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老いた殺し屋の祈り



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【この小説が収録されている参考書籍】
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)

老いた殺し屋の祈りの評価: 4.00/5点 レビュー 6件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(4pt)

正しい娯楽小説でした

映画を見てるようだなと思ったら、著者が映画関係の人と聞いて納得。エピソードの緩急がちょうどいい感じで、正しい娯楽小説でしたね。あのラストの後、最低クズ野郎のガブリエルがどうなるかは見せないほうがいいと言ことでしょう。おそらく、最も凄惨な暴力が振るわれるはず。 うやむやになったままの設定が残されているけど、続編はどっちもいいかな。主人公の「残さざるを得なかった者たちへの贖罪」はあの母子で完結したわけだし。
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)より
4596541493
No.4:
(4pt)

邦題が損なマカロニノワール。

疲れたやくざの心が揺れれば取り巻く善悪の境界も同期。だが非情さ仁義はブレず、安易な続編を嫌う映像派作者にも好感。
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)より
4596541493
No.3:
(5pt)

昔、観た映画のようなノスタルジー

どこかかつて観た記憶のある映画のシーンが、深い水の底から浮き上がってくるような感覚。それが本作のいくつかのページで感じられたものである。語り口や物語の進め方が上手いのは、この作家が初の小説デビューにも関わらず、映画の脚本家としてならした経歴の持ち主だからだろう。

 作家が自分の物語として作り上げた「老いた殺し屋」オルソのキャラクター作りだけで既に小説を成功に導いているように思えるが、やはり彼の旅程を彩る派手なバイオレンス、また、彼が救い出す母子との交情の陰と陽のようなものが、この作品に、とても奥行きを与えているように思える。とりわけ少年と孤独な老人の間の不思議な絆ができあがってゆく風景は、この作品中、最も心に響いてくる。

 かつての妻と息子との生活を切り裂かれ、ギャングの殺し屋としての人生を終えようとしているオルソは、引退後に妻と息子との再会を果たすべく家族探しの旅に出る。しかしあっという間に彼の行動は派手な襲撃によって阻止される。派手な列車内の襲撃と残酷なまでの闘いのシーンは、映画的記憶では『ロシアより愛をこめて』のクライマックスを思い出させるものである。

 そしてその後の展開。行きずりの女性とその息子との煌めくような数日。これはもう『シェーン』や、ロバート・B・パーカーの、名作『初秋』を彷彿とさせる。暴力や闘いの世界に身を置く男が少年を父親のように優しく鍛え上げる。体をではなく心を。

 そんな懐かしいノスタルジックなシーンがちりばめられた小説、というだけでも十分素敵なのだが、イタリアン・ノワールならではのフランスやイタリアの各地で展開する過激なダイナミズムも、まるで映画そのもののように迫力を感じさせる。

 姿の見えぬ敵たちの冷酷さも際立っており、オルソは困難な敵たちと真向闘ってゆくことを余儀なくされる。老いた体ながら、暴力のプロとして、さぞかし凄まじい人生を送ってきただろうこの主人公の暗い歴史を想像させる。

 脚本家の経験を備えた実力派イタリアン・ノワールのこの作家。小説書きは副業とは思うが、今後の創作にも是非、期待したいと思う。
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)より
4596541493
No.2:
(4pt)

「霊性」など他の誰かにまかせていればいい

「老いた殺し屋の祈り」(マルコ・マルターニ ハーパーBOOKS)を読み終えました。
 イタリア人作家の処女作だそうですが、2020/9月に読んだ「老いた男」同様、ジジイが主役です(笑)。60歳を超えた<組織>の殺し屋オルソは、マルセイユを根城にする犯罪組織のボス・ロッソの右腕ですが、心臓発作を起こし、バイパス手術で命はとりとめたものの、病床で己が「過去」を、かつて愛した女性・アマルと一人娘・グレタのことに思いを馳せます。<組織>を捨て、二人と共に別の人生を作ったはずが、<組織>を捨てての道行は長続きすることがなく、二人の命と引き換えに<組織>に戻らざるを得ない状況の中、彼は親友でもあるロッソの説得によって二人を捨てるという大きな痛みを伴う選択をしてしまいました。そして、その後は、感情を捨てた「野獣」としての人生を全うしようとしてきました。しかしながら、心臓発作をひとつのきっかけとして、オルソはふたたびロッソを裏切り、アマルとグレタの行方を追ってジェノヴァ、イタリアへと旅立つことになります。疾走するジャガー。咆哮するワルサー。満身創痍の老いた肉体。<組織>からの追跡を逃れ、繰り返し闘い、もうひとつの面倒事に立ち向かい、果たしてジジイ・オルソは己がアイデンティティを取り戻すことができるのだろうか?
 いくつかの暴力描写は鮮烈でイマジネイティブですが、中盤、ある家族が介在してからの緩い描写は、<いつかどこかで見たことがある景色>が続いて、平板な印象がありました。クリムトの絵画を思わせるロッソの娘・"アデーレ"は、その野性的な美しさを垣間見せながら、(終盤登場しますが)ストーリーから消えてしまいます。しかしながら、「野獣」の「野獣」としての生き方を全うしようとするオルソは、いくつかの心の迷いを振り切りながらも<漢>にとって最も必要なアイデンティティを取り戻すことで「無頼」の心に立ち返ることになりますね。「霊性」など他の誰かにまかせていればいい。
 我国の「檻」を筆頭とする北方謙三の初期作品には遠く及ばないものの、老いても尚立ち上がるロッソの姿に共感をこめて、次作を期待したいと思います。
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)より
4596541493
No.1:
(5pt)

退屈しない展開、映画を観ているよう

オルソは60代半ばほど。彼が心臓の冠動脈バイパス術を受けたところから始まる。
その点は年齢相応だが、身長195㎝で引き締まった体躯をもつ、武術も銃撃も凄腕の組織に属する暗殺者。子供と甘いものが苦手。反面、恋愛小説を好み(これは浮いていてこじつけ感がある)、無害な一般人にはやさしく礼儀正しい、とても魅力的な人物だ。
そんな彼が心臓手術を機に、これまでの生き方を変えて、40年前にやむなく別れた恋人と娘を探したくなる。しかし物事はそう簡単に進んでくれなかった…。
イタリアンマフィアの恐ろしさやしがらみ、迫力ある暴力・殺戮シーン、友情、苦手なはずの子供に対するやさしさ、ほのかな恋愛などが物語の中に込められている。
テンポよく全く退屈しない展開だった。そして訳者によるものか、とても読みやすい文章。
ただ、ラストはちょっと切迫していて粗さを感じた。結末は賛否両論ありそう。私としても微妙だが、それぞれが思いたいように思えばいいのかと。
作品全体としては、いずれまた再読したい気持ちが残るおもしろさがあった。
作者は元々脚本家で、小説家としてはデビュー作とのこと。確かにエンタメ感が強く映画を観ているよう。それも私の中ではいろいろな点で『レオン』と重なる。映画化するといいと思う。もちろん主役はジャン・レノで。
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)より
4596541493

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