蝦夷地別件
- アイヌ (10)
- フランス革命 (14)
- 日本冒険小説協会大賞 (4)
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圧倒的に筆致に物語の持つ力、ダイナミックさ、その魅力を存分に感じる作品であった。 船戸作品は初めて。かの有名な満洲…を読もうと全巻買って本棚の肥やしに。そんな折に、ふと北海道旅行に行くことが決定。以前から、アイヌの人々が日本人(和人)から受けてきた略奪、陵辱、差別のことはちらっと、教科書に出てくるシャクシャインくらいしか知らなかった。 苛烈を極める差別。それが物語となり、セリフとして人から人から投げつけられる。目を背けたくなる。 1人の人間として一度は読まなくてならないと思う。 また、丁寧に人物の心の動きを追ってるので、コミュ力を付けるのに多少いいのかなとも感じた。 | ||||
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本作と小説のジャンルは違うけど、あまりに頭でっかちなSF(SFが頭でっかちではありません)を読んだおかげで疲れてしまったので、ダイナミックな物語を読みたいと考えたら船戸与一を思い出した。 古くは「猛き箱舟」(これは会社のトイレにも持ち込んでむさぼり読んだ)最近では「満州国演義」を読んで、相変わらずの物語の大きさに圧倒されていたが、大海の様な物語世界に自分を浮かべるには、この人の作品だろうと思い、未読だった本書を購入。 物語のテーマは、18世紀の蝦夷で起こった「国後・目梨の乱」の顛末なのですが、史実をベースに様々な人間が織りなす群像劇といったらいいのかな(かなり乱暴ですが)。 で、この物語に浮かべたジジイの船は、海中深く巨大な潜流を抱える船戸大海のうえで、時には凪いで時には波浪浪で、また遠くに暴風の雷鳴を覗き見つつ、そのなかに放り込まれたりしながら最後の沖まで一気に連れ去られてしまいましたわ(おかげで先の読後に抱え込んでいた閉塞感からも見事に解放された)・・。 しかしこういった史実はなかなか教科書からは学べないが、日本という国家のなかで蝦夷という民族の征服や文化の殲滅、例えば士農工商といった社会制度ではない支配されるものと虐げられるものの過去があったというのは、(自分の浅学を知りつつ)あらためて衝撃でした。アメリカ大陸に渡ってインディアンを駆逐したヨーロッパ移民やメキシコを侵略したスペイン人、あるいはナチスドイツといった海外の虐殺や差別といった歴史と行為には人並みに憤っていたけれど、自分の国でも同様の行為が行われていたということは、自国の民族が持っているであろう倫理観とか社会への忠誠心を揺さぶるものがありますね・・ 船戸作品には歴史的・民族的に虐げられた人間に寄り添うものが多いけど、その描き方は苛烈です。本作も史実とフィクションを編み合わせながら、人間の静謐と汚濁を描いてます。「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない」は作者:船戸与一のことばだけど、本作もまさにその気概を圧倒的な質量で伝えてくれてます。ただ惜しむらくは、後半の復讐譚にフィクションとしてのリアリティがなかったことかな。 なので星よっつになりました。 作者が自分の愛読者は目方で本を買う(だったかな?)というくらい、本作も分厚い物語ですが、この熱量とダイナミズムを厭わない人なら、絶対に満足する圧倒的な物語です。乞読! | ||||
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陸続きの欧州の歴史観は特にフェルナン・ブローデルの『地中海』以降、グローバルな人とモノと情報の流れを捉えることが当たり前である。 だからこそ、EUや中近東やアフリカからの人の流れも受け入れられる。 一方で、島国日本人は「日本固有の歴史」みたいな幻想に囚われやすい。 だから、いまだに「単一民族神話」が支配的で、移民へにも不寛容なところがある。 この作品は、史実ではなくても、本当の歴史と言える。 「単一民族政策」なだけで「単一民族」なわけではない歴史。 鎖国してるから、海だから、外国の人も物も情報も入らない?普通に考えたらそんなわけないだろという歴史。 という意味では。 10年以上前に読んで、正直、細かいことは忘れてしまっているけど、一番印象的だったのは、日本史もブローデル的なグローバルな視野から再検証が必要なんだなと思わされたところ。 船戸はこの作品を書く上でブローデル(あるいはそれ以降の歴史観)は意識していたはず。 ルポの『国家と犯罪』では、世界システム論のイマニュエル・ウォーラーステインにも言及してた気がするし(うろ覚えだけど。なお、ウォーラーステインの前提のひとつはブローデル)。 | ||||
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深い、実に深い。そして本当に悲しい話。 人間の権限、善意。それらの殆ど全てが強力な力に踏みにじられる。 登場人物全員が救われない悲しい物語だけど、ただ一つだけ、最後の最澄から洗元への手紙だけが救われる。 | ||||
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蝦夷地別件は20年ほど前に読んだ作品である。 当時札幌に住んでいたこともあり、自分の知らなかった歴史が描かれた面白い作品だと思った。 個人的には「砂のクロニクル」に次ぐ船戸与一の傑作である。 時を経て満洲国演義、新雨月を読んだ後で蝦夷地別件を再読をしてみると、当時とは違った 船戸与一の問題意識がはっきりと見えてくるようになった。 船戸与一は常にこう問い続けていたのだ。 「日本とは何か?日本人(日本民族主義)とは何か?」 他の作品を読んでみると改めてその問題意識の片鱗があちこちに散りばめられているのが読み取れる。 ・「山猫の夏」の弓削一徳は父が帝国陸軍大尉であり、皇道派とされパージされブラジルに渡った。 ・「夢は荒れ地を」の丹波明和の母は関東軍相手に慰安婦をしていた。 ・「降臨の群れ」のアンボンは戦時に日本軍が占領していた。 ・「虹の谷の五月」のトシオの祖父は抗日組織に属していた。 読み直した本は現時点で限られているので他はどうかわからないが、いずれの作品にも 日本のかつての戦争の影がちらついているのである。 昔は単に辺境で日本人が活躍・暗躍する独特で素晴らしい冒険譚を書いていると思っていたが、それだけではなかったのだ。 つまり、船戸与一は数多の作品を通して「あの戦争は何だったのか?」を中心に 日本とは、日本人とは、をずっと問い続けていたのである。 そして、船戸与一が初めて書いた歴史小説「蝦夷地別件」では現在の日本の形をほぼ完成させる 蝦夷地の日本化の決定的な契機となる、国後目梨の戦いをテーマにしている。 当時はなぜ船戸与一が辺境の冒険譚ではなく歴史小説なのか、と不思議に思ったものだが、今となってはその必然が分かる。 蝦夷地は日本ではなかった。それが、いつからどのように日本になったのか。その秘密を解き明かしたかったのだ。 しかも、その視点は日本にとどまらずヨーロッパの動乱と関連付けているのだから恐れ入る。 そして、船戸与一は関心の核心である「天皇とは何か」着手するはずだったのだが、 構想だけで作品を完成させることなく倒れてしまった。つくづく惜しい人を亡くしたものだ。 いずれにせよこの作品は満洲国演義の関連作品として理解することで、大きな意義が理解できるようになる。 そして、船戸与一は同時に民族とは何か、国とは何か、人が生きるとはどういうことかを常に問い続けていた。 蝦夷地で何があったのか、日本とは何か、本書でしかと確かめてほしい。 踏みにじられるアイヌ、憤怒の咆哮の彼方に現在の日本があることを。 | ||||
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