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ツリーハウス



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【この小説が収録されている参考書籍】
ツリーハウス
ツリーハウス (文春文庫)
ツリーハウス

ツリーハウスの評価: 4.48/5点 レビュー 54件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.48pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全54件 41~54 3/3ページ
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No.14:
(4pt)

過去から未来につながる家族の絆に感動!

祖父も祖母も決して過去を語らなかった。だが、祖父の死をきっかけに、祖母ヤエは過去を
振り返る旅に出る・・・。
藤代泰造と田中ヤエは、戦時中の満州で出会った。だがそこは安住の地ではなかった。
敗戦とともに命からがら日本に戻ったふたりは、生きるために必死に働く。子供が生まれた。
自分たちの店を持った。そして、幸せも不幸もたくさん味わった。泰造やヤエが、なぜ過去を
語らなかったのか?いや、ふたりは語らなかったのではない。語れなかったのだ。いったい
どんな言葉で、思い出すのもつらいこの壮絶な体験を語れるというのだろう。
戦争、終戦、そして昭和から平成の現代へと移り変わる中での親子三代にわたる物語は、実に
壮大だ。家族には家族の歴史がある。過去から現代、ずっとつながった家族の絆。そこに自分も
いる。この作品を読むと、その当たり前のことに新鮮な感動を覚える。作者の熱い思いが込め
られた、読み応え充分の面白い作品だった。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.13:
(3pt)

「逃げる」ことを選択した家族の物語

新宿で翡翠飯店と言う中華料理屋を営む、藤代家の70年に亘る三代の家族の物語。

昭和15年に満州開拓団の一員として満州に渡った藤代泰造は、開拓民としての生活に耐え切れれず移民村から脱走して新京に逃げる。そこでカフェ「バロン」で働くヤエと出会って、お互い好きでもなかったにも拘らず、運命に流されるまま一緒になる。二人は戦後ソ連軍の侵攻から逃れるために、日本に逃げ帰り、貧困の中で生きるために必死で働き、中華料理店を開いて子供を育てる。

本書では、この二人の孫の藤代良嗣(よしつぐ)から見た現在の藤代家の様子と、この二人が子供を育て、その子供たちが成長してそれぞれの人生を歩むという時系列的な系譜が交互に描かれる。

この家族のメンバーに共通するのは、ヤエと泰造の子供と孫たちが皆、現在の暮らしに満足しておらず脱出しようとするのだが、結局はうまく行かずまた戻ってくることだ。

主体性に乏しいようにみえるこの家族に軽い苛立ちを感じながら、それでもこんな生き方もあるのかも知れないと考えさせられる一冊であった。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.12:
(5pt)

戦争を知らないからこそ、読んでよかった。

藤代家の一員になってみたい…と思うほど、ぐいぐい引き込まれる
昭和と平成をつないでいる家族のお話です。

藤代家の誰かが誰かを時代の出来事と重ねながら見ている。
時代が悪いとか、言い訳も後悔もせず生きる人。
「戦争体験」は今の私たちとは見てきた世界が違う。
理解できない感受性を持ちながら、日々を重ねている。
この本を読み終わって、自分の祖母にも色んな話を聞いておきたかったと
思いました。

今、東日本大震災が起きて、2万人以上の人が「生きること」ができず、
一体、どう考えてよいか分からない。
答えではないが、答える見つける手掛かりがあるような
1冊なのかしれません。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.11:
(4pt)

取り立ててドラマのないごく普通の家庭を通して時代を見る

最初は、小説だから、何か事件らしい事件が起こるのかと期待して読み始めました。
しかし、この小説は、戦争中から現代までの壮大な時代を背景に書かれているにも関わらず、
たったひとつの家族の、それを取り巻く世界を、ゆるゆると、激しい熱情もなく、どことなく冷めた視点から、
書いています。
だから最初から最後まで、感情移入がしずらく、正直、エンターテイメント的には、それほど「面白い」とは私は思いませんでした。

しかし、物語のところどころで、私たち現代人の、何とも言葉にしにくい平和ボケについて、
その本質をついてくるような、鋭く、すっと心に食い込んでいる文章があって、
いつまでも尾を引くようなところがあります。
私たちの世界とはかけ離れた、救世主のようなヒーローが活躍するドラマティックな歴史の書かれ方はよくありますが、
歴史というのは、本当は、この小説に出てくるような、私と同じような、何てことない人たちが、
言葉にしにくい希望や閉塞感を抱えて、ただ生きていた、その人生の集まりなんじゃないかなという気分になります。

それはとてもつまらないことのようで、でも、今こそ私たちがしっかりと感じるべきことだと思います。

戦争も、貧しかった時代も、平和や自由のために戦ってきた世代も、遠い国の話じゃなく、
今の豊かな、モノであふれている、生きるに困らない時代に、脈々と受け継がれている。
生きることに必死にならなくても、なんとなく流されるように生き、当たり前のように過保護すぎるほどの
サービスを受けられる現代は、人の意欲も、行動力も、考える力も、どこかでゆっくりと奪っているように思います。

世間をにぎわすニュースも、歴史上の重大事件も、実は意外なほど近くに転がっていて、
そういうものを受け入れながら、今の私たちがあるということ。

忘れたくないです。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.10:
(4pt)

昭和負け組の落語的クロニクル

故郷を捨てたのではなく、故郷から捨てられるように逃げ出した男と女
その2人からなりゆきのように生まれた子供達
その息子の1人と、これまた、なりゆきのように結び付いた女
そしてその男女から生まれ、自分の血族と同じようななりゆき人生を繰り返す子供達
これが、本作品の大まかなストーリー。

終盤になって、人生論的な台詞がポンポン出てくるが、これは落語のサゲでしかないと思う。
そこに感動するのも一興だが、それがテーマなら、いくらでも先達に良作はある。

私には、この話は、むしろ、極めて落語的に感じられて仕方がない。
一つには、立川談志の云う「落語とは人間の業の肯定」というところが、本作では通底している点。
そして、昭和史を背景・ネタにしているが、庶民からの昭和史という作品ではないこと(これは、落語が江戸時代等を背景にしているが、庶民の江戸時代を描くための作品でないことのアナロジー)。
また、ストーリーの顛末は、ストーリーの結実を意味しておらず、数年後には、おそらくはまた、彼ら・彼女らはこれまでのなりゆき人生を繰り返しているだろうということ。

古典落語の大ネタは、噺家によって喜怒哀楽をもたらされるものだが、ストーリー自体は乾いたものであることが少なくないし、人生万歳とか人間って素晴らしいってな月並みな感想を持たせるものではないのが殆どだ。
私は、本作にはそうした安い感動を排したところに、八日目の蝉を描いた作者ならではの才能を感じたのだが・・・どうも、他のレビューを読むと、私が捻くれているのかなと思う(笑)。

あと、「逃げる」ということについては、いま何か分からん「みんな」や「日本」が「がんばろう」「つながろう」と何の躊躇いもなく皆に求める中で、「逃げる」権利を声高にではなく、しかし、強く持つことは意味があると思う。
「庶民」という手垢のついた言葉ではなく、落伍者や底辺に沈んだ者にこそ「逃げる」権利は実感されるべきものだし、感動とは全く違うものとして本書を読み受け止めてもらいたい気がする。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.9:
(5pt)

「逃げる」ことの意味

角筈にある翡翠飯店という中華料理店の当主夫妻、藤代泰造とヤエとその子供たち、孫たち三代の物語である。

表題は息子太二郎が庭の木に作った家を一義的には指すが、実は、泰造とヤエが出会った新京の広場にある大木にもつながっている。

現在に至る家族の歴史と、泰造の死後孫の良嗣がヤエと太二郎とともに満州をセンチメンタルジャーニーで訪れることが交互に描かれる構成も秀逸。

泰造とヤエは、いつも何かから逃げている,従って今いる場所も本来自分たちがいる場所ではないのだ、という感覚を常に抱いている。

それは、家族全員の心の傷になっている、学生運動に打ち込んだ末に自殺したヤエの末っ子基三郎がヘルメットに書いていた「デラシネ」という言葉に象徴されている。

その浮遊感覚は息子や孫の代にも受け継がれ、家族のメンバーの大半は定職に就くことなく、良嗣は、「うちは簡易宿泊所みたいだ」と繰り返しつぶやく。

太二郎をはじめとする登場人物の人物造形がすばらしい。

ただ、デラシネでしかない自分たちが初めて希望を見いだした基三郎という存在(基という漢字は定着できるという希望の象徴)が永遠に損なわれたことから、家族が再生する物語であるなら、「基樹」(ここでも木がでてくる)と名付けられた良嗣の兄の人物像をもう少し書き込んだ方がよかったのではないか、それだけが惜しまれる。
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No.8:
(5pt)

どこのお宅も、ツリーハウス

山もなければ谷もない。
ひとつの家族とその周りを囲む親族の、日常生活。
普通の日々の暮らしの中に、時々現れる様々な事件。
なのに、一気に読み上げてしまいました。
ひとつの家族の、長い長い歴史・・・それはまだ続く。
角田光代の底力を見せ付けられた一冊。
「とにかく生きよう」です。はい。
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No.7:
(5pt)

大傑作

角田光代さんの作品は新作が出版されるたびに読んできたが
いつも進化している。
その進化を目の当たりにできた幸せ。

内容は近代史を含みつつ、角田光代さんの作風らしさを
失わず全く新しい小説となり、心地よかった。
大傑作でした。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.6:
(5pt)

過去があるから今がある。

どこにでもいそうな、ありそうなごく平凡と思える一家の三世代に渡ってのそれぞれの時代、人物像が細かく、
ぶれることなく描かれており、大変長い作品であるのにもかかわらず、ぐいぐい引き込まれてあっという間に読ませてしまう所は、角田光代さんだけあるなぁと思いました。

読後も大変爽やかで、平凡と思える自分の人生、家族の歴史も実はかけがえのない、ここにあるべき現実は過去があったからこそ、と前向きに思える大変いい作品に出会え、久しぶりに読書から充足感を味わえました。

他の方も書いていらっしゃいますが、ここに描かれているのはごく普通のどこにでもありそうな家族の歴史ですが、
それぞれの時代に実際に起こった事件、出来事などと上手にリンクされて物語が進み、それぞれの人物像やその生き様等がよりリアルに感じられます。

物語の最後の方の場面で、孫の良嗣が祖母に長い人生で失ったものと、得たものについてどのように考えているのかを尋ねる場面があり、その場面での祖母の言葉
「後悔したってそれ以外にないんだよ、何も。私がやってきたことがどんなに馬鹿げたことでも、それ以外にはなんにもない、無、だよ。だったら損だよ、後悔なんてするだけ損。それしかなかったんだから」

という言葉が大変心に染みました。

人生には、もし、という仮定はあり得ない、その時代、その時々に起こる出来事を受け入れていくこと、一見流されているように見えても、そうすることに意味があり、先の未来に繋がっていくと自分なりに解釈しました。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.5:
(5pt)

不思議な充実感を味わえる作品

久々にガツンとくる、読み応えのある小説を読みました。
家族3代の流れを記しながら、「敗戦から立ち上がり必死に頑張って生き延び、戦後の復興に乗っかった世代」「経済成長とともにバブルに向かった世代」「満たされた幸福の中でどんどん浮遊して行く世代」という“日本人の3段階”を、その家族の3世代に見事に投影させています。
登場人物のキャラが皆際立っていて身近にいくらでもいるような人物像だったりするために、思わず吹き出しそうになるコミカルな描写もあります。
全体的なタッチが非常に柔らかく、ゴツゴツした重厚なイメージはありませんが
読み終わった際に不思議な充実感を味わえる素晴らしい内容です。
終盤に現れる「希望」という言葉が、夜空に燦然と輝く星のように感じました。
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No.4:
(5pt)

ある家族の物語

新宿にある中華料理店の親子3代にわたる話ですが、主題がしっかりしており、さすが角田光代だと思いました。

前半の、祖父、祖母の満州での話から、終戦にかけての話は、引き揚げ者の苦難を描いて素晴らしかったのですが、
その後、その息子、その孫に話が発展していっても失速せず、その時代時代の事件や社会現象を織り交ぜながら描ききって
芯が通ってるな〜と感じました。

これだけの話だと、内容が散漫で長いだけの小説になりがちですが、そんなことも一切なく充実した内容と、文章の素晴らしさで
読みました。

大変いい小説でした。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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No.3:
(4pt)

上手い人物描写

角田光代さんは人物描写が実に上手い。
登場する一人一人が「あぁ、居るよねこういう人」と目に浮かび、魅力ある人物となります。
日本の戦後史を網羅するように次々と家族の誰かの身の上に起きる出来事が、ちょっと詰め込み過ぎかなという気がするので減点1ですが・・・。
とにかく面白く、読みやすく、こんなに分厚い本なのにあっと言う間に読み終えました。

ただ、重箱の隅をつつく気はありませんが、どうしても気になって仕方がない事があります。
私の誤読であったらごめんなさい、どなたか教えてください。
慎之輔が若い頃同棲する美津江の生い立ちですが、彼女は多分慎之輔と同年代ですよね?昭和20年前後の生まれだと思います。父親が戦死しています。弟妹が5人、母親は父方の祖母と同居、とあります。
母親が再婚しない限り、戦死した父親の子どもがこんなに居るのはおかしい。再婚したなら、父方の祖母と同居するだろうか?これがひっかかって仕方がないのです。
この小説の面白さから言えば些細なことですが、謎を解きたいのです!
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No.2:
(5pt)

普通の日本人を描いたのに胸に迫る筆力

葬式になると、いつもは感じない血族や親族のつながりを感じたり、だれかの思いがけないエピソードが語られたりする。

 満州から引き揚げてきた祖父と祖母から始まった根無し草一族。新宿のさびれた中華店「翡翠飯店」の三代にわたる物語。
大人物も大悪人もいない。ただ、流されて生きている。だけどここには日本という国のすべてが書かれている。
 大戦、満州引き揚げ、戦後、学生運動、浅間山荘事件、マンガ文化、バブル、コギャル、オウム真理教…よくもこれだけこのボリュームに自然に盛り込めたものだ。角田光代はどえらい作家になった。大傑作だ。
 ツリーハウスみたいな危なっかしくて隙だらけの子どもの秘密基地。空から見たら、どんなに立派な家庭も一族も、ツリーハウスや翡翠飯店のような危なっかしいものなんだろう。
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No.1:
(5pt)

世代を超えて伝えられるメッセージの意味

本作は、翡翠飯店に住む三世代の家族の年代記です。
物語は、祖父の死をきっかけにして孫の良嗣が祖母と叔父とで中国を巡るパートと、戦時中の祖母が祖父と出会い、平成の現在へと至るまでを描いたパートが交互に進行していきます。

良嗣にとって謎の多かった家族の背景が徐々に明らかになるとともに、現在の家族の言動や態度の理由が分かってくる過程は、展開が巧みでミステリーの要素もあり、一気に読み終わりました。
本作に没入できた最大の理由は、戦後復興から2010年までの日本の史実を織り交ぜているからではなく、家族の人間描写が生き生きとしていて言葉や存在そのものに説得力があるからだと思います。作者の硬質な筆致も洗練されていて、最後まで、あざとさが無く好感が持てました。

昭和・平成史に残る数々の出来事が背景にあっても、 描かれているのは、あくまで、一般庶民の日常です。ですが、その日常の大切さがこの作品からは伝わって来ます。
年代・性別を問わない普遍的なメッセージ性を含んだ傑作であり、日本が苦境にある今こそ、お勧めしたい一冊です。
ツリーハウスAmazon書評・レビュー:ツリーハウスより
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