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ブラックバード



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【この小説が収録されている参考書籍】
ブラックバード (ハーパーBOOKS)

ブラックバードの評価: 3.75/5点 レビュー 4件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.75pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(4pt)

誘拐者に愛情を感じてしまうほどヒトは一人で生きていくことは難しい

2008年に殺し屋に乱射現場から連れ出された8歳の少女と殺し屋の10年に及ぶロードトリップと少女の”成長”の物語。精神の荒野を生き抜き、もはや通常の生活ができない怪物に成長する少女の誘拐者に対する愛情が哀れである。
 この小説を読みながら、「人が殺したかった」といい、少女を刺殺した最近の中学生の事件を思い出してしまった。倫理観が育っていない子どもには読んでほしくない本である。
ブラックバード (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:ブラックバード (ハーパーBOOKS)より
4596541205
No.1:
(5pt)

孤独な魂たちの壮大なる実験小説

犯罪者と少女の物語。いくつか思い当たるその手の映画がある。『レオン』。『ペーパームーン』。本書は、それらの映画と共通した風を感じさせる。少女の心の荒野。愛情に植えた小鳥のような心象風景。そして破天荒だが愛すべき存在として自分が頼るべきオヤジ、または父親的存在。

 この物語での父親役は、職業的殺人者である。否。そもそもがサイコパスの殺人鬼である。8歳の少女と、この男の出会いは乱射現場。卵アレルギーのエディソン・ノース(おそらく偽名)は、マヨネーズを入れたハンバーガーに抗議したレストランで店員の対応に腹を立て、銃を乱射しまくる。なぜか泣いていた少女クリスチャンを連れ去る。二人の物語の幕開け。クリスチャンは<Xチャン>とエディソンに呼ばれる。

 およそ10年の道行き。北米大陸を東へ西へと移り行き、異常者を使いまわす暗黒組織らしきものとの駆け引き、闘争、逃走に明け暮れる。元はその組織の一部であったエディソンは、少女Xチャンをも巻き込み、殺伐とした世界の同居人として、育てあげる。二人とも半端ではない危険に晒される。文字通りの満身創痍。

 そもそも二人ともに満身創痍でスタートした人生という共通項を持つ。親に迫害され追いつめられた幼少期。男は父を殺し、少女は家に帰る意志は全く示さない。そんな二人のロード・ノベルだ。

 国家レベルでの陰謀が、暗殺者たちを掻き集める。異常者たち。冷血。残酷。無慈悲。徒党と裏切り。疑心に満ちた油断のならない日々が物語を占有してやまない。タイトルのブラックバードとはこの正体のつかめない組織のことだろうか。カラスの群れではなくメドウラーク。それとも二人の不安を象徴する何者かであろうか。

 男と少女の会話いつも行き違っているかに見える。それでいながら心に届き合うものが幽かに感じられたり、そうでなかったり。困難な話題と行方知れぬ意見交換。哲学的と言ってもいいくらいの会話。時には感性をぶつけ合う。ストレスと警戒心に満ちた日々が続く。

 ゲームデザイナーである作者マイケル・フィーゲルは、この作品を1999年に書き始め、2017年に出版させた。18年を費やして少しずつ書き溜めていった壮大なデビュー作である。小説の中で経過する時間は10年。エディソンは徐々に歳を取り、8歳の少女は18歳に成長する。男と女の関係ではなく父と娘のような疑似家族と言える関係。それでいながらお互いが必要な。

 状況小説と言おうか。実験小説と言おうか。その状況がドラマティックであり、この状況を仮定とした実験小説とも言える。そこが何よりもぼくの趣味である。形而上的小説のようでもある。哲学的な考察を繰り返している二人のようにも見える。決着点は最後に訪れるが、未だすべては続いてゆくようにも見える。続編が書かれてもおかしくないように見える。現在執筆中のものは他の物語らしい。またも実験小説の気配。

 独り立ちしたXチャンにもいつか再会してみたい。そんな愛情を持たせてしまうキャラ中心の物語。ぼくは人間を軸にした物語が好きだ。この作家の文体が好きだ。ポップでいかしていて、リズミカル。それでいて妙に潔い。エディソンが好きだ。Xチャンが好きだ。これだけで十分ではないか。
ブラックバード (ハーパーBOOKS)Amazon書評・レビュー:ブラックバード (ハーパーBOOKS)より
4596541205

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