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アンブレイカブル
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アンブレイカブルの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.52pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 1~20 1/2ページ
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ジョーカーゲームの著者の作品です 非常に面白かったです | ||||
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たくさんの本を読んでいるが、 近年、最も衝撃と影響、そして感銘を受けた。 特に、最後の主人公、三木清の在り方には、ずっと考えさせられている。 「人間は考える葦である」 この言葉の真の意味に、初めて触れた気がした。 人間は、どうしようもなく愚かしい。 一方で、信じ難いほど崇高でもある。 その人間の両面が、これでもかというほど、胸に迫る。そんな物語である。 小林多喜二が、三木清が、殺されない世界にはなった。そのことに、素直に安堵して生きていいのか。 これからも考え続けたい。 | ||||
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第二次世界大戦の時代を描いた短編集である。 ・雲雀(ひばり) 小説家の小林多喜二。作品を読んだことはないが、名前ぐらいは知っている。その多喜二が、蟹工船について取材している。もちろん、新しい小説のためである。その取材を受けた萩原と谷だが、2人はクロサキという内務省、特高の役人から、蟹工船での体験を話すように頼まれる。金をもらった2人は、多喜二の取材に応じる。多喜二から共産主義者の情報を聞き出すのが目的のようだ。つまりスパイである。谷の提案で、多喜二の暮らす小樽に行くことにした2人。だが、そこで目にしたのはまっとうな生活をしている多喜二だった。多喜二を罠にかけようとするクロサキだったが……。労働の本質を考えさせられる。 ・叛徒 軍隊で軍人の非行を取り締まる憲兵を務めている丸山に、クロサキが接近した。目的は川柳作家で共産主義者の鶴彬(つるあきら)のことである。丸山は鶴を憲兵に入れるつもりだった。丸山の考えでは、鶴は共産主義者ではない。鶴が憲兵に向いていると考えたのだ。しかし、鶴は「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」といった川柳を作っていた。鶴の将来はどうなるだろうか。あまりキレが感じられない短編だった。 ・虐殺 時代はやはり戦時中。志木は中央公論社に勤める和田と会っていた。2人はウマが合い、親しくなっていた。和田によれば最近、知り合いが次々に消えていくという。出版社の社員が神奈川県の特高に連行されているようなのだ。2人が所属している「政治経済研究会」が理由だろうか。志木が知り合いの巡査部長に聞くと、神奈川の特高は内務省のクロサキに会ってから人が変わったという。推理の末、志木がたどり着いた結論とは。軍国主義の怖さが分かる。 ・矜持 内務省のクロサキ参事官が中心の話である。共産主義者を罠にかけ、処罰しようとするクロサキ。この短編では、クロサキの経歴を知ることができる。内務省で参事官になるだけあって、勉強は得意だった。大学は東大に進んだ。しかし、彼は常に三木清と比較された。清は一高から京大に進学し、「京大きっての秀才」と言われた。しかし、その著書が問題になり、特高に検挙された。クロサキはその後に内務官僚として出世していった。仕事として、三木清の著作や動きは把握していた。その後、共産主義も受け入れていた清は、再び特高に引っ張られることになる。 どの話にもクロサキが関わってくるが、彼は正義漢ではない。特高の責任者として戦争中の軍部の愚かしさを象徴している存在である。同じ戦時中を描いた「ジョーカー・ゲーム」とは対照的で、読後に苦々しさが残る短編集になっている。 | ||||
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治安維持法と特高(特別高等警察)による理不尽な検挙、拷問、投獄の嵐が吹き荒れる時代にあって、自らの信念を敢然として貫き通した日本人がいたことの素晴らしさ。そこが一番、印象に残りました。 なかでも、第二話「叛徒(はんと)」に登場する川柳作家・鶴彬(つる あきら)と、第四話「赤と黒」に登場する哲学者・三木清(みき きよし)の二人の言動には、胸を強く打たれましたね。三木清の次の台詞なんか、実に良いじゃないですか。しびれました。 《参加した結果が後世〝歴史〟と呼ばれるのだとすれば、自分が生きているこの唯一の時間、唯一の歴史を、他人任せにしないで能(あた)う限りの力を尽くす。その上で、結果は後世の判断に任せる。それが、いまを生きていると胸を張って言える唯一の在り方ではないだろうか》角川文庫 p.269 内務省官僚としての業務を粛々とこなしていくクロサキの、いかにも上層役人ならではの理屈と生き方には、どうしようもない嫌悪感を覚えました。 人間としての在り方、道徳心を放棄していささかも恥じるところのないクロサキの言動、生きる姿勢って、現代の老害政治家、腹黒官僚、独裁学長 etc. etc. に通じるところ、あるんじゃないかなあと、そんなことも思ったんすけどね。 文庫版、巻末解説の森 絵都(もり えと)さんの文章も、共感するところが多く、読みごたえがありました。 | ||||
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初めての作家。着想が素晴らしい。”今”多くがシンクロしている。 | ||||
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世の中で流行っているアニメや漫画を面白いと思う人はこの作品を面白いと思えるはず。実際にいた人たちが題材になっているわけだし。 | ||||
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数編になっていて 一気に読み切った 暗い時代を切り取った | ||||
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昨年から、太平洋戦争に入るまでのことを書いた本を連続して読んでいる。 松本清張の一連の本、奥泉光の本、そして新書本各種。 本書は、深刻な歴史背景におきた事実を基に、書かれている。 日本の今の政治家以上に、首相の言いなりの司法機関には、個人的には”危機”を感じている。 依然として低い投票率、国民からNGが出ない最高裁判事。20年後には、またこのような書物で、現在起きつつあることが書かれるような気がします。 | ||||
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内務官僚のクロサキが狂言回しのように絡んでくる連作でした。現代ではその存在すら忘れられている特高(特別高等警察)の取り調べの厳しさと犯罪のでっち上げに恐怖を感じます。 総理大臣、内務大臣、陸軍大臣を兼務した東条英機への忖度や点数稼ぎする内務官僚たちの思考停止ぶりが見事に描かれていました。 特に、ラストの「矜持」ではクロサキと三木清の旧帝国大学出身者のプライドと妬みが複雑に絡んでくる展開で、戦前の知識人の鬱積した感情が通奏低音のように感じられる佳作でした。 戦前、戦中の特高の悪行ぶりを背景にしている舞台設定は興味をそそられます。非合法の共産党は壊滅状態なのに、自由主義者まで特高が引っ張っていくストーリーは戦前の怖さを知らない世代が読むべき内容でしょう。 登場人物は小林多喜二も含めて読者の興味をひく人物が登場するシーンは良く描けています。 柳広司の『ジョーカー・ゲーム』や『ダブル・ジョーカー』に惹かれて本作を読んだわけで、短編集でもその見事な筆力と構成力の確かさを確認した思いです。 フィクションですが、実際にそうだったのではというドキュメンタリーのような描写の歴史背景が読者を戦中の怖さを感じさせてくれました。 治安維持法で逮捕され、拘束され、「虐殺」された登場人物は、確かに「敗れざる者(アンブレイカブル)」でした。『特高警察黒書』に載っていますが、敗戦後、特高関係者が数多く政治家になり、中には大臣になった例を忘れてはいけません。 | ||||
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『アンブレイカブル』(柳広司著、KADOKAWA)は、戦前の内務省参事官にして、特高警察を一手に掌握し、国内思想問題を管轄するクロサキが狂言回しを務める連作短篇集の体裁をとっています。 多くの読者に愛されたプロレタリア小説を書いた小林多喜二、現実を十七文字で撃ち抜く川柳を自ら体現した鶴彬、良心的な雑誌の誌面作りに尽力していた中央公論社や改造社の若き編集者たち、取調中の過度な暴力や留置所の劣悪な環境が原因で体を壊し、獄中や付属病院で死んでいった大勢の者たち――が描かれています。 とりわけ印象的なのは、三木清が登場する『矜恃』です。 「クロサキが高等文官試験を経て内務省に入省したのは昭和二年――その後のクロサキの官僚としての経歴は、内務省が管轄する特高と治安維持法の歩みにぴたりと重なる。特別高等警察(通称『特高』)は、通常犯罪を扱う一般警察とは別に専ら『思想犯罪』を取り扱うべく設けられた警察組織の一部門だ。設立当初は主に『過激な社会主義運動』が取り締まりの対象だったが、その後、日本共産党がソ連共産党の指示により『天皇制廃止』を党是に掲げるに及んで、矛先を共産主義に転じた。もう一つの伴走者、治安維持法は普通選挙法と抱き合わせの形で大正末に制定。当初はわずか七条のみ、かつ『(この法律は)伝家の宝刀であり、頻繁に用いるようなことはおよそ有り得ない』との注釈付きで成立したものだ。が、クロサキが入省した昭和二年、『京都学連事件』が早速国内初の適用事例となったのを皮切りに、特高と治安維持法を組み合わせた巨大な歯車が回りはじめる」。 「同年三月十五日、初の普通選挙が行われた直後、特高は全国の共産党、労農党など無産政党関係者一千五百人余りを一斉検挙。同時に『緊急勅令』の形で治安維持法が改正され、『目的遂行の為にする行為』という曖昧な文言が加わったことで、治安維持法と特高の守備範囲が一気に広がった。年を追うごとに検挙者は増加する。昭和三年の治安維持法違反による検挙者数は三千四百名。翌年はされに四千九百名に跳ね上がる。満州事変が始まった昭和六年には、検挙者数はついに一万人を超えた。検挙実績に伴い特高組織は年々膨張する。『取り締まりに必要』という理由を付せば、予算は要求額から一銭も削られることなく満額支給された。機密費も取り放題だ」。 「数字を目の当たりにして、クロサキは初めて戦慄を覚えた。日本国内では治安維持法を根拠とする死刑判決は、これまで一件も出ていない。『死刑判決ゼロ』と『死者千数百名』の間に存在するのは『特高の取り調べ』と『拘置所の環境』だ。万が一、後で問題になった場合、特高及び拘置所を管轄する内務省の責任が問われることになる」。 昭和二十年三月二十八日、クロサキの故郷の誉れで、8歳年上の三木清が治安維持法違反で特高に検挙されます。「ふと、子供の頃の記憶が甦った。当時はクロサキがいくら優秀な成績を持ち帰っても、父親は口元に薄く皮肉な笑いを浮かべるだけだった。『どうせキヨシにはかなわん』と面と向かって言われたこともある。その三木清がいま、(取調室で)クロサキの批判に反論することもできず、苦い顔で黙りこんでいる」。 「『無駄な努力に終わるかもしれない。・・・しかし、それでもなお、私は己が持つ力の全てを注いで歴史に参画する自由を、権利を、行使したい。参加した結果が後世『歴史』と呼ばれるのだとすれば、自分が生きているこの唯一の時間、唯一の歴史を、他人任せにしないで能う限りの力を尽くす。その上で、結果は後世の判断に任せる。それが、いまを生きていると胸を張って言える唯一の在り方ではないだろうか』。三木清は正面に向き直り、クロサキの目をまっすぐに見て、――それが、私にとっての唯一の矜恃なのだ。と静かな声で言った。・・・やはり、どうやってもこの人にはかなわない。体ごと振り返り、わけがわからず呆然としている刑事たちに向かって、連れて行け、と短く命じた」。 「治安維持法再犯者である三木清は保釈を受けることができず、豊多摩刑務所に送られるはずだ。看守にとっては『京大はじまって以来の秀才』三木清の名前など何の意味もない。三木清は、蚤や虱や疥癬が蔓延する地獄のようなあの刑務所で単なるアカの一人となる。蚤や虱や疥癬に取り付かれ、血膿にまみれる。痒さのあまり我と我が身を掻き毟り、ベッドから転がり落ち、ある朝死体で発見される。・・・クロサキはそっと息をついた。結局は自分も彼ら(看守たち)と同じだ。三木清を救うために指一本動かす気はなかった。凡庸さの砦に閉じこもれば、己の罪も、卑小さも感じることはない。耳を澄ませても、もう(三木の)足音は聞こえない。また一人、『敗れざる者』が逃れられぬ死に向かって歩み去った」と結ばれています。 自分は、あのような時代環境の中でも、三木のように矜恃を持って生きられるだろうか、そして、クロサキを責められるだろうかと考え始めると、胸が苦しくなってしまいました。 | ||||
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題名に惹かれて購入したがそれぞれの人物の掘り下げ不足 心に刺さるものがない | ||||
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タイトルがとてもいいと思って読みました。何かの書評でいいなと思って。 内容を忘れて読み始めると特高、思想犯、憲兵など、執行力をもつ機関の怖さが書いてありました。現実的には無限定な力を持っています。力とはやはり、暴力ですね。これが一番の強制力を持っています。特に関係者がどんどん消えていく虐殺の話がこたえました。 小林多喜二、三木清、そして西田幾太郎はみな、NHKテレビ、100分de名著でここ数年の間で再開したばかりだったことも、本書を感慨深いものにしています。 執行力を持つ機関にはこの怖さが備わっているものだとよくよく認識したいた方が良いと思います。 | ||||
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短編集です。それぞれのテーマを長編にして欲しいです。期待しています。明晰で読みやすく、複雑なテーマを要領よく描いているところは、上手いですね。昭和の複雑な問題を描いて欲しい。楽しみにしています。 | ||||
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まず帯にあった哲学者・三木清の名前に惹かれ、記憶の底にあった治安維持法の犠牲者という事実とつながり、面白そうな予感がして本書を手に取ってみたが、大正解。最近読んだ小説の中では断然面白く、休日に一気に読了した。 治安維持法下の異常な社会で、存続することを目的化して暴走する組織と官僚、信念を貫き巨大な力に抗い続ける一人の人間の強さと脆さ。 歴史、組織、人間に対する確かな洞察力と、重厚なテーマを一流のエンターテイメントに仕上げるプロットの巧みさ。著者の他の作品も読んでみたい。 | ||||
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読み応えがあって一気に読みました。皆様にお勧めです。 | ||||
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【ネタバレ】治安維持法の犠牲となった『蟹工船』の小林多喜二、川柳作家の鶴彬、中央公論社編集者の和田喜太郎、哲学者の三木清という4人を短編で紡いでいく。特高(内務省のエリート役人)のクロサキが主人公だと感じた。言論や思想の統制の怖さもさることながら、片方から見た正義を振りかざして、誰も制御できず実態のない権力が暴走していくさまを短い連作短編で描き切ったのはさすが。個人的に柳広司は期待を裏切らない安定感があると思う。 | ||||
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国家・国民の敵=悪逆不逞の輩=共産主義者を徹底的に取り締まるのが内務省、その参事官クロサキが長期にわたり八面六臂の活躍を見せた賞賛に値するエピソード。 第一、拓銀小樽支店員を隠れ蓑に「プロレタリア文学の旗手」「気鋭の小説家」と称され小林多喜二の後を追い、二人の漁師を操り銀行内で逮捕するが、不測の手違いで証拠なしとなってしまったが。(注:のちに逮捕・収監・死亡)。 第二、川柳作家として知られる鶴彬に照準。クロサキの前に陸軍憲兵大尉が別の意図で追跡していたのだが横取りを果たす。検閲の対象自体を拡げまでして手の込んだ仕掛けで見事に目的完遂。 第三、首相近衛文麿のブレーン集団に関与した慶應仏文卒の満鉄東京支社員の上野公園動物園での奇妙な会合から物語が始まる。神奈川県特高が追うのは一人ではなく改造社、中央公論社の編集者、新聞記者、そして満鉄調査部の関係者。「第二のゾルゲ事件」とも言われた細川嘉六、西沢富夫、川田寿などに加えてさらに網を広げた成果。 第四、これまで影に隠れていたクロサキ自身が主役に。国賊=共産主義者をことごとく捕捉してきた彼が最後に手を付けたのが大学は京大と東大に分かれたが同郷(兵庫県龍野)の「鬼才」三木清。わざと釈放し泳がせた共産主義者のタカクラ(注:高倉輝)を匿った罪で逮捕・収監。治安維持法違反で死刑判決は皆無だったが不自然な死亡事案は無数。三木も刑務所内で病死(しかも戦後である)。クロサキがいかに「忠良の臣民」として「顕彰」されるべきかを証明。 | ||||
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小林多喜二(小説家)、鶴彬(川柳作家)、横浜事件の犠牲者(神奈川県の特高警察による言論関係者への捏造事件による弾圧)、三木清(哲学者)をテーマにした短編によって構成された小説集である。 横浜事件を除けば、官憲の拷問、過酷な獄中生活によって死に至った人達だ。横浜事件も生存者はいるものの、拷問による死者を出している。 その夫々の物語を紡ぐ人物として、弾圧する側の高級官僚(内務省の特高警察幹部)のクロサキを配した所が、この小説集の鍵となる。 このクロサキなる人物は、一高から東京帝大へ進んだ秀才である。学識も深く、世の中の仕組みを正確かつ冷静に理解した上で、弾圧を指揮しているのだ。左翼運動がまだ盛んであった時代に学生生活を送っており、自分が弾圧される側に回っていたかも知れない事も承知している。その上で体制側に立つ事を選んだのだ。 小林多喜二(小説家)、鶴彬(川柳作家)、横浜事件の犠牲者(神奈川県の特高警察による言論関係者への捏造事件による弾圧)、三木清(哲学者)を「Unbreakable」、クロサキを「Breakable」とすれば、この小説集を読み解く事は容易である。 だが、この「Unbreakable」の中で、今日でも多くの若い人たちに読み継がれているのは小林多喜二だけだろう。さらに言えば、小林多喜二が読みつがれなければならないと言うことは、小林多喜二の望むような「世の中」や「人々の幸せ」が実現していないと言うことなのだ。 この小説集は「三木の死に衝撃を受けたGHQは治安維持法廃止を指示。同年十月、治安維持法は特別高等警察(特高)とともに廃止された。」と言う結語で幕を閉じる。 クロサキのその後は書かれていない。公職追放となり、職を転々とした上で失意の人生を終えるか、米国または日本の治安機関・情報機関の高級エージェントとして、怪しげな会社や団体の幹部として裕福な生活を送ったのかの何れかだろう。何れにしても、クロサキが「良い一生であった」と人生を回顧する事はなさそうだ。クロサキは確かに「Breakable」だ。 果たして、クロサキを能吏として駆使していた権力も「Breakable」なのだろうか。 このように書くと、大変、理屈っぽい本に思われてしまうが、次々と場面を変え、時間を前後させると言う、著者の小説作りの力量は大したもので、一気に読めてしまった。 | ||||
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戦時中を中心に実在した人物達を、内務官僚クロサキが追い詰める形式で描写する短編集。 短編集でありながらも、読みやすさと同時に読み応えが得られる作品である。 個人的には蟹工船の小林多喜二を描いた作品のラストの船員のどんでん返しが一番好き。 ミステリとしても秀作だが、実在した人物を著者ならではの切り口で人間味を持たせた描写が素晴らしい。 歴史上の人ではなく、実在した周囲の人との密接な関係を持った一人の人間であったことを再認識させてくれる。 言論統制や目に見えない雰囲気に流されることへの危険など色々と感じさせる。 | ||||
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読み終わって、予想通り暗澹たる気持ちになりましたが、次第に、主人公達 敗れざる者たちの不屈の精神と行動へ静かな感動が広がって、この本に出会えた喜びを、噛み締めました。 主人公達への鎮魂として、大切に、読み返していくつもりです。 | ||||
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