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(短編集)
文字渦
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文字渦の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.86pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 1~20 1/2ページ
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中島敦に「文字禍」という短編がある。その「文字禍」には「君やわしらが、文字を使って書きものをしとるなどと思ったら大間違い。わしらこそ彼ら文字の精霊にこき使われる下僕じゃ。」という言葉がある。『文字渦』は、そのタイトルと発想へのオマージュ作品であるかのように見えるのだが、礻が氵に変わっただけでこうも違う、というか、こうも膨らませられる、というか、とにかく内容は破天荒。そして記述も破天荒。そこに示される文字が実際に存在するかしないかはもはや手持ちの漢字事典などでは用が足りず、『大漢和辞典』とか『中華字海』とかが必要になってきそうではあるし、画数の多い漢字に到ってはルーペ必須だとさえ言えるので文庫版を裸眼で読むのは辛かったりする。本書の木原善彦による解説で示されていることだが、アルファベットはletterなのに漢字はcharacterと表現される。そしてcharacterは「人格」でもあるわけだからそれが「物語」となってもなんら不思議はないのだ。ともかくも漢字であるからこそ創造された作品集だと言ってよいだろう。ただしテーマが漢字中心であるだけに日本史のみならず中国史などへの言及も多数あるのですべてを読み解くのには困難を伴う。それに12の短編がそれこそcharacterを介してお互いに密かに関係していたり、ある馴染みない名詞が実はよく知っている名詞だったりするので、読み解き自体が作業となるどころか「研究」にさえなりかねない。したがってこちらとしては「漢字って面白い!」といういささか間の抜けた感想を述べるに留めておくこととする。 | ||||
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私は好きでした こんなレビューではいけませんね ごめんなさい | ||||
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背表紙の上部が一部欠けている状態。非常に良いとはとても言えない状態だと感じた。 | ||||
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いろいろ資料をあたり、書き上げた小説らしいが、正直わからない。つまらない。理解できない。 挑戦的な手法のつもりだろうが漢字をもてあそんでいるだけで、これは小説ではない。 解説に「翻訳不能!」とあるが、そもそもその時点で破綻している。 高評価がこれだけ多いのに正直当惑している。困惑している。 | ||||
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素直につまらないと言えない雰囲気の小説。でも、ぶっちゃけちゃんと読んだ人いるのかな?絶対とばしてるよね。そして新しい小説だ!って言えばかっこよく見えるよね。そういうのもうやめてもいいんじゃない? むかし、ウィリアム・バロウズを読んだ時に面白けどつまんないよね。飾るだけならカッコいいけどっていった人がいたけどそういうことだと思う。 | ||||
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タイトルにつられて買いました。文字禍と見えましたが、文字の渦でした。 老荘ファンなので、天書のところが面白かった。 何せ老眼で、門構えの中に何が書いてあるのか認識するのに時間がかかりました。 | ||||
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難解を持ってなる作者としては、破格の読み易さで、ひょっとしたら、普通の文学作品では? と疑ったくらい。もちろんそんな訳はなかったのだが、読み易い割に読書スピードは上がらず、やや退屈さすら感じてしまった。 連作中、「犬神家の一族」で遊んで見せた一作だけは、文句なく楽しめた。巻末に膨大な引用・参考文献が上げられていて、圧倒されたんだけど、私のような教養に欠ける人間が、本書を楽しむにはハードルが高過ぎたようだ。「何だか理解不能だけど、面白い」程度の、軟弱な円城ファン(私)には歯が立ちません。 | ||||
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子供の頃、親が読んでいたであろう文庫本をめくったことがあった。もうタイトルも思い出せないが、訳がわからなかったことを今でも覚えている。 この本は、その経験を大人になった自分にも与えてくれた。 十二編の「文字」に関する作品集なのだが、非常に解説しにくい。文法がおかしいわけではないし、矛盾があるとかそうでもないし、文章が難解とかでもない……のではあるが、結局、飛躍の具合が想像の遥か上をいくので、全然頭が追いつかないのである。「なんか、すごかったな」と十二回思って読了してしまった。読んだ後はさっぱりしていた。何も分かっていないからだ。 これは言うなれば「逆・アキレスと亀」である。亀はアキレスの半分の速度でしか動けないとして、一メートル先のアキレスに追い付けるだろうか。答え、亀はアキレスに追い付けない。これはパラドックスでもなんでもない、単なる事実である。 この本は、歳を取れば理解できるというものでもない。そもそも歳は関係ない。知識の問題である。子供の頃に親の本が読めなかったのは「幼かった」からではなく、文法をはじめとする「知識が足りなかった」からである。そこをはき違えてはならない。 楽しみたければ更に学べ。なんとなく、この本に教えられた気がする。 あと、解説を読もうとしたら、「本編を飛ばしてこちらに向かいたくなる気持ちは痛いほど分かるが、先に本編を読んでおいてほしい(意訳)」と書かれていた。 読まれていた。解説の担当者はここを読むことを読んでいたのである。 | ||||
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第43回川端康成文学賞受賞作。 著者の発想力を存分に味わうことができる12作収録。 文字を多角的に考察しようという意欲的な短編集であり、文字を中心とした幻想文学の側面を有しながら、文字の歴史を突き詰めたSF作品としての側面もあるのかな。 | ||||
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場面がどんどん展開していく。大きすぎたり、小さすぎたり。金田一には参った。仏説阿弥陀経もよく出てきている。コルディアスの結び目なんかも出ている。相当博識な人だ。一般の小説家がここまで雑駁にご存知とは到底思えない。秀才で、天才だ。独りよがりだ、でも感心する。感動まであったか?? どうか?? 何より、読みにくい。読みにくすぎる。ルビなんかほとんど読んでいない。読む気もなかった。奇書かもしれない。 | ||||
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文字って面白い。 これを読んだあと、Unicodeで遊んだ。 楔形文字や線文字Aがあって萌えた。 | ||||
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装丁良し、インターネット接続無しに読了不可(個人的理由による)、印象「難解な数式の解説」。 寝る前に寝そべって読むには向かず。但し、面白いことこの上なし。 時間に余裕有る人々に最適の書。 | ||||
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文字に込められている思いと同時に、空白の頁であるが、ちゃんと数えられている。1頁1頁に込められている想いが伝わる。本を書くと言うことはこういうことなのかと改めて気付かされる。文字の歴史、中国で発生した文字が、今につたわる不思議を思う。 | ||||
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文字とは、生命体である。 生命体であるから、動くし、他の群れと戦うし、捕食するし、進化する。進化の果てに、知性を帯びるに至る。知的生命体としての文字は、必然的に政治的闘争をも開始する。 本書は、文字を生命体に見立てて、徹底的に遊び尽くした作品である。 とは言うものの、ギャグマンガ的な遊びではなく、漢字やかなの成り立ちや詩歌、歴史、情報処理技術に、進化論など、著者の博覧強記ぶりがいかんなく発揮されている。横溝正史作品のパロディまで飛び出すなど、大真面目に遊び倒している。 評価するのも難しい奇抜な作品だが、その変幻自在ぶりには目眩を覚えた。 | ||||
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初めに「阿」の文字がありましたとさ、というむかしばなし、文字の歴史小説です。 表紙には「阿」の文字がいろいろな筆の書体で配列されています。 左上端の文字だけがなぜか、かんじの「阿」の文字ではないように見えます。へんたいかなかな? ひらかなの「あ」 かな? それにしてはへんだな。そもそも「もじか」どうかもわかりません。 見ようによっては、裸の男と女を見つめる目と眉毛の絵のようにも見えますから不思議です。 奇妙な本です。歴史小説にしては、やけに科学的な文章が出てくるし、 SFっぽい宇宙からのメッセージみたいな<文章?>(244頁)も出てくるし。読者は路頭に迷い、人生をはかなむ。 「ヴィルマラーナナ」(244頁)何語? カタカナ書きですし、「かおはきれいです」と、ひらがなでルビがふられているところをみると、外国語の翻訳? かと思いきや、むかしの如来たちの名前だそうです。計八十体、延々と二頁にわたって続きます。 本当か嘘かは分かりませんが、読みにくさはロゼッタ・ストーン以上です。 「もっとも有名な極楽浄土のパスワードは『南無阿弥陀仏』」(244頁)との秘密情報は、今後、 読者の皆さんが苦しい人生を生きていくうえでとても役立つ、旅のお供かも。役立たない、かも。 この『文字渦』という本は、文字という生き物の発生生物学の研究書かもしれません。 発生時には、生命のすべての進化過程が早送りで再生されます。 人間の受精卵も、魚の卵やニワトリの卵の発生過程とそっくりな形を経由して可愛い赤ちゃんが生まれます。 文字を生き物と考えると、文字の全ての進化過程が、どの文字の誕生時にも繰り返されているはず? 細かいカテゴリーに分化した全ての学問領域を総動員して、文字の歴史と未来を考察した本のようにも見えます。 幻字の文字の一画一画を構成する線を点にまで突き詰めて、素粒子物理学のごとくデジタルに存在の有無を究明し、 宇宙論的に哲学的にアナログ解析し、再現、総合して論じた本格的、企画倒れの解説書の趣も、この本に感じます。 その割には、巻末に「解説」も「あとがき」もなく、解説書、啓蒙の書とは一線を画した、画期的な本です。 しかも、各章の短篇の初出はどこやらの文芸書であり、ただの短篇の寄せ集めのようでもあります。 「境部石積(さかいべのいわつみ)」(109頁)は、まるでこの本の主人公のように何度も出てきます。 その意味では、不思議な、なんとはなしの統一感も感じませんか。 境部という妙字は、「様々の境界に立つがゆえに境部という名がつけられた」(111頁) その境に石を積んで壁を造り、はっきりさせるのが「石積」個人の役割? この本って、誤字だらけの翻訳書のようでもあり、訳(やく)が分かりません。 ルビなんかも滅茶苦茶で、「おまえはだれかといわれるとそう、まあね、みてのとおりのルビですね」(191頁) と、ルビの役割を勝手に逸脱、暴走し、居直っています。 起承転結の真面目な研究論文かと思いきや、いきなり駄法螺話に変わり、そのままほったらかす小説みたいです。 巻末に「引用・参考文献」を多数列記してきちんと締めているという、読者に対する礼儀正しさ、そして変な 几帳面さが読者にはたまらなくウレシイようなカワイイような。ずぼらしい作品に仕上がっています。マジ。 本書のタイトル「文字渦」には「もじか」とルビがふられています。ボクなら「マジか」とふりますけどね。 表紙の手書きの文字は、いろいろな書体の「阿」の文字。表紙に4種、裏表紙に4種。書家の華雪さんの手になる文字。 左上端の文字は、もしかして「かな」なのかな? 「阿」の文字に似せて、勝手に崩して、変体仮名を装った、ただの「もじか」のひらがな? にも見えてきます。 創作文字? 冗談文字? 篆書だか隷書だか分かりませんが、「阿」の文字を刻印した朱肉のハンコまで押してある芸術的表紙の装幀。 それにしても、内表紙の「匈」他の読めない漢字と記号?の<六文字>の意味が気になりました。 答えは、「闘字」の章の79頁にありました。「実際に語ったのは文字たち」(80頁) 文字は生きて語る。 この本に引用され参考にされた文献は、文字に関する本です。 この本を読んだ後、それらの参考文献を読みたくなりました。この本は、文字に関する本の読書案内でもあります。 真面目な研究論文に基づいた、面白いフィクションです。SF小説です。 「幻字」の章では、「猟奇殺字事件」というお話も出てきます。 また、「微字」の章では、「札幌で生まれ育ったわたし」(136頁)の話が突然出てきます。 「わたし」は、文字を研究する学者「森林朋昌(もりばやしともまさ)」 「森林朋昌仮説」の提唱者。 「森林朋昌」という 「種の生き物の誕生が地球の環境を激変させて、他の生物種を巻き込む形で壮絶な絶滅を引き起こした」(142頁) という仮説です。 「わたし自身は、六度目の大絶滅には阿語生物群が大きな役割を果たしていたと考えている」(142頁) 「阿語生物群」の「阿語」とは? 「最初に『阿』字が存在し、全ての文字はそこから生じた」(169頁) 「それは巨大な漢字状の構造物だったが、見方によっては小さな文字たちが群れをなし、渦を巻いているようにも見えた。揺れる木の全ての葉先が同時に描く軌跡の総体のようにも思われた。研究者たちの意見に従うならば、『大和』はいわゆる実画だけからできた漢字ではなく、虚画も含めて構成された、漢字状構成物と名づけられた代物であり、阿語に属する」(195頁) 「文字が完全な実在であるとする梵の教えより、文字さえも空であり、仮の現れであるとする仏の教えの方が正しいことを言っているような気もする」(169頁) 空も虚もある宗教哲学(?)です。いや、すかしっぺのような、得体の知れない、ただの屁理屈みたいです。 表題作の「文字渦」は、屁理屈の会話が連発でくさくて感動して笑えました。 「『ほんの一瞬、そこにあったがゆえに、永遠に存在せざるを得なくなるようなものが望みだ』 『それには、時間を超えた時間がかかりましょう』」(19頁) 「『しかし、時の中には不滅なものは御座いません』 『不滅を滅ぼす矛を用いて、滅を先に滅するのだ』」(19頁) こんな調子ですから、時間的な先もヘチマもあったもんじゃありません。矛はあっても、盾がないんですから。 「秦の貴人」の命令は、非論理的です。物理的法則に矛盾します。上司ですから、笑って許すしかありませんね。 「『表示される文字をいくらリアルタイムに変化させても、レイアウトを動的に生成しても、ここにある文字は死体みたいなものだ。せいぜいゾンビ文字ってところにすぎない。魂なしに動く物。文字のふりをした文字。文字の抜け殻だ。文字の本質はきっと、どこかあっちの方からやってきて、いっとき、今も文字と呼ばれているものに宿って、そうしてまたどこかへいってしまったんだろう。どう思う』 と境部さんが繰り返す。 『昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい』」(104頁) この本は、どこからどこまでが本当の話で、どこが嘘なのか、よくは分かりません。 嘘だろう、と思って読み進めると、なるほどなあ、と本当のようにも思えてきます。 参考文献の裏付けがあったりして。長屋のご隠居のほら話みたいです。 「むかしをむなありけり。男文字なる歴史というもの、をむなもじにてくつがえすなり」(299頁) これまでの日本の歴史は男文字、漢字で記録された。 えんじょうさんがこれからかこうとしている、をむなもじでかくにっぽんのれきしは、せいはんたいのれきしになるのかもしれない。あまてらすものがたりがたのしみです。くろがしろになるかも。おせろのように。 | ||||
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文字哲学という概念やジャンルがあるのか知らないのですが、本作は、”文字哲学”としか言いようの無いアイデアをさまざまな形式で転がしてみた、といった内容です。普通の意味での小説と言えそうなのは、白村江の戦いに敗北し、唐王朝の侵攻に構えて極度の緊張状況にあった日本から派遣された外交官境部石積の「新字」や、東野圭吾『名探偵の掟』にでてきそうな、推理小説をメタミステリー的にパロディ化した「幻字」くらいで、残りはジャンル分類が難しい独特の内容です。ボルヘス好きや言語SFが好きな人に向いているのではないかと思います。知的啓発が詰まっています。 題名から、アッシリア帝国の図書館を扱った中島敦「文字禍」を連想し、読みました。目次を開くと、神林長平の言語SF『言壺』を連想させる題名が並んでいました。内容も若干重複していますが、本作は、『言壺』をはるかに凌駕し、ぶっちぎりの領域に到達しているような感じです。「文字渦」は、始皇帝時代の兵馬俑の作者の話で、近年米国SF賞であるヒューゴー賞を受賞した長編『三体』の中の一遍「円」を連想させられる内容、 「金字」は、テッド・チャンの『あなたの人生の物語』所収の短編「人類科学の進化」風の、米国のマーケ・ビジネス文のパロディ。このあたりの雰囲気が好きそうな人にも向いていそうです。 本書最大の特色は、こうした、各所に散らばっている言語/文字/文章をテーマとしたアイデアを、12種類の色とりどりな形式で集約してみせたところではないかと思います。 コンピュータの文字変換、コンピュータの活用で文章として書けなくなってしまった逆字等の文字、コード表に存在しない文字の問題など、ボルヘスの時代にはほとんど想定されなかった(されてもコンピュータが一般に普及していなかったため、ポイントが理解できる読者を想定しえなかった)内容は、まさに21世紀のボルヘスという味わいがありました。漢字の深奥を扱っている点ではボルヘスを遥かに越えている感があります。ほとんど他言語に翻訳不可能なのが残念です。もしこれが翻訳できれば、フーコーがボルヘスの短編を読んで衝撃を受けて西洋の知の分類体系を相対化したような衝撃を新たに西洋に与えるようなこともあるかも知れません(ほめすぎかも)。 コンピュータの普及によって文字は書くものから打つものとなってしまい、書かれていた時代の文字は三次元として意識していたことを忘れていたことを思いださせられました(実際、書道家は、文字を三次元のものとして認識し、紙に書かれた部分は、文字の一断面だとの感触なのではないでしょうか)。 このように様々な知的啓発は受けますが、普通に小説として読むのは面白いかというと、そこはいまひとつでした。どれも24-27頁程度に収まっていて、中にはルビやアミダ・ドライブの話のように、ページ数に合わせてどうにでもなる内容がえんえんと続く箇所など、読んでいて苦痛を感じる箇所もあり(作者も、内容が重複しないようにチェックするのが大変だったのではないか、全部読まれることは想定していないのではないかと思うのですが、全部読んでしまいました)、全文熟読するというより、著者の膨大なひらめき、アイデアとエッセンスだけを味わう思考実験という感じです。 『ダヴィンチ・コード』のような暗号小説や『薔薇の名前』のような迷宮小説は、漢字圏でも成り立つように思えます。本書に啓発されて、壮大な知的大伽藍のような漢字圏版小説が多数登場して欲しいところです(既にあるのかも知れませんが)。 | ||||
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本作品を小説というジャンルにしておいていいのだろうかと思うほど奇妙な作品だ。文字の可能性を突き詰めた論文のようでもあるし、単に文字を題材にした実験小説とも言える。とても感想を述べにくい作品である。では、読みにくいのかと言われると、想像していたよりは読みやすかった。難しい作品ではあるけれども、作者の言わんとしていることは伝わってくる(理解しているかどうかは別問題)。漢字で表現されたスペースインベーダーゲームが登場したのを見て、漢字は文字なのか記号なのかイラストなのか、日本人であるからこそ楽しめる領域なのだと思った。 | ||||
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冒頭の表題作の他、「緑字」、「闘字」、「梅枝」、「新字」、「微字」、「種字」、「誤字」、「天書」、「金字」、「幻字」及び「かな」と言う「文字」を多角的に探究した全12の短編を収録した傑作短編集。注意深く読むと、ある「文字」(表記出来ない)や登場人物の繋がりによって、連作短編集となっている点も洒落ている。また、上で、多角的に探究、と書いたが、作者が考えている時間・空間スケールが壮大かつ緻密であって、これにも圧倒された。物語を紡ぐために「文字」が存在するのではなく、「文字」自身が物語を持っているという作者らしい斬新な発想が光っており、全編に艶めかしい雰囲気が漂っている。 特に、「梅枝」の掉尾の一文、「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」、がそのまま読者の感想となる様な楽しみと企みに満ちている点が印象に残る。人類史ならぬ「文字」進化史という雄大な構想なのである。作者のファンなら、作者が「小説自動生成プログラム」を開発していて(「シャッフル航法」というアウトプットもある)、作品「プロローグ」ではその開発のために、記紀などの古典を研究している様子が書かれている事は周知だが、その開発努力が本作で花開いている事も感じられた。日本や中国の古典は勿論、梵語や楔形文字などについても作品背景が拡がっているのである。仏典などの写経がファイル(あるいは遺伝子)のコピー、その際の誤りが異伝(あるいは突然変異)に対応している辺りも如何にも作者らしい。<Unicode>や<IME>に言及する等の遊び心も満載である(「幻字」は「犬神家の一族」の「文字」版パロディ)。 「小説自動生成プログラム」の開発と「文字」自身の徹底的探究という両方向から文学を切り開こうとする作者の決意が窺える傑作だと思った。 | ||||
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新潮に掲載当時から図書館で読んでおりました。二年かかりました。この本だけは手元に置きたく、お金を出して買いました。ゲーム、アニメ、進化論、聖書、仏典あらゆる理屈を混ぜ合わせてでっちあげたエンターテイメントだと思います。とにかく、おもしろい。お読みになる時はPCの検索を立ち上げておくことをおススメです。私はそうしました。 | ||||
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SNSでおすすめしている人がいたので即購入。 おすすめした人は変態度が高いと書いていた。 紛れもなく奇書であり希書だった。 ビブリオマニア、ビブリオフィリアを気取っている全ての人を叩きのめすかのような文字への愛。ただただ文字を突き詰めた本。 この本の最奥まで読めたとは思えないが、この先の人生で間違いなく20回は読み返すことになると思う。 内容やジャンルに関して 文字としかいえない。あえて既存のジャンルで括るならフィクションやファンタジーのような娯楽作品である可能性が高い。 以前漢字全てを一文字ずつ半紙に写し漢字辞書に仕立てた人が居たが、半紙は平に重ねて数メートルになっていた。 文字への愛が行き着くと、誰もが変態になるということがわかる。 ここ数年で増えた蔵書の全てが霞む。 読み終えて 書棚にこの本がある人を無条件で愛せると思う。 | ||||
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