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アンブレイカブル
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アンブレイカブルの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.52pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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第二次世界大戦の時代を描いた短編集である。 ・雲雀(ひばり) 小説家の小林多喜二。作品を読んだことはないが、名前ぐらいは知っている。その多喜二が、蟹工船について取材している。もちろん、新しい小説のためである。その取材を受けた萩原と谷だが、2人はクロサキという内務省、特高の役人から、蟹工船での体験を話すように頼まれる。金をもらった2人は、多喜二の取材に応じる。多喜二から共産主義者の情報を聞き出すのが目的のようだ。つまりスパイである。谷の提案で、多喜二の暮らす小樽に行くことにした2人。だが、そこで目にしたのはまっとうな生活をしている多喜二だった。多喜二を罠にかけようとするクロサキだったが……。労働の本質を考えさせられる。 ・叛徒 軍隊で軍人の非行を取り締まる憲兵を務めている丸山に、クロサキが接近した。目的は川柳作家で共産主義者の鶴彬(つるあきら)のことである。丸山は鶴を憲兵に入れるつもりだった。丸山の考えでは、鶴は共産主義者ではない。鶴が憲兵に向いていると考えたのだ。しかし、鶴は「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」といった川柳を作っていた。鶴の将来はどうなるだろうか。あまりキレが感じられない短編だった。 ・虐殺 時代はやはり戦時中。志木は中央公論社に勤める和田と会っていた。2人はウマが合い、親しくなっていた。和田によれば最近、知り合いが次々に消えていくという。出版社の社員が神奈川県の特高に連行されているようなのだ。2人が所属している「政治経済研究会」が理由だろうか。志木が知り合いの巡査部長に聞くと、神奈川の特高は内務省のクロサキに会ってから人が変わったという。推理の末、志木がたどり着いた結論とは。軍国主義の怖さが分かる。 ・矜持 内務省のクロサキ参事官が中心の話である。共産主義者を罠にかけ、処罰しようとするクロサキ。この短編では、クロサキの経歴を知ることができる。内務省で参事官になるだけあって、勉強は得意だった。大学は東大に進んだ。しかし、彼は常に三木清と比較された。清は一高から京大に進学し、「京大きっての秀才」と言われた。しかし、その著書が問題になり、特高に検挙された。クロサキはその後に内務官僚として出世していった。仕事として、三木清の著作や動きは把握していた。その後、共産主義も受け入れていた清は、再び特高に引っ張られることになる。 どの話にもクロサキが関わってくるが、彼は正義漢ではない。特高の責任者として戦争中の軍部の愚かしさを象徴している存在である。同じ戦時中を描いた「ジョーカー・ゲーム」とは対照的で、読後に苦々しさが残る短編集になっている。 | ||||
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