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マハラジャの葬列



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【この小説が収録されている参考書籍】
マハラジャの葬列 (ハヤカワ・ミステリ 1965)

マハラジャの葬列の評価: 4.33/5点 レビュー 6件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.33pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(5pt)

インド藩王国における「正義」は神の問題なのか。それとも……「人の良心」が問われる良作

前作『カルカッタの殺人』で活躍したインド帝国警察のイギリス人警部サム・ウィンダムとケンブリッジ出身のインド人部長刑事サレンダーノット・バネルジーの名コンビが内陸の小さな藩王国、サンバルブールへ向かう。カルカッタで、それも自分たちの目の前で行われた王太子の暗殺事件の解決にたどり着くため、二人は執念を燃やすのだが……。
・ダイヤモンドと阿片による富を原資とし、豪華絢爛な王室に多数のメルセデス、アルファ・ロメオ、近代的ホテル。象によるダイナミックな虎狩り、象による犯罪者の凄惨な処刑。エキゾティックな光景ではあるが、誠実かつ現実的思考を持つ王室の施策は、およそイギリス人の有する地方の藩王国のイメージとかけ離れていた。そしてヒンドゥーの神々と数百年におよぶ土着のしきたり、数百人規模の後宮は二人を圧倒する。
・まるでデビアスを彷彿させるアングロ・インディアン・ダイヤモンド社の存在。藩王国宰相、警護を務める軍大佐、若き第三王妃、後宮の側室たち、そして第二王子、イギリス駐在官とどの人物も怪しく思えてくるし、思い人アニーと第二王子の接近と相まって、かつてスコットランド・ヤードで腕を鳴らしたサムをヤキモキさせる。
・故人の魂を解放するため、その頭蓋骨を割る。王太子の葬儀の模様は衝撃的だ(p190)。
・前半でイギリス諜報機関の介在が示唆されるが、その活動は明らかにされないままだ。結局は総督(インド副王)直々の二人へのカルカッタ帰還命令が、それにあたるのかな。

「正義はまっとうされなければならない。……この世界にはみつけださねばならない貴重な正義があるということだ」(p69)「わたしはイギリス人であり、正義を伴わない真実にはいらだちを禁じえない」(p358)サムの決意は立派だしおそらく正しい。だが「国家のためには貴人の命をも犠牲にする精神」の前には、それもままならないことが証明される。理不尽な世界観……。「正義は神の問題です」(p391)

原作タイトルとかけ離れた翻訳版のタイトル「マハラジャの葬列」は、エピローグで見事にその意味をなす。ある重要な登場人物が述べる通り「真実」と「正義」は同義ではない。その葛藤が生じるとき、未来を決めるのは人の良心のはずだが、恐ろしきは現実政治の意思(つまり、原作タイトル)ということか。。。
ウィルバー・スミス冒険小説賞受賞とあるが、納得の出来。続編が実に楽しみです。
マハラジャの葬列 (ハヤカワ・ミステリ 1965)Amazon書評・レビュー:マハラジャの葬列 (ハヤカワ・ミステリ 1965)より
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No.5:
(4pt)

大英帝国のインド

パズラーとして傑出しているとはいえないが、
真相にはそれなりの重量感がある。
本シリーズの魅力は植民地インドの社会風俗の描写と、
心に傷を負ったアヘン中毒者にして
印英混血の女性アニーに心惑わされる主人公と
相棒のインド人エリート刑事の道行にある。
次作の翻訳が待ち遠しい。
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No.4:
(5pt)

アクション風味の『インドへの道』

大戦間期のウィンダムとバネルジー、英印警官コンビの活躍第二弾です。第一作『カルカッタの殺人』がよかったので翻訳が出るのを楽しみに待っていました。
今回はベンガル地方の宗教的な祭りを背景にした幻想的な演出で、人種問題や植民地問題に配慮した、いわばアップデート版『インドへの道』だと感じます。
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No.3:
(5pt)

次も読みたい。

ああ面白かった。英国植民地時代のインド版角川映画、金田一耕助シリーズみたいですね。1作目の『カルカッタの殺人』よりエンターテイメント色が増し、謎解きもこちらのほうがスムースですよ。三作目の翻訳待ってます田村さん。
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No.2:
(3pt)

インディアン・シャーロックホームズの冒険 PART2

前作でカルカッタに赴任したイギリス人警部は、第一次世界大戦への従軍と妻との死別による大きな心の傷を阿片吸引で埋めながらも、事件解決に導いていた。そして、本作では車に同乗していた藩王国の王太子が目の前で暗殺されてしまうという大失態。事件の謎を追い、相棒のインド人(ワトソン役です)と現地へむかう。

なんといっても国王閣下には側室が126人、子供が256人で宦官が後宮を守るという権謀術数渦巻く魔宮。さらに、宰相や財務官、第二、第三王子、ダイヤモンド採掘の利権などなどこれでもか、というぐらいの豪華な登場人物と設定、伏線。

「ミステリー」というよりは「ヒストリー」であり「インド哲学と宗教と風俗」という部分をご堪能ください。そこに馴染めれば次作にも大期待、となるでしょう。
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No.1:
(4pt)

銀の鞍を載せた象の背に乗って

2019/7月に読んだ「カルカッタの殺人」に続くウィンダム警部+バネルジー部長刑事物の新しい翻訳。「マハラジャの葬列 "A Necessary Evil"」(アビール・ムカジー ハヤカワ・ミステリ)を読み終えました。時代背景は、1920年。2020/5月に読んだ「ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち 」もまた、その頃の時代背景ではなかったか?(しかしながら、物語の設えは異なります)。
 まずは、インド、カルカッタ。英国による植民地統治。「藩王院」と称する合議体の立ち上げ。オリッサの藩王国・サンバルプールの第一位王位継承者・アディールがウィンダム警部+バネルジーの目の前で襲われ、殺害されます。一旦、その襲撃者は自死しますが、真実を追って、二人の刑事はサンバルプールの地を訪れます。果たして、アディール王太子は誰によって、何故殺害されたのか?
 ダイヤモンド鉱床によって贅を極める王宮。百人以上の側室が住まう後宮。ゴージャスな虎狩り。銀の鞍を載せた象の背に乗って。マハラジャの存在。第一夫人。第三夫人。宦官。まあ、こんなことが<現実世界>に果たしてあり得たのだろうか?(笑)。本当の主役は、モンスーン下、ジャガンナート神の祭りなのかもしれませんね。それらの豪華絢爛たる時代描写は、やはり一読の価値があると言わざるを得ません。
 書くべきことが2点あります。
 まずは、酒とアヘンに耽る、或いはそうでありながらそのことを隠そうとする警部ウィンダムは、探偵役ではあるものの、等身大の男として描かれています。最後まで、前作にも登場したアニー・グラントに心を寄せるあまり、決して麗しいとは言えない「嫉妬」の塊としての自分を曝け出しています。醜いですね。でも、受け入れられます。誰もがそうだから(笑)。
 2点目は、パズラーとして、終盤に至るまでは「凡作」だと感じられることにあります。果たして「凡作」なのかどうか?いくつかの伏線が次第に或る意味を持ち出すが故に物語を反転させますが、残念ながらそれを書くことはできません。
 ヨルゴス・ランティモス監督による映画「女王陛下のお気に入り」のような<凄み>を持つパズラーとして記憶されることでしょう。そう、真実はかならずしも正義ではない。今のこの国(日本)がそうであるのと同じように。
マハラジャの葬列 (ハヤカワ・ミステリ 1965)Amazon書評・レビュー:マハラジャの葬列 (ハヤカワ・ミステリ 1965)より
4150019657

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