷島次郎さんが愉しく読めました。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.17:
(5pt)

5月上旬から11日間の入院生活を挟んで6月下旬に読み終えた…。

およそ、ひと月半に及ぶ一大物語体験。満州国を中心に据え、第二次世界大戦の概観を圧倒的な筆力で描き切った昭和期前史。片田舎の老人が感想など言い出す幕は無い。4兄弟と諜報機関に身を置く本作の狂言回したる人物、その5人の主要人物の視点で、事象の周辺を稠密極まる重層性を投影して、読者に執拗に刻み付ける恐ろしいまでの執念には、終始身が引き締まる思いに囚われた。物語の終盤に及んでは、矢張り「船戸与一」なのだ、架空の視座を持つ証人が朝露の如く霧消して果てる、それぞれの生き様を逃れようのない過酷な道筋で…。唯一、ひとりの少年を道連れにした生き残りの兄弟が本土の土を踏むが、平成の現在からの眼差しにあっても、希望の片鱗すら窺わせずに物語は幕を閉じる。一作家が命を擲つように万感を披歴した記念碑的遺作。合掌。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.16:
(5pt)

ついに終わった!

この最終巻を読むと20世紀初頭からの日本国が関わってきた戦争が誰のため、なんのためだったかを解明してくれた近代日本の歴史の要約ですね。
職業軍人のトップたちは国家の防衛のために存在したのか、立身出世のためにだけに生きてきたのか根源的な問いに答えを示してくれている。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.15:
(5pt)

何も言うまい

これが遺作。
憧れの大陸、夢の満州国の終焉とともに俺たちの船戸与一が消えた。
日の出の赤光に消えるルセロのごとく、俺たちの船戸与一は夢のように消えた。
俺はこの先、なにを支えに生きていこうか。
俺たちの船戸与一は、いまの危うき将来を見越してこの物語を書き上げたのではないだろうか。
何も言うまい。
めんどくせえ評論は、めんどくせぇのが好きな評論家に任せて、
我々は純粋に満州国の興亡の世界の住人になり、行く末を見守ろうではないか。
もう一度言う。何も言うまい。
まさに一気読みの名作なり。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.14:
(5pt)

日本の民族主義の興隆と破摧。たった90年の間にそれは起こった

「明治政府は黒船来航前は暦の変更ぐらいしか政治に関与できなかった天皇を日本の全てを統べる中心に据え付け、欧米列強による植民地化を回避するために躍起となった。アジアを植民地化するという吉田松陰の提示した手段によって」。「朝鮮を併合し満州領有に向かうようになった。民族主義は覚醒時は理不尽さへの抵抗原理となるが、いったん弾みが付くと急速に肥大化し覇道を求める性質を有するものだ。ペリー来航によって完全に覚醒した日本の民族主義はアメリカの投下した二発の原子爆弾で木っ端みじんにされた」。「日本の民族主義の興隆と破摧。たった90年の間にそれは起こった。この濁流のあとかたづけに日本は相当の歳月を要することになるだろう」。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.13:
(5pt)

血縁、怨嗟、破滅、そしてわずかな希望

四兄弟につきまとう特務機関員はついに戊辰戦争まで遡る血の繋がりを告白。そして彼は、長男と同じシベリアの収容所で自らの矜持をかけて壮絶な死にいたる。さらに、長男も満州国高級官僚としての自らの生き方が大きな矛盾となり無念の死を選択してしまう。

死に場所を探すがごとき正義感と責任感に溢れた軍人の三男も家族を日本に残したまま、終戦後の蜂起というまさに無駄死。いちばんひ弱に見えた四男が一番逞しく生き抜き、ある使命から焦土とかした広島へ向かい、明日につながるわずかな希望に火を灯した。

ほんとうに不思議な小説だった。四兄弟が一同に会する事はただの1度もなく、亡くなった次男の納髪式に三兄弟が集合するのみだし、歴史の部分はすべて第三者である新聞記者、軍人、満鉄・満映関係者、軍属などが「語り部」として話すだけで、主人公たちの心情が大きくクローズ・アップされることもない。

でもほんとうに本作はもちろんのことたくさんの作品を楽しませていただきました。「冒険小説」などというありふれた括りをはるかに超えた「文学作品」であり、「小説」どころではなく「大説」でした。ほんとうにありがとうございます。もう読めないんですね。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.12:
(5pt)

凄い作品、ただただ感嘆あるのみ

作者渾身の全九巻を読了。素晴らしい読書体験でした(充足感プラス脱力感)。無数の大事実、中事実そして小事実が織りなす(というか綾なす)歴史絵巻(?)に酔いました。この余韻と感慨は長く(おそらく一生)尾を引くものと思います。生意気を云えば、歴史を記述(叙述)するとはどういうことか、をも学んだ作品でした。明治維新以後の日本の国家戦略が吉田松陰の『幽囚録』に既に予言されていたとの指摘(383頁以下)も目ウロでしたね。

「栗田中将ってのは嶋田繁太郎元海相のお気に入りというだけで、その無能さはだれもが知ってたらしい。海軍は何だってそんなやつに第二艦隊の指揮を執らせたんだ?」(138頁)
(辻政信について)「あの参謀は炭焼きのことして極貧のなかで育った。・・・ そういう経歴のなかでも変わらなかったことがある ・・・ 貧困にたいする軽蔑だよ。極貧の育ちが逆にそんな感情を抱くようになったのかも知れない。それに異常なほどの潔癖さ。宴会で酌婦や芸妓がいると、面と向かって醜業婦と罵倒し寄せつけないらしいんだよ。女たちがなぜそういう仕事をしているのか想像すらしようとしないんだと思う。これは明らかに人格的欠陥としか言えん。それが多数の兵員を死に追いやっても次から次へと新たな作戦計画を立案できる理由だろうよ」(179~80頁)
「情報は他の情報と組み合わせることによってはじめて意味を持つ。それには全体を俯瞰できる知識がないと無理だ」(239頁)。
「大川周明 ・・・ これには陸士二十期代が集まった。・・・ 北一輝 ・・・ これには陸士三十期代が馳せ参じてる。そして、陸士四十期代のこころを捉えてるのが平泉学派創りあげた平泉澄だ。この学派が説くのは諫の思想で、国体護持のためには腹を切ってでも天皇を諌めることを最高の美学としてる」(314~5頁)
「「ちょっと待って、兄ちゃん」「ど、どうした?」「水、飲みたい」・・・「おいしいよ、兄ちゃん、おいしい!」照夫は顔をくしゃくしゃにして涙を流している。夏子が水筒の栓を閉めて傍らに置き、大地に跪いた。瞼を伏せて両手を合わせ、弾んだ声で言った。「もういいよ、兄ちゃん、母ちゃんのところに行くけえ!」照夫が歩兵銃のところに戻り、それを拾いあげてかまえた。炸裂音とともに夏子の小さなからだが二米近くふっ飛んだ」(479~81頁)。
(敗戦の)「詔書渙発以後、敵軍の勢力下にはいりたる帝国軍人軍属を俘虜と認めず」(546頁、「戦陣訓」の否定だが、これが大量のシベリア抑留者の悲劇を生んだ)。
「血を分けていても、結局はこころの底なんて覗けてはいないのだ」(630頁)。
「文献を読むかぎり、昭和前期の時代の濃さは後期とは比較にもならない。・・・ あらゆるものがぎっしり詰まっている。そして、この濃密な歴史は満州を巡る諸問題を軸に展開していく」(649頁、作者あとがき)。
「書きながら痛感させられたのは小説の進行とともに諸資料のなかから牧歌性が次々と消滅していくことだった。理由ははっきりしている。戦争の形態が変わっていったのだ。まず、兵器がちがう。次に交通手段がちがって来る。それは戦術そのものを変化させた。点対点は線対線に、線対線は面対面に。最後は空間対空間が戦況を決定するのだ。航空機による無差別爆撃が常態となったとき、牧歌性が存する余地はもはやどこにもない。それは近代戦の宿命であり、浪漫主義のつけ入る隙のないものだった」(650頁、同)。
「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない。・・・ 歴史は客観的と認定された事実の繋がりによって構成されているが、その事実関係の連鎖によって小説家の想像力が封殺され、単に事実関係をなぞるだけになってはならない。かと言って、小説家が脳裏に浮かんだみずからのストーリィのために事実関係を強引に拗じ曲げるような真似はすべきではない。認定された客観的事実と小説家の想像力。このふたつはたがいに補足しあいながら緊張感を持って対峙すべきである」(650~1頁、同)。
「歴史とは暗黙の諒解のうえにできあがった嘘の集積である」(651頁、ナポレオンの箴言、同)。

最後に、全くの無い物ねだりで忌憚なく贅言すれば、評者個人としては間垣徳蔵の最期には若干違和感を覚えたことを告白しておく。あと、作者に残された時間の短さの故であることは勿論だが、本作品の登場した数多の登場人物の行方についてもっと描き込んでほしかったなぁ、と思ったことも。了
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.11:
(5pt)

「夢破れて、山河あり」や?死の寸前まで書き続けた大河歴史小説、ここに完結。大日本帝国が創作した満州帝国はわずか13年で幕を閉じる。敷島四兄弟のうち生き残るのは?

昭和19年6月から21年5月まで。マリアナ沖海戦での連合艦隊敗退と東条英機暗殺計画で始まる。インパールで死した次郎の遺髪が太郎のもとに届けられ、満州東部の朝鮮国境近くの都邑・通化で残された三兄弟が集まり次郎の墓を建てる。

繰り返しになるが小説は歴史に凌駕される。特務中佐間垣徳蔵の口からは「日本人が夢見た満州は理想の国家の欠片さえ失って重い重い鉄鎖でしかなくなった」と言わせる(p238)。同時に間垣は「わたしと敷島四兄弟とは血が繋がっている」と祖父が同じの従弟同士であるとの秘密を暴露(p242)。第一巻の冒頭の一節が甦る。

8月15日敗戦、その後太郎は資本主義幇助の罪によりシベリアで強制労働に。その収容所で奇しくも間垣と再会するものの「生きる屍として一生苦渋の海を泳ぎつづけること」(p567)から逃れて間垣とともに自死。三郎は関東軍将校の矜持を持ったまま「いったん濁流のなかに身を投じた以上だれもが流されていくしかない」(p596)と反八路軍武装蜂起に起ち軽機関銃の掃射の前に死亡。四郎は生きながらえて三郎が助けた少年を故郷の広島へ連れていくが「その風は五月にしては爽やかさを感じさせない」(p648)。「山河」さえも残されていなかったのはないか。

この巻でも辻政信大佐は「帝国陸軍の厄病神」(p178)として断罪されるが、繰り返し登場するのが後に政財界で活躍した瀬島龍三中佐。台湾沖航空戦大勝が誤報であることを明らかにした大本営参謀堀栄三少佐の緊急電を握りつぶし、二か月の病気休暇中に外交伝書使としてモスクワへ向かったという噂、ストックホルムから小野寺信少将が送ったソ連の対日参戦情報の暗号電報のもみ消し、対ソ停戦・休戦交渉に関東軍総参謀長秦彦三郎とともに加わり「戦闘を中止すれば60万の関東軍をシベリア開発の労働力として提供すると申し出た」という噂、シベリアでも辻の腹心朝枝繁春大本営参謀と(のちにソ連スパイであることを自供した)志位正二関東軍情報参謀と一緒に思想改造施設である第7006俘虜収容所に入れられていた事実もまた明らかにされている。(p113、 150、 230、 302、 406、 514、 515、 530、 563)

巻末の23ページ400件以上の参考文献のリストと著者のあとがきが見事でありかつ壮絶である。小説の重さに簡単には書評を書けなかったことを告白しておく。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.10:
(5pt)

満州国一大叙事詩ここに完結

ついに、9冊感電読破、」敷島4兄弟のそれぞれのドラマの終幕はスさましい。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.9:
(5pt)

終の矜持

ついに最終巻。
終焉と灰燼。そして男たちが死んでいく。
屑としか形容できない高級軍人たちが無様に延命を図る中、物語の主人公たちはみじめに、しかし最後の誇りを示して死んでいく。

単行本未収録の作品集は刊行を期待したいが、船戸ハードボイルドを長編で堪能できるのは本作が最後だ。寂しい。

しかし、船戸作品に出合えて、良かった。
船戸先生、長期の執筆、お疲れ様でした。
新刊は後日、そちらで。書き溜めておいてください。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.8:
(4pt)

面白かった

歴史の見方として船戸さんの見方が言いたかった本なのだと思う。因果関係がはっきり。台湾の霧社事件があって、石原莞爾は満洲領有論から満州国設立に舵を切ったというのは新鮮。満洲では東三省官銀行券は避けられ、正金銀行券、朝鮮銀行券が好まれた。銀行券が数ありすぎて現金で持っているから土匪が増えたというのも視点が明確。蒋介石が長征の共産党を壊滅させなかったのは蒋経国がモスクワ留学中でStalinに殺されるリスクあったから。これもなるほど。ゾルゲの諜報活動のおかげで極東ソ連軍はドイツに攻められても動かず、結果として帝国陸軍の南進論に味方したというのは多少疑問を持つけれど。ゾルゲが関東軍は北進しないと教えたので、ソ連軍はモスクワ前面に一部極東軍を転進させて持ちこたえたのではないか?辛亥革命以来の日本留学によって日支の人物交流が濃密であったという点に触れていないのは残念だけど。人物の評価も船戸与一の個人的意見がはっきり。石原莞爾、影佐禎明、山下奉文は高く、瀬島隆三、富永恭二は徹底的に低い。さて、小説としてはどうか?敷島四兄弟の中では馬賊の頭目上がりの次郎が活動写真的に魅力的だが、彼らと黒子役に歴史を語らせる方式にしたため、やたらとメシを食べるシーンが多くて、何回、ヤマトホテルのビーフシチュウと太郎家の鋤焼が出てくるんだろう。小説としては満点と言うわけにいかないなあ。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.7:
(5pt)

日本人必見の小説である。

満州国からインパール作戦までを、4人の日本人兄弟を狂言回しにしながら描いた、大河小説の最終巻。
小説と言いながら、主要な事件はすべて史実に則っているので、歴史の教科書とも言える。
全巻、日本人必見の小説である。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.6:
(5pt)

むなしく呆然とする

今日読み終えた。何とも言えない息苦しい読了感 作者はいったい何が言いたかったのだろうと悩みながらこの文を書く。
四朗は明日を生きることができるのだろうか?私の心にも何とも言えないむなしさだけが残る。
満州引揚者の気持ちの一端に触れることができたのかもしれない。
岸も瀬島も児島も笹川も戦後をふてぶてしく生きた。東条英機も自殺はしていない(失敗??なのか)。わが子を失い妻を強姦されシベリアに抑留されて辛酸をなめた人がどういう気持ちになったか察するにあまりある。怒りと憎しみとあまりの不条理に狂いそうになる。
でもあれからこの夏で70年たった。作者が冷静に満州から南方そして満州に戻ってきつつ語ったたように世界は権謀に満ちている。不条理を泣き叫んでも何も解決しない目を背けても何にもならない。私たちはこの猛獣の檻のなかで食われないように平和な日本を守るしかない。
感情や思い込み独善の末路はこの本を読めばすぐに理解できるだろう。
救いのない展開に本当に疲れた。独善と虚栄と謀略に満ちた話で最後に救いがほしかった。だって戦後日本を作ったのはなんだかんだ言ってとんでもない失敗をした彼らンんだから。作者はいまの日本も失敗だと思っているのかな?
私は間垣が好きだ
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.5:
(5pt)

読むべきです

船戸与一が10年にわたり書いた、戦争文学の傑作だと思います。
特に今の国会で、平和とゆう名前の付いた
戦争法案が審議されているなかで、国民皆が読むべきでしょう。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.4:
(5pt)

渾身の力作、ついに完了

渾身の力作、終に最終回に
壇一雄の「夕日と拳銃」の乗りでスタートした「満州国演義」、第一巻が発行されたのは
2007年4月副題「風の払暁」であった。2005年から週間新潮に連載されたものに加筆訂正
されたハードカバーで、三国志演義にならった壮大な歴史小説の構想が見えてきたのかも
しれない。主役である麻布の名家に生まれた敷島四兄弟が満州国設立以前から満州を舞台
に繰り広げる様々な異質の活動を描いたもので、ある意味戦前の昭和史が語られていると
言ってもよいだろう。第三巻までは週間誌連載の単行本化であったが、それ以降は書き下
ろしとなり作者はこれ一本に集中したせいか時代考証がより綿密になってきたようだ。以
下年一冊くらいのペースで歴史に弄ばれる大日本帝国の盛衰が敷島四兄弟の活動を通じて
語られて行く。そして第九巻、副題「残夢の骸」を以って全巻終了となる。ナチスドイツ
降伏の3ヶ月後に開始されたソ連軍の対日参戦、希望に満ちて建国された満州国は無残に
蹂躙される。最終巻では無情な敗戦の実態が容赦なく描き出される力作だ。
 各巻400ページを超えるこの作品を書き終えて、作者は語る。小説は歴史の奴隷ではな
いが、歴史もまた小説の玩具ではない。設定された客観的事実を小説家の想像力が緊張を
もって対峙されるべきであると。では歴史とはなんだろう。
「歴史とは暗黙の諒解のうえにできあがった嘘の集積である。」ナポレオン・ボナパルト
 この最終巻が発行された直後、作者は長い癌との闘病生活に終止符を打った。
謹んでご冥福をお祈りします。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.3:
(5pt)

渾身のライフワーク完結

船戸与一渾身のライフワークとも言える大作「満州国演義」全9巻7500枚(新潮社)が、10年の時をかけて完結した。『風の払暁』『事変の夜』『群狼の舞』『炎の回廊』『灰塵の暦』『大地の牙』『雷の波濤』『南冥の雫』『残夢の骸』、各題名だけでもオイラ圧倒されてしまう。昭和3年の張作霖爆殺事件から昭和6年満州事変、昭和7年第1次上海事変、満州国建国、昭和11年2・26事件、昭和12年盧溝橋事件、第2次上海事変(日中全面戦争へ)、昭和14年ノモンハン事変、昭和16年太平洋戦争突入、昭和20年ソ連軍満州侵攻、日本無条件降伏、昭和21年天皇人間宣言、満州通化事件に至るまでの激動の二十余年を、満州を主な舞台として、架空の主人公敷島家四兄弟、外務官僚の長男、元馬賊で自由人の次男、憲兵将校の三男、インテリであった四男、彼らの視点を通して描ききったのだ。また四兄弟を狂言回しのごとく操る特務機関員の存在も忘れてはならない。この作品の冒頭に描かれた慶応4年8月戊辰戦争会津鶴ヶ城下のエピソードが、完結巻で解き明かされようとは。
 この作品は歴史の流れを追った通史小説としても、先の戦争の歴史を再確認することが出来る。そこには著者があとがきで触れているように戦争の形態の変化が如実に現れているのだ。軍隊間の近代戦は総力戦となり、前線も銃後も差別なき殲滅戦の時代となった。そこにはもはや浪漫主義のつけ入る隙はないと。しかしそればかりではない。軍部や政府の意思だけではなく、国民の気分、マスコミの煽動、全てが戦争に突き進む過程をも、こと細かに描き出している。日本の今の状況と比較してみると、その細かな過程一つ一つが現実に思い当たってしまうのだ。長州出身の著者は、完結巻で日本の海外膨張主義、侵略主義の原点として長州の吉田松陰を引用しているが、帝国主義者の全てが、最初から厳然とした帝国主義者として存在するわけではない。四兄弟もまたそれまでの自分の思想信条にかかわらず、状況の中で知らず知らずのうちに帝国主義者となり、大日本帝国および日本軍のために働いていくことになったのだ。
 敗戦から70年、現在の日本はこの戦争の時代を忘れきっている。いや、現政権(何と長州安倍政権)は忘れたふりを装って同じ経過を歩もうとしている。それに対し、現天皇は新年にあたっての言葉で、「この機会に満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」といわざるを得ない状況となっているのだ。その意味でも、『満州国演義』は多くの人に読まれなければならない作品である。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.2:
(5pt)

満州国壊滅の過程を詳細に記述する歴史小説

サブタイトルに’’満州国演義 9’’ とあります.満州国は解りますが,演義は私には意味不明でした.ネットの辞書で調べると中国の用語で,歴史を分かりやすくするための連載小説の意だそうです.小説ですから,架空の人物を設定し歴史を背景に活躍させます.本編は満州国を語って最終の第9回で,これでもって満州国は日本の敗戦とともに崩壊し,消え去ります.思えばペリー来航によって覚醒した日本の民族主義は疾風怒濤の勢いで侵攻を開始し,朝鮮半島,満州,台湾,更には東南アジアにまで及び,その90年後にアメリカが投下した原爆2発で終止符を打った.「これほど劇的な生涯は世界史上類例がないかもしれない.この濁流のあとかたづけに日本は相当の歳月を要することになるだろう」と,著者は書きました(271頁).急上昇し,急降下した日本の歴史であれば国の内外で多くの人たちが人生をねじ曲げられたでしょう.満州国演義は彼らの叙事詩だと著者は記しています(雑誌’’波’’本年3月号).

ところで,日本の進撃はそれをサジェストした先人が江戸末期にいたことを皆さんはご存じですか.私はこの本を読むまで知りませんでした.その人は吉田松陰です.長洲出身の松蔭は下田からアメリカへの密航を企てて失敗し,伝馬町の獄に繋がれました.そのときに認めた『幽人録』に欧米への対応策を大略以下のように書き記しました(270頁).

北海道を開墾し,隙あればカムチャッカ・オロッコを奪い,琉球を諭し,朝鮮を責め,北は満州の地を割き,南は台湾,ルソンの諸島を治め,進取の勢いを示すべし.

日本を欧米の植民地政策に組み込もうとする動きを封じるにはアジアを日本の植民地にするしかないと『幽人録』は述べている.明治政府は吉田松陰が提示したシナリオに沿って侵攻を始め,ヒロシマ,ナガサキで木っ端微塵にやられてしまいました.戦後70年たった今も日本はその後遺症から抜けきらないでいます.「この濁流のあとかたづけに相当の歳月がかかる」と2015年出版の本書で著者は述べました.この発言の意味するところは重大です.後どれくらいかかるのか.どのように後片づけをすれば良いのか,著者のサジェッションはありません.読者一人ひとりが考えるべき宿題です.
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284
No.1:
(5pt)

読後感が正に「残夢の骸」

著者が10年を費やして書き上げた「満州国演義」の完結編です。
私は、昭和16年2月に結婚した両親が仕事の関係で新婚生活を
満州,新京で送っておりその時に宿り、16年の12月に
日本に母のお腹の中で、ともども帰国し、翌年3月、文京区本郷にて生を受けました。
 かと言って両親からは満州時代の話を聞いたわけではありません。
したがって「満州国演義」というタイトルには強烈に惹きつけられ
1巻から6巻までは恐らく1か月掛からずに読んでしまいました。
 そして、待ちに待った9巻目、本日読み終わりました。
まさしく「残夢の骸」のごとき読後感でした。 
歴代天皇制の神格化、そして皇軍と言われた帝国陸海軍将官の
日露戦争勝利の不滅神話化、当時の国民感情、ジャーナリズムの
歪曲化、空恐ろしい時代だったということを改めて教えて
いただいたと思います。今、高校1年の孫に、いつかは絶対に
読んでもらいたいと念じています。
さて、瀬島龍三をモデルとした有吉佐和子著「不毛地帯」では彼を
非常に英雄的、好意的に書かれていましたが、本書では彼の軍人としての
活動をかなり懐疑的に表現されています。
どちらの瀬島龍三が実態に近いのかは、本人のみぞ知る、ことでしょう。
残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:残夢の骸 満州国演義九 (新潮文庫)より
4101343284

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!