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TOKYO REDUX 下山迷宮



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【この小説が収録されている参考書籍】
TOKYO REDUX 下山迷宮

TOKYO REDUX 下山迷宮の評価: 4.20/5点 レビュー 10件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全10件 1~10 1/1ページ
No.10:
(5pt)

表現上の実験がかなりウザいけれど

戦後最大の謎と言われる下山事件。戦争が終わって間もない1949年に起きた、国鉄総裁の行方不明・死亡事件だ。『日本の黒い霧』や『謀殺 下山事件』など、この謎を扱った映画や小説は実にたくさん。けれど、海外の作家によるものは本作が初めてではないか。期待は高まる。

 翻訳物は実は少々苦手なのだが、本書に限っては訳者・黒原さんの文章がこなれていて、翻訳文独特の変なテイストが全くない。なので本来は読みやすいはずなのだが、会話に鉤括弧を使わないなど、元々の小説がかなり実験的な表現を用いているため、読みにくいことこの上なし。

 それでも頑張って読む。お話は三部構成。第一部で描かれる事件の発端と経過は、日本でこそよく知られた事実なのだが、外国人の作家(但し日本在住)がよくここまで細部を調べ上げたものだと感心する。これでもう、読むのがやめられなくなる。

 第二部は、戦後史を少しでも齧った人なら「アレ?」と思う。ここは下山事件というより、GHQのキャノン機関による作家誘拐事件、つまり鹿地(亘)事件を扱っているのでは、と気付くだろう。訳者による巻末の解説でもそう記されているので納得。事件自体は先述の松本清張著『日本の黒い霧』にも確か載っていたはず。

 第三部は・・・。もうちょっとわかりやすい謎解き描写であっても良かったかなと思う。本書はミステリーというより、小説としての完成度をとても重視している印象。色々と表現上の実験をしているが、それが果たして成功しているかどうかは読者によって異なるだろう。

 本書で最も驚いたことは、訳者である黒原さんの博学ぶり。東大法学部卒? どうりで。巻末の解説は必読。感心することしきり。
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No.9:
(5pt)

ミスマッチな文体

低評価の方がいるのもっともだと感じた。陰謀説の囁かれる事件を扱った作品は、論理的で理事整然として帰納法を演繹法を駆使した方法で書かれることを読者は期待するが、ピース氏の作品はそうではない。事件の謎解きは二の次であり、事件に関わった人物たちの“哀しみ”を抽出したような多声的でオペラのような文体を用いた文芸的なアプローチがなされている。
論理的とは真逆と言って良い。イメージの断片のような言葉の畳み掛けがらなされているのである。
それが事件の真相の解明を期待する読者には邪魔にも思えるだろう。だが、事件を扱った作品を単に娯楽の道具にしないと言うピース氏の思いを理解して再読したときには、事件に関わった関係者たちの“哀しみ”が、その哀切な身を切られるようなイメージ、その傷が、読者の胸に刻まれるだろう。
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No.8:
(1pt)

皆様、ご用心!

ある地方新聞の書評欄で絶賛されていたし、長年興味を持ち続けてきた、あの下山事件について外国人が書いた本ということで、買って読んでみた。
ところが……ひどい本だ!内容も文体も最悪!内容は要するに言い尽くされてきた陰謀論をブンガク的修飾でコーティングしたに過ぎないものだ。何の実証もない(小説だから、と逃げるのだろうが)。
そして、信じ難いほどひどいのが文体だ!文節(?)ごとに区切った文章がダラダラダラダラ、ダラダラダラダラ、ダラダラダラダラ、ダラダラダラダラ……と延々と続く。これが歯切れのよい斬新で”悪魔的”文体だって?トンデモナイ!本筋と少しも関係のない人物の、ほとんど意味のない動作まで、一から十まで描写して、それがどうだと言うのだ!ハードボイルドを気取っている?冗談もいい加減にしろ!
という訳で、英国人が書いたシモヤマ・ケースなどという外見に騙されてはいけませんぞ。皆様よ。
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No.7:
(4pt)

終戦時の東京の迷路

最初は独特の語り口に違和感ありまくりだっけど、慣れていくにしたがって暗い迷路へいざなう呪文のように感じてくる。戦後の混乱の世界は人によって様々に見えていたのだろうけど、冷戦の視点から世界を見ていた人々の引き起こす暗黒迷路を、巻き込まれさまよった人々が、自らを腐らせながら悪夢を抱えて最後を迎える。
印象だけで言えばそんな感じで、醸し出される雰囲気は入り込めば魅力的かも。
多分、本書を読む前に下山事件の通説くらい申し越し押さえておいたほうが楽しめるのだと思って少し後悔している。
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No.6:
(5pt)
【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

下山事件と独立記念日

すごくファンタジックで第一部以外は絵本を
見るように読む進むことができます。3つの
時代を結ぶ点と線は、なかなか判明しずらい
です。下山事件を広範な過去の出版物や資料
を(海外の方が)纏められていることが凄い。
そして、アメリカ側の人物の動きが手に取る
よう(ひとりひとりの行動や発言)に分かる
のが過去に全くない、この点で凄いし、読む
価値がある。
なるほど、7月4日はアメリカの独立記念日
かぁ、気が付かなかったなぁ。
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No.5:
(5pt)

特異な文体の吸引力

下山事件の発生を描く第一部はオーソドックスな捜査小説の体裁を整えているが、探偵小説家の失踪を描いた第二部、さらに昭和崩御前夜を舞台にした第三部と物語は次第に曖昧模糊とした霧に包まれた迷宮の如き様相を現し、著者が影響を受けたという安部公房の『燃えつきた地図』や往年のアンチロマンの諸作『消しゴム』や『約束』を思わせる。
下山事件の真相を暴くというような実録的興味より、地の文と会話が一体化した特異な文体の異常な吸引力が勝る。万人にお勧め出来るエンターテイメントでは決してないが、個人的には折に触れて読み返したくなるだろう魅力がある。
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No.4:
(4pt)

フィクションという結末が少し物足りないが……

散々、言い尽くされてきた下山事件の、著者なりの「結論」ではない。
事件を素材にした「小説」であるところが、本書のミソかもしれない。
読者は、いかようにも結論を考えることができる。

迫力ある文体とストーリーで、小説であることを忘れさせるほど。
松本清張、ベケット、上田秋成まで……引っ張り出す迫力も見事だが、
やはり実際に起こった未解決事件だけに、
強引でもいいから「作者の結論」がほしかった気もする。

だがその点を割り引いても、「物語」として充分に堪能できる好著だ。
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No.3:
(3pt)

英文原著へのreviewのコピー

知らない間に、david peaceのtokyo三部作が完結していた。そう、第三部のtokyo reduxが出版されていたのだ。邦訳も出たばかりだ。

さっそく読んでみた。舞台の仕掛けはちょっと手が込んでいる。メインは1949年の下山事件。そして事件の時効を迎える1964年の東京五輪を控えた東京。そして1989年の昭和天皇の崩御を迎えた東京。この3つの時代を結ぶ大きな謎がこの作品の狙いだ。

彼の作品の構図それ自体は古色蒼然としたものだ。松本清張の「日本の黒い霧」につながる構図だ。占領軍の存在と冷戦の影響による逆コースそしてそこに関わってくる旧軍のグループといったところだろうか。これにより引き起こされた様々な奇怪な実際の事件が題材とされる。今回選ばれたのは、下山事件だ。今ではもう忘れ去られた事件。この首謀者としてして仮想されるのが、占領軍のCIV (Counter intelligence corp)の下のz機関(おそらくキャノン機関をモデルにしてるのだろう)。これに自律権を失った日本の警察そしてヤクザがからんでくるのだ。

ただdavid peaceの作品は通常のミステリーの枠には収まらない。いや、むしろ通常のミステリーのルールを破っているのが、彼の作品なのだ。謎の背後と黒幕はたしかに示唆されるのだが、大上段から作者によって説明されることはない。本作品は3つの時代に分けられるのだが、それぞれわかり難い形で閉じられる。とはいえ今回は、彼にしては、三部作の終わりということで、相当つっこんんだ形での終わりとなっている。「まえがき」と「あとがき」と組み合わせることににより、全体の大筋をぼやっと把握することが可能なのだ。

ただ繰り返しになるのだが、彼にとって筋は二の次。彼の作品は、つまるところ雰囲気の造形なのだ。

英語の特定の表現のしつこいと思えるほどの繰り返し。これが独特の雰囲気を作り上げる。この雰囲気は何と評したらいいのだろう。つまるところ、著者が頭の中で作り上げた「占領」の時代の雰囲気の造形なのだ。小平事件、帝銀事件との連鎖が本作品でも示唆されるのだが、ストーリーの展開上はあくまでもエピソードとしての扱い。国家主権が奪われてしまい、占領軍(GHQ)それも裏の組織(CICとキャノンとZ機関)とヤクザ(第三国人も含まれる)、さらにはソヴィエトの指令を受ける日本共産党が交錯しながら作り上げる世界なのだ。

国家主権は1951年のサンフランシスコ講和によって回復されるのだが、この占領時代に暗躍した人物たちの命脈はその後も続き、昭和の終了(1989年は社会主義体制の自滅による冷戦の終了の年でもある)と共に一応は幕を閉じる。この終了(closing)の雰囲気を盛り上げるために、1988年の年末の東京を背景として、richard straussの「4つの歌」(george szellとshwarzkopf)の後半が引用される。abendrodとheimat!ニコライ堂や神父まで登場し、これまた読者を困惑させる会話をくりひろげるのだ。.いったい誰が誰を操作しているのか?

そのほかにも原著には様々な人物や風物が取り上げられる。allenやfrankなどの固有名詞が、なんの注釈もなく突然登場する。おそらく前者はallen dulles. 後者はfrank wiesner, どちらもCIAの創設期に関わった人物だが、こんな形で登場させてわかる読者なんているのだろうか。kazなる人物は誰を示唆しているのだろう。sovietの著名なagent controller、otto katz??一事が万事、詳しい説明なしのこの種のほのめかしなのだ。

また1964年の部分ではザ・ピーナッツの「振り向かないで」がfurimukanaideとそのまま、これも何の補足もなく登場するのだ。そのほかgyouzaなどもそのまま提示される。外国人の読者の困惑が想像できる。邦訳ではこれらの小道具はどう処理されているのだろう。
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No.2:
(5pt)

わかりませんです。

別に何もありません。
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No.1:
(5pt)

デイヴィッド・ピースの情熱 REDUX

2007年の第一作から14年をかけて、デイヴィッド・ピースによる「東京三部作」が遂に完結を迎えた。原書が4月に刊行されていたことも知らず、思いがけず発売を知ったときは本当に嬉しかった。ようやく初読を終えたばかりの感想でしかないが、デイヴィッド・ピースの叙事詩的文体はさらに磨きがかかり、前作に続き翻訳を担当する黒原敏行による日本語訳は、その興奮を刺激的に伝えてくれるものとなっている。しかしながら、エルロイやマッカーシー以上に繊細かつ強固な文章が描き出す物語は、相変わらずに難解であり、おそらくは再読の楽しみこそが、本書を含めた「東京三部作」の真の白眉となるように思われる。巻末の作者の感慨深いあとがきや、参考文献一覧、および作品読解の要点を丁寧に紹介する訳者解説、印象深いカバーや写真資料まで、読者への温かい配慮が行き届いていて、興奮を覚めさせることなく頁をめくらせてくれる。デイヴィッド・ピースのさらなる次回作も期待せずにはいられない最高傑作だと思う。加えて、デイヴィッド・ピースは本書の執筆に10年の歳月がかかった理由を膨大な資料を読み込むためだったとしているが、他者の言葉を深く読み込む、この誠実な姿勢は、「東京三部作」第一作からあるものだが、特に前作の『 Xと云う患者 龍之介幻想』からより密度の高いものになったように思える。デイヴィッド・ピースはきっと自分の言葉を、他者の言葉との共存/共振の中に見つけたのだと思う。その意味で本書は一人の作家だけのものではなく、現在に連なる様々な過去の言葉や声を集めた、現代の神話叙事詩だといえるだろう。
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