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(短編集)
死者の奢り・飼育
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死者の奢り・飼育の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.54pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全52件 21~40 2/3ページ
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しなやかな描写と大江らしさが心地よく響いてくる。その為気色の悪さすらとても面白く感じる。なんとも言えない読了感、不思議な読書体験であった。 | ||||
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1957年と58年に書かれた短編六篇を収録している。 『死者の奢り』は死体置き場でアルバイトする学生の話で、『他人の足』はサナトリウムで暮らす少年の話だ。 閉塞感がみなぎり、厭な感じの迫力がある。 『飼育』落下傘で降下した黒人兵を村人たちが「飼う」。異邦人におっかなびっくりで対峙する村人の姿が笑える。 子供たちは黒人を純粋に面白がっている。つまり歪な偏見は持っていない。ノンフィクションかと思うほどリアルだ。 続く三篇は、すべて進駐軍が重要な役を演じる。 彼等の存在は旧来の価値観を根底からぶち壊すカルチャーショックであり、軽視すべきではない。 日本は敗戦国で、占領を受け入れたのだ。この事実は忘れてはならない。 あるいは隷属し、あるいは仲介の通訳に憎悪をぶつけ、あるいは脱走を助けようとする。 町中に外国兵が跋扈している状況は、人間の本性をむき出しにする。 現代文学として重要なテーマだと思うが、あまり他では読めない。貴重な一冊だ。 | ||||
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大江健三郎(1935-)の初期短篇。人間の孤独や政治の欺瞞の在りようが、読み手の五官の神経(特に触覚と嗅覚)や臓器感覚に訴えかけてくるような独特な表現を通して、描かれている。 収録は以下の6作。 「死者の奢り」(1957) 「他人の足」(1957) 「飼育」(1958) 「人間の羊」(1958) 「不意の啞」(1958) 「戦いの今日」(1958) 特に「死者の奢り」「他人の足」2作が、その情景の美しさもあって、印象に残っている。 □「死者の奢り」 死んでしまった《物》と生きている《人間》と、その二者に間にはどれくらいの距離があるのか。死体を前にして、青年は観念的に、妊娠している女子学生は胎児を下腹に感じながら、死体処理歴30年の管理人は自分の子や孫を想像しつつ、それぞれが死と生との距離を測ろうとしているように見える。《人間》はいずれはみな死んでしまうのだから、《物》との距離は然程遠くはないのか。しかし、意識を備えている《他者》は、《物》とは異なり、別の意識の持ち主である《私》が発する眼差しや思惑を撥ねつけ調和を拒もうとする。生は希望のない徒労のようなものなのか。冒頭の死体処理室の描写が妙に美しく感じられ、アニメーションで観てみたいという気持ちになった。 「あれは生きている人間だ。そして生きている人間、意識を供えている人間は躰の周りに厚い粘液質の膜を持ってい、僕を拒む、と僕は考えた」 □「他人の足」 物語の冒頭、脊椎カリエス療養所は、少年たちにとってまるで母の子宮であり、彼らはその羊水のなかを揺蕩っているような、生活への不安も「健常」への強迫観念もない、無時間的で、重ぼったく惚けたような安逸に包まれた、或る種のユートピアのように描かれる。「僕らには外部がなかったのだといっていい」。しかし、如何なる自閉的な《内部》に退却してみようとも、《政治》から逃れることはできない。《他者》としての学生が闖入して以来、「凡てが少しずつ、しかし執拗に変り始め、外部が頭をもたげたのだ」。そこには《政治》にまつわる欺瞞もあれば、正義の名のもとの全体主義化だって起こり得るだろう。我々はどこにいても《政治》に対して無垢では在り得ない。この意味では、我々には《政治の外部》はない。 世界とは、あらゆる《外部》性の閉包であり、それ故にもはや《外部》の余地が残されていないもの、と云えるのではないか。 「この男は外部から来たんだ、粘液質の厚い壁の外部から、と僕は思った。そして、躰の周りには外部の空気をしっかり纏いつかせている」 | ||||
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当時のギラギラした大江が楽しめます。ノーベル賞作家は読むようにしています。 | ||||
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本書は,表題作の『死者の奢り』と『飼育』をはじめ,6作の短篇が収められている。 高校時代に読んだ『性的人間』と『セヴンティーン』をもう一度読みたくなり,それなら大江健三郎の初期の作品を読んでから再読しようと,本書を読み始めたが,ページをめくればめくるほど茫然とした。 情け容赦ない残虐な描写は一向に構わない。しかし,作品の舞台となっている戦中・戦後直後における日本人のコンプレックスと極度の対米感情の悪さはいただけない。作品に登場する米軍兵は決まってひどい役回りだ。本書を読んでいると,耳にタコができるほど聞かされた祖父の愚痴が蘇ってきた。 | ||||
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死体処置室のアルバイト学生「死者の奢り」、拿捕された外国人兵士をペットと化す少年「飼育」他、人間の恥部をさらけ出したような、読んでいて厭な気分にさせられる作品集。 嫌悪感を覚えながらも、心の行き場のなさを突き付けてくるような、言い表しようのない力強さを持っている。 「飼育」は、隔絶された村落を舞台に、拘禁された黒人兵への少年の異様な愛着が一変するシーンが鮮烈だ。劇薬に近い幕引きとなるこの物語は、ビルドゥングルロマンというべきものであり、少年の姿に諦観や諦念という言葉を想起する。 | ||||
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短編集で、はじめて大江健三郎読みました。 面白いのもそうでもないのもありましたけど、全編通して何度出てきたことか 「セクス」wwwwwwwww セックスというか「性」の表現何だろうけど、 田舎者みたいでウケました | ||||
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チョコレートのように濃厚な言葉と、こころの海。非常に身近な行為や感情によって発生しているはずの体や心の変化を、それを初めて経験する子供時代に帰ったかのように、常に再認識させられる。このようなコンテンツを手に入れられる、いや、拝見できること自体に喜びを感じる。一方、書き手から見た場合、非常に高く硬い壁なのではないかと感じる。再現する、近いものを作る方法に全く想像ができない。 | ||||
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大江さんの初期作品ですが、興味ぶかい短編ばかりで、面白く読めました。 | ||||
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最高に面白かった 特に 「他人の足」と「人間の羊」が良かった 読後感は悪いが、現実の社会の覆い隠されている部分を ばらして、がっつり見せつけられたような。 それはまぎれもない真実という感じで 教訓を与えてもらえたような読後感がある | ||||
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初めて読んだ大江作品です。 一発目の「死者の奢り」でいきなり衝撃を受けました。 その場に居合わせているような臨場感。濃褐色のプールに漂いひしめき合う死体。変色しつつも引き締まり、しっかりと形を保つゴムのような弾力を伴う死体。そんな映像が鮮明に浮かんでくるのです。文章を読むことで、ここまで鮮明な生々しい映像が浮かんできたのは初めての経験でした。また活字を読むことで、ここまで明確に嗅覚を刺激されたのも初めてです。 | ||||
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私が記述したいことは、他のレビューに書いてありますので、 芥川賞の受賞作「飼育」の登場の仕方を紹介します。 大江健三郎は、サルトル流の実存主義者であった。 落下傘(パラシュート)で降りてくる黒人兵。それは、大江健三郎だ! かつて見たことのない文壇の登場の仕方でありながら、芥川賞のみ ならず、のちに、ノーベル文学賞を取り、海外に翻訳され、羽ばたいた! | ||||
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大江氏の作品を読んでみたくなり、初めて読んだ本。 芥川賞受賞の「飼育」の他個性的な短編が収録されている。 戦後の日本と外国兵が登場してくる作品が多く時代を感じさせる。 これらの短編は読んでいて、雰囲気がふと自分が夜寝ている間に見る「悪夢」に似ていると思いついた。 結末があやふやな目覚め感がどうも「不安定でぎこちない」、「すっきりしない」というレベルの悪夢に似ている。決して寝汗だくだくの「悪夢」ではない。 そこが現実に近い「リアル」を感じさせるのではないでしょうか。 大江氏の作品は理解が難しいとよく聞くが、 私的にはその次の「悪夢」を読んでみたくなった。 | ||||
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『死者の奢り』 『他人の足』 『飼育』(第39回芥川賞) 『人間の羊』 『不意の唖』 『戦いの今日』 の六篇に江藤淳の解説を加えた短篇集である。 全篇に共通して「ふとした弾みで同じ空間に放り込まれた者同士の諍い」 「立ち止まって沈思黙考することのない文体」「気持ち悪くなるような生々しい肉体描写」が採用されている。 この作家は性器のことを「セクス」と呼ぶのを好むらしい。 小難しいことを考えてウンウン唸る訳でもなく、文体や描写がそのまま思想となっているように感じられる。 人間の動きを滞らせずにグイグイ突き進ませる作風は、平成の今でも、新しい文学的可能性に見えると思う。 | ||||
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はじめて読んだのは、たしか十代最後の年。大学1年生でした。 あれから20年も経とうとしているのに、 いまだにあのとき胸に刺さったトゲが抜けません。 生涯にわたって読者の人生に刺さり続ける小説。 大江氏の作品には、そんな圧倒的な物語が多いですね。 この1冊もそうです。 | ||||
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大江健三郎の作家デビュー期の作品集。初期からどれだけ完成された才能だっかがよく分かる完成度の小説ばかりだが、これらの作品は終戦時から朝鮮戦争時までを舞台とし、米兵や日本軍だけでなく、頭でっかちなインテリ、ひたすら沈黙している一般大衆などへの嫌悪感がストレートに書かれている。この「嫌な感じ」の底に流れる性欲の見せ方が本当に汚らわしくて巧い。 今では戦後民主主義の礼賛者としてカリカチュアライズされている作家ではあるが、この若き日の作品集を読むと進駐軍が象徴するアメリカへの反感も濃厚であり、この点が興味深かった。政治的な小説ではあるんだけど、ある固有の主義やイデオロギーに根ざした主張ではなく、もっと根源的な人間の嫌らしさと政治性に対して表現を試みた作品集だと思う。そして、そういった態度表明が大江にとっては実存主義を生きるということだったのだろう。 | ||||
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大江氏の処女作及び芥川賞受賞作を表題として、六篇の短篇から成る。弱冠二十三歳の若さにして、恐るべき程に純度の高い文体で綴られる戦中戦後における被支配下にあった日本人の在り様の、エロチシズムを孕んだ鋭敏な描写は素晴らしい。羞恥や屈辱の心境をこれほどまで痛切に表現しうる才覚に、感服しました。 | ||||
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大江健三郎は私にとってあまり好きな作家ではないし、彼の政治的な傾向にも同意しかねる部分が多いのだが、彼の作品群が極めて高い質を誇っているのは疑いの無い事実だと考えている。本書を読み、あらためて大江の才能に圧倒された感がある。 本書に収められた短編はいずれも戦後、あるいは戦中の日本の閉塞感を描いたものである。当時の日本の政治状況を何気なく小説に盛り込ませることでシナリオにリアリティを持たせることで、読者を小説が描く閉塞感を追体験するように導くことに見事に成功している。動揺を受けずに本書を読み通すことができる人はいないのではないか。激しく心を揺さぶるものが文学だとすれば、本書は私が随分久しぶりに読んだ文学だということになる。 特に、米兵とのつながりを描いた作品群は極めて秀逸。米兵による安全を享受してきた戦後日本、そして日本人の中に潜む、屈折した感情、歪みを見事に描き出している。大江が描いている日本、そして日本人は、決して過去のものではないのである。 | ||||
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『死者の奢り・飼育』です。 ノーベル文学賞の大江健三郎にとっての出世作である『死者の奢り』、芥川賞作『飼育』を含む短編集です。 大江というと、左がかっている、ということで毛嫌いしている人も多いかもしれません。 しかし、この作品集は、特に右とか左とか関係なく、普通に人間というものを掘り下げて描いていますし、妙に哲学的で難解ということもありません。少なくとも、どういう話の流れなのか、はちゃんと分かります。作品自体が、単純に読んで面白いです。 『死者の奢り』は大学生が死体処理室のバイトをして苦労する話。 『飼育』は、空から落ちてきた黒人兵を村人達が「飼育」する話。 『人間の羊』『他人の足』も良いです。 文章は、かなり硬くて読みにくいですし、各作品の舞台が戦後ちょっとくらいなので、戦争の影を引きずっている部分は多々ありますけどね。 | ||||
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タイトルである「死者の奢り」「飼育」はもちろん、それ以外の四篇も見事に引きこまれました。憤り、悲しみ、絶望、空虚といった複雑な人間の感情がそれぞれ見事に織り込まれており、人間のちょっとした仕草や表情や情景に対してたくみな比喩を用いています。例えば「汗」ひとつを表すにしてもとてもねちっこいし、いやらしい。身体に関する描写は嫌というほど細かく頭にまとわりついてくる感じです。そしてそれぞれの読後にスッキリといった気持ちはとてもじゃないけどおきない。じわじわと内面深くに響いてくる。 全体を通じて、戦争やアメリカ兵に翻弄されるストーリーが主体ですが、それは著者自身の体験であり、同時に何かしら屈辱を感じさせる重たい雰囲気は、今ではうかがえない敗戦にうちひしがれた社会とそこに生きる人々を見事に体現しているものと思われます。 | ||||
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