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(アンソロジー)

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夜の夢見の川



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【この小説が収録されている参考書籍】
夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)

夜の夢見の川の評価: 3.67/5点 レビュー 3件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(4pt)

分類の難しい作品を選り分けた好事家向け作品集

中村融さんによる「奇妙な味」アンソロジー第2弾。第1弾「街角の書店」が期待以上によかったのでこちらも読んでみました。

第1弾に比べると、それぞれの作品の傾向が曖昧で、明確にグロテスクなものや、完全に心温まるといった作品は見当たらず、どのジャンルにおいても極北、またはボーダーラインに近いような分類の難しい短編が揃っています。
また編者があとがきで自ら書く通り、結末をはっきりさせない話も多く、暗い、とも言い切れない、薄暗い印象の短編が続きます。
「奇妙な味」という分類自体もぴったり当てはまってはいないような短編も多く...それでもそういう作品にも不思議な魅力があるのですが。

「街角の書店」は、この分野をあまり読んでない友人にプレゼントしてもいいような(自分が読んだ後貸すのでなく、クリスマスギフトとしてラッピングしてもらうような)アンソロジーでしたが、こちらは完全に好事家向けといったイメージです。
アンソロジストの工夫というか、趣向を凝らしたアンソロジーを評価する私としては、どれか1編もっと単純明快な話を入れていたほうが、全体の印象が引き立ったと思いますが、それでもこれだけ分類不能の作品を集めた手腕には拍手を送ります。
夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)より
4488555055
No.2:
(3pt)

中編ほど合わなかったのも残念

どちらかというと、はっきりしたアイディア・ストーリーの方が好きなので、
モヤモヤしたハッキリしない話を重視したという編集方針はちょっと好みから外れていました。
前者の「麻酔」「アケロンの大騒動」「怒りの歩道――悪夢」なんかはおもしろかったし、
後者も「ハイウェイ漂泊」は良かったんですけどね。
あと方向としては、後味の悪いタイプの話も多い気がします(「お待ち」「終わりの始まり」「イズリントンの犬」など)
夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)より
4488555055
No.1:
(4pt)

家族の絆がテーマの昔ながらの人情幽霊噺「終わりの始まり」をイチ押しで推薦します。

詩的でロマンチックなタイトル「夜の夢見の川」と日本でもお馴染みの有名作家のスタージョン&チェスタトンを著者名に押し出して奇譚ファンの望みを叶えると最初から約束してくれている様な中村融 編「奇妙な味」テーマ短編集第2弾です。最初にとても景気の良い事を書きましたが、冷静に考えると人にはそれぞれ好みがあって全ての人が満足するとは限りませんし、ましてテーマの性質上で中にはとらえどころのない作品も数多くありますので、もしも「必読の書か?」と問われたらきっぱりとそう言い切る自信は私にはありません。でもこの種の本では定番の陰鬱な悲劇だけでなくご陽気な喜劇も入っていて、まずまず奇譚ファンの欲求を満たしてくれると思いますし、必ずしも「ベスト・オブ・ベスト」的な最上作を期待するのではなく、ごく軽い気持ちで自分のフィーリングに合う作品がひとつでも見つかったら良しとするぐらいの覚悟で臨んで欲しいですし、また時を措いて再び選び抜かれた短編が詰まった3冊目が上梓されたらいいなと望みますね。

『麻酔』クリストファー・ファウラー著:歯科医が舞台の実際は有り得ないもう本当に痛い話ですね。これは余談ですが、実は私は本編を読み終えてから3日後に硬い食物を噛んで義歯を一本割ってしまいました。勿論歯科医での治療は平穏無事でしたが、私は影響を受け易い体質なのでしょうか、この事一つ取っても世の中には理屈で割り切れない事は多々あるのだなとつくづく思えますよね。
『バラと手袋』ハーヴィー・ジェイコブズ著:「魔法の店」テーマの一編で小さい頃から風変わりなもののコレクターだった友人と大人になって久々に再会を果たす男の話ですが、これは思いの外暗くはなくお気楽で後味が良い痛快作でしたね。
『お待ち』キット・リード著:二人旅を続ける母娘がある町で長く滞在を余儀なくされ住人はとても親切そうだったが、やがて娘は町の異様なしきたりを知る事となる。うーん、こんな町が本当にあったら怖いですが、でも妙に何処かにあってもおかしくないリアリティも感じますし、結末には「長いものには巻かれろ」という半ばヤケクソ気味の諦観が漂っていて例えこんな土地であっても「住めば都」となるのでしょうか。
『終わりの始まり』フィリス・アイゼンシュタイン著:十三年前に死んだ母から夕食に誘う電話が掛かって来て彼女の最期を看取った娘がどうにも信じられずにすっかり混乱に陥る。しかも夫や疎遠な兄も母の死を否定するに及んで彼女もとうとう認めざるを得なくなるのだった。これはとてもシンプルでわかり易いけれど心に沁みて容易には忘れ難い良い話ですよね。「家族の絆」がテーマの昔ながらの人情幽霊噺として文句なしにイチ押しで推薦します。子ども思いの母は不仲な兄妹が一生疎遠でいる事が心残りで一日だけあの世から帰って来たのでしょうね。そして一夜の晩餐の一時がまるで嘘の様に忘れ去られても兄妹がこれからも会うという約束だけはきっちりと記憶に刻まれているという巧みな仕掛けが誠に泣かせますよね。
『ハイウェイ漂泊』エドワード・ブライアント著:渋滞のハイウェイで無人車がたくさん見つかると言う薄気味悪い話ですが、この読者に全てを丸投げする様な曖昧なラストはさすがに頂けなくて私には駄目で受け入れ難く一向に楽しめませんでしたね。
『銀の猟犬』ケイト・ウィルヘルム著:夫が会社をクビになり三人の子供達と共に田舎の農場に引っ越して暮らす事になった主婦が、美しい二頭の銀色の猟犬につきまとわれる内に神経質になり得体の知れない恐怖に襲われる事となる。まあ本来は人間に癒やしを与えてくれる筈の犬達がこんな風な不気味な存在になる事は常識的には考えられませんが人の心はさまざまですからね。この結末は愛犬家には受け入れ難いと思いますが、彼女にとってこうするしかなかったのもまた確かな事実でしょうね。
『心臓』シオドア・スタージョン著:病弱な青年を愛した娘が一途に彼の幸せを願った挙句に迎える何とも残酷な結末の悲恋物語ですね。こういう救いのない話は読んでいて辛くて堪らない気持ちになりますが、これもこうと決めたら一切の妥協を許さずにとことん暗い路線を突き進む著者の頑なな芸風なのでしょうね。
『アケロンの大騒動』フィリップ・ホセ・ファーマー著:拳銃のドンパチが飛び交う西部劇で実は喜劇仕立てという変り種の一編で、最初から最後までずっとニヤニヤと笑みを浮かべていられる落語みたいなノリが嬉しく丁度いいタイミングで息抜きができてよかったですね。
『剣』ロバート・エイクマン著:ある若き青年が語る奇妙な大道芸人の娘との間で起きた「試練の初体験」の物語。昔のサーカスによくあった様な特異体質というのはあまり世間に知られていないだけで本当にあるのかも知れませんね。二人の別れの場面では昔懐かしいアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の有名な一挿話を思い出しましたね。
『怒りの歩道-悪夢』G・K・チェスタトン著:軽食堂に入って来ていきなり独白を始めた奇矯な男が語るみょうちきりんな話。事の真偽はともかくとして乱暴に見えて実はとてもまともな男の教えには学ぶべき点があると思いますね。ゴミのポイ捨てや道に唾を吐いた経験がある人にも何時かこっぴどい報いが来るのかも知れませんね。著者は冗談めかしてはいても筋がちゃんと通っているのがさすがだなと感心しますよね。
『イズリントンの犬』ヒラリー・ベイリー著:「銀の猟犬」の敵討ちをする様な好感度抜群なワンちゃんの話ですが、折角がんばったのに悪い人間のお陰で結局は同じ様な結末になったのは非常に残念ですね。でもこちらは続きの物語の展開も期待できそうでまだ救いがありますよね。
『夜の夢見の川』カール・エドワード・ワグナー著:囚人護送車の事故で川に転落した女が脱出に成功し近くに暮らす女二人の館に世話になって一息ついたのだったが・・・・。期待の表題作でしたが意外にも読んで見ると予想とは全く違った内容でしたね。男性作家が「女だけの官能の世界」に挑むのもまた意外性が充分でしたね。お約束通りの凄惨なラストでしたが、彼女の悲惨な境遇を考えれば無理もなく完全に理解できますし力強く理不尽な運命に抗って何時か幸せな日が訪れるまで懸命に生き延びて欲しいですね。
夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫)より
4488555055

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