冷たい密室と博士たち
評判
冷たい密室と博士たちの評価:
3.46/5点 レビュー 67件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全133件 1〜20 1/7ページ
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冷たい密室と博士たちの評価:
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
前作『すべてがFになる』はミステリー界の金字塔的な作品であり、私も初読時に大きな衝撃を受けた。実は、シリーズ第2作となる本作は、執筆順では前作より先だったが、デビュー作に相応しいのは『F』であるとの判断で第2作として刊行された経緯があるという(前作解説より)。そうした背景もあり、本作を手に取る際は「前作があまりにも突出しているがゆえに、この先それを超える作品があるのか」という期待と不安を抱きながらの読書となった。
しかし実際には、犀川と西之園萌絵の関係性や軽妙な掛け合い、そして“頭の良い人が構築した良質なミステリー”という魅力は健在であり、期待にしっかり応えてくれる内容だった。
今作では西之園萌絵の私生活も垣間見える。地上22階のタワーマンション最上階に住み、執事がいて、愛犬はシェットランドシープドッグの都馬(トーマ)、愛車は真っ赤な高級スポーツカー、さらに隠れてタバコを吸う――。知的で美人、かつ純情な一面を持つハイスペックなお嬢様でありながら、どこか「じゃじゃ馬」な気質も感じさせる彼女の多面的な人物像が、単なるワトソン役にとどまらない魅力を生み出している。
一方で、犀川との距離感も絶妙だ。前作の「吊り橋効果」の余韻を残しつつも、お互いの家を行き来するなど(あくまで事件の捜査名目ではあるが)、確実に変化の兆しは見えており、この絶妙な距離感の描写はシリーズの大きな魅力だと感じた。
事件の核となる密室の謎解きは、大学の「極地研究所」という特殊な環境で展開される。宇宙服のような防護服が「人物の同一性を曖昧にする装置」として機能する点は、与えられた条件から論理的に導かれる本作らしい理知的な設計である。見取り図があればさらに理解は深まっただろうが、その分、論理的に状況を整理しながら読み進める能動的な面白さがあった。
特に印象深いのは、極寒の無機質な舞台とは対照的に浮かび上がる、犯人側の「熱を帯びた動機」である。犀川が犯人の行動に感じた違和感の正体が、論理では測れない「感情」に根ざしたものだと見抜く場面には、独特の余韻が残る。中盤、暗闇の部屋で萌絵が犯人に追い詰められるシーンの緊迫感も白眉だ。
約30年前の作品ゆえ、頻繁な喫煙描写やPCメール中心の通信手段に時代背景を感じるが、それすらも作品世界のリアリティとして味わい深い。前作の衝撃と単純に比較するのではなく、シリーズの魅力を着実に広げる一作として、高い論理性に裏打ちされたミステリーを楽しみたい読者に強く薦めたい。