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ザ・ガールズ



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ザ・ガールズ

ザ・ガールズの評価: 4.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

女の子の自意識やよるべなさを描いた物語

マンソンファミリーについて調べていたら、この小説がちらほら記事等で紹介されるので注文。
マンソンファミリーを元ネタにしたコミューンは出てくるものの主軸となるのは、女の子の自意識や不安である。
1969年。主人公のイーヴィーは、両親の離婚、離婚によって恋愛と自然食に傾倒する母親、秘書との情事と投資にばかり夢中な父親の間で疎外感を抱き、さらに幼なじみとの関係もうまくいかなくなり、居心地の悪い日々を送っていた。
そんな中、イーヴィーはおんぼろスクールバスに乗り、ゴミを漁る一員に出会う。その中で一際輝いている蠱惑的な美少女、スザンヌと仲良くなることでイーヴィーの生活はがらりと変わり、ある事件に加担しかけるも、スザンヌから仲間はずれにされたことで辛くも事件の加害者にならずに済む。00年代後半、老いたイーヴィーがその出来事を回想するそんな物語。
正直、マンソンファミリーを元ネタにしたカルトコミューンについての描写は薄い。例えるならアイスにトッピングされたナッツやアラザン程度だ。主軸となるのは、思春期の女の子、特に家庭環境の軸がぶれていたり、友達とうまくいっていない女の子が抱く疎外感やよるべなさ、ぶよぶよとした自意識、不良の女の子への憧れ、そんな子と付き合うときの万能感と後ろ暗さ、高圧的な男性に追従することで空虚さを埋める心情、けれど結局は埋まらない寂しさ。それらがみっしり詰まっている。
なので、当時人物も、イーヴィーやコミューンの女の子たちの姿はまるで会ったかのように鮮やかに浮かぶのに、マンソンをモデルにしたコミューンのリーダー、ラッセルやガイというテックス・ワトソンを元にしたような若者、デニス・ウィルソン、テリー・メルチャー、ロマン・ポランスキーを足して3で割り、晩年のエルヴィス・プレスリーの鋳型に入れたようなミュージシャン、ミッチ・ルイスはまるで思い出したくない異性の顔写真をボールペンで滅茶苦茶に塗りつぶしたかのように彼らの顔は朧気で、なおかつ彼らがイーヴィーやコミューンの女の子を利用し、性的搾取したりする様だけが生々しくビジョンが浮かんでくるのだ。
さらに、老いたイーヴィーが職にあぶれて、友人の伝で別荘の管理人を依頼された時に出会った、かつては可愛らしい少年だったが今は粗暴さを男らしさと履き違えた青年になった友人の息子と、彼のガールフレンドというにはあまりに幼く、主体性がない少女・サーシャと出会うくだりは、イーヴィーが未だにスザンヌと出会い、別れた夏の日を引きずっていることがわかり、サーシャとの関わりによりよるべない女の子のメンタリティは今も昔も変わらないという諦念をイーヴィーが充満させていて痛々しくなる程だ。
マンソンファミリーを題材にした小説として読むと肩透かしを食らうし、少女小説(というには生臭い描写が多々あるが)のようなふわふわ感は読む人を選ぶだろう。しかし、もし、貴方が十代の頃に孤独感に苛まれていたり、あやうく脇道にそれかけた過去があるのなら読んで欲しい小説だ。そこには等身大のそんな女の子たちがいるのだから。
ザ・ガールズAmazon書評・レビュー:ザ・ガールズより
4152097191

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