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へぼ侍



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【この小説が収録されている参考書籍】
へぼ侍

へぼ侍の評価: 4.22/5点 レビュー 9件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.22pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(5pt)

関西弁での軽妙なやりとりがおもしろい。明治維新当時のキャリア選択の悩みに共感できる物語

最初は読みにくく感じた。誰が話している会話文なのかが分からなかったり、地の文の意味が理解できなかったりと、物語世界になかなか入っていけず、もどかしかった。これは読者である私自身のコンディションが悪かったせいなのかもしれないとあとで思った。
だが、中盤あたりから読むリズムが出てきて、内容がすらすら頭に入るようになった。主人公が長を務める分隊の3人の隊員との関西弁でのやりとりは漫才のような軽味があり、しかも主人公を含めて隊員個々がとても個性的に描かれている。主人公が西南戦争への参陣を通じて酒やタバコ、女を経験し、加えて関係者との対話を通じて成長していく様子がよく描かれている。
歴史上の著名人との邂逅も散りばめられ、登場人物それぞれが明治維新後の新しい世の中でいかに生きていくべきかに悩みながら、各々の個性に応じた選択をしていく様は感動的であった。
様々な伏線が随所に張られていて、それらがのちの展開できちんと回収されているのも見事である。筋立てがしっかりした物語である。
また、西南戦争当時の社会情勢についてよく調べられており、文章の端々から著者の熱量も感じられる上等なエンターテイメントに仕上がっていると思った。
へぼ侍Amazon書評・レビュー:へぼ侍より
4163910522
No.6:
(5pt)

おじさんには、やっぱり二才(ニセ)の頑張りが眩しく見えます

大阪出身で、「また負けたか八聨隊」の歌が好きじゃなかったのですが、大阪出身の主人公がチャレンジしようという話に興味をもって読み始めました。
一所懸命な姿に引き込まれました。
へぼ侍Amazon書評・レビュー:へぼ侍より
4163910522
No.5:
(5pt)

爽快で痛快で快活や。

明治10年の大阪界隈の風情が間近に聞こえてくる。
そして、あちこちで関西弁が飛び交う。
舞台は西南戦争。
大阪鎮台が官軍歩兵隊として九州へ派遣される。
乃木希典、加納治五郎、犬養毅、そして西郷隆盛が登場する。
後の著名人たちの、現場での臨場感あふれる声が聞こえてくる。
読者を楽しませ、実にユーモラスなストーリーに仕上げている。
末端の兵士が見た西南戦争。
西郷札など、知恵を絞り、攻略していく。
そして行き着いたところが、「パアスエイド」=persuade=説得する。
武士の時代が終わり、近代化していく様子を描いている。
へぼ侍Amazon書評・レビュー:へぼ侍より
4163910522
No.4:
(4pt)

なんだか額賀澪『風に恋う』とおなじ香りがした

坂上泉。弱冠30歳。新しい才能の出現である。無理なく面白かった。早く次作が読みたい。

 この本の主人公の志方錬一郎17歳。没落した大阪の与力の跡取り。幼い頃から薬問屋に丁稚奉公している。武士の子弟があきんどことばを駆使するところがおもしろい。こころは武士だがやっていることはあきんどの儲かりまっかのしたたかな世界、この設定の柔軟性がいい。錬一郎は西南戦争に官軍側として参戦するのだがそのなかでいろんな体験をして成長していくという教養小説(自己形成小説)の形をとっている。

 最初のところで錬一郎は道場の師範代出身ということでいきなり、堀中尉から分隊長に抜擢される。部下はくえないオジサン3人。このぎくしゃくした関係が、何度も修羅場をくぐり抜けることで先輩との確執がだんだん薄まり、信頼関係が醸成されて戦闘でも大活躍していくというおきまりの「泣かせのパターン」。あれっ、これって額賀澪の『風に恋う』で、茶園基(もとき)が指揮者不和瑛太郎から(先輩を差し置いて)ブラバンの部長に抜擢されたのと全く同じ展開じゃないか。西南戦争と高校吹奏楽コンクールという戦いの場は違うけど。自己形成小説ってそんなもんだろと言われればその通りだけど。

 戦闘の途中で忽然と行方不明になった、超乱暴だが憎めない部下の松岡。いつかどこかで劇的な再会があるのだろうとわくわくして期待したが、これが肩すかし。最後まで行方不明のままという不条理。著者はすでに読者をいじって、ぐいぐい最後まで引っ張っていく術を身につけているのか。末恐ろしい。最後のシーンに出てくる本屋で立ち読みして叱られる中学生。
 「そのうちここで仰山本を買うたるさかい読ましてーな」
と店主に悪態をつくが、これが司馬遼太郎の若いときの姿だって。知らんがな、そんなこと。
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4163910522
No.3:
(5pt)

明治青年成長物語

西南戦争を舞台に、大阪士族の子が商人としての才覚をちょくちょく活かしつつ、生き方を少しずつ見出していく成長物語。乃木希典、犬養毅、嘉納治五郎など同時代人がちょいちょい絡んだり、「おお〜」とニヤニヤさせられる話も多く、硬派で満足できる歴史小説だった。
生の史料の原文がいきなり出てきたり、取っ付きにくい点とかもあったりするが、「坊っちゃんの時代 」が好きな人には確実にオススメできる。
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No.2:
(5pt)

明治大阪へぼ侍!西南戦争活劇譚!

またも負けたか八聯隊(やれんたい)
それでは勲章九聯隊(くれんたい)

口が達者で損得勘定に敏感で情けなさを揶揄した大阪師団の流行り歌。
主人公である志方錬一郎は、そんな言われなき風評にみられるような頼りなさすら感じる17歳の新兵。
そんな彼が「へぼ侍」と馬鹿にされながらも剣術を学び続けたり、西南戦争に従軍しようとあの手この手で策を練ったり、丁稚奉公の経験を生かして手柄を立てたり、悩んだり苦しんだり別れに悲しんだりする物語。

話の読ませ方がメリハリがあり、構成がしっかりしていて読みやすい。
何よりも癖が強く、個性的な隊員たちとぶつかり合いながら仲間意識が高まっていくのが面白い。
僕は特に京都からきた料理人の沢良木が気にっている。腕っぷしは弱くても、料理の知識と柔らかい人柄、その内側にある天朝さんへの敬意と己の過去の贖罪意識。まさに味のある人物だなぁ。

そして、読んでる途中で意外な形で登場する有名人物たち。
なんでここに〇〇が!?
こういうサプライズ演出、面白い。

痛快さと人情味と時代の移り変わりによる寂しさが心地よい読後感を満足にしてくれた。
へぼ侍Amazon書評・レビュー:へぼ侍より
4163910522
No.1:
(5pt)

序盤は熱く、中盤は痛快で、終盤は切ない

明治維新の動乱で家が没落したために薬問屋で丁稚奉公をしており
武功をあげる最後のチャンスを逃すまいとする主人公。
そして同じ隊に組み込まれた、主人公と同様に妙な経歴を持つ
どこか兵隊らしからぬすっとぼけた仲間たちが
西南戦争を駆け抜ける物語です。

軍に潜り込んで理想と現実の違いに悩み周囲と衝突しながらも
小隊のリーダーとして錬一郎が認められていく序盤は熱く、
西南戦争の苦境を、薬問屋の丁稚という経歴ならではの発想や
戦争被害を被る側の慈愛に満ちた視点で切り抜けていく中盤は痛快で、
そして西郷軍の敗北の気配が濃厚となり戦争終結や
本格的な新時代の気配が漂う終盤はとても切ない。

明治初期や西南戦争を描いた物語は幾つか読んだものの
こうして侍の時代の終わりを薩摩の強兵や死にゆく侍側の視点で
描くのではなく、明治という新時代を生きねばならない弱兵の
視点から生き生きと描く手腕に脱帽しました。
そこには「過去にこういう時代があったのだ」という距離を
隔てた俯瞰ではなく、明治の時代とは令和という現代に
繋がっているという、そんな臭いや質感に満ちた読書体験を得られました。
へぼ侍Amazon書評・レビュー:へぼ侍より
4163910522

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