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(短編集)
死者の奢り・飼育
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死者の奢り・飼育の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.54pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全47件 1~20 1/3ページ
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芥川賞受賞の表題作「飼育」を含む初期の短編をまとめたもの。 ほかにもノーベル賞も受賞。受賞理由はからっきし意味不明ですが、ネットに落ちているNHKの方の解説を読むと、どうやら現代日本社会を描いたから、ということ!? よくわからん。 ただ、本作を読んでありありと感じたのは、偽善へのシニカルな目線・退廃的ムード・諦めと閉鎖性、このようなワードが思い浮かぶ作品群であったと思います。 ・・・ 以下は作品と寸評です。 「死者の奢り」・・・表題作。解剖用死体を大型水槽からもう一つへ移し替えるというバイトをした「僕」。場面設定が特殊であるものの、得も言われぬ退廃的なムードが印象的な小品。 「他人の足」・・・未成年の脊椎カリエス患者を収容した一種の閉鎖病棟の話。退廃的な慰みを看護師に強要?しているような病棟であったものの、とある「新入り」大学生患者が皆を感化し良化していく。しかし、最後にこの大学生が何とかここを出ることが出来るとなると、もとよりいる患者を汚らわしいものを見るかのように突き放す。ここに善意の欺瞞の薄っぺらさが見て取れる。 「飼育」・・・とある隔絶された村に不時着した米軍飛行機。生きていた黒人兵を指示があるまでその村にとどめおく(まさに「飼育」)様子を綴る。牧歌的な交流が大部分を占めるも、移送される段になり、黒人が逆上し、最後はあっけない結末に。 「人間の羊」・・・占領下のバスでの出来事。米兵に屈辱的な仕打ちを受けた「僕」と、眼前では無抵抗の観客であるも、事後の「僕」に告発させようと躍起になる「教員」との偏執狂的やり取り。居合わせた当事者としては何もしなかった「教員」の第三者的物言いが鼻につく。これもまた「外野」の偽善的欺瞞が匂う作品。 「不意の唖」・・・上記の「飼育」を彷彿とさせるとある山村。今度は米兵とその通訳がこの村に訪れる。強い側についた通訳の高飛車な態度が次第に村人の気持ちを逆撫でし、遂に通訳は。。。ホラーチックな作品。 「戦いの今日」・・・朝鮮戦争時の日本で、米兵に脱走を唆すビラを配る兄弟。ちょっとしたバイト感覚のビラ配りも、脱走志望者が出てきてたじろぐ兄弟。引き受けたくない兄と、何とかしたい弟。結局かくまうことになるも、とある晩に脱走兵に潜むアジア人蔑視を嗅ぎ付けた兄は当の兵士をぼこぼこにして。。。 ・・・ ということで久方ぶりの大江作品でした。 とんがっていてなかなか面白かったです。他の作品もまた読んでみたいと思います。 | ||||
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「飼育」は、終戦間近の墜落機から捕獲した黒人兵を、閉鎖的な村で監禁する話。最終的にどうするのかについて、役所がもたつきなかなか結論が出ないこと、異人種に対する差別、少年間のマウントの取り合い、慣れによる緊張の緩和、追い詰められたものによる思いがけない反撃、等々、現在でも解決できていないテーマがてんこもりの短編だ。 「人間の羊」は突発的で理不尽な暴力に抵抗できない者の悔しさ、それを傍観していたにもかかわらず後で正義面する者の嫌らしさ、加害者に対するよりむしろそちらに対して激しい反発を覚える被害者の心理を描いた短編。こちらはそのまま学校や職場のいじめに置き換えることができる。 何十年も経つことで大江作品のすごさを再認識させられた。 | ||||
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こういう作品を書くのか | ||||
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読もうとした動機は、「死体洗い」のバイトという都市伝説は、「死者の奢り」が原点とされているからでした。 読んだ結果、「死体洗い」のバイトではなじゃないか・・・と。 でも、大江健三郎氏の文才が、あたかも実在するかのように錯覚させる。 「セヴンティーン」で、「おぉっ!面白い!」と思ったのだが、本作に収められている「他人の足」でも、同じ感覚を覚えた。 それはそうと、予備校生時代に、大江健三郎氏と会って会話をしたことのある講師が、「一番面白かったのは、『日常生活の冒険』がです」と伝えると、「私もそうです」と大江健三郎氏も答えたとか。 読まなくては・・・と思いつつ、25年以上過ぎている。 | ||||
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村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」の序章のようだ。大江さんは、タイムマシンで村上龍の小説を読み、戻ってこれを書いたのかと思うくらいだ。小説の底に蠢く、外国人、外国文化に対する畏れや憧れを感じ取ってしまう。 でも、瑞々しい。 2023年の今読んでも、スッと物語に入れる。筆致のうまさといえばそれまでだが、少年の心に私がなりかわり、物語の中に入れられてしまう。 | ||||
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学生時代以来何十年ぶりに大江作品を読みました。短編とはいえ、内容は重いものばかりで、村上春樹のように気楽には読めません。1日数頁ずつでもしっかり読んでいこうという気を起こしてくれました | ||||
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前に学生の頃に読んだ記憶があります。 今回久しぶりに読みたいと思って買いました。 何だか、自分学生の頃に戻ったような気分になりました。もう一度大江作品を読みたいと考えています。 | ||||
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若き大江健三郎の出世作品群。 終戦後という時代背景もあり、外国兵や(米)黒人を頻出させることによって、どことなく暴力や戦争に反対する強い反対の意思を感じ取ることが出来ます。 子どもたちが脇役として良い味付けとなっており、性に関する描写が生々しくも決して卑猥・下品ではありません。 ~以下は各作品の気になった部分~ ・死者の奢り:医学部の死体解剖実習を待つホルマリン漬けの死体の描写に関連し、独特の臭いや薄暗い室内環境までが恐ろしく緻密に描かれてされています。 ・他人の足:看護婦の猥雑さと優しさの交わった表情がとても気になります。 ・飼育:黒人を主題とした体臭や汗、性表現や排泄に関する生々しい表現など、現代だと間違いなく?発禁レベルです。 ・人間の羊:もしこの話に続編があったのなら、と思わせる意外なエンディングで幕を閉じます。 ・不意の唖:村長の頑なな姿勢が胸をうちます。結局、通訳の靴は誰がどの様な経緯で紛失してしまったのだろう?という疑問が残ります。 | ||||
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この作者の作品を初めて買ったのですが、難しくて途中で投げ出しました。 | ||||
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飼育以後の初期作品には、暴力的予感の冒頭から平穏の日常を経て暴力的爆発に至る構成が、多用されていて特徴的だと思った。暴力的爆発の前にはふざけあうコミカルな場面がそのきっかけになるパターンも多い。 | ||||
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時間がある時に買って読んでみるといいと言われて、普段は全く本も小説も読まない人間でしたが買って読んでみました。 文章もかたっ苦しくなくて読みやすく、内容がすんなり頭に入ってきました。少し暗いお話ですが、題材が特殊で個人的には好きでした。 | ||||
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大江健三郎氏は名前くらいしか知らなかったので、実際に読んでみたくて購入。 読了して一言で表すなら「えげつない」! 短編集と言え油断することなかれ。 どれもこれも凄まじいインパクトです。 しかしただのインパクトではなく、構築された上での描写ですからね。 もっと早くに出会いたい作家でした。 | ||||
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悪いはずがない、大江健三郎初期短篇集。 異常な題材、偏執狂的文体、これで大島渚や田原総一朗、武満徹、筒井康隆、井上ひさし、中上健次、村上龍、町田康、etc、錚々たる面子が圧倒された。 この凶暴極まりなく、ある意味で病的な想像力は、後の『日常生活の冒険』や『個人的な体験』、『万延元年のフットボール』、『洪水はわが魂に及び』という問題長篇群へと結実して行く。 御本人がおっしゃる通り、“日本語の可能性を探求する実験”そのもの。 『ピンチランナー調書』以降の作品群を指して、義兄の伊丹十三が、「実際、君の小説は、売れなくなって来ているじゃないか」という指摘もあってか、その壮大な試みは少しずつ萎んでしまうのだけれど。 | ||||
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"死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている"1957年発表の著者デビュー作『死者の奢り』そして当時23歳で最年少での芥川賞受賞となった1958年発表の『飼育』含む本書は実存主義、時代の閉塞感を感じる寓話的な初期作品集。 個人的には、著者の『万延元年のフットボール』を課題図書にした読書会を開催する事もあり、勉強のために手にとりました。 さて、そんな本書は『万延元年のフットボール』や『同時代ゲーム』といった、既読の長編作品–どちらかと言うと難解な作品から入った私にとっては、比較して【無機質かつ瑞々しく】とても読みやすい印象を受ける初期の短編、屍体処理室の不条理なアルバイトを描いた『死者の奢り』脊髄カリエスの少年たちの哀歌『他人の足』黒人兵と寒村の子供たちとの悲劇『飼育』外国兵の理不尽な仕打ちと傍観者への侮蔑を込めた『人間の羊』など6編が収録されているわけですが。 まず、やはり中では、デビュー作にして、屍体と妊婦など様々な形で生と死を繰り返し対比させた『死者の奢り』ありがちな黒人兵と子供たちの心の交流を描くどころか"黒人兵を獣のように飼う"と家畜として扱う『飼育』が【内容や主題にインパクトがあって】印象に残りました。(しかし屍体処理のバイトって、私が学生時代にも都市伝説的に話題になったのですが。実際どうなんでしょうか?) また、残りの4作品『他人の足』『人間の羊』『不意の唖』『戦いの今日』についても。それぞれに敗戦後の日本社会の閉塞感や世界的な影響を与えていたサルトルの【実存主義の影響を強く感じる不条理さ】そして、後期の作品にも繋がるような【閉じられた集落の異質さ】が感じられると共に、次第に【作品が洗練されていく変化】も伝わってきて興味深かったです。 著者作を読み始める最初の一冊として、また敗戦後の昭和の空気感漂う作品や不条理な寓話的な短編が好きな人にもオススメ。 | ||||
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東大新聞の懸賞小説で1等になった特徴のある顔立ちで色白の少年。学生の大江健三郎。 開高健とともに沈滞していた文壇に新風をもたらした存在。 23歳「飼育」で芥川賞を受賞。 「飼育」だけでなくどの短編もすばらしい。 以下 個人的に心に残ったところです。 「死者の奢り」 アルコール水槽に保存される解剖用の死体 妊娠した女子学生の下腹部の中 人間にちがいない液に浸る死と生 人を拒む生きている者より死者の世界に足を踏みいれたアルバイト学生の僕 生きている人間と話すのはなぜ困難なのか 「他人の足」 脊椎カリエス患者療養所の未成年者病棟 犬みたいに発情させられる看護婦の習慣 新聞が君たちのことを取り上げて報道するのは君たちが脊椎カリエスだからさ 自分の足の上に立っている人間はなぜ非人間的に見えるのだろう 「飼育」 敵の飛行機だ 敵がやって来た 黒人兵を獣のように飼う 僕らは衝撃のように黒人兵も笑うことを知る 戦争 血まみれの大規模な長い闘い 黒人兵を焼くために集められた薪で書記は火葬されるのだろう 「人間の羊」 キャンプの外国兵から「羊」にされる日本人 人間に対してすることじゃない暴行 交番で不意の啞となる被害者 今度は「犠牲の羊」にされる 「不意の啞」 谷間の村へ入って来た外国兵を乗せたジープ 若い女たちは炭焼小屋へ待避し男たちは武器を畑の小屋へ運ぶ 決して彼らと争うな 負けた国の人間は虐殺されても不平はいえない 「戦いの今日」 戦争の肉体的な厭らしさ 戦争で犬のように殺される屈辱 われわれ日本の青年は戦線から離脱する 人殺しのジャップお前は俺たちの同胞じゃない | ||||
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「死者の奢り」を何度も読んでいるうちに、この小説では「意識」が重要なテーマになっているのではないかと思いました。 「死者の奢り」に登場する水槽の中の死体には意識が無く、完全な《物》になっています。 「死は《物》なのだ。ところが僕は死を意識の面でしか捉えはしなかった。意識が終った後で《物》としての死が始まる。うまく始められた死は、大学の建物の地下でアルコール漬けになったまま何年も耐えぬき、解剖を待っている」(p.18)。 その一方、生きている人間には、水槽の中の死体とは違って、意識があります。そして、意識がある生者には「粘液質の膜」があり、他者を拒絶します。 「あれは生きている人間だ。そして生きている人間、意識をそなえている人間は躰の周りに厚い粘液質の膜を持ってい、僕を拒む、と僕は考えた」(p.28)。 この小説では、水槽の中の死者たちが「意識がなく、条理に沿った存在」として描かれていると思いました。一方、「僕」や「女子学生」のような生者は「意識があり、不条理に巻き込まれていく存在」として描かれていると思いました。意識がないロボットはプログラムに忠実に動作しますが、意識に目覚めた人間は計算外の行動をしたり・心に壁を作ったりする…というのに似た現象が表現された小説だと私は解釈しています。 | ||||
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大江の硬い、しかしみずみずしい独得な文体。時間かけても読むことで本当の純文学の味わいを得られる。 | ||||
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これこそ原点で始まり、書くべきして書ける ロリに死に何でもありの大江作品、読ませるし色褪せない そりゃノーベル賞も取るよ と思わせるテーマ取りと変態性、革新性 美しさより過激や斬新、過激などという言葉よく似合う 現代でも面白いし読みやすいから本好き高校生くらいにもお薦め | ||||
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読ませてくれる文章でした。 装飾過多に感じて所々わかりにくい表現もあるのですが、文体から情景やにおいが立ち昇ってきます。 暴力的な表現はありますが、驚くほど残虐というような描写はありません。 性表現も直接的なものはないです。 死者の奢りや飼育もおもしろかったですが、個人的にはその他の収録作のほうが好きです。 小説としての完成度が上がって行く感じがしてとてもよかったです。 | ||||
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しなやかな描写と大江らしさが心地よく響いてくる。その為気色の悪さすらとても面白く感じる。なんとも言えない読了感、不思議な読書体験であった。 | ||||
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