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騎士団長殺し



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騎士団長殺しの評価: 3.46/5点 レビュー 721件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.46pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全407件 201~220 11/21ページ
No.207:
(5pt)

2回目、突入です。

この読後感、個人的には、春樹さんの最高傑作。

春樹さんの物語の井戸が、より深くなっています。

この物語を原語で読める、幸福感。

現実は、小説より奇なり。

いや、小説(物語)により、現実が奇になる
を実感しています。

本気でこの物語を読むと、
現実が変容し、こんな奇妙だけど、
オリジナリティにあふれた現実に
変わるんですね。

僕は、もう少しこの物語が置かれている
共通無意識の中にとどまり、
騎士団長、免色氏といった愛くるしい存在に、
逢いたくて、2回目突入です。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.206:
(4pt)

まず上巻を読んだ感想

ミステリー要素があり、まずまず面白かったです。
相変わらず癖のある描写ですが、嫌いじゃないです。
この第1部で投げ掛けた謎を、どう完結するか楽しみです。
やっぱりこの人の本を読んでいると、作者の見た目からか
なぜか生理的に受けつけづらくなってきてしまいます。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.205:
(5pt)

絵画世界

現実と空想の交錯が良かった。絵を描いて生きていくことのディティールがリアルある話で共感した。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.204:
(4pt)

面白いけど、ちょっと内容が足らないかな。('_')

全編を通していつもの細かい比喩に支えられているけど、
騎士団長である物語の必然性みたいなのが、ちょっと弱い気がしました。
起承転結が足りないというか、上巻・下巻の重さがかなり違うのが気になります。
7年ぶりの長編なので、もっとちゃんとした起伏が欲しかった。
物語がちょっと薄いかな。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.203:
(5pt)

もう一度読んでみます。

わたしはこの本を読んで、よく分からないところもあったけど勇気づけられました。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.202:
(4pt)

夜はふける

主人公は30代半ばの穏やかな男で、奥さんが急に別れたいと言い出したので1人で旅に出る、といういつもの村上春樹パターンから始まったので、やれやれと思いながらしばらく積ん読していたのだが、一旦読み出したら不思予想もつかない展開で止まらない。しばらくすると井戸らしきなものが出てきたので、またいつものパターンかと思ったが仏教的なところがちょいと違いどんどん話に引き込まれ、夜もふける。おしゃれで危険な香りのする男が出てきてこれはノルウェイの森の五反田くんに似てるなー、海に飛び込んで死ぬなよと思いながら上巻を一気に読んでしまった。ドキドキワクワクしながらも、ん?結局は風呂敷は閉じれたんだっけ?とか思いながらも、なんだかんだで久しぶりに物語の楽しさを思い出させてくれた本であった。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.201:
(4pt)

これが村上春樹か!

初めての村上春樹。

色んな人が村上春樹っぽいパロディ文章を書いているが、本物はそこまでではない。と思った笑

内容については、たぶん良くある村上春樹的なストーリーなんだど思う。

主人公はちょっと変わった人物。色々な出来事があった。

現実を超越した出来事があり、それが何かを示唆しながら物語が思ってもみない方向に進んでいく。

第二部を早く読みたい!
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.200:
(5pt)

多分、傑作な本

村上氏を昔から読んでいたものです。私も『穴』に入ろうと、つまり、ユメなのか夢なのか、しばらく読後感は動くことができなかった。ところで『現実』ってナニ。64で終わったのか、【第2部おわり】、とは?
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.199:
(5pt)

じっく読む。現実と非現実の境目。

毎日寝る前に1,2章ずつ読みました。じっくり、展開を焦らず、1つ1つの章にひたりながら読むのがオススメです。不可思議な出来事が多く起こる中、少しずつ現実と非現実の境目が分かりづらくなるような気持ちを読み進めれば読み進めるほど体感できました。

作品に触れる上で私が意識するのは、「まずは受動的になること」です。なにか自分の中に収まったものを積極的に作品に求めてしまうのは筋違いかと思います。レビューを読んでの感想です。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.198:
(5pt)

素晴らしい読書経験

この作品の1・2部を一気に読み終えた直後の感想は、素晴らしい読書経験をしたということに尽きます。
人間は猫やカラスと違って感覚的世界に張り付いて生きているのではなく、イデアとかメタファーとかいう面倒なものに取り憑かれ、現実と非現実との境界は曖昧で、 真実も正義もどこまで普遍性を持つのか確かではない世界に生きています。それらに一応の境界線を引いて分かりやすく生きるのが日常生活というものですが、この作品は、不思議の国のアリスのように、その境界線を取っ払って非日常の世界を体験させてくれます。
画家であるこの作品の主人公は、人物の深層に隠れているものを取り出して絵に表現しようとします。人工知能の手法の深層学習が、画像認識において、画像の特徴を深層から取り出すように。それはまさに作者がこの作品において意図したことを象徴的に表していると思います。
旧作「国境の南、太陽の西」では、主人公は幼い女の子の父親になりましたが、妻も子も捨てて幼馴染の不倫相手にのめりこんでいこうとします。しかし不倫相手が突然姿を消してしまい、他に行くところもなく、主人公は家庭に戻ってきます。「騎士団長殺し」は、いわば「国境の南、太陽の西」の語り直しではないかとも思われます。イデアとメタファーの力を借りて、主人公はより健全な形で家庭に戻って来られたのではないでしょうか。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.197:
(5pt)

刺さる作品でした。

ツッコミどころは多いし、難解なところも多い。
おそらく、外国人には伝わらないニュアンスは、これまでの作品以上に多い。しかし、個人的には刺さる作品でした。ねじ巻き鳥クロニクルと双璧な傑作。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.196:
(4pt)

そんなに悪くはない

皆さんの厳しいレビューの気持ちもわかります。
確かに第1部のラストがかなり期待感を高めるものだっただけに、
それに応えるだけの盛り上がりがあったかというと、不満が残る感じではありました。

おそらく「7年ぶりの長編」という宣伝文句で、「1Q84」や「ねじまき鳥」と同レベルか越えるものを期待して読んだら
(僕もそうですが)
それはできていないというのが、確かです。

でも!
それをもって村上春樹の今を全否定ってのは、ちょっと違うような気もします。

おそらくこれは、「多崎つくる」や、「女のいない男たち」の系譜の通過点ではないかという気がするからです。
むしろ中篇を書くつもりが意外に伸びて長編になった、くらいのものではないかと。
到達すべきゴールはまだ先にあるというか。
(まぁそういう弁護の仕方は、適切ではない気もしますが)

僕が考えるに、
騎士団長という存在が、途中から何かユーモラスなものになってしまったことが失敗だったように思います。
イデアが現実化する、心の中の考えが、現実に人間を影響を与える存在になる。
というのは、偏った考え方や凝り固まった思いが、政治的な力となって力を持って現実世界を支配しようとしている今、
かなり重要なテーマであるように思いました。

むしろ、そういった考えや存在とどう対峙するのか、みたいな方向に物語が進むように思い、期待していました。
でもあまりその方向での新たな局面はなかったですね。

個人的な思いや思索を徹底的に突き詰めていくことで、普遍性や現代性に到達するのが村上春樹の醍醐味だとすると
妻や妹への思いとして描かれたのが、結局や妻や妹への思い以上ではない結末になってしまったのは
うーん、やっぱり残念でしたね。

でも、興味深いテーマが投げかけられたことは確かですし、
これほど平易な文章で、精神や心理の奥深くまで旅するような小説を書けるのは彼しかいないのですから、
次作に期待しましょう!

いやほんと
村上春樹の新作を楽しみにすることができる時代に生きていることの幸せを忘れてはいけません。

(彼をけなして商売するような本を書いてる人にも言いたいっす)
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.195:
(5pt)

2部になり物語はアクセルを踏んだかのように急加速する。まるで信号が黄色に変わった時の自動車のように。

1部はまるで横断歩道を渡るおじいさんのようにゆっくりと落ち着いた展開だったので私も2週間かけてゆっくりと読み進めた。しかし2部になるととたんにスピード感が増して途中で読むのを中断することがとても難しかった。さすがに一日で読むことはできなかったがそれでも3日で読み終えた(私はそんなに長時間本を読むことはできない。)。
 とにかく楽しく読めたと言うのが感想だ。私としては「59」で終わりとしておく。「60」以降はいつもの蛇足部分だった。ねじまき鳥の3部、1Q84の3部、つくるの後半。いつものことだ。考えて見ればなんだって絶頂の後にはつまらない後片付けがあるものだ。登山の時の下山、食事の後の皿洗い、セックスの後のピロートーク。
 読後になにか残るか。というと、こういう本を読んだことが人生の何かに影響するのは本当に随分後になってからなんだと思う。何かを求めるくらいなら素直に哲学書を読めばいい。
 集大成的な本にも思えたけど数年後にまた長編を読めたらうれしいなと思う。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.194:
(5pt)

「騎士団長殺し」を読んだら「ねじまき鳥」の時間/復讐の関連性の謎が一個解けました

ご挨拶

全国の村上主義者のみなさん、こんにちは。

「騎士団長殺し」が2017年2月24日に発売されてから、ハルキストがどうのこうの、って話題になってますが、地下に潜る村上主義者は意に介しませんよね。実は今回長年謎のまま回収されていなかった個人的な疑問が、「騎士団長殺し」を読んでいる途中で一つ解けましたので、もしくは、解けたような気がしましたので記事にしてみました。早速行きます。

この名言を覚えていますか「時間をかけることを・・・」

「ねじまき鳥」で頼りになる叔父さんのセリフがありましたよね。

「時間をかけることを恐れてはいけないよ。たっぷりと何かに時間をかけることは、ある意味ではいちばん洗練されたかたちでの復讐なんだ」
私は本日「騎士団長殺し」を読むまで、このセリフの言いたいこと、意味合いが分かりませんでした。もちろん、これはあくまで私個人の疑問であり、とっくに得心のいっている方もいるでしょう。ただ、少なくとも私の中ではうまく回収できずにいたので、今回の「騎士団長殺し」にはひそかに期待していました。
流れとして「ねじまき鳥」系の井戸を掘っていく話なのか、それとも「カフカ」的なカラフルでファンタジックな話なのか。私は前者を希望していたのです。2月24日書籍が届き、第1章を読み始めたところ希望は叶えられた、と確信しました。

The best revenge is to live well.

洗練された形の復讐、と聞いて私が思い浮かべるのは英語の慣用句。

The best revenge is to live well.
です。このフレーズには合点がいっていました。誰か復讐したい人がいたとしても、それを直接遂げることは社会的に問題が発生します。例えば、端的な話その相手を物理的に消し去ってしまうと、こちらの心の中に懺悔が残ります。おまけにこちら側には社会的な地位が損なわれてしまいかねないリスクがあります。復讐するつもりで、自分が不幸になってしまっては相手の思うつぼですよね。物理的に殺傷ではなく、何がしかの影響力を行使して社会的な抹殺を試みたとしても同じこと。自分の中にしこりが残ってしまって、復讐を遂げた相手のことが自分の心から離れないとすれば、それは相手にまだ拘りがあり翻ってこちらの心的負担が増えていることになります。

だから、よく生きることが、最高の復讐になる。

つまり、自分が充分満足するような形で生きていて、その復讐したい相手さえも綺麗さっぱり忘れることができれば、全く意に介さないことができれば、それが最高の復讐になります。復讐という気持ちが消えてしまうこと、そして他人も羨むくらいの生活が送れれば、復讐の相手も「くやしい」と思うかも知れない。思わないかも知れない。どちらでもかまわない。そう、それこそが

ある意味ではいちばん洗練されたかたちでの復讐
となるのです。洗練というのは、自分が不幸になってしまうようなリスクがない、ということですね。社会的な地位を脅かされることがない洗練された方法。それがto live wellなのだ。そこまでは理解できていました。ただ、その前の部分、

「たっぷりと何かに時間をかけること」
との結びつきがよく分からなかったのです。

【騎士団長殺し】p71に出てくるフレーズ

私はまだ「騎士団長殺し」を全部読んでいません。1Q84以来長編は7年も待たされていたのです。じっくり読み進めたいです。しかし、第1部「顕れるイデア編」を読み始めて「ねじまき鳥」系の流れを確認できたところで、心おどってドキドキが止まりません。そこでp71まで貪るように読んだところ、こんなフレーズがありました。

とにかく、どこかで流れが間違った方向に進んでしまったのだ。時間をかける必要がある、と私は思った。ここはひとつ我慢強くならなくてはならない。時間を私の側につけなくてはならない。そうすればきっとまた、正しい流れをつかむことができるはずだ。その水路は必ず私のもとに戻ってくるはずだ。
ここまで読んだとき、長年の疑問が解消されました(少なくとも私の中では・・・ですが)。

to live well(よく生きること)の中身の話

時間をかける、とはto live well(よく生きること)の中身の話なのです。時間の流れを自分の側につけること。ただ生活のために流されていく人生を送るのはなく、内的な充足を得つつ、自分に納得しながら生きるためには時間が必要です。どれだけの時間が必要なのかは本人にしか分かりません。ただ、時間の流れが自分の味方についてくれたとき、つまり自分が内的に求めていることを得られる感触があるとき、そこで初めて、

I’m living well.
と自分に言い聞かせることができるでしょう。仮に復讐したい相手がいるとすれば、自分自身にたっぷりと時間をかけ、時間の流れを見方につけることが、to live wellにつながり、翻って、洗練された形でthe best revengeとなるのです。

疑問を投げっぱなしにして回収しない、という批判

村上春樹の小説には「疑問が回収されず、読者に投げられっぱなしで小説的責任を回避している」などという批判があるようですが、放置ではないのです。小さな声で語られる、良いニュースをこつこつと拾い上げながら、読書再開です。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.193:
(5pt)

春樹ファンでなくても楽しめますよ!

私は村上春樹の作品をそれほど読んでないので、ずっと春樹を読んできた人のような感想は持てませんが、おもしろかった。物語を追いたくて読むのが止まらなくなる。
『1Q84』は登場人物の一人がエヴァのキャラを連想させることもあってか、アニメ風というかラノベの風味がありましたが、こちらはもっとオーソドックス。物語のはじまりの語り口から、江戸川乱歩の『孤島の鬼』の雰囲気を感じましたが、乱歩好きな方なら自然に楽しめるのではないでしょうか。文章がすっきりしていておはなしがおもしろい。また、主人公が絵について考えることが村上春樹が小説について考えることと重なっているのかもしれないと想像でき、読む側にも自分がどう小説を読んでいるかを考えさせるところがあります。
主人公は奇怪な体験を経て一皮むけてあたらしい人生に向かいます。結末に明るい余韻が漂うので、物語世界をくぐりぬけた読者も明るい気持ちになれますよ。自分自身を物語に沿わせて脱皮できるような読書体験ができるんじゃないでしょうか。

「白いスバル・フォレスターの男」が描かれるときは来るのでしょうか? そのためには作家だけでなく、読者の方も耐性をつけておく必要があるのかもしれない。また、それはその存在を認識できていれば十分で、あえて顕在化させなければならないようなものではないのかもしれない。さらに村上春樹が小説を書き続けるとどうなるのか。また、村上春樹ではない作家であれば、別の見解を出してくるかもしれないですよね。そういうお楽しみもまだ先にありそうです。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.192:
(4pt)

本当は怖い騎士団長殺し!

結論から言ってしまうとエンタメ大衆小説としてかなり面白い作品だ。しかし自己喪失気味の登場人物たちがある不思議な出来事をきっかけに希望(自己回復)の端緒を見出すというテーマは多くの作家によって手垢がつくほど使いまわされており、そういった意味での新鮮さはほとんどない。そこに至る経緯にいつもの春樹節がてんこ盛りでちりばめられているだけで、それが他の作家を一蹴するほどの魅力を秘めているかというとそれはあらないと言える。少し残念なのは後半とくに残り100ページくらいからちょっと端折った感じになってしまったこと。春樹氏独特の少し歪んだ世界観(実存世界の)が希薄なことではないだろうか?イデアが出てきた時点でお手上げになってしまった人も今はネットで簡単にソクラテス、プラトンの考えを知ることができるしメタファーについても同様だ。すぐになじむことができるだろう。春樹氏は手練れだしこの小説自体がもしかしたら巨大なメタファーになってないか今検証中である。すっかり術中にはめられている可能性もある。免白氏(この人自体がなにかのメタファー)という考えはいまだに捨てられずにいる。それにしても騎士団長は愛すべき存在だ。座敷童のような、くるみ割り人形のような。どこかでもう一度お会いしたいものである。

読後色々と気づいたことがあったので補筆しておく。先のテーマとは別にもうひとつ重要なポイントを書き漏らしてしまったようだ。そればやはり「誰もが秘めている内なる暴力の再萌芽を認識し速やかに封印せよ」ということではないだろうか。今多くの国々が右傾化し、第二次大戦後長期に渡ってそれなりに維持された平和が危機に瀕していることに異論はあるまい。村上春樹は直接的にではないが、やはりそのことに心を痛めているようであり、警鐘を鳴らさんとしているように見える。作中でもっと危険な人物は誰かと言うと”私”以外にはいるまい。物語の最初でいきなり妻のユズから別れを切り出される”私”だが、ユズは”私”が彼女の中にユズ自身でなく”私”の妹のコミチの姿をみていたことに早くから気づいていたのだ。そして”私”はその妹コミチを飽くことなく抱き続けていた。暴力の根源は”私”であり、当然試練を受けるのも”私”以外にはいなかった。何度も登場するスバルフォレスターの男。”私”の魔の部分としてのメタファー。この絵を完成させれば彼が”私”に置き換わったのだ。まりえを手にかけていたかもしれない(免色にはまりえを手にかける理由がない)・・しかしすんでのところで”私”は試練を乗り越える。単なる自己回復だけではすまない恐ろしさがこの小説にはある。騎士団長を殺す必要があったのはイデアを一度完全に破壊してリセットし直す必要があったのだろうと今になれば思う。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.191:
(4pt)

はじめて、「生身」を感じた。一歩、踏み越えているようだ。

かつて、蓮實重彦氏が、村上春樹氏の小説を「結婚詐欺のようなもの」と評していた。

本作もやはり、結婚詐欺、というかむしろ、離婚詐欺の様相を呈している。とはいえ、これは、決して貶して言っているのではない。

喪失、謎、探索(謎を巡る冒険)、複数のメッセンジャーたちとの出会い、彼らに直感を刺激され、受動的に導かれた先での、内なる邪悪なものとの対峙、そして不意の帰還。

結局、探し求めていたもの(喪失の原因)はどこにもなく、元いた場所に帰ってきながら、そこはもはや、元いた場所とはちがっている。

謎かけにあって、迷い込んだ深い闇の中で、その奥底に、かつてのじぶんじしんを見出し戦い、痛苦を乗り越え、信じ難きを信じる力を獲得すること。

歴史社会的な条件に翻弄され、抗い難くわたしを飲み込んだ暴力を、物語において殺すこと。

とても大切な「父親殺し」が、本作でも行われている。

この種の物語を読むことで、読者は読者じしんの、仄暗い領域に触れるきっかけを得ることには、なるかもしれない。

ただ、村上春樹氏の小説を読む行為においては、生身の人間に出会えず、読後、彼らが確かに存在し、働きかけ、揺さぶりかけてきたというような、手応えが残らないという問題があった(これは、単に、私の問題かもしれないが)。

しかし、この点、本作はちがう。

ネタばれになるといけないので、詳しくは書かないが、タイトルとなった騎士団長殺しのシーンにおいて、今までの村上作品においては、感じられなかった生身の、手応えのある存在を、ごく限られたページにおいてではあるが、強烈に感じることができ、作家は、この数ページのためだけに、本作を書いたのではないかとさえ、思われるほどだ。

イデアの感触。
メタファーの捕獲。

それが、いわゆる人間でないあたりが、村上春樹氏らしいところであり、ある種の読者にとっては、もの足りないところではあり、読後に何も残らないなどと言われる所以でもあるのだろう。

極めて暴力的な、悲惨な事柄について語りながら、麻酔をかけられたように、痛みを伴わず、夢のように展開する。

そういう次元を、一歩踏み越えた、とても読み応えのあるくだりが、本作には、確実にあることは、保証できます。

かつて憑かれたように読み、その後唾棄すべきものとまではいかぬまでも、「ここには、人間がいない。これは、小説ではない。無用の比喩だらけの、読むに耐えない作品」などと失礼にも決め込んでいたけれど、物語の魔力に引きずられて、久方ぶりに憑かれたように読んでみた結果、生身の手応えを、はじめて感じることができ、誤解していたのだなと思いました。

個人的な感想ばかり長々とすみません。

何が言いたかったのかというと、かつて村上春樹が好きでたくさん読んだ、けれどいつしか、その肝心のところに触れないフィクションに耐えられなくなった、さて、新作が出たがどうしようか、と迷っている人がいたら、迷わず買って、読むべきだということです。

村上春樹は、本作で、今までの作品作りにおいて避けてきた(もしくは、語るべき時が満ちていなかった)、彼の大事な部分に触れようとしています。

カフカは坂道が好きだった。だが、そのことを知ることが、その作品への理解を深めると思うかね?

そう本作で、ある存在が、問いかける。

村上春樹氏は、そういうかたちで、人生と作品は無関係だと言っているようにも聞こえるが、じつは、そんなに単純ではないかもしれない。

例えば、狭いところが怖いだとか、深煎りのコーヒーが好きだとか、小さい頃にたくさんの蜂に刺されただとか、友人が自殺してしまっただとかいう過去、生身に起こったことの記憶=想起は、作品と分かち難く結び合わされている、そう作家は、考えているのではないか。

もちろん、伝記的な事実から、作品を読むわけにはいかないし、そもそも伝記じたい、想像上の生でしかありえないわけだけれど。

とにかく。

力のこもった作品です。

確かに、物語じたいは、世間に流布したファンタジー風とも読めるでしょうし、性的な描写もノルウェイの森の末尾のアノくだりから離れず相変わらずではあるし、背景に描きこまれた調度や絵画や音楽も案外王道でいかにも趣味がいい感じで鼻につくし、シンボリックな「穴」の扱いなどもティピカルすぎてなんだかなあというところもあるし、などなど、色々と皆、文句をつけたくなるものだ。ゴッホとか、セロニアス・モンクとか、ど真ん中を行き過ぎなんじゃないのとかね、思うことは、ほんと、色々、出てくる。

しかし、貶すばっかりの人々は、それを超える作品を、同じようなアプローチで、しかしそうした枠組を食い破って、作らないといけないでしょうね。

彼と相いれないゾーンから、彼の作品をこき下ろすのは容易いが、魂のかたち(オートポートレート)を物語によって描きとるというアプローチで、これを超えるのは容易じゃないよね。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.190:
(5pt)

好きです

好きです…村上春樹氏の作品…
“自由な形式”で、“人生の楽しさや面白さ”を表現して下さっているようで、勇気付けられます。
この作品も、いいと思いました。
最後の100ページくらいで“普通の小説”になった感じがして、不満をもって読んだ部分もありました。
しかし、全体を通して見ると、“途中で止められない”という面白さがあったし、最後の最後は、いい終わり方だと思いました。

次も楽しみ…って、数年後? ははは
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.189:
(5pt)

好きです

好きです…村上春樹氏の作品…
“自由な形式”で、“人生の楽しさや面白さ”を表現して下さっているようで、勇気付けられます。
この作品も、いいと思いました。
最後の100ページくらいで“普通の小説”になった感じがして、不満をもって読んだ部分もありました。
しかし、全体を通して見ると、“途中で止められない”という面白さがあったし、最後の最後は、いい終わり方だと思いました。

次も楽しみ…って、数年後? ははは
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
4103534338
No.188:
(5pt)

待ちに待った作品

村上春樹らしいとても面白い作品でした。続編がありそうなので楽しみです。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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