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ブラック・ハンター



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【この小説が収録されている参考書籍】
ブラック・ハンター (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ブラック・ハンターの評価: 3.00/5点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

マチズモを刺激する<Why-Done-It>

反転と<はなれわざ>が炸裂する大部の傑作「死者の国」(2019/6月)以来になりますが、ジャン=クリストフ・グランジェの新しい翻訳「ブラック・ハンター」(ハヤカワ・ミステリ)を読み終えました。本作は、「クリムゾン・リバー」の続編でもあります。
 昏睡状態から蘇ったニエマンスは、警察学校での教官生活を経て、フランスの凶悪犯相手の特命係に任命され、現役に復帰します。相棒は、警察学校での教え子・イヴァーナ。彼女はクロアチア移民の父とフランス人の母との間に生まれ、ドラッグに溺れ、心に深い闇を抱えています。「死者の国」のステファン・コルソ同様、極端なキャラクターを持つ二人の主人公たち。
 舞台は、ドイツに接するフランス、アルザス地方。自動車産業により財を成したVGグループの総帥が、催された狩りの会の最中惨殺されます。犬を使って獲物を追いかける追走猟。ニエマンスとイヴァーナは、ドイツの警視・クライナートと共にその犯人を追って、時代の闇、国家の闇、家族の闇を潜り抜けて、その真相を探り出そうとします。勿論、ストーリーのディティールは、お読みいただければと思います。
 この物語について、不満を先に言ってしまうと、ページ・ターナーでありながら、舞台と背景が限定され、そのストーリーはかなりもたつきながら進行していきます。道具立ては充実しているものの、より膨らみのある(例えば「死者の国」のような)物語を期待すると少し肩透かしをくらうかもしれません。接近猟。伝説のようなブラック・ハンター。シュヴァルツヴァルト(黒い森)。精霊と魔法の国。マッドマックスのように爆走する伝説のノートン。むしろ、水面下に向けて、限りなく深い家族の歴史に目を向ける作者の視点は、どちらかと云えば、米国の私立探偵小説に近いものなのかもしれません。
 主題は、ニエマンスとイヴァーナという警察組織に属していながら、アナーキーで、ファナティックで、やり放題で、何者をも恐れない「無双」の気性を持ちながら、常に過去に纏わる罪に囚われ続けるその二人のキャラクタリゼーションの<つながり>にあり、孤独を生きることを強いられた人間たちだけが共有でき、感じ取ることができる「情念」の発露が、グランジェが書く小説の魅力なのだと思います。
 最後に今回の物語を端的に表すとするならば、「原罪」を背負うファムファタール、マチズモを刺激する<Why-Done-It>。
ブラック・ハンター (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:ブラック・ハンター (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150019592

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