Xと云う患者 龍之介幻想



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初公開日(参考)2019年03月
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長編小説

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Xと云う患者 龍之介幻想

2019年03月22日 Xと云う患者 龍之介幻想

小説家、芥川龍之介。東方と西方の物語と伝承と信仰に魅せられた男。そのなかで静かに渦を巻く不安。それがページから少しずつ滲み出す。半透明の歯車が帝都を襲った震災の瓦礫の彼方にうごめき、頽廃の上海の川面には死んだ犬が浮き沈み、己が生み出した虚構の分身と邂逅し、キリストと信仰の物語に心を囚われ、漱石がロンドンでの怪異を語る。河童。ポオ。堀川保吉。ドッペルゲンゲル。鴉。マリア像。歯車。羅生門、藪の中、蜘蛛の糸、西方の人―キリスト。私のキリスト。イギリスの鬼才が芥川文学をコラージュし/マッシュアップし/リミックスして生み出した幻想と不安のタペストリーを、精妙に美しい日本語に移し替えた決定的翻訳。文学的にして音響的、イギリス文学であり日本文学であり、近代文学と現代文学を越境する野心作。(「BOOK」データベースより)




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No.5:
(5pt)

物語の森に迷い込んだ芥川をチャーミングに描く

冒頭の1,2章を読んで、なんとなくわかった気になって数ヶ月間放っておいたのを改めて読んでみました。
あっ...もっと早く読了すればよかった。

作者はマッシュアップではなく「コラージュ」という表現を好んでいるようですが、コラージュというよりもうちょっと層が厚い印象です。
私は浅はかにも冒頭1,2章で表層的な内容と判断してしまっていたのですが、コラージュという言葉から、日本語では同じように思う人がいて損をするかもしれません。

私は、芥川の熱心な読者とは言い難いのですが、芥川の関心や嗜好や精神の持ちようがほんのちょっと違っていたら、シェイクスピアの存在が日本に現れることになっていたのではないかな…と読むたびになんとなく思っていたのですが...
本書でデイヴィッド・ピースが描くところの芥川は、その印象を強めるものでした。

過去からの物語の森を伐採したり刈り込んで整えたりしながら活かしていくようなシェイクスピア的な物語の構築に向かわず、自分がその森に迷い込んで幻想の世界に入っていってしまう本書の芥川は、けれども非常にチャーミングです。その線の細さも弱さも、すべて人間的魅力として映るように描かれています。
それが実在した芥川龍之介の実像とどこまで一致するのかはわかりませんが、作品を通じて知る姿と私にとっては見事に重なりました。作者ピースの手腕と、自分の好みとの合致の両面で満足した作品でした。
Xと云う患者 龍之介幻想Amazon書評・レビュー:Xと云う患者 龍之介幻想より
4163910018
No.4:
(5pt)

芥川分析

芥川分析の視点が良かった
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4163910018
No.3:
(4pt)

大正末から昭和初期は、まさに、平成から令和に移った現在を映す鏡か

アマゾンの内容紹介に“コラージュし/マッシュアップし/リミックスして生み出した”とあり、これに“サンプリング”と“元ネタ”が加われば、洋楽においてヒップホップが注目され始めた頃のレヴューみたい。

 しかし、ホメロスの『オデュッセイア』と対応させたポスト・モダニズムの傑作ジョイスの『ユリシーズ』、『千夜一夜物語』や中国の古典哲学などを下敷きにしたボルヘスの作品群、書くこと自体が主役となった数々のメタ・フィクション、古くは和歌の本歌取を例に挙げるまでもなく、先人の作品を意識的に変容、昇華させることは文芸分野で普通に行われていたこと。

 ところが、イギリス出身で20代後半に日本へ移住、芥川龍之介の人と作品に絞ったデイヴィッド・ピースによるこの連作長篇は、ちょっとした事件かも。
 活動拠点を日本へ移した元メガデスのマーティ・フリードマン、ソニック・ユースやガスター・デル・ソルに在籍したジム・オルークをつい想起させ、ネット社会がますます進むにつれ、こういった文化やサブカルの無国籍化は加速してゆくのだろうね。

 P195~、「戦争の後、戦争の前 九」、桃太郎伝説の裏読みのシニカルな嗤いに着目を。
 鬼が島は美しい天然の楽土であり、鬼は温和で楽しい種族。
 鬼の征伐に向かった経緯は桃太郎が山川畑に出る仕事を嫌い、老夫婦が愛想を尽かす乱暴者で体の好い追い出しかも知れず、現地では日の丸の扇を打ち振り「一匹残らず殺してしまえ!」と号令する。
 犬は鬼の若者を一噛みで殺し、猿は鬼の娘を凌辱後に絞殺、雉は無数の鬼の子供たちを鋭い嘴で突き殺す……

 思わず嗤ってしまうくらいシニカルなユーモアでもあるが、この箇所以外もほぼ全編真っ黒、芥川の身体と精神の不調からくる自らの将来と激変する社会への“ぼんやりとした不安”、限りない憂鬱、得体の知れない病理に感染しそう。
 老いも若きも先行きの見通しが立たず、身を縮め息を潜めて暮らす今の時代に似ていないか?

 DESINE FATA DEUM FLECTI SPERARE PURECANDO. 汝の祈祷、神々の定め給う所を動かすべしと望む勿れ。
 この絶望感はあまりにも深く、何を持っても埋め難く、他所から訪れたデイヴィッド・ピースが芥川とその生きて死んだ時代を俯瞰して編み直すことにより映し出した紛れもない今の日本及び世界に他ならないのでは?
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No.2:
(5pt)

デイヴィッド・ピースの情熱

本書はミステリー作家デイヴィッド・ピースによる、芥川龍之介の生涯とその小説世界を幻想的に描く、一大傑作小説である。著者については、残念なことに退屈なテレビドラマ化作品の印象が非常に強く、これまで十分に小説を読んだことが無かった。しかし今回は主題が芥川龍之介であることと、翻訳者がコンラッド、アイリッシュ、マッカーシーの名訳者、黒原敏行であることで、頁をめくるだけで自然にその面白さに没入できた。特に晩年の芥川が理想とした「筋のない小説」理論が生き生きと活用されており、小説の定型を拒否する、情熱溢れる詩的な文章は、あらゆる読者のために身代わりになってその苦悩を経験してきたかのような、新鮮な芥川龍之介のイメージを生み出している。著者の戦前近代日本への強い関心は巻末文献資料一覧に示されており、芥川及び近代日本文学の研究文献はもちろん、関東大震災を扱ったワイゼンフェルド『関東大震災の想像力』やAlex Bates "The Culture of the Quake"をはじめ、モダニズム文化についても川端康成の伝説的映画脚本『狂った一頁』英語翻訳を収録したWilliam J. Tyler "Modanizumu"を参照するなど、底知れない日本文化への精通を感じさせる。成熟した文章からも本書が著者にとって特別な作品であることがよく分かる。おそらくこれから数年の間にデイヴィッド・ピースの情熱は、さらなる傑作小説を上梓していくように思われる。過去作をすべて読みながら、本書を手に次回作を楽しみに待ち続けたい。
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No.1:
(5pt)

「辛抱強い十字架」に懸けられた、僕の基督

本書は、英語原書を翻訳した日本語版です。

原題は、
PATIENT X:
THE CASE-BOOK OF RYUNOSUKE AKUTAGAWA

日本語版の書名は、『X(エックス)と云(い)う患者(かんじゃ) 龍之介幻想』

原書の副題を直訳すると、医学的な文書であることを示す「芥川龍之介と云う患者のカルテ記録書」
とでもなりそうなのに、日本語版では『龍之介幻想』と文学的に意訳されています。

原書の副題だと、芥川龍之介と云う患者の実務的診察記録のようですが、
日本語版の副題では、この本が龍之介についての「幻想」小説であることを明示しています。

「X(エックス)と云(い)う患者(かんじゃ)」と和訳される場合は、患者名を伏せたいときです。
そういう「匿名」という意味の「X(エックス)」になっています。
本書第9頁の「序」の第一行目では、「患者X」に「ペイシエント・エックス」とルビがあります。

ところが、本文を読み進めていくと、
本書のほとんど終わりの部分「基督の幽霊たち」という「章」で、
「辛抱強い十字架(辛抱強いX)」(338頁)が出てきました。
おまけに、「ペイシエント・クロス」とルビまでふられて。「X」を「クロス」と読んでいます。

「ペイシエント」って、「患者」という意味の他に、「辛抱強い」という形容詞もあるよね。
「X」って、「クロス」とも読むよね。「クロス」って、十字架だよね。

こんな風に、出だしからどんどん連想が進み、読み進むと、いつの間にか最終頁。
この本の構成は、芥川龍之介の作品の「ビフォー・アフター」の物語です。

もしかしたら、著者は、英語のタイトルに「掛け言葉」、二重の意味を持たせたのかもしれません。
読者に、芥川が待ち焦がれた「十字架のクロスの上の基督」を思い浮かべさせるための
誘導的な仕掛けだったのかもしれない、と思いました。

本書の中の「黄いろい基督」という「章(ピース)」では、
芥川が、長崎の永見徳太郎から「長崎の耶蘇、源太の物語」(155頁)を訊き出しています。

「黄いろい基督」とは、源太のことですが、
この本の中では「神御自(おんみずか)らの息を感じ取りたい」(163頁)と待ち焦がれている
芥川自身のことのようでもあります。

掛け言葉だけでなく、この本には、回文も出てきます。
「In girum imus nocte et consumimur igni」(18頁)
「夜、我等は円を描きつづけ、火に焼き尽くされる。羅甸(ラテン)語の回文」
「言葉遊び」も好きな著者のようです。

本書は、芥川龍之介の伝記のような、実話のような、不思議な現実感がある物語です。
小説のようでいて、夏目漱石のように良く知っている実際の作家が登場するので、変にリアルです。
夢の中の実話、幻想の中の幻視による「百聞は一見に如かず」のリアリティのような、
奇妙なおもしろさがありました。

「大浦の奇蹟」(147頁)のような「隠れ切支丹」の時代の奇跡まで登場します。
わけのわからないピースが12個。組み上がってみると、芥川龍之介の全体像が
幽霊のように浮かび上がってくる小説です。確かに「奇跡のような一冊」(オビより)でした。

本書巻末の「言葉の後」には、数頁にわたる多数の「参考文献」があります。
芥川龍之介だけでなく、近代日本文学全般についての文献集になっています。

「この小説を書くにあたって使用した全ての文献の完全なリストを掲げた」(349頁)
著者の、この本にかけた意気込みが感じられました。著者の自信作のようです。

この本は、参考文献を使って書いた小説なので、説得力のある学術研究文献の趣も感じます。
ただのほら話ではありません。幻視力による、芥川文学のエネルギッシュな「コラージュ」です。

芥川龍之介を軸として日本の近代文学全体を、イギリス文学の視点と比較しながら見直し、
全章(ピース)の配列をシャッフルし直してから、著者流に「幻想」として再構成した一冊。

《備考》
本書の中に「繰り返し」出てくる言葉がおもしろかったです。
章(ピース)にも、「反復(REPETITION)」というのがありますし。
〈反復語一覧表〉
「Quack, quack」(10頁、104頁、121頁、227頁、292頁、293頁、316頁)
「家鴨(あひる)歩きをしているうちに突き殺されたことを想像して見給え」(243頁)
もしかして、芥川は自分のことをアヒルと思っていたんでしょうか?
「コン!」(24頁、221頁)
「狐」(49頁、333頁)
「彼女の描く人物は、いずれも狐の顔をしていた」(24頁)
「八咫烏」(196頁、198頁)
「鴉」(49頁、128頁、243頁、341頁、342頁)
「わたしは北原白秋や木下杢太郎の播いた種をせっせと拾っていた鴉に過ぎない」(128頁)
芥川は自分のことを(権兵衛の播いた種をほじくり返す)カラスと思っていたかも。
「河童」(12頁、223頁、227頁、271頁、272頁、273頁、275頁、276頁、304頁、314頁)
「トック」(12頁、227頁、271頁、273頁、274頁、275頁、276頁、293頁、322頁)
「蛙」(272頁、273頁)
「鬼」(196頁、197頁) 「人間は皆んな鬼なんだよ」(35頁) しかも、「悪鬼」(316頁)
「薔薇」(175頁、197頁)
「人生は薔薇を撒き散らした路であるさ。」(175頁)
「Awfully sentimental」(173頁、194頁、195頁、197頁)
「Black & White」(283頁、289頁、314頁)
「白と黒の斑(ぶち)の犬」(344頁)
「サイゴ」(173頁、174頁、177頁、192頁) 
「さあ行こう」(173頁)
「嘘」(236頁、294頁)
「辛抱」(249頁、338頁)
「幽霊」(46頁、238頁、284頁、286頁、293頁、321頁、338頁)
「屛風、障子(スクリイン)」(21頁、32頁、52頁)
Xと云う患者 龍之介幻想Amazon書評・レビュー:Xと云う患者 龍之介幻想より
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