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ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ



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ウーマン・イン・ザ・ウィンドウの評価: 3.85/5点 レビュー 13件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.85pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(1pt)

(2018年―第131冊)主人公にも犯人も心が添わない。展開にも精緻な策を弄した感がない。

アナ・フォックスは精神分析医。10か月前から広場恐怖症に悩まされ、いまは夫と娘とは離れてひとりニューヨークの高級住宅で引きこもって暮らしている。慰めとなるのは、フィルムノワール系のクラシック映画のDVDとアルコール。そして近隣の家々をそっとカメラで覗き見することだ。そんなある日、隣家のラッセル家を覗き見していたところ、驚愕の事件を目撃してしまう。だがアナの通報を受けてかけつけた警察は事件の痕跡を見つけられず、あげくの果てにアナの言葉を誰も信じてくれなくなる。果たしてアナは幻覚を見たのか、それとも…。
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 アメリカのAmazonでは4238人がレビューを投稿し、そのうち58%が5つ星、21%が4つ星の評価をつけているベストセラー小説です。その評価を目にしたうえでこの翻訳本を手にしましたから、第1ページからいやがうえでも期待が高まろうというものです。
 
 ですが、私の期待は大きく裏切られました。
まずもって、進展が思いのほか緩慢なのです。翻訳は上下巻で600頁を超える大部の書で、核となる事件が起こるまでに200頁を要するのです。もともとどんな事件が起こるのかを知らずに頁を繰り始めたこともあって、物語がどこへ向かっていくのかがわからぬもどかしさを200頁も我慢することになってしまいました。

 物語の中途で、アナが広場恐怖症に至った経緯が思わぬ形で明らかになるくだりはかろうじて驚きをもって読みましたが、最後に明らかになる真犯人の素性と背景があまりにも強引かつ異常すぎて、それを読み手としてどう消化したらよいのかがわかりません。犯人に強い憎しみも、はたまた憐憫の念も感じることができず、物語に心が添いませんでした。

 アナが次々と鑑賞していく古い名作映画のプロットが、このミステリーのストーリーラインと巧妙にシンクロしていくというほどのこともありません。これだけ膨大な数の古典映画の名を挙げるのであれば、そうした映画をこの小説における謎とその解とに応用するくらいの知恵を働かせればよいものを。そこまでの精緻な劇作術はまだこの新人作家にはなかったということでしょう。

 また――ネタバレにならないように少しボカして書きますが――アナに寝顔の写真を送った人物が、234頁の第91章に出てくる写真を消し忘れていたというのもなんとも間が抜けた話です。

 この小説は既にハリウッドで映画化が決まっているのだとか。どこまで原作をしのげるだけの改変と演出ができるかに、映画の成功のカギがあるように思います。

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*155頁:「ウェスリーはいまも大学の助教授を務めていた」(8行目)、「愛を注ぐ対象は、大学の助教授たる地位と、患者である子供たちだけだ」(14行目)という訳文があります。「助教授」という訳語に引っ掛かりました。
 日本では今から11年前の2007年、学校教育法の改正に伴い、それまで「助教授」と呼ばれていた大学教員の職階が、「准教授」と呼称変更されました。ですから現在の日本語では「助教授」は廃語になっています。
 ですが、この訳文の「助教授」を「准教授」に置換すればよいかというと、事はそんなに単純な話ではないようです。
 上記の訳文「ウェスリーはいまも大学の助教授を務めていた」の英語原文は「He still occupies the same endowed adjunct chair.」、また「愛を注ぐ対象は、大学の助教授たる地位」に相当する英文は「his lectureship was his love」です。「(助教授あらため)准教授」が教授に次ぐ職階であるのに対し、「adjunct professor」は「非常勤教授」、また「endowed chair」は「寄付基金教授(職)」、「寄付講座教授」=寄付によって給与や研究費全体、あるいは一部がまかなわれている教授職(アルク英辞郎on the webから引用)とのことです。
 ですからウェスリーは、「寄付金によって設けられた講座の非常勤教授の地位に今もあった」と言っているのです。ウェスリーの本業は開業医で、その本業以外に大学生に教えているわけです。

*155頁:「いまも『タイムズ』やさまざまな専門誌に寄稿している」という訳文を読んで、アメリカが舞台の小説にイギリスの日刊紙『タイムズ』が出てくるのが唐突な感じがしました。原文は「he’s still publishing articles in the Times」(Timesはイタリック)となっています。これは文脈から判断するに、ニューヨーク・タイムズ紙のことを指していますね。ニューヨーク・タイムズ紙自身、the Timesと略称を使っています。(例) Confidential documents reviewed by The Times indicate that Jared Kushner, President Trump’s son-in-law and adviser, probably paid little or no income tax from 2009 to 2016.(2018年10月13日付のニューヨーク・タイムズ紙の記事より)

*192頁:主人公のアナと主治医のフィールディングが次のように会話を交わす場面が出てきます。
フィールディング「効果はすみやかに現れるはずだ」
アナ「結果はすぐに出るわけですね」
フィールディング「わたしなら答えではなく効果と呼ぶね」
 ここの英語原文は以下の通りです。
フィールディング「You should experience the effects quite quickly.」
アナ「Swift results.」
フィールディング「Well, I’d call them effects rather than results.」
 つまりフィールディング医師はアナが「結果results」と言うことに抵抗を感じて、「効果effects」と言うべきだと重ねて主張しているのです。したがって「わたしなら答えではなく効果と呼ぶね」ではなく、「わたしなら結果ではなく効果と呼ぶね」と訳すべきです。

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ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下Amazon書評・レビュー:ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下より
4152098015

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