長いお別れ

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

長いお別れの評価:

4.34/5点 レビュー 290件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.34pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全446件 81〜100 5/23ページ
No.366
(5pt)

うーん

やっぱこれはもともと名作ですしね。いいにきまってますよね。映画の方ももう一度作られるといいんだけどな。映画はラストがよくないですよね。ただ、原作にない猫の缶詰買いにゆくところはいいな。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.365
(4pt)

男らしい、の一つの典型

ふとしたきっかけで知り合った男がいた。その男は妻殺害後自殺する(とされる)が、

主人公はこの男になぜか惹かれ、その経緯に疑問を抱き、力強く動いて、万事に立ち向かう。

その過程で、女を惹きつけるが、ジメジメした関係にはならず、後にひきづらない。

正義感あり勇気あり、でも、クールでドライな感じが、読者にウケるのだろう。

終わり方もよかった。その男のために奔走したのに、あっさりと終わりを迎えるというか、

ベタベタな再会を望まなかった。その執着しないところは、男として純粋にかっこいい。

女性的な男が増えている昨今、男らしさについて考えてみるのも一興だ。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1)) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))より
4150704511
No.364
(4pt)

男らしい、の一つの典型

ふとしたきっかけで知り合った男がいた。その男は妻殺害後自殺する(とされる)が、

主人公はこの男になぜか惹かれ、その経緯に疑問を抱き、力強く動いて、万事に立ち向かう。

その過程で、女を惹きつけるが、ジメジメした関係にはならず、後にひきづらない。

正義感あり勇気あり、でも、クールでドライな感じが、読者にウケるのだろう。

終わり方もよかった。その男のために奔走したのに、あっさりと終わりを迎えるというか、

ベタベタな再会を望まなかった。その執着しないところは、男として純粋にかっこいい。

女性的な男が増えている昨今、男らしさについて考えてみるのも一興だ。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集)より
4150002606
No.363
(4pt)

男らしい、の一つの典型

ふとしたきっかけで知り合った男がいた。その男は妻殺害後自殺する(とされる)が、

主人公はこの男になぜか惹かれ、その経緯に疑問を抱き、力強く動いて、万事に立ち向かう。

その過程で、女を惹きつけるが、ジメジメした関係にはならず、後にひきづらない。

正義感あり勇気あり、でも、クールでドライな感じが、読者にウケるのだろう。

終わり方もよかった。その男のために奔走したのに、あっさりと終わりを迎えるというか、

ベタベタな再会を望まなかった。その執着しないところは、男として純粋にかっこいい。

女性的な男が増えている昨今、男らしさについて考えてみるのも一興だ。
長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集)より
B000JATSCW
No.362
(5pt)

原書も並べて読んでみると

何年ぶりかで読み直してみることにしました。一回目と違い、じっくりと熟読です。すると小さな疑問が。

以下に本文(早川書房刊 単行本 p.9)から引用します。( ) 内は私の補足説明です。

 (ホテルの駐車場で酔いつぶれていた男を介抱していると、やってきた)白服(の駐車係)は私の顔を見てにやっと笑った。「お客さん、人がいいね。俺だったらそんなやつは道ばたに放り出してとっとと行っちまいますがね。(中略)このとおり弱肉強食の世界だ。ボクシングで言えば、人はなるたけクリンチに逃げて、いざというときのために力を蓄えておかなくちゃならんってこと」
「そうやってここまでのしあがったわけだ」と私は言った。
 相手はしばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた。しかしそのときには私はすでに車を出していた。

…なぜ白服が怒ったのか?いまひとつ腑に落ちなくて原文を見てみました。

 The white coat grinned at me. ”Okay, sucker. If it was me, I'd just drop him in the gutter amd keep going. (中略) The way the competition is nowadays a guy has to save his strength to protect hisself in the clinches."
"I can see you've made a big success out of it," I said.
He looked puzzled and then he started to get mad, but by that time I was in the car and moving.

 こうして比べて見ると、実は「白服」がかなり無礼な口のきき方で、初対面の主人公に話しかけてきたことが判明します。 sucker とは suck (チュウチュウ吸う=しゃぶる) + er (~する人)、つまり、優しめに受け取れば「大人の体で中身は赤ん坊」ぐっと下品に取れば「☆ンコしゃぶり野郎」です。(昔、名作カルト映画 TWINKLE TWINKLE KILLER KANE のVHS版字幕で見た sucker の絶妙に上手な和訳が「おしゃぶり野郎」でした。実に腕のいい翻訳家です。)白服のひとこと目は「お客さん、~」ではなかったのです。原文のニュアンスでは「おい、青二才、~」ぐらいでしょうか。全く失礼な奴です。さらに彼の発言の中には himself を hisself と言っている部分が見受けられます。かなり教養に欠けているか、または、すごくワルぶって喋るチンピラ風な人物であることがここからうかがわれる仕掛けになっています。そんな無礼極まる奴に、なかばケンカを売られた具合になった主人公は、ハードボイルド(固ゆで hard-boiled 卵が、温泉タマゴと違って、ゆさぶってもビクともしないのと同様に、たとえ目の前で殺人が行われようとも、いかなる非常事態に直面しても動じない精神を備えている)ですから、冷静にやり返すのです。「まあ見たところ、あんたはその《クリンチ》とやらで、まんまとがっぽり成功を手にしただろうからね」つまり、酔っぱらいを介抱するふりをして、悪いやつは、そのすきにつけこんでふところからたんまり何かしらちょうだいするもんだ、あんたもそのクチだろう、と返した訳です。「白服」は、すぐにその皮肉を理解できなかったので、「しばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた」ということだと、私は原文から読み取ります。
 このペースで500頁ちょっとを読み進めるとなると…気の遠くなる時間を要しますね。やはり、この先はサクサクと行く方がいいかもしれません。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.361
(5pt)

原書も並べて読んでみると

何年ぶりかで読み直してみることにしました。一回目と違い、じっくりと熟読です。すると小さな疑問が。

以下に本文(早川書房刊 単行本 p.9)から引用します。( ) 内は私の補足説明です。

 (ホテルの駐車場で酔いつぶれていた男を介抱していると、やってきた)白服(の駐車係)は私の顔を見てにやっと笑った。「お客さん、人がいいね。俺だったらそんなやつは道ばたに放り出してとっとと行っちまいますがね。(中略)このとおり弱肉強食の世界だ。ボクシングで言えば、人はなるたけクリンチに逃げて、いざというときのために力を蓄えておかなくちゃならんってこと」
「そうやってここまでのしあがったわけだ」と私は言った。
 相手はしばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた。しかしそのときには私はすでに車を出していた。

…なぜ白服が怒ったのか?いまひとつ腑に落ちなくて原文を見てみました。

 The white coat grinned at me. ”Okay, sucker. If it was me, I'd just drop him in the gutter amd keep going. (中略) The way the competition is nowadays a guy has to save his strength to protect hisself in the clinches."
"I can see you've made a big success out of it," I said.
He looked puzzled and then he started to get mad, but by that time I was in the car and moving.

 こうして比べて見ると、実は「白服」がかなり無礼な口のきき方で、初対面の主人公に話しかけてきたことが判明します。 sucker とは suck (チュウチュウ吸う=しゃぶる) + er (~する人)、つまり、優しめに受け取れば「大人の体で中身は赤ん坊」ぐっと下品に取れば「☆ンコしゃぶり野郎」です。(昔、名作カルト映画 TWINKLE TWINKLE KILLER KANE のVHS版字幕で見た sucker の絶妙に上手な和訳が「おしゃぶり野郎」でした。実に腕のいい翻訳家です。)白服のひとこと目は「お客さん、~」ではなかったのです。原文のニュアンスでは「おい、青二才、~」ぐらいでしょうか。全く失礼な奴です。さらに彼の発言の中には himself を hisself と言っている部分が見受けられます。かなり教養に欠けているか、または、すごくワルぶって喋るチンピラ風な人物であることがここからうかがわれる仕掛けになっています。そんな無礼極まる奴に、なかばケンカを売られた具合になった主人公は、ハードボイルド(固ゆで hard-boiled 卵が、温泉タマゴと違って、ゆさぶってもビクともしないのと同様に、たとえ目の前で殺人が行われようとも、いかなる非常事態に直面しても動じない精神を備えている)ですから、冷静にやり返すのです。「まあ見たところ、あんたはその《クリンチ》とやらで、まんまとがっぽり成功を手にしただろうからね」つまり、酔っぱらいを介抱するふりをして、悪いやつは、そのすきにつけこんでふところからたんまり何かしらちょうだいするもんだ、あんたもそのクチだろう、と返した訳です。「白服」は、すぐにその皮肉を理解できなかったので、「しばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた」ということだと、私は原文から読み取ります。
 このペースで500頁ちょっとを読み進めるとなると…気の遠くなる時間を要しますね。やはり、この先はサクサクと行く方がいいかもしれません。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.360
(5pt)

清水 俊二氏が一枚上手か

何年ぶりかで村上春樹訳を読み直してみることにしました。一回目と違い、じっくりと熟読です。すると小さな疑問が。

以下に本文(早川書房刊 単行本 p.9)から引用します。( ) 内は私の補足説明です。

 (ホテルの駐車場で酔いつぶれていた男を介抱していると、やってきた)白服(の駐車係)は私の顔を見てにやっと笑った。「お客さん、人がいいね。俺だったらそんなやつは道ばたに放り出してとっとと行っちまいますがね。(中略)このとおり弱肉強食の世界だ。ボクシングで言えば、人はなるたけクリンチに逃げて、いざというときのために力を蓄えておかなくちゃならんってこと」
「そうやってここまでのしあがったわけだ」と私は言った。
 相手はしばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた。しかしそのときには私はすでに車を出していた。

…なぜ白服が怒ったのか?いまひとつ腑に落ちなくて原文を見てみました。

 The white coat grinned at me. ”Okay, sucker. If it was me, I'd just drop him in the gutter amd keep going. (中略) The way the competition is nowadays a guy has to save his strength to protect hisself in the clinches."
"I can see you've made a big success out of it," I said.
He looked puzzled and then he started to get mad, but by that time I was in the car and moving.

 こうして比べて見ると、実は「白服」がかなり無礼な口のきき方で、初対面の主人公に話しかけてきたことが判明します。 sucker とは suck (チュウチュウ吸う=しゃぶる) + er (~する人)、つまり、優しめに受け取れば「大人の体で中身は赤ん坊」ぐっと下品に取れば「☆ンコしゃぶり野郎」です。(昔、名作カルト映画 TWINKLE TWINKLE KILLER KANE のVHS版字幕で見た sucker の絶妙に上手な和訳が「おしゃぶり野郎」でした。実に腕のいい翻訳家です。)白服のひとこと目は「お客さん、~」ではなかったのです。原文のニュアンスでは「おい、青二才、~」ぐらいでしょうか。全く失礼な奴です。さらに彼の発言の中には himself を hisself と言っている部分が見受けられます。かなり教養に欠けているか、または、すごくワルぶって喋るチンピラ風な人物であることがここからうかがわれる仕掛けになっています。そんな無礼極まる奴に、なかばケンカを売られた具合になった主人公は、ハードボイルド(固ゆで hard-boiled 卵が、温泉タマゴと違って、ゆさぶってもビクともしないのと同様に、たとえ目の前で殺人が行われようとも、いかなる非常事態に直面しても動じない精神を備えている)ですから、冷静にやり返すのです。「まあ見たところ、あんたはその《クリンチ》とやらで、まんまとがっぽり成功を手にしただろうからね」つまり、酔っぱらいを介抱するふりをして、悪いやつは、そのすきにつけこんでふところからたんまり何かしらちょうだいするもんだ、あんたもそのクチだろう、と返した訳です。「白服」は、すぐにその皮肉を理解できなかったので、「しばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた」ということだと、私は原文から読み取ります。

 このペースで500頁ちょっとを読み進めるとなると…気の遠くなる時間を要しますね。やはり、この先はサクサクと行く方がいいかもしれません。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1)) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))より
4150704511
No.359
(5pt)

清水 俊二氏が一枚上手か

何年ぶりかで村上春樹訳を読み直してみることにしました。一回目と違い、じっくりと熟読です。すると小さな疑問が。

以下に本文(早川書房刊 単行本 p.9)から引用します。( ) 内は私の補足説明です。

 (ホテルの駐車場で酔いつぶれていた男を介抱していると、やってきた)白服(の駐車係)は私の顔を見てにやっと笑った。「お客さん、人がいいね。俺だったらそんなやつは道ばたに放り出してとっとと行っちまいますがね。(中略)このとおり弱肉強食の世界だ。ボクシングで言えば、人はなるたけクリンチに逃げて、いざというときのために力を蓄えておかなくちゃならんってこと」
「そうやってここまでのしあがったわけだ」と私は言った。
 相手はしばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた。しかしそのときには私はすでに車を出していた。

…なぜ白服が怒ったのか?いまひとつ腑に落ちなくて原文を見てみました。

 The white coat grinned at me. ”Okay, sucker. If it was me, I'd just drop him in the gutter amd keep going. (中略) The way the competition is nowadays a guy has to save his strength to protect hisself in the clinches."
"I can see you've made a big success out of it," I said.
He looked puzzled and then he started to get mad, but by that time I was in the car and moving.

 こうして比べて見ると、実は「白服」がかなり無礼な口のきき方で、初対面の主人公に話しかけてきたことが判明します。 sucker とは suck (チュウチュウ吸う=しゃぶる) + er (~する人)、つまり、優しめに受け取れば「大人の体で中身は赤ん坊」ぐっと下品に取れば「☆ンコしゃぶり野郎」です。(昔、名作カルト映画 TWINKLE TWINKLE KILLER KANE のVHS版字幕で見た sucker の絶妙に上手な和訳が「おしゃぶり野郎」でした。実に腕のいい翻訳家です。)白服のひとこと目は「お客さん、~」ではなかったのです。原文のニュアンスでは「おい、青二才、~」ぐらいでしょうか。全く失礼な奴です。さらに彼の発言の中には himself を hisself と言っている部分が見受けられます。かなり教養に欠けているか、または、すごくワルぶって喋るチンピラ風な人物であることがここからうかがわれる仕掛けになっています。そんな無礼極まる奴に、なかばケンカを売られた具合になった主人公は、ハードボイルド(固ゆで hard-boiled 卵が、温泉タマゴと違って、ゆさぶってもビクともしないのと同様に、たとえ目の前で殺人が行われようとも、いかなる非常事態に直面しても動じない精神を備えている)ですから、冷静にやり返すのです。「まあ見たところ、あんたはその《クリンチ》とやらで、まんまとがっぽり成功を手にしただろうからね」つまり、酔っぱらいを介抱するふりをして、悪いやつは、そのすきにつけこんでふところからたんまり何かしらちょうだいするもんだ、あんたもそのクチだろう、と返した訳です。「白服」は、すぐにその皮肉を理解できなかったので、「しばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた」ということだと、私は原文から読み取ります。

 このペースで500頁ちょっとを読み進めるとなると…気の遠くなる時間を要しますね。やはり、この先はサクサクと行く方がいいかもしれません。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集)より
4150002606
No.358
(5pt)

清水 俊二氏が一枚上手か

何年ぶりかで村上春樹訳を読み直してみることにしました。一回目と違い、じっくりと熟読です。すると小さな疑問が。

以下に本文(早川書房刊 単行本 p.9)から引用します。( ) 内は私の補足説明です。

 (ホテルの駐車場で酔いつぶれていた男を介抱していると、やってきた)白服(の駐車係)は私の顔を見てにやっと笑った。「お客さん、人がいいね。俺だったらそんなやつは道ばたに放り出してとっとと行っちまいますがね。(中略)このとおり弱肉強食の世界だ。ボクシングで言えば、人はなるたけクリンチに逃げて、いざというときのために力を蓄えておかなくちゃならんってこと」
「そうやってここまでのしあがったわけだ」と私は言った。
 相手はしばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた。しかしそのときには私はすでに車を出していた。

…なぜ白服が怒ったのか?いまひとつ腑に落ちなくて原文を見てみました。

 The white coat grinned at me. ”Okay, sucker. If it was me, I'd just drop him in the gutter amd keep going. (中略) The way the competition is nowadays a guy has to save his strength to protect hisself in the clinches."
"I can see you've made a big success out of it," I said.
He looked puzzled and then he started to get mad, but by that time I was in the car and moving.

 こうして比べて見ると、実は「白服」がかなり無礼な口のきき方で、初対面の主人公に話しかけてきたことが判明します。 sucker とは suck (チュウチュウ吸う=しゃぶる) + er (~する人)、つまり、優しめに受け取れば「大人の体で中身は赤ん坊」ぐっと下品に取れば「☆ンコしゃぶり野郎」です。(昔、名作カルト映画 TWINKLE TWINKLE KILLER KANE のVHS版字幕で見た sucker の絶妙に上手な和訳が「おしゃぶり野郎」でした。実に腕のいい翻訳家です。)白服のひとこと目は「お客さん、~」ではなかったのです。原文のニュアンスでは「おい、青二才、~」ぐらいでしょうか。全く失礼な奴です。さらに彼の発言の中には himself を hisself と言っている部分が見受けられます。かなり教養に欠けているか、または、すごくワルぶって喋るチンピラ風な人物であることがここからうかがわれる仕掛けになっています。そんな無礼極まる奴に、なかばケンカを売られた具合になった主人公は、ハードボイルド(固ゆで hard-boiled 卵が、温泉タマゴと違って、ゆさぶってもビクともしないのと同様に、たとえ目の前で殺人が行われようとも、いかなる非常事態に直面しても動じない精神を備えている)ですから、冷静にやり返すのです。「まあ見たところ、あんたはその《クリンチ》とやらで、まんまとがっぽり成功を手にしただろうからね」つまり、酔っぱらいを介抱するふりをして、悪いやつは、そのすきにつけこんでふところからたんまり何かしらちょうだいするもんだ、あんたもそのクチだろう、と返した訳です。「白服」は、すぐにその皮肉を理解できなかったので、「しばらくぽかんとした顔をしていたが、やがて腹を立て始めた」ということだと、私は原文から読み取ります。

 このペースで500頁ちょっとを読み進めるとなると…気の遠くなる時間を要しますね。やはり、この先はサクサクと行く方がいいかもしれません。
長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集)より
B000JATSCW
No.357
(5pt)

面白かった

長いけれど引き込まれて読んでいるうちに終わります。
様々な要因がからみ合って、あっと思うようなところに向かいます。
こういう本が良い本なんでしょう。
村上氏の翻訳も楽しみました。
「はんちく」なんて言葉、良く思いつきますよね。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.356
(5pt)

面白かった

長いけれど引き込まれて読んでいるうちに終わります。
様々な要因がからみ合って、あっと思うようなところに向かいます。
こういう本が良い本なんでしょう。
村上氏の翻訳も楽しみました。
「はんちく」なんて言葉、良く思いつきますよね。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.355
(5pt)

【読めば判る!】フィリップ・マーロウの生活と意見【清水俊二訳】

本作品は映画化もされており、傑作ではありますし、あらすじも面白いです。しかし本作品の力点は、読者が一緒に謎を解くためにストーリーがあるのではなく、それを通じて、主人公フィリップ・マーロウがどう思い行動するかという点が素晴らしいのです。私はだからこの本を時折取り出しては何度も読むことになります。しかしいくら「素晴らしい」とここで力説しても、多分どうやってもあなたには伝わらないでしょう。だから、あなたにはこんな一節を読んでほしいのです。

「このまま邸を出て、事件から手を引こうかとも考えたが、そんなことはできるはずがなかった。そんなことができるくらいなら、私は生まれた町に住みついていて、雑貨屋ではたらき、店主の娘と結婚して、子供を五人つくり、日曜の朝には子供たちに漫画ページを読んできかせて、子供たちがいたずらをすると頭をひっばたき、小遣(こづかい)をやりすぎるといって妻といい争い、ラジオやテレビのくだらないプログラムを見せるからだと妻を叱りつけているにちがいなかった。金もたまっていたかもしれない。小さな町の小金持らしく、八室の家に住み、車庫には車が二台、日曜ごとにチキンを食べて、居間のテーブルの上には《リーダーズ・ダイジェスト》がのっかっていて、ポートランド・セメントの袋のような頭脳(あたま)を持った人間になっていたであろう。そんな生活はだれかにまかせよう。私はよごれた大都会の方が好きなのだ。」清水俊二訳

フィリップ・マーロウの世界観には、痛みと孤独と美意識が貫かれており、上述のようなきら星たる言葉が、本作品をぎっしり埋めつくしています。英語など殆どできないのに私は英語版まで買い求め、清水俊二さんの翻訳を頼りに辿っていきますが、清水俊二訳の的確で素晴らしいこと。
長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集)より
B000JATSCW
No.354
(5pt)

【読めば判る!】フィリップ・マーロウの生活と意見【清水俊二訳】

本作品は映画化もされており、傑作ではありますし、あらすじも面白いです。しかし本作品の力点は、読者が一緒に謎を解くためにストーリーがあるのではなく、それを通じて、主人公フィリップ・マーロウがどう思い行動するかという点が素晴らしいのです。私はだからこの本を時折取り出しては何度も読むことになります。しかしいくら「素晴らしい」とここで力説しても、多分どうやってもあなたには伝わらないでしょう。だから、あなたにはこんな一節を読んでほしいのです。

「このまま邸を出て、事件から手を引こうかとも考えたが、そんなことはできるはずがなかった。そんなことができるくらいなら、私は生まれた町に住みついていて、雑貨屋ではたらき、店主の娘と結婚して、子供を五人つくり、日曜の朝には子供たちに漫画ページを読んできかせて、子供たちがいたずらをすると頭をひっばたき、小遣(こづかい)をやりすぎるといって妻といい争い、ラジオやテレビのくだらないプログラムを見せるからだと妻を叱りつけているにちがいなかった。金もたまっていたかもしれない。小さな町の小金持らしく、八室の家に住み、車庫には車が二台、日曜ごとにチキンを食べて、居間のテーブルの上には《リーダーズ・ダイジェスト》がのっかっていて、ポートランド・セメントの袋のような頭脳(あたま)を持った人間になっていたであろう。そんな生活はだれかにまかせよう。私はよごれた大都会の方が好きなのだ。」清水俊二訳

フィリップ・マーロウの世界観には、痛みと孤独と美意識が貫かれており、上述のようなきら星たる言葉が、本作品をぎっしり埋めつくしています。英語など殆どできないのに私は英語版まで買い求め、清水俊二さんの翻訳を頼りに辿っていきますが、清水俊二訳の的確で素晴らしいこと。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1)) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))より
4150704511
No.353
(5pt)

【読めば判る!】フィリップ・マーロウの生活と意見【清水俊二訳】

本作品は映画化もされており、傑作ではありますし、あらすじも面白いです。しかし本作品の力点は、読者が一緒に謎を解くためにストーリーがあるのではなく、それを通じて、主人公フィリップ・マーロウがどう思い行動するかという点が素晴らしいのです。私はだからこの本を時折取り出しては何度も読むことになります。しかしいくら「素晴らしい」とここで力説しても、多分どうやってもあなたには伝わらないでしょう。だから、あなたにはこんな一節を読んでほしいのです。

「このまま邸を出て、事件から手を引こうかとも考えたが、そんなことはできるはずがなかった。そんなことができるくらいなら、私は生まれた町に住みついていて、雑貨屋ではたらき、店主の娘と結婚して、子供を五人つくり、日曜の朝には子供たちに漫画ページを読んできかせて、子供たちがいたずらをすると頭をひっばたき、小遣(こづかい)をやりすぎるといって妻といい争い、ラジオやテレビのくだらないプログラムを見せるからだと妻を叱りつけているにちがいなかった。金もたまっていたかもしれない。小さな町の小金持らしく、八室の家に住み、車庫には車が二台、日曜ごとにチキンを食べて、居間のテーブルの上には《リーダーズ・ダイジェスト》がのっかっていて、ポートランド・セメントの袋のような頭脳(あたま)を持った人間になっていたであろう。そんな生活はだれかにまかせよう。私はよごれた大都会の方が好きなのだ。」清水俊二訳

フィリップ・マーロウの世界観には、痛みと孤独と美意識が貫かれており、上述のようなきら星たる言葉が、本作品をぎっしり埋めつくしています。英語など殆どできないのに私は英語版まで買い求め、清水俊二さんの翻訳を頼りに辿っていきますが、清水俊二訳の的確で素晴らしいこと。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集)より
4150002606
No.352
(5pt)

読み始めたら止まらない

ロバートBパーカーのファンですが、レイモンドチャンドラーも面白い。他の作品も読みたくなりますね。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.351
(5pt)

読み始めたら止まらない

ロバートBパーカーのファンですが、レイモンドチャンドラーも面白い。他の作品も読みたくなりますね。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.350
(5pt)

死神≒マーロウ説

伊坂幸太郎の『死神の精度』を思い出します。フィリップ・マーロウという「窓口」に次から次へと押し掛ける人々(悪党が多い)。ちょっとズレたやつ(死神、マーロウ)に対する人々のリアクションから、逆にそのズレ具合を味わう小説。読者が死神を、マーロウを、人生の指針(~参考?)としたがる点でも似ています。死神≒マーロウ説。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.349
(5pt)

死神≒マーロウ説

伊坂幸太郎の『死神の精度』を思い出します。フィリップ・マーロウという「窓口」に次から次へと押し掛ける人々(悪党が多い)。ちょっとズレたやつ(死神、マーロウ)に対する人々のリアクションから、逆にそのズレ具合を味わう小説。読者が死神を、マーロウを、人生の指針(~参考?)としたがる点でも似ています。死神≒マーロウ説。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.348
(5pt)

村上の手にかかると マーロウのイメージが「ハードボイルド性を有する刑事コロンボ」 が ら「人間味を顕在化させた ゴルゴ 13」 に変わる。

清水 俊二訳『長いお別れ』(早川書房)にくらべて、村上の翻訳『ロング・グッドバイ』(早川書房)は、明らかに原文からは離れているが、読者(わたし)は、村上のほうを 約(訳)1.5倍 くらい楽しむことができました。
  翻訳でどこまで《意訳》が許されるのか? 原著英文にない単語・語句を―――日本語の言い回しの際に―――どこまで加えてよいのか? 英単語の意味を英和辞典からどこまで離れて良いのか? そこは知る由もありませんが、すぐれた翻訳者がひとたび「35年以上も昔の、清水氏の翻訳より、圧倒的にすばらしい作品を創ってやろう!!」と、心に決断すれば、このようになるのだ・・・・・ということがよくわかりました。
  これが「娯楽小説」というカテゴリーにあるのも―――意訳する際の、気分的障壁の高さが低くなる―――それを可能にした一要因だと思う。たとえば、村上が愛してやまないカーヴァーの小説では、このような《意訳》はしなかったし、できなかったでしょう。
  いずれにせよ、村上により、この小説が単なる「娯楽小説」ではなく、文学性を付与された作品になったことは確かである。村上の後出しジャンケンで有利なことは明白ですが、村上は、「どうだい、自分の翻訳は清水より優れているだろ?!」ということを示したかったわけではなく(少しはあるでしょうが)、チャンドラーを単純な「娯楽小説家」のカテゴリーに、ともすれば、入れられていることに疑義があったのでしょう。

【清水と村上の訳は物語のどこを切り取っても、大きな空気感の違いを感じとれるが、以下に、清水と村上の翻訳の違いを明示している5ヵ所を類例として示してみる:村上のチャンドラーに対する愛・敬意、そして先行する清水への並々ならぬ対抗心が感じられる。ただ、マーロウを主とする、会話の翻訳では村上訳の不自然さを、しばしば、感じた。端的に言わせていただけるのなら、会話の表現は清水の方が一枚上手である、と思う。特に、女性とマーロウの濡れ場の会話については、明らかに清水の実生活での場数が勝っている、ことを感じた】

①:第6章、メキシコに逃走を図るテリー・レノックスを無事チュアナの空港に送り届け、自宅に帰っていた主人公マーロウと、尋問に訪れた二人の刑事とのやりとり、の場面。
現実の刑事とのやり取りは、《清水》の方では?と、思ってしまいました。《村上》の方は、現実の会話とすれば、まどろっこしさを感じてしまう。

《清水》『長いお別れ:ページ53、11行目から』

彼らは居間に腰をすえた。私は窓をあけて、風をいれた。しゃべったのはグリーンだった。
「テリー・レノックスという男、知っているだろう」
「ときどき、いっしょに酒を飲んだことがある。エンシノに住んでいて、細君が財産を持ってる。住んでいるところへは行ったことがない」
「ときどきというのはどういう意味だ」
「はっきりいえないね。一週間に一度という意味にもなるし、二ヵ月に一度という意味にもなる」
「細君に会ったか」
「一度、ちらっと会った。結婚する前のことだ」
「彼に最後に会ったのはいつだ。場所はどこだ」
  私はテーブルのパイプをとって、タバコをつめた。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ62、末尾から7行目から』

彼らは居間に腰を下ろした。私が窓を開けると微風が入ってきた。しゃべる役はグリーンがつとめた。
「テリー・レノックスという男を知っているね?」
「ときおり一緒に酒を飲む。エンシーノに住んで、金持ちの女房がいる。家を訪れたことはない」
「ときおりというのはどの程度の回数だ?」とグリーンは言った。
「それは曖昧さを意味する表現なんだ。事実曖昧そのものでね。週に一度ということもあれば、二ヵ月に一度ということもある」
「細君に会ったことは?」
「一度だけ、ちらりとね。結婚する前のことだが」
「彼に最後に会ったのはいつで。場所はどこだ?」
  私はエンド・テーブルの上のパイプを手に取り、煙草を詰めた。

②:第11章、主人公マーロウとギャングのボス、メネンデスとの緊迫のやり取りの部分を少し長めに抜粋してみた。

《清水》『長いお別れ:ページ110、9行目から』

「これを忘れてる」と、私はデスクをまわりながらいった。
「半ダースも持ってるんだ」と、彼はひとをばかにしたような口調でいった。
  私は彼のそばへ行って、ケースをさし出した。彼の手がそれを受けとろうとした。「こいつも半ダース食らうか」私はそういいながら、彼の腹を力いっぱい殴りつけた。
  彼は悲鳴をあげて、からだをまげた。シガレット・ケースが床に落ちた。彼のからだがうしろにさがって、背中が壁にぶっかった。両手が苦しそうに前後にゆれた。呼吸が苦しそうだった。額に汗がにじみ出てきた。
・・・・・・
・・・・・・
「お前をみそこなったよ」と、彼はいった。
「この次は拳銃を持ってこい――――でなければ、おれをチンピラと呼ぶな」
「ピストルは用心棒に持たせてある」
「そいつを連れてこい。そばから離すな」
「お前はなかなか怒らない奴だな、マーロウ」

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ125、末尾から2行目から』

「忘れ物だ」と、私は言って、机を回り込んだ。
「そんなものは半ダース単位で買っている」と彼は馬鹿にしたように言った。
  私はメネンデスのそばへ行き、ケースを差し出した。彼は何気なくそれに手をのばした。「こういうのも半ダース単位でどうだ?」と私は言い、相手の腹の真ん中に思いっきりきつい一発をたたき込んだ。
  彼はうめきながら、身体を二つに折った。煙草ケースが床に落ちた。壁にもたれかかり、両手をぴくぴくと前後に痙攣させた。肺に空気を吸い込もうとしてあえいでいた。汗が流れた。
・・・・・・
・・・・・・
「そんなに肝っ玉あるとは思わなかったぜ」と彼は言った。
「次は銃を持ってくるんだな。そうじゃなければ、私をはんちくと呼ぶな」
「俺は銃を持つ人間を雇っている」
「じゃあそいつをそばから離すな」
「お前、腹を立てるのにやたら手間のかかるやつだな」

③:第49章の最終部。レノックの妻、尻軽女シルビアの姉、ミセス ローリングとマーロウとの “睦み合い” の会話。
  この部分は、一見すると、《村上》の訳が優れているように見える(読める)が、現実(実生活)に女性経験が豊富な翻訳者は《清水》の方でしょう(このような場面での、現実の男女の会話は、以外にシンプルですものね。女性なら、何となくわかりますもの・・・)。

《清水》『長いお別れ:ページ509、最後から3行目からお終いまで』

「とても私を愛してる? それとも、いっしょに寝れば愛してくれる?」
「好きになりそうだな」
「むりにいっしょに寝ないでもいいのよ。ぜひにとはいっていないのよ」
「ありがとう」
「シャンペンをちょうだいな」
「お金をいくら持っている」
「全部で? そんなこと、知ってるはずがないわ。八百万ドルぐらいよ」
「いっしょに寝ることにきめた」
「お金が目当てなのね」と、彼女はいった。
「シャンペンをおごったぜ」
「シャンペンなんか、なにさ」と、彼女はいった。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ566、最初からお終いまで』

「私のことを心から愛してくれる? それともあなたとベッドを共にしたら、心から愛してもらえるのかしら?」
「おそらく」
「私とベッドに行く必要はないのよ。無理に迫っているわけじゃないんだから」
「ありがたいことだ」
「シャンパンが飲みたいわ」
「君にはどれくらい財産がある?」
「全部で? どれくらいかしら。たぶん八百万ドル前後ね」
「君とベッドに行くことにした」
「金のためなら何でもやる」と彼女は言った。
「シャンパンは自腹を切ったぜ」
「シャンパンくらい何よ」と彼女は言った。

④:第50章の最終部。シルビアの姉、ミセス ローリングとマーロウが性行為を終え、その後、ベッドのそばの椅子に腰かけての会話。
  この部分も、女性経験が豊富な翻訳者、《清水》の方が上手のような気がする。

《清水》『長いお別れ:ページ514、最後から2行目から』

「なぜこんなことをしたのか、わからないわ」と、彼女はいった。「でも、お願いだから、女はいつも自分のしていることがわかっていないなんていわないでちょうだい」
私は彼女のグラスにシャンペンを注ぎなおして、笑って見せた。彼女はグラスにゆっくり口をつけて、向こうを向くと、私の膝にからだを倒した。
「つかれたわ」と、彼女はいった。「こんどは抱いていってちょうだいね」
しばらくしてから、彼女は眠りにおちた。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ571、2行目から』

「どうしてこんなことしちゃったのかしら」と彼女は言った。「でもお願いだから、女というものは自分でも理由がわからないことをするもんだ、なんて言わないね」
私はグラスにシャンパンを注ぎ直し、笑った。彼女はそれをそろそろと飲み、むこう向きになって、私の膝にもたれかかった。
「疲れたわ」と彼女は言った。「抱いて運んでいってほしい」
少し後で彼女は眠りについた。

⑤: 第53最終章、主人公マーロウと死んだはずのテリーの、本当(最後)の別れのシーン。

《清水》『長いお別れ:ページ536、2行目から』

「何もかもわかっているんだ、テリー。君はいろいろな意味でいい人間なんだ。ぼくは君に批判をくだしているわけじゃない。いままでだって批判なんかしなかった。ただ、もういままでの君とはちがうというだけのことだ。ぼくが知っていた君は遠くへ去ってしまった。しゃれた服を着て、香水を匂わせて、まるで五十ドルの淫売みたいにエレガントだぜ」
「芝居だよ」と、訴えるような口調でいった。
「芝居を楽しんでいるんだろう」
彼は唇をまげて、さびしそうに笑った。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ539、7行目から』

「それはよくわかっているよ、テリー。君はいろいろな意味でとても感じのいいやつだ。私は何も君の是非をはかっているわけじゃない。君を責めたことなど一度もない。ただ君はもうここにはいない人間なのだと言っているだけさ。君はずっと前にここから消えてしまったんだ。今では素敵な服を着て、香水をつけて、まるで五十ドルの娼婦みたいにエレガントだよ」
「こんなものただの見せかけだ」と彼はすがりつくようにいった。
「しかし、その見せかけを楽しんでもいる。そうだろう?」
彼はあきらめたように力を抜き、苦い微笑みを口もとに浮べた。

感想:②,⑤は村上訳が優れていると思うが、①と③、そして④は、ちょっと見、村上訳が上手に見えるかもしれないが、①:取り調べに来た刑事とのやりとり、③と④:現実の男と女の睦み事、という状況では清水訳の会話の方が自然だと思いました。
  刑事さんとのやり取り、女性と男性との睦み合い、レビュアーはいずれも、想像するしか術はないのですが・・・・・
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.347
(5pt)

村上の手にかかると マーロウのイメージが「ハードボイルド性を有する刑事コロンボ」 が ら「人間味を顕在化させた ゴルゴ 13」 に変わる。

清水 俊二訳『長いお別れ』(早川書房)にくらべて、村上の翻訳『ロング・グッドバイ』(早川書房)は、明らかに原文からは離れているが、読者(わたし)は、村上のほうを 約(訳)1.5倍 くらい楽しむことができました。
  翻訳でどこまで《意訳》が許されるのか? 原著英文にない単語・語句を―――日本語の言い回しの際に―――どこまで加えてよいのか? 英単語の意味を英和辞典からどこまで離れて良いのか? そこは知る由もありませんが、すぐれた翻訳者がひとたび「35年以上も昔の、清水氏の翻訳より、圧倒的にすばらしい作品を創ってやろう!!」と、心に決断すれば、このようになるのだ・・・・・ということがよくわかりました。
  これが「娯楽小説」というカテゴリーにあるのも―――意訳する際の、気分的障壁の高さが低くなる―――それを可能にした一要因だと思う。たとえば、村上が愛してやまないカーヴァーの小説では、このような《意訳》はしなかったし、できなかったでしょう。
  いずれにせよ、村上により、この小説が単なる「娯楽小説」ではなく、文学性を付与された作品になったことは確かである。村上の後出しジャンケンで有利なことは明白ですが、村上は、「どうだい、自分の翻訳は清水より優れているだろ?!」ということを示したかったわけではなく(少しはあるでしょうが)、チャンドラーを単純な「娯楽小説家」のカテゴリーに、ともすれば、入れられていることに疑義があったのでしょう。

【清水と村上の訳は物語のどこを切り取っても、大きな空気感の違いを感じとれるが、以下に、清水と村上の翻訳の違いを明示している5ヵ所を類例として示してみる:村上のチャンドラーに対する愛・敬意、そして先行する清水への並々ならぬ対抗心が感じられる。ただ、マーロウを主とする、会話の翻訳では村上訳の不自然さを、しばしば、感じた。端的に言わせていただけるのなら、会話の表現は清水の方が一枚上手である、と思う。特に、女性とマーロウの濡れ場の会話については、明らかに清水の実生活での場数が勝っている、ことを感じた】

①:第6章、メキシコに逃走を図るテリー・レノックスを無事チュアナの空港に送り届け、自宅に帰っていた主人公マーロウと、尋問に訪れた二人の刑事とのやりとり、の場面。
現実の刑事とのやり取りは、《清水》の方では?と、思ってしまいました。《村上》の方は、現実の会話とすれば、まどろっこしさを感じてしまう。

《清水》『長いお別れ:ページ53、11行目から』

彼らは居間に腰をすえた。私は窓をあけて、風をいれた。しゃべったのはグリーンだった。
「テリー・レノックスという男、知っているだろう」
「ときどき、いっしょに酒を飲んだことがある。エンシノに住んでいて、細君が財産を持ってる。住んでいるところへは行ったことがない」
「ときどきというのはどういう意味だ」
「はっきりいえないね。一週間に一度という意味にもなるし、二ヵ月に一度という意味にもなる」
「細君に会ったか」
「一度、ちらっと会った。結婚する前のことだ」
「彼に最後に会ったのはいつだ。場所はどこだ」
  私はテーブルのパイプをとって、タバコをつめた。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ62、末尾から7行目から』

彼らは居間に腰を下ろした。私が窓を開けると微風が入ってきた。しゃべる役はグリーンがつとめた。
「テリー・レノックスという男を知っているね?」
「ときおり一緒に酒を飲む。エンシーノに住んで、金持ちの女房がいる。家を訪れたことはない」
「ときおりというのはどの程度の回数だ?」とグリーンは言った。
「それは曖昧さを意味する表現なんだ。事実曖昧そのものでね。週に一度ということもあれば、二ヵ月に一度ということもある」
「細君に会ったことは?」
「一度だけ、ちらりとね。結婚する前のことだが」
「彼に最後に会ったのはいつで。場所はどこだ?」
  私はエンド・テーブルの上のパイプを手に取り、煙草を詰めた。

②:第11章、主人公マーロウとギャングのボス、メネンデスとの緊迫のやり取りの部分を少し長めに抜粋してみた。

《清水》『長いお別れ:ページ110、9行目から』

「これを忘れてる」と、私はデスクをまわりながらいった。
「半ダースも持ってるんだ」と、彼はひとをばかにしたような口調でいった。
  私は彼のそばへ行って、ケースをさし出した。彼の手がそれを受けとろうとした。「こいつも半ダース食らうか」私はそういいながら、彼の腹を力いっぱい殴りつけた。
  彼は悲鳴をあげて、からだをまげた。シガレット・ケースが床に落ちた。彼のからだがうしろにさがって、背中が壁にぶっかった。両手が苦しそうに前後にゆれた。呼吸が苦しそうだった。額に汗がにじみ出てきた。
・・・・・・
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「お前をみそこなったよ」と、彼はいった。
「この次は拳銃を持ってこい――――でなければ、おれをチンピラと呼ぶな」
「ピストルは用心棒に持たせてある」
「そいつを連れてこい。そばから離すな」
「お前はなかなか怒らない奴だな、マーロウ」

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ125、末尾から2行目から』

「忘れ物だ」と、私は言って、机を回り込んだ。
「そんなものは半ダース単位で買っている」と彼は馬鹿にしたように言った。
  私はメネンデスのそばへ行き、ケースを差し出した。彼は何気なくそれに手をのばした。「こういうのも半ダース単位でどうだ?」と私は言い、相手の腹の真ん中に思いっきりきつい一発をたたき込んだ。
  彼はうめきながら、身体を二つに折った。煙草ケースが床に落ちた。壁にもたれかかり、両手をぴくぴくと前後に痙攣させた。肺に空気を吸い込もうとしてあえいでいた。汗が流れた。
・・・・・・
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「そんなに肝っ玉あるとは思わなかったぜ」と彼は言った。
「次は銃を持ってくるんだな。そうじゃなければ、私をはんちくと呼ぶな」
「俺は銃を持つ人間を雇っている」
「じゃあそいつをそばから離すな」
「お前、腹を立てるのにやたら手間のかかるやつだな」

③:第49章の最終部。レノックの妻、尻軽女シルビアの姉、ミセス ローリングとマーロウとの “睦み合い” の会話。
  この部分は、一見すると、《村上》の訳が優れているように見える(読める)が、現実(実生活)に女性経験が豊富な翻訳者は《清水》の方でしょう(このような場面での、現実の男女の会話は、以外にシンプルですものね。女性なら、何となくわかりますもの・・・)。

《清水》『長いお別れ:ページ509、最後から3行目からお終いまで』

「とても私を愛してる? それとも、いっしょに寝れば愛してくれる?」
「好きになりそうだな」
「むりにいっしょに寝ないでもいいのよ。ぜひにとはいっていないのよ」
「ありがとう」
「シャンペンをちょうだいな」
「お金をいくら持っている」
「全部で? そんなこと、知ってるはずがないわ。八百万ドルぐらいよ」
「いっしょに寝ることにきめた」
「お金が目当てなのね」と、彼女はいった。
「シャンペンをおごったぜ」
「シャンペンなんか、なにさ」と、彼女はいった。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ566、最初からお終いまで』

「私のことを心から愛してくれる? それともあなたとベッドを共にしたら、心から愛してもらえるのかしら?」
「おそらく」
「私とベッドに行く必要はないのよ。無理に迫っているわけじゃないんだから」
「ありがたいことだ」
「シャンパンが飲みたいわ」
「君にはどれくらい財産がある?」
「全部で? どれくらいかしら。たぶん八百万ドル前後ね」
「君とベッドに行くことにした」
「金のためなら何でもやる」と彼女は言った。
「シャンパンは自腹を切ったぜ」
「シャンパンくらい何よ」と彼女は言った。

④:第50章の最終部。シルビアの姉、ミセス ローリングとマーロウが性行為を終え、その後、ベッドのそばの椅子に腰かけての会話。
  この部分も、女性経験が豊富な翻訳者、《清水》の方が上手のような気がする。

《清水》『長いお別れ:ページ514、最後から2行目から』

「なぜこんなことをしたのか、わからないわ」と、彼女はいった。「でも、お願いだから、女はいつも自分のしていることがわかっていないなんていわないでちょうだい」
私は彼女のグラスにシャンペンを注ぎなおして、笑って見せた。彼女はグラスにゆっくり口をつけて、向こうを向くと、私の膝にからだを倒した。
「つかれたわ」と、彼女はいった。「こんどは抱いていってちょうだいね」
しばらくしてから、彼女は眠りにおちた。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ571、2行目から』

「どうしてこんなことしちゃったのかしら」と彼女は言った。「でもお願いだから、女というものは自分でも理由がわからないことをするもんだ、なんて言わないね」
私はグラスにシャンパンを注ぎ直し、笑った。彼女はそれをそろそろと飲み、むこう向きになって、私の膝にもたれかかった。
「疲れたわ」と彼女は言った。「抱いて運んでいってほしい」
少し後で彼女は眠りについた。

⑤: 第53最終章、主人公マーロウと死んだはずのテリーの、本当(最後)の別れのシーン。

《清水》『長いお別れ:ページ536、2行目から』

「何もかもわかっているんだ、テリー。君はいろいろな意味でいい人間なんだ。ぼくは君に批判をくだしているわけじゃない。いままでだって批判なんかしなかった。ただ、もういままでの君とはちがうというだけのことだ。ぼくが知っていた君は遠くへ去ってしまった。しゃれた服を着て、香水を匂わせて、まるで五十ドルの淫売みたいにエレガントだぜ」
「芝居だよ」と、訴えるような口調でいった。
「芝居を楽しんでいるんだろう」
彼は唇をまげて、さびしそうに笑った。

《村上》『ロング・グッドバイ:ページ539、7行目から』

「それはよくわかっているよ、テリー。君はいろいろな意味でとても感じのいいやつだ。私は何も君の是非をはかっているわけじゃない。君を責めたことなど一度もない。ただ君はもうここにはいない人間なのだと言っているだけさ。君はずっと前にここから消えてしまったんだ。今では素敵な服を着て、香水をつけて、まるで五十ドルの娼婦みたいにエレガントだよ」
「こんなものただの見せかけだ」と彼はすがりつくようにいった。
「しかし、その見せかけを楽しんでもいる。そうだろう?」
彼はあきらめたように力を抜き、苦い微笑みを口もとに浮べた。

感想:②,⑤は村上訳が優れていると思うが、①と③、そして④は、ちょっと見、村上訳が上手に見えるかもしれないが、①:取り調べに来た刑事とのやりとり、③と④:現実の男と女の睦み事、という状況では清水訳の会話の方が自然だと思いました。
  刑事さんとのやり取り、女性と男性との睦み合い、レビュアーはいずれも、想像するしか術はないのですが・・・・・
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
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