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TOKYO REDUX 下山迷宮



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TOKYO REDUX 下山迷宮

TOKYO REDUX 下山迷宮の評価: 4.20/5点 レビュー 10件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

英文原著へのreviewのコピー

知らない間に、david peaceのtokyo三部作が完結していた。そう、第三部のtokyo reduxが出版されていたのだ。邦訳も出たばかりだ。

さっそく読んでみた。舞台の仕掛けはちょっと手が込んでいる。メインは1949年の下山事件。そして事件の時効を迎える1964年の東京五輪を控えた東京。そして1989年の昭和天皇の崩御を迎えた東京。この3つの時代を結ぶ大きな謎がこの作品の狙いだ。

彼の作品の構図それ自体は古色蒼然としたものだ。松本清張の「日本の黒い霧」につながる構図だ。占領軍の存在と冷戦の影響による逆コースそしてそこに関わってくる旧軍のグループといったところだろうか。これにより引き起こされた様々な奇怪な実際の事件が題材とされる。今回選ばれたのは、下山事件だ。今ではもう忘れ去られた事件。この首謀者としてして仮想されるのが、占領軍のCIV (Counter intelligence corp)の下のz機関(おそらくキャノン機関をモデルにしてるのだろう)。これに自律権を失った日本の警察そしてヤクザがからんでくるのだ。

ただdavid peaceの作品は通常のミステリーの枠には収まらない。いや、むしろ通常のミステリーのルールを破っているのが、彼の作品なのだ。謎の背後と黒幕はたしかに示唆されるのだが、大上段から作者によって説明されることはない。本作品は3つの時代に分けられるのだが、それぞれわかり難い形で閉じられる。とはいえ今回は、彼にしては、三部作の終わりということで、相当つっこんんだ形での終わりとなっている。「まえがき」と「あとがき」と組み合わせることににより、全体の大筋をぼやっと把握することが可能なのだ。

ただ繰り返しになるのだが、彼にとって筋は二の次。彼の作品は、つまるところ雰囲気の造形なのだ。

英語の特定の表現のしつこいと思えるほどの繰り返し。これが独特の雰囲気を作り上げる。この雰囲気は何と評したらいいのだろう。つまるところ、著者が頭の中で作り上げた「占領」の時代の雰囲気の造形なのだ。小平事件、帝銀事件との連鎖が本作品でも示唆されるのだが、ストーリーの展開上はあくまでもエピソードとしての扱い。国家主権が奪われてしまい、占領軍(GHQ)それも裏の組織(CICとキャノンとZ機関)とヤクザ(第三国人も含まれる)、さらにはソヴィエトの指令を受ける日本共産党が交錯しながら作り上げる世界なのだ。

国家主権は1951年のサンフランシスコ講和によって回復されるのだが、この占領時代に暗躍した人物たちの命脈はその後も続き、昭和の終了(1989年は社会主義体制の自滅による冷戦の終了の年でもある)と共に一応は幕を閉じる。この終了(closing)の雰囲気を盛り上げるために、1988年の年末の東京を背景として、richard straussの「4つの歌」(george szellとshwarzkopf)の後半が引用される。abendrodとheimat!ニコライ堂や神父まで登場し、これまた読者を困惑させる会話をくりひろげるのだ。.いったい誰が誰を操作しているのか?

そのほかにも原著には様々な人物や風物が取り上げられる。allenやfrankなどの固有名詞が、なんの注釈もなく突然登場する。おそらく前者はallen dulles. 後者はfrank wiesner, どちらもCIAの創設期に関わった人物だが、こんな形で登場させてわかる読者なんているのだろうか。kazなる人物は誰を示唆しているのだろう。sovietの著名なagent controller、otto katz??一事が万事、詳しい説明なしのこの種のほのめかしなのだ。

また1964年の部分ではザ・ピーナッツの「振り向かないで」がfurimukanaideとそのまま、これも何の補足もなく登場するのだ。そのほかgyouzaなどもそのまま提示される。外国人の読者の困惑が想像できる。邦訳ではこれらの小道具はどう処理されているのだろう。
TOKYO REDUX 下山迷宮Amazon書評・レビュー:TOKYO REDUX 下山迷宮より
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