ギデオン・マック牧師の数奇な生涯



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初公開日(参考)2018年01月
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長編小説

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ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)

2018年01月12日 ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)

スコットランドの出版社に、半年前に失踪したギデオン・マック牧師の手記が持ち込まれた。彼は実直な人間として知られていたが、失踪する直前に神を信じないまま牧師になったことや悪魔と親し気に語らったことを告白し、信徒や国教会から非難されていた。手記には彼の生い立ちから、自分以外には見えない巨石の発見や悪魔との出会い、そしてなぜそれを大衆の前で語ったのかがすべて記されていた。それを読んだ編集者は手記を書籍として出版することにする。――編集者による序文、牧師の手記、そしてまた編集者の文章という独特の構成で、ある牧師の数奇な生涯を描くブッカー賞候補作。(「BOOK」データベースより)




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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.2:
(5pt)

人生のすべてが詰まったような物語

牧師が主人公なので読んでいると中世の話を読んでいるような感覚におちいるが、時折「テレビ」や「バットマン」や「DATレコーダー」などの単語が出てきて我に返る。

舞台となるスコットランドで、キリスト教や、それを体現する牧師に対する敬虔の念というものがどの程度のものなのか分からないので、悪魔との邂逅がどの程度スキャンダラスなことなのかもよく分からないが、日本に住むほぼ無宗教のものから見ると人々の反応が若干大げさな感じはする。

しかし、牧師という設定を抜きにすれば、人の盲信や、同調圧力、猜疑、疑念、情念などの感情に端を発するごく普通に現代社会で起こりうる逸話の集合体のような物語。悪魔や魔法が生きていた中世の雰囲気を纏った現代の物語ともいうべきか。現代人の持つ複雑さや多面性を真正面からとらえつつも、そこに中世のような雰囲気を被せることで一つの神話的な物語として違和感なく成立させている感じもする。不思議な魅力を持った物語。
ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)Amazon書評・レビュー:ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)より
4488016634
No.1:
(5pt)

嘘つきの牧師がつく嘘は真実になる

訳が分からないけど、不思議におもしろい物語でした。ひと息に読んでしまいました。

ある牧師の失踪事件を通じて、登場人物のものごとへの見方、人間関係の真偽をたどる三部構成の小説です。
聖職者の牧師さんとて、男女関係は難しいようです。
結局、失踪事件の真実だけでなく、全てがやぶの中のようで、あやふやな結果になってしまう物語です。
登場人物の言うことが人により食い違ったり、矛盾したり、でっち上げみたいだったり。
とにかく首尾一貫しない物語です。誰の言うことも信じられないという、奇妙な物語です。

だいたい、現実の世の中の出来事は、人によって受け止め方が違うため、事実はひとつ、なんて単純には言えないことを、この小説は教えてくれているように思いました。

本書は「序文」、『ギデオン・マックの遺書』、「エピローグ」の三つの部分から構成される長編小説です。

「序文」では、『ギデオン・マックの遺書』の原稿を出版者が入手した経緯が描かれます。

「本文」の『ギデオン・マックの遺書』の作成者は、主人公のギデオン・マック牧師です。
森の中で岩に出くわすお話しです。森の岩からすべては始まり、洞窟に住む悪魔の話につながっていくのです。
マック氏による原稿は、手記、回想録、独白、自伝、「まあ好きなように呼んでくれて構わない」(10頁)内容です。
「これを読みどう判断するかは、読者諸兄にすべてゆだねることとしたい」(25頁)と、どうも出版者も判断しかねる内容みたいです。

この本の原題は「The Testament of Gideon Mack(ギデオン・マックの遺書)」。原題は、「本文」の標題と同じです。
この本の中の「本文」は、ギデオン・マック牧師自身が書いた部分なのですから、事実であり真実のように思われます。しかし、だまされてはいけません。牧師さんもヒトの子。ウソをつくかもしれません。要注意です。

「序文」と「エピローグ」は、ふつうの本では付け足しの部分ですが、この本ではとても重要です。「本文」に書かれたことと、まっこうから矛盾しているからです。「本文」にかかれていることをそのまま信じられなくなるほど、正反対の内容です。

特に、「エピローグ」は、ギデオン・マック牧師を知る人たちへの第三者による聴き取り取材の結果であり、「本文」より何となくつじつまも合っているように思われました。だから、「本文」に書かれている不思議な岩や悪魔のことを含めてみんな、ギデオン牧師の幻想だったのでは、とギデオン牧師が信じられなくなりました。牧師の言葉が信じられなくなったら、信仰もなにもあったもんじゃありません。

「序文」と『ギデオン・マックの遺書』と「エピローグ」の間で、事実関係が全て食い違っており、どれが真実の情報かまったく分からなくなります。誰かが嘘をついているのか? 登場人物が勝手に物語をでっちあげているのか? 全員が嘘をついているのか?

「エピローグ」では、各登場人物が自分手持ちの情報だけでうまくつじつま合わせをして、もっともらしいストーリーに仕立てて、事情聴取に応じています。そこが実に面白い本です。人間の数だけ、何本もの異なる筋の物語があります。

読者も「自分の読みたいようにしか読まない」とすれば、読者一人ひとりが自由にストーリーを創り上げやすい、この本は最高に面白いはずです。

最後に、ローナ・スプロットという犬好きの牧師のことを記しておきたいと思います。

彼女はジャスパーという名の犬を飼っていました。その犬が崖で身動きが取れなくなったところをギデオンは自分が崖下の滝つぼに落ちる危険もかえりみず、助けたのです。そして転落。キリストのように三日後、奇跡的に発見されて助かります。

しかし、ローナはこの出来事を神の奇跡として教会の礼拝で皆に話します。教会の最後列でギデオンは彼女の話を聞いています。家に帰ってから、訪ねてきた彼女に向かってギデオンは言います。
「私の話にもとづき、真実とは正反対の話をでっちあげた」(358頁)

「真実とは正反対の話」とは、結局、嘘ということです。
脱力して言葉も出ませんでした。牧師さんが神の前で嘘をついていいんですか。
嘘つきがついた嘘は、真実であるって、本当ですか。
ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)Amazon書評・レビュー:ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)より
4488016634



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