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念入りに殺された男



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【この小説が収録されている参考書籍】
念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)

念入りに殺された男の評価: 3.50/5点 レビュー 4件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

奇想アイディア優先により、ヒロインの魅力が半減したか

書評家筋で評価が良さそうだったので読んでみたが、珍しくぼくの予想は裏切られ、惨憺たる読後感に終わった一冊。

 出だしこそ、小説家志望の女性とその家族、そこにお忍びで訪れる有名作家という、文学の香りを散りばめたシチュエーションが素敵であり、本好きの読者は即刻物語の重厚さに引き込まれると思う。

 しかし、いざ事件が起こり、その結果をノワール風に展開する段になると、あまりの力技的プロットにその時点からついてゆきにくくなってしまった。文学的な手段を用いてゆくにしても、スタート時ほど表現として入れ込んでくれないのが残念である。

 次にヒロイン造形について難があり過ぎるとも思える。いくら追い詰められたヒロインとは言え、夫と二人の子供たちへの思いやりをほとんど見せず、保身のための計画を構築し、思い切った行動に出ること自体、ストーリーとしては意外だし、それ自体が本書のエンターテインメント部分であるとは言え、あまりに不自然過ぎる。

 ヒロインの無茶や軽薄な行動は、いくつもの幸運で救われるが、先の見えない不安が強いて言えばノワール的でありながら、あまりにも展開に無理がかかり過ぎているような気がする。彼女の行方をどうやってか探り当ててしまう夫の行動についても、両親不在の子供たちの世話についても、説明はされない。

 とことんヒロインの視点でしか物語られないゆえに、謎に謎を積み重ねてゆくばかりで、しかもヒロインがあまり好きになれないばかりか、読者も家族も裏切るような軽率な行動をとることで、もはやぼくはヒロインを許せなくなった。

 女性によるノワールは珍しいように思うが、エンターテイメント性を重視して、しかも結果が結果なのでノワールというより、ブラックだったのか、との印象。わかりにくいかもしれないが、ジャンルはノワールとは異なると思う。

 作家は同じヒロインによる次作を準備中らしいが、そこで本書の欠点をフォローできるかどうかも注目しておきたい。もしかして大逆転があるかもしれない、とわずかに期待したいが、今の時点ではどうにも……。
念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)より
4150019568
No.1:
(3pt)

何者かが消滅し、何者かが現れる

「念入りに殺された男」(エルザ・マルポ ハヤカワ・ミステリ)を読み終えました。
 フランス、ナントにて、夫、娘二人と暮らしながら、ペンションを営む主人公・アレックス。ある日、そのペンションにゴンクール賞作家のシャルル・ベリエが現れ、滞在します。過去に精神の病を患い、自分も小説家を志していたアレックスは、次第に小説家・シャルルの言動に興味を惹かれていきますが、彼にレイプされそうになり、誤って彼を殺害してしまいます。彼女は自分と家族を守るため、その死体を隠蔽し、たった一人、田舎町からパリへと向かいます。
 第一部から第二部へと移行し、殺人事件の犯人が殺された本人に憑依し、逆に幾人かの候補者の中から「犯人・容疑者」を捏造しようとする新機軸が用意され、少しときめきました。「犯人はどれ(笑)」
 殺害された小説家・シャルルの破天荒ぶり、フェイク・ニュース、SNSのハッシュタグによるなりすまし、行き過ぎた"ポリティカリー・コレクトネス"、次々と<犯人候補>が現れ、そのコンテンポラリーな視点がとてもユニークなパズラーだと思います。しかし、作者はミス・ディレクションを狙ったのかもしれませんが、アレックスの調査によってシャルルに双子の兄弟がいたという伏線が実は・・・・で、確かに中盤以降、牽引するサスペンスは強いとは感じますが、期待するようなミステリ的な「はなれわざ」はなかったと言っておきたいと思います。
 むしろ2019/10月に読んだ「わたしがわたしであるために」よりもシャープな<わたしがわたしであるため>の逃避行として、また2020/5月に読んだ「ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち」にも伺える#MeTooへの連帯を感じさせて、この時代のサスペンス小説としての魅力がきらめいているように思えます。
 罪を超えて、ただ二人の何者かが消滅し、そして二人の何者かが幻のように現れる。
念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ)より
4150019568

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