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父を撃った12の銃弾



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【この小説が収録されている参考書籍】
父を撃った12の銃弾

父を撃った12の銃弾の評価: 4.40/5点 レビュー 10件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.40pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全10件 1~10 1/1ページ
No.10:
(5pt)

感動

景色が見えてくる小説でした。
父を撃った12の銃弾Amazon書評・レビュー:父を撃った12の銃弾より
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No.9:
(5pt)

銃創に宿る生命感

父と娘のロードムービーのような作品。父のホーリーが受けた銃弾の履歴が娘のルーの人生を作ったかのようだった。読んでいて「ザリガニの鳴くところ」の空気感に似ているなあと思っていたら、訳者後書きでそう触れられていた。こう書くと分かりにくい作品のように思えるが、そうではない。ホーリーとルー、そしてルーの母親との絆が様々な表現で綴られている。銃創に命が宿るというのだろうか、そこに父親の強さを感じることができる。
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No.8:
(4pt)

誰もが心の中に自分だけの祭壇を祭っている…

少女ルーの父の身体には12の銃槍がある。

アメリカの各地を父と二人で放浪していたルー。
彼女が12歳のとき、父は亡き母の故郷、マサチューセッツ州にある漁業の町オリンパスに居を定めます。

物語は、オリンパスに定住した父娘二人の5年間の暮らしと、父が負った銃槍一つ一つに纏わる過去のエピソードが交互に語られて進行します。

両親が早世したため、若くして合法とは言えない生業に踏み込んだ父の過去。
その歴史は暴力、銃撃、流血、死に彩られています。
対照的にオリンパスでの父は漁業に従事し、小さな町のコミュニティの出来事、思春期に向かうルーの成長譚が穏やかに記されています。
いずれの部分もアメリカ各地の素晴らしい自然描写がストーリーを縁取り、際立たせます。

ルーの母と出会い、ルーが誕生したことが父を変え、二人を守るという人生の最優先事項がその後の父の全ての行動を導きます。

父の過去を記した部分は一つ一つが一篇の短編と言える程の完成度を持ち、更にその中に埋め込まれた伏線がオリンパスでの暮らしを綴った部分の要所々で鮮やかに回収されてゆきます。
それが平穏な港町の暮らしの背後に不釣り合いな血の匂いを漂わせ、読者の不安を煽りページを捲る手を止めさせません。
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No.7:
(5pt)

やはりベスト10に入るだけの内容。

父と娘、第1の銃弾から第12の銃弾まで、久々のしんみりとした読了感。
味わってみてください。
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No.6:
(4pt)

読み応え十分の一冊です。

「ザリガニの鳴くところ」が良かったので、こちらも読んでみました。
こちらはアウトローの父親と暮らす少女の話ですが、父親の生き方のため、
小さな頃から各地を転々としています。
父親の「荷物をまとめろ」の一言で、直ぐに他のところに移る暮らしです。
何かと転々として暮らしているので、引っ越した先の子どもたちとの衝突も多く、
そのため少女は鉄板入りの安全靴を履いたりして対抗していますが、
大人に近づくにつれてそうやっても居られなくなります。
父親は15歳の時にソーシャル・サービスから逃れて、自力で生きてきたので、
法律の外で稼ぐことをずっとしてきていて、そのことから父親も少女も
何かと厄介事に見舞われます。
母親は早くに亡くなったのですが、そのことも詳しいことは判りません。
物語が進むに連れ、父親の体にある銃弾の痕のことが描かれてゆきます。
物語の舞台は警官がグロックの拳銃を持っていることから現代と解りますが、
携帯やパソコンも出てきませんので、時代をはっきりさせない描き方になっています。
あえて時代を超えた普遍的な物語にするためそうしたのでしょう。
2段組350ページほどの本ですが、読み応え十分の一冊でした。
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No.5:
(4pt)

謎解き外れて一安心《1頁2段形式》

最初に忠告。本書は人によっては読みにくさを感じる1頁2段形式。私は本を開いて初めて気付き、知っていたら買わなかったと一瞬後悔したが、読み始めたらそんなことも忘れて引き込まれていった。

本書は帯広告によると「エドガー賞 最優秀長編賞 最終候補」とのことだが、受賞作(2018年)ではないようだ。ノミネートされただけ名誉だとは思うが、このような書き方だと審査はこれからと誤解されかねない。日本語版出版の際は明らかになっていたのだから、宣伝文句に書くな年度も入れた方が良いと思う。文学賞受賞か否かは関係なく本作が素晴らしいことに間違いはない。

本作のジャンルはクライムサスペンスであり、青春物語かつ恋愛小説でもあり、ヒューマンドラマでもある。
10代の娘ルーの成長を描くパートと波乱万丈の日々を過ごした父サミュエル・ホーリーの身体に多く残る銃槍にまつわる物語パートの二層構造だ。ルーの話は進行していく現在(文体は過去形)。ホーリーの話は過去。古い銃槍から新しい銃槍に話が進んでいき、最終的に二人の“今”の話に合流する。
ルーと父及び亡き母を巡る過去の秘密と結末が気になり一気に読んだ。
比較的ハードな犯罪小説であるのにも関わらず不思議と爽やかな読後感だ。

とはいえ、再び帯広告の「全米のメディアを絶賛でうめつくした」というのはオーバーでは。
いずれにせよアメリカと日本の評価では若干ずれが生じるのは事実。
個人的には、感動的な話だったものの、やはり登場人物達が銃を所持し使用していて、銃犯罪に巻き込まれたり起こしたりしている様子がが描かれている点、どうしても馴染めない。

しかしながら謎解きに関して“こうだったらイヤだがおそらくこうだろう”という予想を大きく裏切ってくれたのでホッとした。
また本書とよく引き合いに出される「ザリガニの鳴くところ」はあらすじを把握しているだけだが、過酷な境遇で育った少女が主人公というのは共通しているものの趣きの異なる作品だと思う。

やはり銃犯罪反対ということで星4つ。映画化希望。ハリウッド向きの作品だ。
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No.4:
(3pt)

息苦しい。

重すぎて後味が悪い。
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No.3:
(4pt)

主人公の少女は魅力的だが、親はよくわからない...

少女を主人公として進む現在の話と、その父が銃で撃たれた過去のエピソードが交互に語られていく構成です。
「撃たれたエピソード」といってもタイトルにあるように12発も!、ですから、途切れ途切れではなく、そのエピソードを追っていくだけで、若い頃から現在までの父の歴史がそのまま紐解かれていきます。当然、かなり興味をそそる構成のはずなのですが...

私にはどうもこの若かりし日の父親、さらには彼と出会う若い日の主人公の母のどちらも、魅力的な登場人物と思えませんでした。ロクな愛情も注がれずに育ったために流されるように生きている、というならその虚無感や閉塞感を伝える書き方があるはずだし、ただの考えなしの愚かな若者というならそれでも愚かさゆえの輝きも見えない。なので、父母が惹かれ合う理由もよくわからない...

一方で主人公の少女とそのボーイフレンドは魅力的です。時にずるく、時にナイーブに、ごくごく小さなナイフで人生を切り開こうとしているかのようなビルドゥングスロマンとしての面白さは十分にあります。
そしてまた、少女の視点でいささかの嫌悪感とともに描かれる他の大人たちの歪さと生活感も非常に人間的でリアリティを感じます。

うーん、私としてはせめて、主人公の母がもうちょっとファムファタル的な存在であって欲しかったかな...ストーリーではなくその点が「惜しい」のです。
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No.2:
(5pt)

硬質な文章で練られた、際立つ文学性の高さ

犯罪を生業とする者がいるとする。それでは彼は何故、犯罪者として生きることになったのか? そして、そうした人生を彼自身はどう解釈してみせるのだろうか? 紡ぎ糸のように犯罪や銃撃を繋いでゆく綱渡り人生を生きる者は、終わりのない危険な日々からどうしたら脱け出すことができるのだろうか?

 本書の主人公は二人。

 一人は、十代の頃から犯罪に手を染め銃器に取り囲まれ裏社会に生きるサミュエル・ホーリー。彼の犯罪の暦は、人生において彼の肉体に撃ち込まれる12の銃弾の弾痕となって、短編小説のように切れ切れに伝えられる。それらはかつて起こった過去の物語群である。

 もう一人の主人公は、現在を生きる娘ルー・ホーリー。いじめや疎外の非情に晒されながら十代の彼女はたくましく生き、共に暮らす父と、亡き母という名の運命的迷宮にぶつかりながら、青春や恋愛や社会活動を通して日々成長してゆく物語である。父ホーリーの過去と、現在のルーの物語は、この小説という構造の中で交互に語られ、やがてそれは現在という限りなく厳密な一ポイントに収束してゆく。

 何よりもこの構成のエキセントリックさが、本書成功の最大の功績だろう。それほどまでに最初は、父ホーリーと娘ルーの世界はかけ離れて見える。時空を一にするまで、二人のそれぞれの人生の旅が、本当の意味で一つに合流するなんてとても信じ難い。本書は、この父娘の長い旅を描いたロードノヴェルなのである。

 犯罪に関わるホーリーが請け負う仕事一つ一つは、まるで短編小説のように描かれる。これら過去の傷跡のように後々まで疼く断章は、それぞれが独立して読める犯罪ノワールでもある。過酷な運命と、常に死と隣り合わせの破天荒な荒仕事。十代に始まる父の経歴を文字通り銃弾一つ一つで縫い合わせてゆく、痛く、血まみれの時代。いちいち強烈なフラッシュバックとなるその銃撃の数々。

 翻ってルーは、父との不思議な旅の果てに二人で落ち着いた海辺の村で現在を生きる。どこにでもいそうないたいけな少女である。彼女の恋した少年マーシャルの家庭は、しかしまた別の問題を抱え、世界を相手に窮地に立たされている。例えば巨大な鯨。環境運動家と地元漁師との対立。不審な銃撃。

 武器庫のような父の人生に始まり、ルーの日々もまた、本書のページのすべてが冒険小説であり、犯罪小説であり、愛と死と銃撃の連鎖でありながら、母の死の謎と、その他もろもろの多過ぎる謎を解体してゆく物語である。

 硬質な文章で練られた文学性の高さが際立つ本書である。昨年の『ザリガニの鳴くところ』に続き、今年も文学性の高い小説が早や二作(もう一作は『少年は世界をのみこむ』)。世界のミステリーは確実にレベルを上げていると言わざるを得ない。昨今の翻訳ミステリー事情に、改めてご注目頂きたいと思う。まずはこの一冊を手に取ってみては如何だろうか?
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No.1:
(5pt)

「ごめんなさい」と言ってはいけない

タイトルを見たときは、銃器への偏愛が極端な物語だったらどうしようか?と考えましたが、違っていました。「父を撃った12の銃弾 "The Twelve Lives Of Samuel Hawley"」(ハンナ・ティンティ 文藝春秋)を読み終えました。
 主人公・ホーリーともう一人の主人公・その娘・ルーの「現在」と父親・ホーリーが受け止める「12発の銃弾」についての一つ一つの「過去」のエピソードが交互に語られていきます。それらは、アメリカ文学の持つ良きものに彩られています。とは言え、2018年のエドガー賞候補作だそうですので、スリラーとカテゴライズするならば、ストーリーに触れずに済ませられればと思います。アリゾナ、アラスカ、ワイオミング、そしてクジラが突然浮上する大海原。そのいつまでも読み続けていたいと思わせる圧倒的なウィルダネス、自然描写。銃と必要なものだけを携えて米国を漂流する二人は、憧れのミニマリストにすら見えます。ホーリーは、まるで現代のヘラクレス、ジャック・リーチャーのように。
 「現在」の時間軸は、ニューイングランドの港町オリンパス(神話の地)で幕が上がりますが、ホーリーがルーに銃を教え込む最初の章「ホーリー」を読みさえすれば、その後、読者は時の流れに乗って自由な想像を羽ばたかせながら、そのストーリーに埋没していくことは間違いありません。
 ルーの祖母・メイベル、ハイスクールの校長・グンダーソン、港の漁師たち。そして、ときめきのマーシャル。皆それぞれとても個性的ですが、「ザリガニの鳴くところ」で描かれた”いい人”たちがここにも存在しています。ここで言う”いい人”たちとは、たとえどんな破天荒なふるまいがあったとしても、心の奥底に「良心」が熾火のように残っている人たちと言い換えてもいい。どこかの国の「公僕」たちのような「悪いひと」たちもいれば、良き心をもった犯罪者たちもいる。私は犯罪者や、犯罪行為自体を賞賛しているわけではありません。心が自由で独立していることが何より必要なことであり、そこが彼らにとっての必要な、最初から痛みを覚悟すべき「居場所」であるならばそれはそれで構わない。
 秘密は、ルーの母親・リリーの存在にありますが(そして、彼女こそが家族にとっての「居場所」をシンボライズしていますが)、そこに至るまでのホーリーの思いとルーの思いがいつかしら反響し、あらゆる「機能不全」を超えた場所で次第にシンクロナイズしていく過程の妙味がこの物語の真骨頂なのでしょう。ほぼ主役をつとめるホーリーによる「12発の銃弾」についてのそれぞれの章は、極上の短編小説の集合体であり、ドナルド・ウエストレイク+リチャード・スターク風であったり、ジョン・アーヴィングを想起させたり、献辞に掲げられているメルヴィルの「白鯨」のようでもあったり、敬愛するジェイムズ・クラムリーが描く憂いを克服した「米国」であったり、語り尽くせない豊饒な<物語世界>が生み出されていると思います。
 そして、テーマは、「時」。犯罪者たちが追いかける希少で高価な時計は「時」の中で失われ海の藻屑の中に消えていきますが、「時」そのものは天空の英雄と共に優美な青い星空を席捲します。
 また、もう一つこの物語が語っていることがあるとすれば、もしこの世に「愛」というものがあるのなら(ないかもしれませんが(笑))、それは多くの米国の物語が語り継いできたように「ごめんなさい」とは言ってはいけないものなのかもしれません。犯罪者・ホーリーを敬い、その娘・ルーを愛し、「やってみなければ、何も勝ちとれない」と私たちに勇気を与えてくれる物語をまた私は愛してやまない。
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