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(短編集)

祈りの海



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【この小説が収録されている参考書籍】
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)
祈りの海

祈りの海の評価: 3.93/5点 レビュー 28件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.93pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 21~28 2/2ページ
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No.8:
(5pt)

「わたし」の意味

ある日、普段どうりスタスタ歩いているとイーガンさんに出合った。
イーガンさんがいうことにゃ「ちょっと、自分の足元を見てごらん」。
で、下を見ると…あると思ってた地面はなく、真っ黒な虚空が広がるのみ。
それじゃ、どうして歩けていたかというと、
踏み出そうとする先に、ちょうど足がのるだけの大きさの円板がパッと現れ、
そこに足がのってもびくともしないけれど、足が離れると、すっと消える。
ただ、これの繰り返しだったのだ。
気づいてしまったこのときから、恐怖と不安に捕われる。
その円板は何なのか、どうやって現れるのか、これからも現れてくれるか…?
いままでずっと大地を踏みしめてると思ってたのに!
もちろん、”自分って?”について考えたり読んだりしたことはあるけれど、
この本の物語の中で様々な角度から直面させられると、やはり感じる重みが違います。
(特に「ぼくになることを」、ズンときます)
それに、イーガンさん、やっぱり物の語りがうまい!
「ぼくになることを」のどんでん返しは見事だし、
「無限の暗殺者」はおもしろいパズルを解いた気分にさせてくれるし、
「繭」は上質のミステリーだし、「貸金庫」のラストの、主人公の健気さは泣かせるし…。
それに、素人考えで、EPRは瞬間的な情報伝達に利用できるんじゃないかと思ってたんだけど、
「ミトコンドリア・イヴ」の主人公のセリフ数行であっさり霧消。うぅ、確かにそうです…。
これは、私にとってうれしいおまけでした。
ところで、私が読んだのは三刷なんだけど、425ページのこの文…
「…兄は、微笑みを絶やさずにはいられないのだった。」
あれ?
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.7:
(2pt)

私にはついて行けませんでした

~量子論の理論や思想を拡張した作品が多いので分かりにくい、
という面はもちろんありますが、解説を読んで気付いた、
アイデンティティの問題が大きいようです。
ただでさえ不確定性という、ややこしい量子論がベースにあるのに、
一人称“視点”(必ずしも一人称“記述”ではないですが)なので、
読みにくさが増しているので、
合わないとなった人~~にはどの作品も徹底して合わないでしょう。~
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.6:
(2pt)

確かに悪くはないが小説よりネタ帖に近い…

SFとしてのアイディアは凄い。各短編において、特異な世界像、それを当たり前と過ごしている社会を次々と描いていく力量は確かに感じられ、ツカミは最高である。

が、確かにネタは良いのだけど、どの話もいくら短編にしたって「物語」がなさ過ぎる。どの話も、起承が過ぎて、さあ山の転結!と思うと残り1ページで話が終わってしまい、読み手は中途半端な状態で放り出されてしまう。なまじSFとしてのネタが面白いだけに、これは大変苦しい。

この物語のなさは「主人公」の不在、という点にも表れている。個々の世界の「語り手」としての一人称存在はいるのだけど、物語の主軸(問題解決)には最後の最後で関われずに終わる場合がほとんど。文学的な締めと呼べば聞こえはいいのだろうが、また神や魂を扱っているにしては正直、話の底は浅い。

同じネタを古典作家(クラークとかアシモフとか)に書かせたら、一つのネタで短編の4-5つは書いたろうな、と思わざるを得なかった。繰り返すが、ネタは良いだけに大変悩ましい。だがネタでは小説にならないという良い証左でもある。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.5:
(4pt)

表題作も良いけど。

とぎれとぎれに読んだので、消化し切れていない部分もありますが、ご勘弁を。
ヒューゴー賞、ローカス賞を取った表題作「祈りの海」も良かったが、貸金庫や順列都市、イェユーカーなどの小品がピりっとしていてなかなか良い。決定的に一神教の束縛から彼らは離れられないのだなあと思う。作品集全体がアイデンティティの問題を取り上げているのだが、小品ならいいのだが、中編くらいのボリュームになると(わたしのようなじじいには)底が見えてくるのが残念。
おおらかな味も良し。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.4:
(5pt)

注目したい作家だ、と思わせられた

大作家の手際よく処理された長編よりもよっぽど面白い短編集だ。
現在では作品のプロットというのは、ほとんどの場合、他の誰かが手がけたものである。しかし本作品では視点がいつも主人公に固定されている感じで、ブレが無く、非常に明快であり新鮮だ。このあたりを解説者はアイデンティティを扱っている作品と捉えており、科学的な記述よりも自分を描くことで作品として成り立っていると解説している。同感である。
この作者の長編は、まだ成長途中というようなものらしいが、注目したい作家だと思った。
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No.3:
(5pt)

衝撃で目が眩む作品

90年代最高のSF作家、グレッグ・イーガンの日本オリジナル短編集。収められた短編すべてが、尋常でない密度と切れ味を持っていて、一読するとその衝撃で目が眩みそうになる。
 この衝撃はどこからやってくるのだろう?
 一言で言えば、すべての作品が読者のアイデンティティを揺るがすような効果を持っているからである。いまどきアイデンティティを扱った小説なんて珍しくもない。しかしこの短編集は、それをSFでしか、否イーガンにしかなしえない手法で描いている。
 イーガンは作品内に分子生物学、量子力学、仮想現実などの科学理論を持ち込む。そうした科学理論は純粋な概念、言うならば、形而上のものである。そういった形而上の概念が、とびきり切れ味の良いアイデアで現実の個人の問題と結びつく、その手際がすばらしく、読者は科学の手法がダイレクトにアイデンティティの問題に結びつく衝撃に眩暈を感じずにはいられないだろう。
 SF好きに限らず、すべての読書人にオススメの傑作。
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No.2:
(3pt)

懐かしい、においのする、短編たち

敢えて探し求めて買うことは少ないが、見かけた本に「ヒューゴー賞」と書いてあれば無条件に買うことにしている。本書もヒューゴー賞とローカス賞を受賞した表題作が中心となっている短編集。
解説にもあるように、各作品のテーマは「アイデンティティ」。この古いテーマをSFという比較的新しい技術を用いて、しかし懐かしい筆致で描く。「アイデンティティ」を扱う「純」文学も数多くあるが、多くはテーマの古さに引きずられて、作風自体が古臭くなる。イーガンは、作風が古くなってしまうことをSFという技法で避けつつ、上手に「アイデンティティ」を扱っている。
ただ、受賞作である表題作はやや「フツー」のSFになっている嫌いがある。この表題作は中篇といった長さの作品だが、短編では輝いているイーガンの魅力がやや薄れてしまっている感じがある。また、作品を長くすることによって、多くのモチーフを消化せねばならず、この辺りでもイーガンの魅力が薄れているように思える。
できればSFの要素てんこ盛りの中・長篇よりも、彼には「懐かしい」短編を書き続けてもらいたい。
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378
No.1:
(5pt)

アイデアがすごい

作者の日本オリジナル短編集.収録作品は「貸金庫」,「キューティ」,「ぼくになることを」,「繭」,「百光年ダイアリー」,「誘拐」,「放浪者の軌道」,「ミトコンドリア・イヴ」,「無限の暗殺者」,「イェユーカ」,「祈りの海」の11偏.既訳長編「宇宙消失」や「順列都市」からの期待に違わず,いずれの短編もアイデアの斬新さ,読後の満足感や問題提起の鋭さなどハイレベルである.個人的には,ヒューゴー賞とローカス賞を受賞した表題作より,「貸金庫」,「百光年...」,「誘拐」を興味深く読んだ.アイデアを明快に語るクラークの短編を晴朗なギリシア彫刻に例えるなら,グレッグの人としてのアイデンティティを問う(全て一人称によって語られる)作品群は,さしずめロダンの作品といった感がある.
祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)より
4150113378

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