へぼ侍
- 松本清張賞受賞 (6)
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最初は読みにくく感じた。誰が話している会話文なのかが分からなかったり、地の文の意味が理解できなかったりと、物語世界になかなか入っていけず、もどかしかった。これは読者である私自身のコンディションが悪かったせいなのかもしれないとあとで思った。 だが、中盤あたりから読むリズムが出てきて、内容がすらすら頭に入るようになった。主人公が長を務める分隊の3人の隊員との関西弁でのやりとりは漫才のような軽味があり、しかも主人公を含めて隊員個々がとても個性的に描かれている。主人公が西南戦争への参陣を通じて酒やタバコ、女を経験し、加えて関係者との対話を通じて成長していく様子がよく描かれている。 歴史上の著名人との邂逅も散りばめられ、登場人物それぞれが明治維新後の新しい世の中でいかに生きていくべきかに悩みながら、各々の個性に応じた選択をしていく様は感動的であった。 様々な伏線が随所に張られていて、それらがのちの展開できちんと回収されているのも見事である。筋立てがしっかりした物語である。 また、西南戦争当時の社会情勢についてよく調べられており、文章の端々から著者の熱量も感じられる上等なエンターテイメントに仕上がっていると思った。 | ||||
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大阪出身で、「また負けたか八聨隊」の歌が好きじゃなかったのですが、大阪出身の主人公がチャレンジしようという話に興味をもって読み始めました。 一所懸命な姿に引き込まれました。 | ||||
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期待していたが、盛り上がりもカタルシスもなく平板な印象。手堅いとも言えるのか。 | ||||
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本書は新人賞作品である。松本清張賞は大手出版社が主催する日本でも指折りの公募による新人賞であり、応募総数は600を超える。その扱いも厚遇である。大手出版社からの出版ともなれば、プロの校正を経てから出版される。したがって、本書を新人による作品として見做さず、プロによる作品として批評する。 本書は西南戦争を舞台にしている。西南戦争は日本の近代史上最大の内乱である。西南戦争を、新人がどのように解釈して描くのかと期待して読むとがっかりする。著者は西南戦争というものが、その後の日本にどのような影響を与えたのか再考すべきである。ちなみに、軍歌「抜刀隊」に関して江藤淳の評論を読むべきである。 本書の最大の欠点は「瓦解」により、成り上がった者と落ちぶれた者との光と闇を描けず、落ちぶれた者の悲愴さが全く描けていないことである。夏目漱石や島崎藤村、近代以降の数多くの優れた作家たちは「瓦解」により零落した者の悲愴さを巧みに描き、読者の心を惹きつけた。残念ながら、登場人物の会話は受験や就職活動の失敗といったサラリーマンの愚痴レベルである。 人物の心理描写、風景描写、構成力、ストーリー展開のテンポはどれも拙く、果たして、これがなぜ大賞に選ばれたのか首を傾げざるをえない。以下の批評で詳細を述べる。ネタバレがあるので、未読の読者は気をつけていただきたい。 ①まず、話の序盤で、主人公の母は武士の未亡人であるが、息子の政府の兵募集の志願を諫める。現代の平和な時代の母と違い、当時の武家の女房というものは肝が据わっていた。戊辰戦争では自ら自決する夫人も多かった。だからこそ、「瓦解」は悲愴なのだ。家族もろとも命のやりとりをするのが戦争である。ましてや、武士の夫人は命よりも名を惜しんだ。この描写で、本書への読書熱は一気に冷める。私が選考委員なら、この時点で落選させている。時代物を書く時には、現代の感覚で書くべきではない。 ②歴史認識の誤りが多々ある。大規模な新人賞では、誤りが一つでもあれば大きく不利になると聞いたことがある。この話は本当であろうか。「大西郷と相対するいうことは国許に弓引くも同然」(p.50)とあるが、国許は島津家であり、西郷隆盛ではない。なぜ、薩長の旧大名が公爵となったのか、理解できていない。薩摩は代々島津家のものである。したがって、西郷が藩政改革として島津家の知行を削ったり、廃藩置県を行ったりしたことに島津久光が激怒したというのは有名な逸話である。だからこそ、西南戦争において、島津家は西郷軍の味方をしなかった。 岩倉具視が「攘夷派」(p.84)というのも誤った歴史観である。孝明天皇は紛れもなく攘夷派だが、イギリスと手を結び数多くの武器弾薬を入手した薩長と連携した岩倉は決して攘夷派ではない。故に、岩倉具視による孝明天皇暗殺説が生まれる(学会はこれを否定しているが)。 主人公ら政府側が本文で「俺らは、ここで勝たんと、また賊軍だぞ」(p.111)と言うセリフがある。天皇という玉を握る方が官軍で、勝てないからと言って賊軍にはならない。戦争では大義名分、玉を握る方が勝利をする。戊辰戦争では錦の御旗が絶大な効果をもたらしたという史実は基本中の基本である。 「征韓論」に対する見解も浅く、他にも無数の誤りを指摘できる。もっとも、完璧な本はなく、本書は学術書でもなければノンフィクションでもない。フィクションである。フィクションであるからこそ、学術書やノンフィクションでは書けない、歴史における大胆な解釈が必要である。逆にそれがないフィクションはただの作り話で無価値である。残念ながら、本書を読んで歴史認識が深まることはない。ただ、知識を詰め込むだけでは作品にはならない。 ③本書のテーマの一つが「パアスエイド」(persuade:説得する、本書では弁舌のことか?正確にはpersuasionとすべきであろう)である。弁論というのは現代社会においては重きをなすが、当時は列強間では帝国主義が当たり前であり、パワーポリティックスの時代である。これは、国際政治のいろはの「い」である。大日本帝国憲法を制定した伊藤博文もこのことを熟知していた。当時の政治家は皆このことを理解していた。自己の弁論に頼るだけなら、犬養毅がなぜ、長州閥という軍閥の大物にして立憲政友会総裁である田中義一と手を結んだのか理解できない。田中義一こそ、まさに反デモクラシーの代表的人物である。犬養毅は理想家ではない。政治家である。犬養の人物分析についても、ただ浅いとしか言いようがない。 したがって、本書の主張自身が時代と乖離している。 ④本書は、戦争の臨場感、大衆の心理描写、西郷の与える日本社会への影響が乏しい。唯一の良い点は、西郷が身を寄せる亭主が、西郷の素顔を語るところである。この時になって初めて読者は西郷隆盛が生きていることを実感し、感情移入ができる。しかし、この点も、この家で敵の親玉である西郷と主人公が対面するという取ってつけたような場面を加えたことで台無しになる。ヤクザの鉄砲玉でも、敵の親玉の命を必死で奪いに行く。それができないまでも、主人公は激しく葛藤せねばならない。西郷のせいで瓦解という零落を味わい、そして、人を殺める戦場を経験した主人公が、この茶番の設定はともかくとして、西郷を目の前にしてただ茫然としていましたでは、主人公における人生の悲愴さなど微塵も感じなくなってしまう。 ⑤ ④に加えて、終章というのは蛇足の極みである。まず、犬養の死因となる五・一五事件がどういうものであったのか、著者の歴史解釈が全く伝わってこない。それは、すなわち犬養の人物分析の甘さに繋がる。また、二・二六事件では、「昭和維新」を掲げる決起将校らへの粛軍が徹底的に行われた。そのために、「昭和維新」は終焉を迎える。「新たな時代が、力強く台頭」(p.319)には決してならない。著者の歴史認識の浅さには唖然とさせられる。著者はもう一度歴史を学び直した方がよいであろう。 このような凡作が松本清張賞という大賞を受賞したことに大変失望を覚える。他にもっと優れた作品があったのではないか、いや、きっとあったであろうと思わせる出来である。出版社は鋳型にはめたような作品を選ぶのではなく、ダイヤの原石のように新鮮味のある新人を発掘してほしい。最近の作品はどれも似たり寄ったりである。出版不況は出版社自らが招いている結果だと猛省していただきたい。また、審査委員の作家の方々も、最終候補の作品だけを審査するのではなく、一次選考の段階から加わるぐらいの気概を持って欲しい。今後、真に優れた新人が世に出ることを願う。 | ||||
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明治10年の大阪界隈の風情が間近に聞こえてくる。 そして、あちこちで関西弁が飛び交う。 舞台は西南戦争。 大阪鎮台が官軍歩兵隊として九州へ派遣される。 乃木希典、加納治五郎、犬養毅、そして西郷隆盛が登場する。 後の著名人たちの、現場での臨場感あふれる声が聞こえてくる。 読者を楽しませ、実にユーモラスなストーリーに仕上げている。 末端の兵士が見た西南戦争。 西郷札など、知恵を絞り、攻略していく。 そして行き着いたところが、「パアスエイド」=persuade=説得する。 武士の時代が終わり、近代化していく様子を描いている。 | ||||
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